ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

亀和田武さん4

2017-02-06 18:21:00 | 日記
「言葉が錆び付くのはあっという間なんですよね
だからこそ錆び付かない表現を選び取って行きたいですよね」と甲斐さん

【HERO】のヒットの後から
「今までのロックバンドって、何を言いたいのかハッキリしてなかったじゃない
別に告発とかメッセージじゃなくてもね
だから、俺はロックを書く詩人になりたい」とよく話されてますが

当時の奥さんは「詩人」という言葉にインパクトを受けたせいか?
甲斐さんが書かれる詩に重点を置いて聴いていたらしく

例えば「俺は歌の上手くないシンガーだと思う
でも、自分でしか作れない歌を歌ってるシンガーだと思ってる
だからこそ、ハートフルだし
自分で吐いた言葉は俺自身の叫びだもんね」とか

「男と女の話が一番深いと思う
だからといって、愛してる、別れましょう…じゃなくて
その向こうに時代や社会が見えるようなラブソングが書きたい」との発言も

「ガラスの動物園」を作られた時から
「もう覚悟を決めて全部さらけ出すことにした」甲斐さんは
「変わってないんだな」としか捉えてなかったようで(苦笑)

その「別れた彼女に捧げた[ガラスの動物園]の曲を書く時に
自分にとっての本当の痛みを表現するには
徹底的にさらけ出してしまうしかない

ただ、さらけ出すといっても
生のままの感情をそのままぶつけているんじゃないんです
表現者は、自分の感情の料理の仕方みたいなものを
ちゃんと判っていないといけない

それに詩人じゃなくて、歌詞を書いてる訳だから
純粋な詩と、ロックの歌詞では、やっぱり違います

ジム・モリソンやミック・ジャガーが書く歌詞は
狂気と言われながら、ものすごくリアリティがあったし
何より、あくまでもロックのアンサンブルに支えられた中で世界を表現している

言葉だけじゃなくて、メロディに乗っかることで、ものすごく響いて来る
メロディとかリズムとかと不可分なんですね」とか

「ロックの詩人は、言葉だけで成立するものじゃなくて
メロディが必要なんです」という部分には
さして注意を払わなかったみたいです(汗)

が、岡田英明さんは、例えば「熱があっても39度 首ったけ」や
「1メートル君は60センチ とても素敵さ」
「ビンの中の毒のように君は綺麗さ」といった

「唐突でいて妙に引っかかりのある形容の仕方やユニークな言い回し」について

「流れる部分と引っかかる部分のアンバランスさ
それが彼らの緊張感を上手く表現していた

ロックバンドの歌によくあるオーバーな表現
イメージだけの単語を強調して絶叫するような表現よりも
甲斐バンドの語るような表現の方がインパクトを感じられた」と評され

五業昌晶さんは「甲斐バンドの詩の世界は、映像的であると指摘されて来た
確かにその通りで、例えばよく使われる単語

[夜汽車][煙草][舗道][街角][酒場]などは
映画…それも1流ではなく
どこにでもある2流映画の舞台や小道具を連想させる

だが、ひとたび独特のメロディとセクシーなヴォーカルで歌われると
それらの本来は流れてしまいがちなありきたりの言葉が
突如としてリアリティを帯びて来る」と記されてます

…で、我らが(笑)亀和田さんは
「[裏切り][嘘][涙][酒]といった言葉は
ポピュラー・ミュージックの紋切り型の世界を構成する記号である

こうした記号の群れが、聴き手とミュージシャンの思考停止を誘い
甘美な[傷つきやすい青春]を仮構する
しかし、紋切り型の表現は
言ってみれば両義的な存在である

一方では、白々しい空虚な書き割りの世界を作ったりもするが
もう一方では、人々の無意識が共有する記憶を刺激することによって
感情を活性化したりもする

例えば【メモリーグラス】
一度聴けば、すうっと耳に馴染んでしまう素敵なメロディを持つこの曲は
歌謡曲的な方法論をベースに、紋切り型を駆使して出来上がった傑作と言える

我々の意識と身体が記憶しているベーシックな記号を
新たな配列の下に置くことで
[私]の心象風景が鮮やかに描き出されている

【裏切りの街角】のあの印象的なイントロ
そして、いったん耳にすれば二度と記憶が薄れることはなく
ふっと無意識に口ずさんでしまうメロディ

そんな魅力的なメロディの上にすっかり馴染んで乗っかっている言葉
その言葉たちが綴ってゆく切ないストーリー

この曲には、我々の記憶を揺さぶる歌謡曲、フォーク、GS、ロックといった
様々なポピュラー・ミュージックの要素が重層的に込められているのだ

一筋縄では捕らえることの出来ない、このバンドの重層的な性格と
聴き手を挑発してやまない両義性とが端的に見てとれる仕掛けになっている」
…と、紋切り型の言葉をメロディに乗せることの効果を解説されてます

「私的表現と普遍性のバランスというのは
表現の上で一番難しい部分ですよね」と甲斐さん

「ものすごく私的なことを書いたら
それがきちんと普遍性を帯びているかを
客観的に見ることが出来ないといけない

でも、血反吐を吐くほどの思いで表現しようとする人たちは
私的なことを書いていても
多分どこかで普遍性に繋がって行くはずだっていう実感があったんです」

「時代と寝る気はないけど
時代は判っておかないと嫌なんですよね」との言葉には

「2年前の曲を2年前と同じようには歌えない」
「今を歌うんじゃなくて、歌い続けることが大事だと思う」という
錆び付かない「ロックシンガー」を職業になさった方の矜持が感じられます

余談ですが、佐藤英二さんの奥様のブログには驚きましたけど
甲斐バンドの再結成の際に、甲斐さんが

「誰も辞めてなかったことが嬉しい
辞められなかったというのが正しいのかも知れないけどね」と
おっしゃったことを思い出しました

スイッチがオンになって
まだまだ弾き続けたいと思われる日が来ることをお待ちしたいですね
コメント
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