経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

   日本における人口減少に関して

2020-11-17 14:46:03 | Weblog
日本における人口減少に関して

 産経新聞の日曜コラムに松浦論説委員が時々日本の人口減少を論じ警鐘をならしておられる。言われることはごもっともだが、残念ながらその対策への提言は少ない。ここで私なりの提言をしてみる。
 私が小中学生であったころ、つまり60-70年前は人口過多で産児制限が盛んに喧伝されていた。当然食料は足らず、まずいインディカ種の米をアセアン諸国、特にタイか輸入有していた。米は配給制であった。学生食堂には米券を持って並んだものだ。それが1960年代前半だった。だから人が多すぎるのかと思っていた。それが1970年代だったかなあ、人口減少が一部の識者で言われ始めた。要点は人口増加率の速度が落ちてきたらしい。人口そのものは増加しているのである。物理学でいえば飛距離の微分の微分、つまり加速度が落ちてきたということだ。しかし一番目に触れる数値つまり人口数は増加していった。だから私も含めて人口学者を除く多くの人は格別の関心は持たなかった。確か2000年代の中半頃に人口は最大になり(1億2600万人くらいかな)2010年代になって人口は減少し始めた。新聞などにその種の記事が取り上げ始められたのはこのころからである。世間の関心も高まった。日常風景としては町中老人ばかりになった。私の従妹が住む岡山県のある都市のある町では10年前60歳以下の人はいなくなった、と言う。
 人口減少で一番怖いのは内需の減少による経済の衰退である。もっとも人口が減れば減るで対策はあり得るのだが。
 私の知る範囲では人口は、鎌倉時代初期1000万人、江戸時代初期2000万人、明治維新時3000万人、太平洋戦争開戦直前7000万人、1955年8000万人、2000年1億2600万人になる。戦国時代の人口増加は農業生産の増大に依る。江戸時代は農業に加えて農村手工業が発展した。注目すべきは明治維新後の75年間の増加だ。人口は約2・7倍になっている。高度成長期(及びそれに続く安定成長期)の50年間の増加率は0・5倍だ。この両期間に発展した主力産業を取り上げてみよう。前者では繊維、鉄道、船舶が中心であり、後者では自動車、家電、精密機械(パソコンを含む)そして社会福祉である。道路建設つまり土木、住宅建設そして鉄鋼は両時期に同程度の比重を占めている。後者では軍需産業の比重が少ない。こう考えるとでかくて重厚長大な物を作る方が人口の増加に資するのかもしれない。
また前者の主力製品は生活必需品であり、後者のそれはもちろんあった方が良いが、あえて言えば奢侈品である。
 明治初期の米の反当り(0・1ヘクタ-ル当たり)1・5石(240㎏)であり1955年(昭和30年)時点では3石(現在では4石強)である。2倍の生産増大と見ていい。そしてその時点から日本人は米を喰わなくなった。通常私の子供の頃は一人1石消費が基準であったが現在ではその60%である。米作一般に農業の衰退も人口減少に寄与しているようである。
 対策としては中短期と長期の二つがある。重厚な物の生産が必要なら家屋をどんどん作ればいい。特に若者、若い夫婦用の家を造るべきである。それらをまとめて新しい街を作る。マンションなどの耐用年数を縮小する。工場の機械設備なども同様だ。自動車などはいずれ不要になるだろうから公共の交通機関をもっと重視する。
長期的には地方の振興、農業の復活が第一だ。その為には人口を地方に移転させなければならない。老人の介護施設は地方に移動させるべきだ。これだけで直近の農業需要が増える。
特に強調するべきことは子供を産んだ若い夫婦には児童手当を与える事だ。それも児童数に比例する以上の割合で給付する。一人までは1、二人で1・5、三人以上産めば3-4つまり一人産んだ場合の給付の3倍以上にする。
 逆に独身者への課税は重くする。特に結婚していて子供の無い場合の課税は一段と重くする。育児とは経済学的に見れば人的資本の増大であり、重要な生産行為だ。
 参考までに言えば夫婦共稼ぎの場合は課税優遇はしない。また夫婦のどちらかが(妻の場合が相応しいが)退職すれば労働人口は減る。それはロボットなどの機械で補えばいい。
 現在一部の人間が、多様なる性とか言っている。挙句の果て同性婚を容認しろなどと言っている。それに乗せられて一部の短慮な市長たち(例えば兵庫県宝塚市)に容認の動きがみられる。馬鹿々々しい限りだ。人口減少に拍車をかける。フランスがいい例だ。今回のフランスではコロナで大騒ぎになった。日本の比ではない。この国では自由婚(別に役所に届けなくても婚姻と認められる制度)らしい。コロナの災禍に際してこの国の民衆は自己主張が強く、他者との協調性はなく(つまりわがままで)、当然の注意事項を護らず、好き勝手に振る舞っている。再度のロックダウンや医療崩壊は近いと言う。婚姻制度があやふやだと民度・規律も乱れる。
 ついでだから現在はやりのテレワ-クについて寸言する。必要ならやればいいが、一定数の人間が集まってこそ仕事は成立する。集合するそして対面で会話する事は共同体維持に必須なのだ。仕事には集まらないとできない事が多い。特にいわゆる日本的経営にあってはこの事は必要だ。テレワ-クでは創造的会話(イノヴェ-ションのきっかけとなる会話)ができるのか。加えて人間が家に閉じこもればそれだけで弊害が起こる。うつ病や引きこもりを助長するだろう。
 また人間が家に閉じこもれば公共の交通機関は消滅するだろう。個人は隔離された狭い地域に閉じ込められてしまう。コロナ災禍が終わったらその点は慎重に考えてみるべきだ。
                             2020-11-17

「君民令和、美しい国日本の歴史」文芸社刊行