STAP細胞事件の背景として笹井芳樹と高橋政代(理研)の恋愛問題があったという趣旨の記事を週刊文春が公表した[1]。具体的には
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舞台は1980年代中頃、京都大学医学部のキャンパス。そこに一人のマドンナを巡り、火花を散らす男子学生二人がいたという。マドンナとは現在、理研CDBで網膜再生医療研究開発プロジェクトリーダーを務める高橋政代氏(52)である。
(中略)
男子学生二人とは、笹井氏と同級生の高橋淳氏(現、京都大学iPS細胞研究所教授・52)だ。
(中略)
二人は恋敵だったという。「笹井さんは学生時代、政代さんに告白してフラれているのです。政代さんが選んだのは淳さん。2人は卒業後すぐに結婚しました。」(京大医学部関係者)
(中略)
「ES細胞にこだわり続ける笹井さんには、山中さんへの対抗意識もあったのでしょう。しかし、そのもっと奥には青春時代のほろ苦い傷もあったのです」(前出・京大医学部関係者)
〇六年、政代氏が京大から理研CDBに移ってきた。「かつて思慕していた女性が同じ職場で『山中さんのiPS細胞はすごい』と口にしながら、同じ網膜の研究を続けている。恋敵だった高橋淳氏も、iPS細胞で多額の研究費を得ている。笹井さんのプライドはズタズタに傷ついていたのかもしれません。」(同前)
そんな失意の笹井氏に、「先生!もっとすごい細胞があります!」と声をかけてきた女性こそ、ヴィヴィアン・ウエストウッドのスカートをひらつかせた、当時二十九歳小保方氏だったのだ。
([1]より)
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笹井が高橋政代に告白してふられたとか恋愛問題があったという話は高橋が否定した。
高橋政代のツイート.
文春は不確かな根拠に基づいて報道したのではないか。[1]は過激な記事でタイトルが"小保方晴子さんと理研上司の「失楽園」"、笹井と小保方が不倫関係にあるかのような文章を公表した。リンク先の(11)で言及したように、笹井が小保方を特別扱いしていたのは確かだと思うが、不倫は小保方も笹井も完全否定したし、現時点でも有力な根拠は全くない。
高橋政代はiPS細胞を使った世界初の手術で報じられ、理研の看板研究者。笹井や小保方と同じ再生医療の研究で、笹井と同期で文春によれば高橋は若い時はかなりの美人(これは本当だと思う。)。同期の高橋淳と結婚した事など、いろいろ面白い話を作れそうな要素を持っていたので文春に利用されたのかもしれない。私はSTAP事件以前から高橋政代を知っていたが、なぜSTAP事件の関係で高橋政代が週刊誌で報じられるのか疑問を持った。ほとんど関係ないと思う。しかし文春は面白いネタとして使ったのだろう。
笹井がiPS細胞研究に対抗意識を持っていたのは確かで、そのためにSTAPの成果を派手に公表したというのは確かだと思う。しかし、「失楽園」や「乱倫な研究室」の記事は半分以上創作に近いかもしれない。これらの記事は過激で当事者が読んだから非常に具合が悪くなるだろう。売れるような面白いストーリーになるように根拠のある事ない事を都合よく構成して過激な記事を公表して世間が騒いでしまった。
文春は発行部数の一番多い週刊誌の一つ。影響力が大きく報じられれば本当だと思う人がたくさんいるかもしれない。週刊誌だから信憑性が低いと思う人たちもたくさんいると思うが、中日新聞が「笹井氏は小保方氏を大舞台に押し上げようと奮闘。会見に備え、理研広報チームと笹井氏、小保方氏が1カ月前からピンクや黄色の実験室を準備し、かっぽう着のアイデアも思いついた。[2]」と割烹着等を成果の売り込みのために特別に用意させたものだったと報じたのは、全国紙に匹敵する中日新聞が報じたのだから信じた人が多かったかもしれない。しかしこれは誤報という指摘があり、ピンクや黄色の壁紙が演出のために準備されたのかを検証したサイトも存在する。中日新聞は明確な訂正記事を出していない。
私は文春などの過激な報道を危惧する記事を執筆したが、ほとんど効果がなかった。これらの報道は半分以上創作に近い過激なもので、扱う内容も不倫や恋愛問題、小保方の妄想癖など研究の問題とは直接関係ないような事に焦点を当てていたように思う。研究の問題を扱っても難しくて読者がわからないし関心がないため売れないので、こういう方向の記事になったのかもしれない。理研が研究成果だけでなく小保方晴子の若さ、ルックス、割烹着、ピンク、黄色の実験室、ムーミン、おしゃれさ、女子力などを宣伝したのと同じ理由かもしれない。STAP発表直後はそれらを材料に小保方晴子をリケジョのスターとして報道し、不正が濃厚になったらそれらを材料に過激なバッシング報道をした。マスコミにとってそれらが都合のいい材料だったに違いない。
それらの報道後に笹井芳樹は追い詰められ非常に不幸な結末を迎えることになった[3]。笹井は「マスコミなどからの不当なバッシング、理研や研究室への責任から疲れ切ってしまった」との趣旨の記述を残したという[3]。
私は自分のした事が人の生命が失われる事に影響を与えてしまってショックだった。
今日で小保方晴子によるSTAP細胞検証が終了する。笹井は小保方晴子に「絶対、STAP細胞を再現してください」という言葉を残したという[3]。再現できなかったら非常に悲しく罪深いことだ。
参考
[1]週刊文春 2014年4月17日号 p22~29
[2]中日新聞 2014.3.15
[3]毎日新聞 2014.8.12