半沢直樹現象とたそがれのアベノミクス
現在テレヴィTBSで「半沢直樹」というドラマが人気を呼んでいる。この人気は政府の経済政策特に消費増税への反対を意味する声なき声ではないのかと私は思う。
消費増税推進への政官財の合唱はまことにすさまじく騒がしい。不快である。明確な論拠を示さないまま小出しにあちこちで意見を言い、なしくずし的に世論を誘導というより諦念にもって行こうとしている。
不愉快な意見の代表が「国際公約」だ。まず消費増税と誰が言ったのか?安倍総理ではない。総理以外の人物がかくも重大な案件について公約なるものを明言すれば、これは明確な越権行為になる。仮に安倍総理が外国向けに明言したのなら、安倍総理は国民の意志を無視ないし軽視したことになる。重要な政策はまず民意に問い、民意を尊重した上で、国民にその旨明示し、しかる後に外国に向けて発言すべきであろう。また仮に総理が外国向けに消費増税と受け取られるような発言をしたとしても、この発言に縛られる必要はない。ただ総理としては体裁が悪いだけである。正式に条約として調印しない限り、発言の履行を外国から強制されるいわれはない。また消費増税を財政均衡と言い換えた発言をし、それを国内向けには消費増税の公約というのなら、これは詐欺虚言である。要するに消費増税の国際公約なる言い訳は、どこから考えてもおかしく論拠が無いのである。なしくずし的に世論を誘導し民意に諦念(あきらめ)を強いる最も汚いたちの悪いやり口だ。みんなで適宜口裏を合わせて曖昧な雰囲気を作り、政策を決める。昔の汚い悪い自民党に帰ったということだ。アベノミクスが空前の人気を博したのは、汚くて悪い自民党から決別し明確にして大胆な政策で景気回復を行なおうとする姿勢を、国民の多くがそこに感じたからなのだ。自民党政権ができて時間が経つほど、つまり政権の心地よさに安住するほど、消費増税という意見が増してきているようだ。
数日前の新聞に日銀の副総裁がインフレのメリットについて以下のようなことを言っていた。インフレになれば物価は上がる。そうなれば預金や国債に投資していた人達は、より利益を保証される株式に投資を移す。株価は上がる。その分株式運営での利益は増え、その利益は消費にまわり、消費が増えて好景気になる。だから金融政策だけで景気は回復する。まあざっとこんな理屈だ。
しかしこの理屈には諸々の矛盾錯誤がある。まず株式投資が有利となればしばしは株価が上がるだろう。しかしそうなれば国債の利率も預金の金利もあがる。投資効果は均等になることをめざす。それが市場というものだ。加えて株価の動向はまことに複雑だ。
またこの理屈は米国では若干妥当するかもしれないが、日本では通用しない。中産階級以下の日本国民は預金こそすれ、株式への投機をほとんどしない。だからこの理屈が妥当だとしても潤うのは一部の富裕階層であり、結果として格差は拡大する。
そもそもインフレをどうやって作るのか?上の理屈にはインフレを誘導する政策が欠けている。まさか消費増税をインフレの理由に持ってくるのではあるまいな。増税では企業は儲からないのだから株式に投資する理由はありえない。
私はマイルドなインフレとそれに併行する賃金の上昇がありうべき妥当な経済だと思っている。金融の異次元緩和で通貨の流通量は増えた。しかし金融政策だけでは実体経済は改善しない。公共投資を介して需要を作り増やし、雇用を増加させねば、実体経済は改善しない。念のために言うと、現在の技術レベルでは医療も教育も介護も、つまり今まで福祉あるいは単なる消費行為、または所得移転とされてきた諸分野も製造業に結びつくのだ。日本人は内需の意味を知らなさ過ぎる。世界同時不況がいわれる現在、内需増大は最大の安全保障政策なのだ。そして景気回復の最も信頼できる指標は雇用の改善つまり賃金上昇なのだ。せめて賃金が5%くらい上がるまでは景気対策は慎重であるべきではないのか。日銀副総裁の発言は、金融政策だけで経済回復は充分、実体経済に政府が踏み込むことは必要ない、消費増税をしてもいい、という世論誘導だ。この程度の人物が日本の金融政策のトップに居るのだ。
「半沢直樹」に帰る。このドラマは正義感に燃える銀行員が銀行内部の不正、企業育成という本来の任務を忘れた銀行のあり方に叛旗を翻して戦う姿を描いている。45%という空前絶後の視聴率を上げ(成人の3人に2人が見ているということ)、放映継続の要求が押し寄せ、TV局のファックスが故障しているそうだ。このドラマでファンが一番好む場面は、堺正人演じる半沢直樹と片岡愛之助演じる金融庁の調査官の対決だ。ここでこの調査官はゲイ趣味のキザで権力を振り回すいやらしい姿で戯画化されている。金融庁は財務省の親戚筋になる。現在消費増税に一番抵抗しているのは、税収増加に比例して自己の権限(予算配分権)が増大する財務官僚だ。「半沢直樹」の中の調査官はこういう大きな権限を振るい威張りちらす財務官僚を表している。なおドラマの半沢直樹は、銀行に、従ってその背後で指導する財務官僚に、父親の会社が潰されたという過去をもっているようだ。財務官僚がいかに怖く不快であるかわ税務調査に入られたものなら誰でも知っていることだ。企業もメディアもジャ-ナリストも政治家も財務官僚にはかなわない。申告ミスや不正経理などはなんとでも理由をつけられ、見解の違い一つで少なからざる金がもってゆかれる。この不快な財務官僚を片岡愛之助が見事に演じ、それを堺雅人の半沢直樹がやっつける。痛快だろう。半沢現象は消費増税反対への民衆の怨念の大合唱だ。
安倍総理は法人税減税、投資減税、賃上げと減税の交換、政財労三者による賃金協定など、いろいろ画策されている。それは総理のあがきかも知れないし、また自民党ぐるみの言い訳演出かもしれない。しかし消費増税という一線を越えてしまえば諸々の対策も空しい。一度増税してしまえば、減税や賃金協定などの約束も無視されるだろう。一度犯されたらあとはどんな男とでも寝る、というようなものだ。消費増税阻止は心ある政治家にとっては貞操帯のようなものなのだ。悲しい皮肉だが1年後の内閣支持率が楽しみだ。多分30%を割るだろう。不況は20年、微光薄明かりは1年弱。景気回復にはもっと慎重を期すべきだろうな。民意に叛く消費増税を強行する政府与党は1年後国民による倍返しを覚悟しておけ。世論調査では60%以上の人達が消費増税には慎重姿勢なのだ。
以下最近の記事の一部を列挙する。
9月25日 日経 日本リサ-チ総合研究所によると、くらしが悪くなるだろう、という意見が5.3%増加
9月25日 J-CAST 金融庁の銀行監査方針転換、半沢直樹にみるようないたぶりはしないと、ということは今までしていたということだ
9月26日 沈まぬ100円ショップ、賃金増えず需要伸びず
9月26日 介護保険料20%上げ、わざわざこの時期に、橋本内閣の経験を忘れた のか
9月26日 朝日 大阪の中小企業の60%が増税で経営悪化と
現在テレヴィTBSで「半沢直樹」というドラマが人気を呼んでいる。この人気は政府の経済政策特に消費増税への反対を意味する声なき声ではないのかと私は思う。
消費増税推進への政官財の合唱はまことにすさまじく騒がしい。不快である。明確な論拠を示さないまま小出しにあちこちで意見を言い、なしくずし的に世論を誘導というより諦念にもって行こうとしている。
不愉快な意見の代表が「国際公約」だ。まず消費増税と誰が言ったのか?安倍総理ではない。総理以外の人物がかくも重大な案件について公約なるものを明言すれば、これは明確な越権行為になる。仮に安倍総理が外国向けに明言したのなら、安倍総理は国民の意志を無視ないし軽視したことになる。重要な政策はまず民意に問い、民意を尊重した上で、国民にその旨明示し、しかる後に外国に向けて発言すべきであろう。また仮に総理が外国向けに消費増税と受け取られるような発言をしたとしても、この発言に縛られる必要はない。ただ総理としては体裁が悪いだけである。正式に条約として調印しない限り、発言の履行を外国から強制されるいわれはない。また消費増税を財政均衡と言い換えた発言をし、それを国内向けには消費増税の公約というのなら、これは詐欺虚言である。要するに消費増税の国際公約なる言い訳は、どこから考えてもおかしく論拠が無いのである。なしくずし的に世論を誘導し民意に諦念(あきらめ)を強いる最も汚いたちの悪いやり口だ。みんなで適宜口裏を合わせて曖昧な雰囲気を作り、政策を決める。昔の汚い悪い自民党に帰ったということだ。アベノミクスが空前の人気を博したのは、汚くて悪い自民党から決別し明確にして大胆な政策で景気回復を行なおうとする姿勢を、国民の多くがそこに感じたからなのだ。自民党政権ができて時間が経つほど、つまり政権の心地よさに安住するほど、消費増税という意見が増してきているようだ。
数日前の新聞に日銀の副総裁がインフレのメリットについて以下のようなことを言っていた。インフレになれば物価は上がる。そうなれば預金や国債に投資していた人達は、より利益を保証される株式に投資を移す。株価は上がる。その分株式運営での利益は増え、その利益は消費にまわり、消費が増えて好景気になる。だから金融政策だけで景気は回復する。まあざっとこんな理屈だ。
しかしこの理屈には諸々の矛盾錯誤がある。まず株式投資が有利となればしばしは株価が上がるだろう。しかしそうなれば国債の利率も預金の金利もあがる。投資効果は均等になることをめざす。それが市場というものだ。加えて株価の動向はまことに複雑だ。
またこの理屈は米国では若干妥当するかもしれないが、日本では通用しない。中産階級以下の日本国民は預金こそすれ、株式への投機をほとんどしない。だからこの理屈が妥当だとしても潤うのは一部の富裕階層であり、結果として格差は拡大する。
そもそもインフレをどうやって作るのか?上の理屈にはインフレを誘導する政策が欠けている。まさか消費増税をインフレの理由に持ってくるのではあるまいな。増税では企業は儲からないのだから株式に投資する理由はありえない。
私はマイルドなインフレとそれに併行する賃金の上昇がありうべき妥当な経済だと思っている。金融の異次元緩和で通貨の流通量は増えた。しかし金融政策だけでは実体経済は改善しない。公共投資を介して需要を作り増やし、雇用を増加させねば、実体経済は改善しない。念のために言うと、現在の技術レベルでは医療も教育も介護も、つまり今まで福祉あるいは単なる消費行為、または所得移転とされてきた諸分野も製造業に結びつくのだ。日本人は内需の意味を知らなさ過ぎる。世界同時不況がいわれる現在、内需増大は最大の安全保障政策なのだ。そして景気回復の最も信頼できる指標は雇用の改善つまり賃金上昇なのだ。せめて賃金が5%くらい上がるまでは景気対策は慎重であるべきではないのか。日銀副総裁の発言は、金融政策だけで経済回復は充分、実体経済に政府が踏み込むことは必要ない、消費増税をしてもいい、という世論誘導だ。この程度の人物が日本の金融政策のトップに居るのだ。
「半沢直樹」に帰る。このドラマは正義感に燃える銀行員が銀行内部の不正、企業育成という本来の任務を忘れた銀行のあり方に叛旗を翻して戦う姿を描いている。45%という空前絶後の視聴率を上げ(成人の3人に2人が見ているということ)、放映継続の要求が押し寄せ、TV局のファックスが故障しているそうだ。このドラマでファンが一番好む場面は、堺正人演じる半沢直樹と片岡愛之助演じる金融庁の調査官の対決だ。ここでこの調査官はゲイ趣味のキザで権力を振り回すいやらしい姿で戯画化されている。金融庁は財務省の親戚筋になる。現在消費増税に一番抵抗しているのは、税収増加に比例して自己の権限(予算配分権)が増大する財務官僚だ。「半沢直樹」の中の調査官はこういう大きな権限を振るい威張りちらす財務官僚を表している。なおドラマの半沢直樹は、銀行に、従ってその背後で指導する財務官僚に、父親の会社が潰されたという過去をもっているようだ。財務官僚がいかに怖く不快であるかわ税務調査に入られたものなら誰でも知っていることだ。企業もメディアもジャ-ナリストも政治家も財務官僚にはかなわない。申告ミスや不正経理などはなんとでも理由をつけられ、見解の違い一つで少なからざる金がもってゆかれる。この不快な財務官僚を片岡愛之助が見事に演じ、それを堺雅人の半沢直樹がやっつける。痛快だろう。半沢現象は消費増税反対への民衆の怨念の大合唱だ。
安倍総理は法人税減税、投資減税、賃上げと減税の交換、政財労三者による賃金協定など、いろいろ画策されている。それは総理のあがきかも知れないし、また自民党ぐるみの言い訳演出かもしれない。しかし消費増税という一線を越えてしまえば諸々の対策も空しい。一度増税してしまえば、減税や賃金協定などの約束も無視されるだろう。一度犯されたらあとはどんな男とでも寝る、というようなものだ。消費増税阻止は心ある政治家にとっては貞操帯のようなものなのだ。悲しい皮肉だが1年後の内閣支持率が楽しみだ。多分30%を割るだろう。不況は20年、微光薄明かりは1年弱。景気回復にはもっと慎重を期すべきだろうな。民意に叛く消費増税を強行する政府与党は1年後国民による倍返しを覚悟しておけ。世論調査では60%以上の人達が消費増税には慎重姿勢なのだ。
以下最近の記事の一部を列挙する。
9月25日 日経 日本リサ-チ総合研究所によると、くらしが悪くなるだろう、という意見が5.3%増加
9月25日 J-CAST 金融庁の銀行監査方針転換、半沢直樹にみるようないたぶりはしないと、ということは今までしていたということだ
9月26日 沈まぬ100円ショップ、賃金増えず需要伸びず
9月26日 介護保険料20%上げ、わざわざこの時期に、橋本内閣の経験を忘れた のか
9月26日 朝日 大阪の中小企業の60%が増税で経営悪化と