経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

郵政逆民営化への反論

2009-10-29 00:51:50 | Weblog
  郵政逆民営化への反論

 民主党政権は、小泉政権において決定され現在進行中の郵政民営化を逆行させて、再び国営にする由です。私はこの方針に大反対です。以下その根拠を述べさせていただきます。
(1)4年前の総選挙は、郵政民営化を推進する小泉政権に対して、民主党と自民党の一部が反対し、参院で否決され、解散になった選挙でした。この選挙は、郵政民営化という明確な政策上の焦点、を巡って行われました。結果は周知のように小泉純一郎氏の率いる自民党の大勝になりました。国民は、郵政民営化に明確な賛意を表明したわけです。それから4年経ち、民営化は実行されつつあります。正否の結果は未だ不明です。一度国民が明確に意思表示した政策を、簡単に変えるのは、国民への裏切りないし国民の意見の無視ではないでしょうか。これでは選挙の度ごとに、政権党の意志で政策は容易に変更され、政策の首尾一貫性は失われてしまいます。
(2)郵政民営化がなぜ必要なのでしょうか?郵便業務、郵便貯金と簡易保険を全体で統括すればものすごい巨大資本になります。多分日本の全金融資産の40%を超えるでしょう。国営にすればそれは国家の資産になります。これは民業を、つまり民間銀行の経営を圧迫します。そもそも1992年頃から始まる平成不況は、わが国の金融行政が大銀行を中心とする間接金融であり、欧米で発達しつつあった直接金融の軽快さに太刀打ちできず、不良債権を山ほど抱え、銀行自身が行きづまり破産寸前になったから、金融行政の改革が叫ばれ実行されてきたわけです。郵政民営化はかかる政策の仕上げであり象徴です。郵政を国営化してはいけません。資産を民間の金融機関になるべく自由に運営させなければなりません。
 1970年代に通貨はフロ-ト制になりました。換言すれば通貨に国境はなくなったわけです。併行して預金と債権と保険と株式の境界も曖昧になりました。どちらからでも他方に移行できます。これを金融の自由化と言います。単純に言えば預貯金は簡単に株式に変えられ、ロウリスク・ロウリタ-ンの金融資産はハイリスク・ハイリタ-ンの資産に換えやすくなります。加えて外国の資金が容易に流入しますから、わが国内の銀行、企業、そして個人の資産はその影響化に常に晒されます。そしてここが肝心なところですが、株式資本は市場に一定の需要と人気があれば容易に作り上げる事ができるということです。(直接金融)何かの事業をしたい、当たりそうだ、人気がある、株を発行する、資金ができた、経営OKとなります。かならずしも発行した株式のすべてが換金されなくても、空の売買だけで資金ができたことにしてもいいのです。株式そのものが通貨になるのです。事業が成功しそうなら、上がった株を担保に新規の事業の融資を受ける、あるいは株を発行する事も可能です。つまり株式をうまく運用すれば、架空めいていますが、巨大な資本を作りあげる事ができます。こういう状況ではこつこつ貯金して、それを銀行に預け、銀行が一定の企業の営業成績を厳密に調査して融資し、以後の経営も監視し保護する、という間接金融では太刀打ちできません。平成不況の一因は日本の遅れた金融制度が欧米のそれについてゆけなくなったことにあります。ちなみに1998年の外為法改正の主要項目は以下の通りです。改正の意図するところは、資金運用の垣根を取り払って、預貯金、債権、保険、株式間の運用を極力軽快にする事です。
 適格年金の資金運用規制の撤廃 為銀主義(銀行中心主義)の撤廃、都銀と長短銀の長短分離による商品規制の撤廃 損保の保険料率の自由化 金融持株制度の導入 銀行証券の業態別子会社の業務範囲の見直し 有価証券取引にかかわる手数料の自由化 時価会計の導入 証券投資信託の運用気鋭撤廃
経済自由主義が行きすぎ否かはともかくとして、こういう金融自由化の趨勢に背く事はできません。郵政という巨大な金融資産がこのような趨勢から孤立して存在する事は、非常に危険です。固定された資金の投与による安定した企業経営は過去の夢です。自由化された金融空間の中で企業は生きてゆかざるをえません。かって日本は大和や武蔵という巨艦を持っていました。なんの役にもたたず、アメリカの艦載機の餌食になりました。銀行中心の間接金融は大和や武蔵です。株式資本は飛行機です。私にはそう思えます。
(3)郵政を国営にする事は、私のかんぐりかもしれませんが、政権にとってとても美味しいお話のはずです。この巨大な資金を政府運用部(でしたか?)なる機関を通して政府の意のままにできるからです。いわば闇の資金になりえます。民主党政権は埋蔵金を発掘すると言ったはずですが。また民主党は官僚支配を否定するはずです。郵政の国営化は再び膨大な郵政官僚を養う事にならないのでしょうか?

(追記)
過日岡田外相は、国会における、天皇陛下のお言葉、に対して注文をつけられました。岡田さん、ご自分を何様と思っておられるのですか。こういう場合、陛下の御言葉がある、というだけで充分なのです。そして神聖なのです。天皇は自らの署名を「御名御璽」とされます。この意味お解かりなのですか?岡田さん、貴方は心のどこかで天皇制廃止を希望されているのですか。不注意なのか無思慮なのか、いずれにせよ軽率な発言に抗議します。