箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

ただじっと聴く~思春期の子どもに対して~

2015年07月21日 12時40分56秒 | 教育・子育てあれこれ


悩みをもつ中学生から、おとなが話を聞くのはけっこう難しいものです。ふつう中学生ぐらいの思春期の子が、たとえ親に対してもスラスラと自分の困りごとや悩みなどを話すことはありません。

でも、様子や表情をみれば、明らかに元気がない、顔つきが明るくない。親としては心配になるのは当然です。そこで「どうしたの?」と聞いても、「別に・・・」としか答えません。このようなとき、親はどのようにわが子と話せばいいのでしょうか。

思春期の子どもは、話したくなると自分から話すので、話すまで待つのがポイントです。

おとなに助けてほしいけれど、自分一人でやりたい。このような矛盾を抱えているのが思春期の子どもの胸の内です。同様に、悩みごとを聞いてほしいけれど、相談はしたくない。
このような相反する気持ちを両方もっています。

こんなとき、なんとかして聞き出そうとして・・・
「どうしたの?」
「なにかあったんだろう」
「だまっていたら、わからんやないか」とやつぎばやに聞き出そうとすると、子どもは開き始めていた扉を閉ざしてしまいます。

悩んでいる子は、責められていると感じ、「自分が悪いの? 困っているのはわたしなのに・・・」と思ってしまうのです。

「なにもないと言ってるやろ」「ほっておいてくれ!」といって、自分の部屋にこもってしまいます。

そこで、おとなは「いつでも聞くよ。話したくなったらいつでもおいで」という態度で構えておくことが大切になります。そうすると、子どもはタイミングをみて、話し始めてくれます。

といって、本人から「あのね。話があるんやけど・・・」とわざわざおとなのところにやってきて、相談してくることはあまりありません。

ですから親子でいっしょにいる時間をもつなど条件づくり・環境づくりは必要です。いっしょにいなければ、話す気持ちになっても、相手が目の前にいないのですから、話のしようがありません。

テレビをいっしょに観ていて、そのドラマについてとりとめのない話をしていたりするうちに、
「わたし、もう学校がイヤや」と突然言い始めます。

このとき、親は全力を傾けてわが子の話を聴きます。「やっと話し出した!」とは感じながらも、子どもが最後まで話し終えるまで意見をはさみません。

子どもが自分の内に溜めていた思いを全部吐き出すことができるまで聴くのです。全部話すことで、子どもの心には安堵感が生まれます。

全部話さないうちに、
「それはこうしたらいい」
「そういう時にはちゃんと自分の意見を言わなければ」
というようなアドバイスを言われても、子どもの聴いてほしいという思いに応えることはできません。

そのようなアドバイスは、現状がダメといっているのと同じだからです。今がダメだから「こうしなさい」が生まれるのです。

昨年ヒットした『アナと雪の女王』の「Let It Go~ありのままで~」の「ありのままでいい」というのは、その子を変えるために「こうすれば」とアドバイスをするのではなく、「今のあなたの悩みをすべて受けとめたよ。いまのあなたでいいからね」という、相手を受容するメッセージなのです。

おとなから「うん、うん」や「あー、そうなの」というつなぎの言葉をはさみながら、ひととおり子どもが話し終えたとき、はじめて「それで、そのときどうしたん?」と続けると、子どもの口は重いかもしれませんが、「それで・・・」と、また話を続けてくれます。

おそらく子どもは「こうしたら」がほしいのではなく、ただ聴いてほしいだけの場合が多いのです。

ですから、おとなができるもっとも大きな支えは、「ただじっと聴くこと」なのです。

そして、話を聴き終えた最後に、おとなは告げるのです。

「そんなたいへんな気持ちでいたんや」
「よー言ってくれた。お母さん(お父さん)は、いつでもおまえの味方やからな」

このような寄り添いの言葉を出すことで、子どもは前を向き、歩いていけます。この言葉はすべてを聴いてわかってくれた人が言うものだからこそ、子どもの心にしっかりと届き、しみ込んでいくのです。