のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

裏話

2014年07月28日 | 日記・エッセイ・コラム

 山ヤの概念には「エスケープルート」と言うのが常に存在しています。一種の逃げ道ですね。

 

 たとえば縦走路ならこの地点で何か起きたら引き返す、ここなら引き返すより途中の尾根を戻る、ここまで来たら登り切って降りた方が安全。これが計画の中でも重要なポイントです。

 

 「山田昇杯」の登山競争から「スカイビュートレイル」になり、山岳連盟が主催からサポートになった4年前から「エスケープルート」の概念が希薄になった感がありました。

 

 当初、50kmと25kmだったスカイビュートレイルのコース作りの時は関さんという山岳連盟の地元の重鎮がおり、83年の国体の時からこのコースを育ててきた人でした。エスケープルートの重要性もよく理解していましたし、土地の地主とも折り合いをつけてくれたので我々コース作りの現場サイドも救急車の入れるルート、救急車は入れないが軽トラなら入れる、ヘリコプターがホバーリングして吊り上げられる場所など、こちらサイドで見つけて関さんが折り合いをつけてくれる算段になっていました。

 

 実はこのとき関さんは末期ガンで第一回スカイビュートレイルを成功させた翌年の春に他界してしまいました。私など20代の頃から関さんのお世話になっていたのでそもままずるずるとコース整備に参加して今に至っていますが、裏方の裏方を失ってみてその大きさを知るもので、今回関さん抜きで新規開拓ルートを作っていると、許可を取った国有林だと思っていた道が、実は民有地に大きくい込んでいたり、トレラン稜線の多くは市町村境なのでトレランに理解を示さない市町村の境界を越えていたり、そのたび慌てて道を作り替えたりの騒動が絶えません。

 

 エスケープルートにしても我々山ヤと100kmを走るトレランとでは感覚が異なり、6-7kmの一本道なら人力で往来できるという空気が漂っていました。できるだけ自動車が通れるような道は走りたくないと言うのも理解できますが、毎日2時間3時間かけて現場まで行き作業をして同じくらいの時間をかけて帰って来るのではこちらの効率も上がりません。

 

 許認可などの問題があるので大っぴらにはできませんが、道具の搬送の問題もあり作業現場ではひそかに古い作業道や林道に目星つけてエスケープルートを作っていたのですが、今回の事故で日の目を見ることになりそうです。

 

 ヘリによる搬送の困難さもようやく理解してもらえたような気配になってきました。実はすでにコースの何カ所かにヘリがホバーリングもしくは着陸できる場所を確保して手を入れてあるのですが、幸い今まで無駄仕事で終わっていました。

 

 貴重な山野草が生えていることもあるので、そういう場所は不自然でもコースを迂回させたり、道幅が狭くなってもわざと草を残して人が入らないようにして避けています。

 

 倒木以外の生きた樹木は切らないは山仕事の暗黙のルールなので、藪の切り開きは結構難しいんです。だいたい中低木の利用価値のない木が多いのですが、自主規制は一応太さ4cmがめどで、それ以上はお役所のお目こぼしにすがるしかありません。

 

 大会当日、私たち裏方はお役御免で顔を出しませんが、昨年までは前武尊の急登の下で応援していました。大会本部では重視していなかった小さな分岐があるのですが、山田昇杯の頃にその分岐を間違えて走った選手がいた経験があったので、毎年その場所で見ていましたが、トップグループは颯爽と通り過ぎるものの後半の選手ほどボロボロになって歩くより遅く走ってきます。

 

 我々山ヤが2泊3日で行くコースを7-8時間で走るのですから無理からぬことですが。

 

 大会の行方がわからぬまま、今日はマムシが出る場所があるので少し広めに草を刈り倒し、2匹ほど首をはねました。通過する時間帯が夜半になる場所ですから、もしかまれてもマムシと特定できないかもしれない。イノシシが猛威を振るうようになってからマムシも少なくなりましたが、いなくなったわけではない。

 

 マムシに限らず蛇を見たら殺せで、今年に入って2-30匹切り殺しています。その祟りで貧乏しています。

 

 昔なら専売公社でたばこのクズをもらって撒きましたが、幸い、関さんが残してくれたマムシよけの薬がまだ残っていたので今年は何とかなりそうです。

 

 お盆を過ぎるとハチが脅威になります。昨年は25kmコースで大人数がハチに刺される事故がありましたが、毎年大会前に蜂の巣の駆除問題が起きます。私はスズメバチアレルギーがありかつて3回ほど意識不明になっているので、エピネペンを携帯していますが、ハチジェットのスプレー一本よこして「これで退治してきて」と某村役場。こいつらも自分の身の上に災禍が降りかからないと分からない連中です。

 

 新コースのゴタゴタで後手になってしまった既存コースの整備。隠れた難所が待ち受けています。ヤマヒルの尾根で、ランナーが走れば3-40分で通過する長さですが、この冬の大雪で倒れた木を切ってどかさなければならないのでまる一日、もしくは軽く二日の作業になるでしょう。 

 

 ゴム長に雨合羽来て隙間をガムテープでふさいで、炭焼から出た木酢をスプレービンに入れての作業です。寒くなればヤマヒルもいなくなりますが、今は宴もたけなわ。常に2-30匹のヤマヒルが足元から這い上がってくるので、お互いに木酢を掛け合いながらの作業になります。

 

 一昨年、初日早々この山ヒルにやられまくってパニックになり、作業から一名脱落者が出ました。それまで二人きりだったので期待していたのですが。今年はヤマヒルのことも知り尽くした人が一人加わってくれて3名で作業していますが、皆、関さんゆかりの人たちです。

 

 例年ならヤマヒルが出る前に終えている場所なのですが、今年は新コース作りの影響で一番悪い時期に当たってしまいそうです。

 

 当初今年のコース作りはボランティア中心で行くと言う方針だったので、我々の出番はなかろうと余裕だったのですが、結局今の状態になり、スタートが遅れた分あわただしくなっています。

 

 許認可その他いろいろ含めて先行きどうなるかわかりませんが、今週は骨休みも兼ねて激しい場所には行く予定はないのですが、来月中ごろから一気にその反動が出てきそうです。

コメント
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