『京都大学大学院薬学研究科の元男性教授が公的研究費を流用したとされる問題で、平野博文文部科学相は3日、閣議後の記者会見で、元教授が昨年8月以降の大学の調査に対し「(業者への)預け金やプール金はない」と回答していたことを明らかにした。
物品や機材が納入されたように装って業者に支払代金名目で現金をプールする「預け金」が全国で発覚したことを受け、文科省は昨年8月、全国の大学や研究機関に調査を指示していたが、京大は「不正経理はない」と報告していた。平野文科相は「(大学の)調査で分からなかったものが出てきた。しっかりと調査ができるような方策を検討しなければいけない」と話した。[1]』
元男性教授というのは端的にいって辻本豪三のこと。実際は預け金はあったのに嘘の回答をした。それを真に受けて不正経理なしと報告した京大は杜撰な調査をしたと言われても仕方ない。この件に関しては全国的に不正経理の調査をやった割には不正経理の額が少なく、研究機関にとって都合が悪い調査なのでいい加減にやったのではないかと述べた[2]。きっとなあなあな調査をやったのだろう。京大の杜撰な調査が浮き彫りになった。
この事件は東京地検特捜部の捜査を受けており、辻本は業務上横領罪の疑いもある。読売新聞によれば辻本が捻出した預け金の管理先だった医療機器販売会社(東京都世田谷区)が、辻本の京大着任後に京都オフィスを新設、京大から2億円超の物品調達を受注していたという[4]。医療機器販売会社(東京都世田谷区)というのは端的にいって(株)メド城取(東京都世田谷区赤堤3-3-4、代表:木口啓司)のこと[5]。大規模な癒着があったのではないかと疑い特捜が動いたのだろう[6]。[3]で述べたが、特捜が扱うのは政治家の汚職がらみか大規模な経済事件が多いので、たぶんこの事件もそうなんだろう。
私はこういう大学と企業の癒着も問題だと思うが、研究機関の不正に対する自浄能力のなさやあまりの消極さを絶対に改善すべきだと思う。自分達にとって都合の悪いことは極めて消極的だというのは、無責任すぎる。文科相も昨年の不正経理調査で不十分な事例が見つかったので「しっかりと調査ができるような方策を検討しなければいけない」と述べている。研究機関のあまりのやる気のなさからは自浄作用による改善は全く期待できないので、「しっかりと調査ができるような方策」は研究機関の自主性に委ねるような方法では全くだめだ。ちゃんと適切な方策を考えてほしい。
参考
[1]毎日新聞web 2012.7.3
[2]世界変動展望 著者:"研究機関の研究費不正使用調査や改善策はもっと徹底的にやるべき!" 世界変動展望 2012.3.4
[3]世界変動展望 著者:"京大で不正経理!自浄作用が働かなかったことが浮き彫りに!!" 世界変動展望 2012.6.29
[4]読売新聞 2012.7.1
『京都大大学院薬学研究科の辻本豪三・元教授(59)が捻出した「預け金」の管理先だった医療機器販売会社(東京都世田谷区)が、元教授の京大着任後に京都オフィスを新設、京大から2億円超の物品調達を受注していたことがわかった。
研究仲間は「販売会社は元教授のお抱えだった」と話しており、東京地検特捜部は同社が京大から受注するようになった経緯を調べている。
元教授は2002年5月、国立成育医療研究センター(世田谷区)の部長から京大大学院の教授に就任。すると、センター時代から預け金を管理していた同社も、翌03年7月に京都市左京区にオフィスを構えた。京大から約1キロの住宅街にあり、同社の社長は周囲に「取引していた辻本さんが京大に移ったので開設した」と話していたという。』
[5]JC-NETの文章 2012.7.3
[6]毎日新聞 2012.7.8
『<京大元教授>「預け金」業者と集中取引 研究費流用疑惑
毎日新聞 7月8日(日)2時30分配信
京都大学大学院薬学研究科の元男性教授が公的研究費を流用したとされる問題で、元教授による04~11年度の業者との取引状況の全容が分かった。毎日新聞の情報公開請求に京大側が応じた。それによると、元教授は186業者・個人と金銭をやりとりしていたが、取引件数の約4割、金額ベースでは5割以上が、「預け金」をしていたとされる東京都世田谷区の医療機器販売会社に集中。同社と元教授との癒着ぶりが鮮明になった。
情報公開されたのは、元教授がセンター長を務めていた「最先端創薬研究センター」や研究室など、元教授が研究費を管理できる部署における04年度以降の8年間の取引記録(03年度以前は公開対象外)。契約日、業者名、品目、金額などが記載されている。
取引記録によると、同センターや研究室は全1万1796件の物品購入のうち約4割に当たる4713件について世田谷区の医療機器販売会社と契約。金額では総額9億7175万円のうち4億9702万円、51%を同社が占めていた。
大学関係者によると、大半の研究者は癒着を疑われることを避けるため、取引先を分散させているという。京大薬学部の関係者は「問題の会社は消耗品から実験機器まで一手に引き受けており、元教授との関係はかなり特殊。学内では『元教授のお抱え業者』という認識だった」と、元教授と同社との特異な関係を証言した。
同社は元教授が91~03年に在籍していた「国立成育医療研究センター」(世田谷区)とも取引があった。元教授は同センター在籍当時から、実際には物品が納入されていないのに納入されたと偽って同社に代金を支払い、その支払金をプールさせる「預け金」をしていた疑いがある。
同社は元教授が02年5月に同センターの薬剤治療研究部長を兼務したまま京大に着任すると、03年7月に京大薬学部の近くに「京都オフィス」を開設した。しかし、11年10月に経営破綻し、同センターに対しては約3億7900万円の債務が残っている。』