ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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マラソン15~中国はどうやって経済発展したか

2021-09-20 10:27:06 | 国際関係
●中国はどうやって経済発展したか

 共産中国は米国に「復讐」し、米国を「凌駕」するために、ソ連型の社会主義の経済思想にとらわれずに経済発展を図ってきた。
 ピルズベリーは、中国は、米国政府が1840年から第1次世界大戦勃発までの間に、ドイツやイギリスの企業に勝てるように自国の企業を支援したことに注目し、そのやり方を学んだと書いている。米国は経済的自由主義の国だが、産業を私企業に任せていたのでは、先進国に勝つことが出来ない。そこで自国の産業を育成・保護するためにナショナリズム的な経済政策を行った。
 資本主義の発達史は、単に個人と個人が作用する市場経済の歴史ではなく、国家と国家が競い合う国際社会の歴史でもある。この過程で、自由主義だけでなくナショナリズムを重視する経済学が各国の発展に重要な影響を与えてきた。イギリスにおいてはヒューム、ドイツにおいてはリストが、それぞれの国家経済・国民経済の発展に貢献した。米国ではヒュームの影響を受けたハミルトンが、経済ナショナリズムを推進した。
 日本では、明治政府が政府主導で資本主義を発達させた。いわば「上からの資本主義」である。しばしば国家資本主義といわれる。中国では、鄧小平が「社会主義市場経済」という概念を打ち出して、共産党政府が主導的に経済発展を推進した。その際、米国が過去に行った政府主導の経済発展に学んだわけである。
 ここにも「戦略的目的のために敵の考えや技術を盗む」という戦略を見ることができる。
 だが、中国は自力だけで経済発展して来たのではない。中国の発展を支援した勢力があった。ピルズベリーは、中国の経済成長に世界銀行(WB)が協力したと書いている。
「1983年、世界銀行総裁のA・W・クラウセンは中国を訪れ、鄧小平に会った。その際、クラウセンは『世界銀行のエコノミスト・チームが、20年先を見据えて中国の経済について研究し、どうすれば中国がアメリカに追いつけるか助言しましょう』と密かに約束した」
 そして、世界銀行は非公式に6つの提言をした。①ハイテク製品に力を入れること。②外国から過剰な借金をしないこと。③外国直接投資は先進技術と近代的経営手法だけに限ること。④海外からの投資や合弁企業の設立を経済特区に限らず広域に広げること。⑤貿易会社を段階的に減らし、国有企業が独自に外国と貿易するようにすること。⑥国家経済の長期的枠組みを構築することーーである。
 ピルズベリーは、「中国の指導者たちは陰で糸を引く世界銀行の存在を隠しつつ、そのアドバイスのほぼすべてに従った」と言う。
 世界銀行は、国際通貨基金とともに、中国政府の利益を守るには国有企業が必要だという中国の主張を認めた。天安門事件の後、アメリカ・ヨーロッパ諸国等は中国に制裁を加えたが、世界銀行は密かに中国を援助していた。また世界銀行のアドバイスに従って、中国は米国の連邦準備制度、つまり中央銀行に相当するものを設立した。中国の傑出した国有企業のいくつかは、欧米の投資銀行、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー等が作った。また欧米人が中国人起業家や投資家を教育したとピルズベリーは書いている。
 そして、「中国の戦略(註 経済戦略)の多くは自由市場や資本主義の戦略ではなく、世界銀行の北京のスタッフのアイデアと、米国経済の歴史の歪んだ解釈とのハイブリッドだった」と指摘している。
 ピルズベリーは、こうした世界銀行の動きの背後に考えられるものについて述べていない。世界銀行は、独立した意思を持って経済活動をしているのではない。現代の国際社会には、欧米を中心とした所有者集団が、国際的な政治・経済を自己の利益にかなうように方向付けるための組織が存在する。第2次世界大戦後、設立された国際連合=連合国、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)等の国際機関がそうであり、世界銀行はその一角をなす。世界銀行は、他の国際機関とともに、所有者集団の世界的な戦略思想であるグローバリズムを推進している。
 欧米を中心とした所有者集団は、巨大国際金融資本を中心として、中国の経済発展を推進した。中国を経済的に発展させることで、莫大な利益を得ようとしたのだろう。実は、国共内戦で中国共産党を支援して中国を共産化したのも同じ勢力であり、米中国交回復、中国への経済的・技術的支援等には、一貫して巨大国際金融資本を中心とする所有者集団の意思が強く働いている。
 
 次回に続く。

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