「うちゃー花粉症じゃけー」

2021年02月26日 | 日記・エッセイ・コラム

 毎朝、さつき園にやって来ると、必ず事務所や厨房や園長室に顔を覗けて「お早う!」の挨拶をするのが日課の○○さん。

 その○○さんはこの時期になると必ず、「うちゃー花粉症じゃけ―鼻水が止まらんのんよ」と、毎朝のあいさつの後に続けます。

 今朝も「お早う!」と言いながら園長室のドアを開けるなり、「あのね、うちゃー花粉症じゃけ―鼻水が止まらんのんよ」と、さも辛そうに言います。

「そうか。花粉症かぁー、そりゃ辛かろうのー」と私。

 すると今朝はそれに続けて、「じゃけー、今日も鼻水が出て止まらんのよ」とマスクの上から鼻を摘まみながら言います。

「えっ? 今日も鼻水が出て止まらんのかいねぇ?! あのね。今日は雨が降りよるけ―ねー、花粉は飛ばんのんよ。ラジオの天気予報の人がそう言いよったでー」

「うーん、そうかね」とちょっと目が泳いだように見えた○○さん。

「あのね、雨が降ると花粉は雨に濡れて地面に落ちるんと。じゃけ―花粉は雨の日は飛んでないんと」と私。

「ふーん、今日は飛んでないんか」と言って、そそくさと園長室のドアを閉めていく○○さん。

 ○○さんにとって、花粉症は周りの人の関心を呼ぶ大事なアイテムなのです。

 知的障害の人の中にはちょっとしたケガや風邪気味で軽く咳などが出ることを回りの人に心配してもらうための大事なチャンスにしている人がいます。それは知的障害の人たちは自分のことをやさしく心配してもらうことが、その人生の中であまり体験することがないからなのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

 だから、そんな時、私たちはやさしくちょっと心配してあげるのです。

 なのに、今日はちょっと○○さんに悪かったかなあーと、雨の音を聞きながら、少し反省している園長さんです。

 

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私たちの非日常と地球の日常

2021年02月16日 | 日記・エッセイ・コラム

 先週土曜日の夜11時08分。大自然は私たちの胸にあるあの時の辛い思いを嘲うかのように、東日本大震災から10年の節目の時を迎えようとしていた私たちを無慈悲にも、これ見よがしに襲ってきた。

 人生100年という時代に在って、10年は長いか短いか。しかし私たちがそれをどう感じようと、私たちが生きる地球にとって、あるいはこの大自然にとっては10年や100年は一瞬の瞬きにしか過ぎない。その一瞬の時間の中で生かされている私たち人間の存在をどう考えようか。

 新型コロナウイルスの世界規模での感染状況に抗する私たち。マスク着用や手洗いの励行。そしてリモート学習やリモート勤務など、いつ終わるとも知れないこうしたこれまで体験したことのなかった日々が、私たちの日常になろうとしている。

 こうして、10年に1度の、あるいは30年に1度の、あるいは100年に1度の疫病や自然災害に見舞われる私たちの非日常がゆっくりと私たちの日常になる。

 しかし、それは地球にとって、あるいは大自然にとっては単なる一瞬の日常でしかない。私たち人間の非日常は悠久の時を刻む地球の、あるいは大自然の一瞬の日常なのだ。

 だから、私たちは個として生きることも大事だが、類として生かされているという思い、感情を抱くことも大事だと思うのだが……。

 

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食堂で(その3)

2021年02月01日 | 日記・エッセイ・コラム

 前回の「食堂で(その2)」にどなたかがコメントを寄せていただきました。ありがとうございます。滅多にコメントをいただくことがありませんので、コメントを寄せていただくのは本当にうれしいことです。

 さて、「食堂で(その3)」です。

 ○○さんはいつどうして覚えたのか。食事を終えて下膳をして食堂を出て行くとき、必ず、まだ食堂に残って昼食を摂っている利用者や職員に向かって、

「お先にー!」(と言っているように聞こえる)言葉をかけていきます。

 その時は、大概、多くの利用者はもうとっくに食べ終わっていて、いつもの4、5人だけがまだ食事中なのです。その中には私もいます。

 ○○さんは自分が先に食事を終えて、下膳をして食堂を出ようとする時に必ず「お先にー!」と声をかけるのですが、どういう訳だか、誰かが自分より先に食べ終えて食堂を出ようとする時にも、「お先にー!」と自分からその利用者や職員に声をかけてくれます。なので、時に○○さんより先に食事を終えて食堂を出ようとするのに「お先にー!」と言われると、ちょっと戸惑います。

 でも、○○さんの明るいよく通る声は、聞いていてとても気持ちがいいのです。

「お先に―!」の発音が明瞭ではない○○さんですが、それを聞くと○○さんの優しい気持ちを感じます。食堂を出る時に、「お先に―!」と言って、右手の敬礼とともに元気な挨拶をしていく時もあります。私はいつも軽く敬礼のように手を挙げて、「はい、どうぞ」とそれに応えます。

 支援学校高等部の時にさつき園で実習体験をした○○さん。その頃の幼かった心身はさつき園に通う頃にはすっかり大人びてきていました。支援学校時代はお母さんや先生の接し方がちょっと過保護のように感じていましたが、今では背も伸びで、瞳にも力があり、すっかりいい青年になりました。

 障害者も私たちも人間は生命力を伸ばすべくその環境を与えられると、しっかりと内なる力を健やかに発揮することを身をもって証明してくれている○○さんです。

 

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