経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

外交のわな

2013-11-11 02:27:18 | Weblog
   外交の罠
 
 2013年10月16日の産経新聞朝刊によると河野談話の基礎になった聞き取り調査の内容は杜撰なものだった。当時(約20年前)日本政府は韓国に調査員を派遣して、当然のことであるが通訳つきでいわゆる慰安婦なる女性達から「強制連行」について聞き取り調査を行なった。内容は部外秘であったが産経新聞がそれを手に入れ綿密な文献検討を行なった。ここではその検討の結果当時の聞き取り調査の内容がすこぶる杜撰でいい加減なものだったとのみ言っておく。詳細は産経新聞を見ていただきたい。問題はこの調査を当時の政府がどう取り扱ったかということである。宮沢総理、河野官房長官、石原官房副長官は協議して、「強制連行」を裏付けるだけの資料ではないが、「強制連行」を認めた形にすれば韓国政府と韓国人の気持ちがおさまるだろう、と予想して「強制連行」の存在を容認するような河野談話を出してしまったということだ。多分その裏には韓国政府の暗黙の示唆要望があったのであろうと思われる。外交の初歩をも知らない重大ミスである。結果は反日意識という火に油を注ぐ結果になった。ダメなものはダメ、ナイものはナイとなぜはっきり言えなかったのか?
 ところで日本政府は100年前にも同様のミスを犯し以後の日本の立場を著しく悪化させるようなことをしている。いわゆる対華21か条なるものである。時の大隈政権は中華民国大総統である袁世凱に大略以下の内容の承認を突きつけたと言われている。
 1 山東省におけるドイツ権益の継承
 2 旅順大連及び満州鉄道沿線の土地租借の99年延長、満州各地での開発権の尊重
 3 中国への政財軍への日本人顧問の採用
この内1と2は当時の列強が当然の事として行っていた常識的行為である。3について日本政府は結局取り下げている。
 ということなのであるが問題はこの内容が強要か否かということになる。今まで我々は「突きつけた、強要した」と習ってきた。日本史のほぼすべての本にはそう書いてある。しかし倉山満氏の「うそだらけの日中近現代史」によれば、実際は強要ではなく「要望」だったとある。では何ゆえに「強要」とされたかというと、中国政府の方がそう書いてくれれば中国の民衆が納得しやすいから「最後通牒による強要」と書いてくれと言われ、日本政府はそれに応じたといいうことだ。私も目を疑ったが倉山氏が著書でそう明言されている以上疑うわけにはいくまい。そして公表したとたん袁世凱は態度を一変させて、日本政府が最後通牒を突きつけて強要したと言い出した。以後この「強要」という「事実」は欧米はおろか日本国内でも定着した。中国特にコミンテルン指揮下の中国共産党はこの定着した「事実」を利用し、多くの反日運動(日貨排斥など)のネタとして動乱を引き起こした。そして日本はずるずると長期戦争に引きずり込まれてゆく。
 歴史は繰り返すというのか、「朝鮮人慰安婦」の問題と「対華21か条」の問題は、問題の性質としては同工異曲である。相手の反応を勝手に憶測したり、相手の立場に同調したりして、こちらの意図を曲げた発言をしている点では全く同じだ。どちらも外交術では初歩的ミスになる。河野談話に関する産経新聞の記事を読んで、つくづく歴史は繰り返すものだと思った。日本人としては銘記すべきことだろう。以下この主題に関する若干の付言を行なう。
 河野談話の発端は朝日新聞の報道にある。韓国人女性を妻とする朝日新聞の記者が妻の母親から聞いた事実として、朝鮮人慰安婦の強制連行を報じた。これに動揺した宮沢政権が河野談話で韓国世論をなだめようとしたのだ。現在多くの人達の努力により「強制連行」の事実は否定されている。「強制連行」を裏付けるいかなる証拠も存在しない。また朝日新聞はこのことに関して一切の釈明をしていない。
 韓国政府が過去にこだわらないと明言した事は「慰安婦」事件以来二度ある。一つは金大中政権。財政破綻でIMFの管理下にあった韓国政府が巨額の融資を日本に頼んだ時。もう一つは前大統領李氏の就任時である。そして約束はともに守られなかった。
 中国人韓国人は日本人と顔形は似ているが発想法や倫理観は全く違うことは銘記しておこう。公私の区別がつきにくい民族だ。公言した後で、実は、と秘密協定のようなものを求める。まあそれに安易に応じた日本政府も甘いと言うより似たところがあると言われても仕方がないが。
 対華21か条で日本人官吏の採用を云々という内容がある。現在では非常識ということになるが、当時としてはあたり前であった。税関長は外国人が多かった。中国人では汚職が多く中国政府自身が困っていたのだ。汚職腐敗ということは現在の中国政府を見れば思い半ばに過ぎるだろう。中国軍の軍隊には顧問として日本人以下の外国人がたくさんいた。また日本政府は中国で内乱動乱などがあればすぐ日本軍を派遣した。現在では侵略とされるが、当時の中国に滞在している日本人(外国人一般)は軍隊の保護がなければ生命財産が保証されなかったのだ。通州事件では200名以上の日本人が虐殺されている。中国人の犯罪のむごさは現在でも同じだ。昨年起こった反日暴動を見たら事情は納得できるはずだ。
 現在日本と中韓の関係はよくない。そういう中で中韓二国はいろいろな仕掛けをしてくる。その振舞いを見ていると、100年-80年前にも同様な事があったのだなあと気づかされる。我々は戦後の東京裁判などで日本人性悪論を刷り込まれ、多くの事実を隠蔽されてきた。この60年以上に渡る歴史の歪曲を正してゆこう。中韓が良き反面教師になってくれる。彼らが虚偽を唱えれば唱えるほど、我々には真実が見えてくる。
 繰り返す、と言えば似たような話がある。沖縄で米軍と戦闘中ある村で、日本軍将校が村民に自決を強要したとか、大江健三郎氏が彼の著書で書いている。全く事実無根であると、村民自身も当事者と目される軍人も主張している。どうも事実は、自決にすれば遺族年金がもらえるから隊長の名誉を犠牲にしてのことだったらしい。(「偉人リンか-ンは奴隷好き 高山正之」P47)それに大江健三郎氏が食いついたということだ。大江氏はなうての左翼そして日本嫌いだ。20年前私は朝日か読売で彼が、日本人は前大戦で未来永劫に東アジアの人々に顔を上げられないようなひどい事をしてきた、と述べているのを見て仰天してしまった。たった数年間の占領をした日本が歴史における破廉恥な罪人なら、100年以上植民地を搾取してきた欧米の連中はどうなるのかと、思った。私が日本の現代史に関心を持ち、教えられたことに疑問を抱き始めたのは、大江氏の言葉がきっかけだ。彼は私にとって良き反面教師であった。同種の人間はまだいるようだ。歌手の加藤登紀子氏は、日本という言葉を浮かべるたびに吐き気を催すとか、おっしゃったそうだ。私には御勝手にとしか言いようがない。できれば日本以外の地で生活をして頂きたい。