ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国は神話崩壊の1年

2011-12-31 08:40:04 | 国際関係
 平成23年(2011)は、猛進する中国が大きな壁にぶつかった年となった。
 内政では、経済成長で壁にぶつかった。インフレの進行と不動産バブルの崩壊開始によって、高度経済成長は終わりを迎えた。外政では、覇権外交で壁にぶつかった。米国のアジア太平洋外交に圧され、中国は東南アジアで孤立化しつつある。
 シナ系日本人の評論家・石平(せき・へい)氏は、これを「中国神話の崩壊」と呼ぶ。石氏は中国の動向を大局的に把握し、本年を「中国神話の崩壊の年」と位置付ける。来年は次期指導者と目されてきた習近平を中心とする指導体制に移る。中国の動向は、世界の他の国家・地域以上にわが国への影響が大きい。平成23年12月22日産経新聞掲載の石平氏の見解を参考に掲載しておく。

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●産経新聞 平成23年12月22日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111222/chn11122211110004-n1.htm
【石平のChina Watch】
“裸の王様”…2つの「中国神話」の崩壊
2011.12.22 11:10

 残りわずかの2011年は中国にとって、まさに内憂外患の年となった。
 内政の面で特に深刻なのは経済問題だ。今まで中国は通貨(元)の乱発をもって高い投資率を維持し高度成長を牽引(けんいん)してきたが、このようなゆがんだ成長戦略が生んだのはインフレの高進と不動産バブルの膨張だった。
 そして昨年来、政府はインフレ抑制のために金融引き締め政策を実施してきた結果、全国の中小企業は深刻な経営難に陥ってしまい、企業の「倒産ラッシュ」が起きた。その一方、金融引き締めの中で不動産市場は急速に冷え込み、それが秋頃からの不動産価格の急落につながった。
 こうした中で、中国物流購入連合会が発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比1.4ポイント低下して、好不況を判断する境目の50を下回る49となり、中国経済全体の減速傾向が鮮明となった。今後、不動産バブルの本格的崩壊に伴って経済の減速はよりいっそう進むだろうと思われる。
 国家発展と改革委員会直属の「マクロ経済研究院」の副院長である王一鳴氏が最近、中国経済は今後「10年から20年の減速期に入る」と予測していることからも、今後長期間における中国経済の衰退は確実な趨勢(すうせい)であろう。とにかく、中国の鳴り物入りの高度成長はまさに今年をもって終焉(しゅうえん)を迎えた。
その一方、国際社会における中国の立場も実に苦しいものとなっている。11月に開かれた東アジアサミットを舞台に展開されていた米中両国の外交戦は結局、中国の完敗をもって幕を閉じた。南シナ海領有権問題に関し中国は当初から、東アジアサミットでこの問題を取り上げること自体に反対し、「当事国間で解決する問題だ」と米国の介入を強く反対してきた。
 しかし、会議の全体を通してアメリカの積極的介入と圧倒的な外交攻勢の下で、参加国の大半が一致して中国の拡張への懸念から「南シナ海問題」を提起し「航海の自由と安全」を主張した。中国の思惑とは正反対に東アジアサミットはまさしく「南シナ海問題一色」の国際会議となってしまい、中国の孤立だけが目立った。
 そして会議の開催を前後して米国が豪州北部に海兵隊の駐留を決めたり、イージス艦をタイに派遣したり、中国の「準同盟国」のミャンマーとの関係改善に乗り出したりして、中国の膨張を封じ込めるための包囲網の構築を着々と進めている。それに対し、中国政府は今でも本格的な反撃体制を整えることができず、アジア外交における劣勢を挽回できないままである。
 世界最強国のアメリカの圧倒的な攻勢と、それを中軸にした東アジア諸国の団結の前では、中国がいかにも無力な存在であることが分かったであろう。
近年、中国の経済成長と国力の増大に従って、国際社会の一部がこのアジアの大国をアメリカと並ぶ「世界の超大国」に祭り上げて、木も草も「中国様」になびくような異様な雰囲気を作り出してきているが、このような神話としての中国像は、実はもう一つの「バブル」であることが今になって明確になった。
 経済バブルの崩壊に伴って、今まで一世風靡(ふうび)した「中国高度成長」の神話の崩壊とともに「世界をリードする超大国の中国」の神話も一気に崩れ始めたのである。
 そういう意味で2011年という年はまさに「中国神話」の崩壊の年である。「裸の王様」となった今後の中国が一体どうなっていくのか。国際社会にとっての大きな問題だ。
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北アフリカ・中東は激動の1年

2011-12-30 09:34:05 | 国際関係
 今年は北アフリカ・中東で大きな変化があった年だった。
 第一は、チュニジアの「ジャスミン革命」に始まる民主化の進展である。1月14日、チュニジアでは23年間独裁体制を続けたベンアリ大統領が辞任に追い込まれ、国外に逃亡した。アラブ諸国で初めて大統領を追放した大衆蜂起となった。この民衆運動の成功はエジプトに飛び火し、2月11日、わずか18日間で30年間近く続いたムバラク大統領が辞任した。同月リビアではカダフィ大統領の退陣を求める反政府デモが発生。カダフィは武力によって民衆の運動を弾圧しようとしたが、軍の一部が反乱を起こし、反政府勢力が首都を制圧。10月20日カザフィーは射殺された。多くの国で民主化が進められているが、選挙ではイスラム勢力が圧倒的な優勢を示しており、民主化とイスラム再興が同時に進むという特徴的な展開を見せている。
 第二は、イランの核兵器開発疑惑をめぐる緊張の高まりである。11月8日国際原子力機関(IAEA)は、イランが高性能爆薬など核兵器開発に向けた実験を行ったとみられるとする報告書をまとめた。イスラエルによるイラン核施設への軍事攻撃も取り沙汰された。そうしたなか、11月29日、首都テヘランにある英国大使館に、学生等のデモ隊約20人が乱入し、英国旗を燃やし、大使館内を荒らした。これに対し、英政府は在英イラン大使館を閉鎖し、欧州連合(EU)も追加制裁を断行した。今後、何かのきっかけで、アメリカとイラン、またはイスラエルとイランの間で紛争が勃発する可能性がある。
 第三は、米軍によるウサマ・ビンラディンと米政府によるイラク戦争の終結宣言である。米軍特殊作戦チームは5月2日、平成13年(2001)9月11日の米同時テロを首謀したされる国際テロ組織アル・カーイダの指導者ウサマ・ビンラディンをイスラマバード近郊の隠れ家で殺害したと発表した。アメリカは9・11の後、アフガニスタンに侵攻したのに続いて、15年(2003)3月イラク戦争を開始した。ブッシュ子政権からオバマ政権に替わっても、戦争は継続され、約9年にわたった。オバマ大統領は12月14日、イラク戦争は年内の駐留米軍の完全撤退で「歴史の一部になる」と述べ、事実上の戦争終結を宣言した。これを受けてイラク駐留米軍は撤退を行った。イラクではアメリカの管理のもとに民主化が進められてきたが、米軍の撤退によってイスラム文明による反発が強まるだろう。またイラク国内の宗派間対立やイランの影響力の増大が懸念される。

 今後予想されるヨーロッパの財政金融危機の深刻化は、北アフリカ・中東にも影響を及ぼすだろう。チュニジアやエジプト等の民衆運動は、直接的には高進するインフレによる生活不安が原因だった。いつの時代、どこの国でも経済が悪化し、民衆が生活に困窮すると、激しい社会運動が起こる。これに適切な対応ができない政権は、弾圧か戦争か崩壊に至る。来年はアメリカ・中国・韓国・台湾等で国家指導者の選挙や交替が起こる。その中で北アフリカ・中東の動向は、少なからぬ影響を世界にもたらすだろう。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成23年12月17日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111217/mds11121708010001-n1.htm
「アラブの春」契機 チュニジア焼身自殺から1年 イスラム勢力「我が世の春」
2011.12.17 07:58

 【カイロ=大内清】中東・北アフリカに民衆デモが拡大し独裁政権が相次いで倒れた「アラブの春」のきっかけとなった、チュニジアでの青年の焼身自殺から17日で1年を迎える。民主化プロセスが進む中、各国の選挙ではイスラム勢力がほぼ“独り勝ち”し、さながら「イスラムの春」の様相を呈している。今後は国のあり方をめぐる議論が焦点となるが、国内政治の安定や経済の立て直しなど課題も多い。
 1月にベンアリ前大統領が亡命し、その後の「政権崩壊ドミノ」の先駆けとなったチュニジア。今月14日に、10月の制憲議会選で第一党となったイスラム政党アンナハダ幹事長のジバリ氏が新首相に指名され、アラブの春以降では初のイスラム勢力主導政権が誕生することになった。
 民主化が進む一方、インフレが国民の生活に重くのしかかり、生活の改善に強い期待がかかる。
 王制国家モロッコでは11月、イスラム政党が第一党に躍進、同じく王制のヨルダンでも今年に入り、イスラム勢力のデモなどで首相が2度にわたり交代した。
 さらに、域内外からの注目が集まるのが、8千万人超の人口を抱える地域大国エジプトの動向だ。
 2月のムバラク前政権崩壊後、初めてとなる人民議会(下院に相当)選が11月に始まり、これまでのところ、イスラム原理主義組織ムスリム同胞団傘下の自由公正党が、比例投票枠で36%の票を獲得。最終結果は全選挙区で投票が終わる来年1月の発表だが、第一党となる公算は極めて大きい。
16日付の政府系紙アルアハラムは中間集計として自由公正党や、より復古主義的なイスラム政党、ヌール党が得票率を伸ばしていると報じた。
 イスラム勢力の躍進について政府系シンクタンクの専門家は「政策そのものへの支持よりも、慈善活動などを通じて社会への浸透を図ってきた成果との側面が大きい」と分析。「現実の政策に関わるようになれば、穏健化していくだろう」と予想する。
 だが、選挙での優勢が顕著になるにつれ、同胞団幹部からは「ビキニ着用は非イスラム的だ」といった発言が出始めている。劣勢のリベラル派には、イスラム化が進むことで主要産業である観光に悪影響が出るとの懸念の声も強い。
 今後の新憲法制定プロセスでは、同胞団などの意向が反映され、イスラム色の強いものとなる可能性もあるが、暫定統治を担う軍部がどういった態度に出るかは不透明なこともあり、当面は各政治勢力間で激しい駆け引きが続きそうだ。
 内戦と欧米の軍事介入の末、カダフィ政権が倒れたリビアでも、最近では民兵組織同士の衝突が続発し、平和的に民主国家移行が実現するかはなお不透明だ。

●産経新聞 平成23年12月15日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111215/amr11121520140014-n1.htm
【イラク戦争終結】
くすぶる宗派対立、イランの影 米アジア重視に影響も
2011.12.15 20:09

 【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米大統領は14日の演説で、イラク戦争は年内の駐留米軍の完全撤退で「歴史の一部になる」と述べ、事実上の戦争終結を宣言した。これを受けてイラク駐留米軍は15日、首都バグダッドで、隊旗を降ろす式典をパネッタ国防長官の出席で行った。2003年3月の開戦から約9年。大統領は民主化による安定という成果を強調したが、撤退は地域のパワーバランスを変える可能性がある。
 国内の宗派間対立や隣国イランの影響力拡大といった不安定化の火種は消えない。治安が再び悪化すれば、イラクとアフガニスタンからの撤退を踏まえた米国の「アジア回帰」戦略にも影響を与えかねず、今後もイラク情勢が米国の重荷となる状況が続きそうだ。
 国際社会の反対を押し切る形で開戦し、多大な人命と戦費を注ぎ込んだイラク戦争の終結を告げる演説で、オバマ大統領は「完璧ではないが、独立、安定し、自立したイラクを後にする」と強調した。
 オバマ政権にとってイラク戦争は、ブッシュ前政権からの「相続を余儀なくされた負の遺産」(元政府高官)であり、来秋の大統領選を前に年内の撤退完了は「必ず実現しなければならない公約」(同)だった。
米軍によるイラク軍の訓練が不可欠との声は根強く、米軍内には数千人規模の駐留継続を求める声が大勢を占めたが、米兵の免責特権をめぐるイラク政府との交渉が不調に終わると、年末までの完全撤退論が一気に加速した経緯がある。
 イラク情勢の改善に結びついた米軍増派を早くから主張した共和党のマケイン上院議員は14日、撤退は「治安よりも政治を優先させた結果」と批判した。
 一方、撤退によって生じる地域の“力の空白”に乗じたイランの影響力増加を危ぶむ声が強まっている。
 スンニ派のムトラク副首相は米CNNテレビに対し、シーア派のマリキ首相が、同じシーア派のイランと米国の間で「ゲームをしている」と批判。首相を信頼する米国は「いつか後悔するだろう」と警告した。イラクは先月、アラブ連盟が決定したシリア制裁に反対したが、米国には、シリアと密接な関係にあるイランにイラクが配慮した結果との受け止めもある。
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関連記事
・拙稿「揺れる北アフリカと中東諸国1~3」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110304
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110305
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110308

トッドの移民論と日本122

2011-12-29 08:44:59 | 国際関係
●対処のポイント1:憲法の改正と国民による国防

 私は、日本人が移民問題に主体的に対処するには、現行の憲法を改正しなければならないと考える。この点に踏み込まずに移民問題を説くのは、浅薄皮相である。日本国民は、現行憲法の根本的な問題点を理解し、憲法を改正することができなければ、やがて増大する移民に侵食され、日本を失うだろう。
 現行憲法には、歴史・伝統・国柄を踏まえた日本人自身による自国の規定が書かれていない。そのことは前文を一読すればわかる。この前文は、GHQの軍人が日本人の代わりに、戦勝国への謝罪と誓約を英語で書いた。それを生硬な日本語に訳したものである。そこには、日本とはどういう国であり、日本人とはどういう国民かという自己認識が、まったく書かれていない。
 現行憲法は、日本人が自らの伝統・文化・歴史・国柄を踏まえて発想した憲法ではない。敗戦後の占領下にGHQが秘密裏に8日間ほどで英文で起草したものが、日本国に押し付けられたものである。そして、日本の伝統・文化・歴史・国柄を否定し、過去の世代と断絶させるために、この憲法は作られている。それゆえ、この憲法を押し戴いたままでいると、日本人は精神的に骨抜きになっていく。
 この憲法のもとでは、日本人は自己の歴史を忘却し、民族の誇りを失い、精神的な自己喪失が進む。自ら国を守ることを忘れ、国家や国民の意識が消失する。これが、現行憲法による基本的な問題である。そうした日本で、近年、少子高齢化と人口減少が進み、多数の外国人移民が押し寄せて、定住してきている。やがて国民と非国民の区別があいまいになり、入りくる外国人移民と、もともとの日本人である自分たちの違いも分からなくなるおそれがある。
 この憲法を改正し、日本とはいかなる国か、日本人とはいかなる人間かということを自ら規定しなおさない限り、移民の問題に対する主体的な対応はできない。
 日本国籍を取得したいという外国人に対して、日本はこの憲法に定めるような国であり、わが国の国民の一員となって、ともに憲法の精神に沿ってわが国を維持・発展させることができるかを問えるような憲法を、日本人自身の手で作らなければならない。それを成し遂げた日本人は、日本を日本として維持・発展させることができる。だが、自主憲法を制定できないままであれば、自己を失って、移民と国民の違いもわからなくなり、国を失うだろう。
 外国人占領者に押し付けられた憲法を改正せねば、自らの精神的な劣化と移民の増大によって、日本は滅ぶ。今日のわが国においては、このような認識を持って、憲法を改正しなければならない。
 
●憲法改正の要所

 憲法改正に当たっては、まず独自の伝統・文化・歴史・国柄を持つ日本の国民としての自覚を明文化することが必要である。その上で、次に、なすべきことは、国民の権利と義務の定め直しである。現行憲法には、権利の規定が多く、義務の規定が少ない。現行憲法の義務規定は、教育・納税・勤労のみ。自分の子供に教育を受けさせるのは、国民の義務というより、親として当然のことであり、むしろ政府に対して子供が教育を受ける機会の保障を求めることは、国民の権利である。勤労もまた、義務よりも権利の面を強く持つ。政府に対して雇用の機会の実現を求めることは、労働者の権利である。また、勤労しない者が、罰せられるわけではない。何かの事情により勤労していない者も、社会保障の対象となる。
 それゆえ、現行憲法において、純粋に義務といえるのは、納税だけである。税金だけ納めていれば、あらゆる権利を保障されるというのは、近代デモクラシーの原則を逸脱している。納税は、外国籍の住民も、一部行なっている。公共サービスを受けることに対する対価である。だから、納税だけであれば、日本国の住民の義務であって、日本国の国民の義務とはいえない。
 日本国民と住民の義務が、そう変わらないという状態は、国民国家のあり方として、おかしい。帰化する外国人に対しても、日本国民になれば、税金さえ納めていれば、後は大した義務はないということになる。憲法が保障する権利の大きさに比べ、義務が極めて少なく、著しくバランスを欠いているのである。
 私は、憲法には、権利に相当する国民の義務として、国防の義務、及び国家忠誠の義務を定める必要があると思う。
 近代国民国家において、国民の最も重要な義務は、国防の義務である。国民とは、所属する国家をともにするだけでなく、運命をともにする集団である。運命共同体である。政府の役割のひとつに、国民の生命と安全を守ることがあるが、この生命と安全をともに守る者が国民である。この近代国家の根本原理を、わが国の現行憲法は欠いている。まず現在の日本国民が自ら国を守るという決意をし、それを自ら憲法に定めることが必要である。それによって、日本人は初めて日本国民としての要件を満たすことになる。そのうえで、自分たちとともに運命をともにする覚悟のある者のみに、日本国の国籍を与えるものでなければならない。
 次に、国家忠誠の義務は、日本国籍を持つ者として当然の義務である。反国家的・反国民的な行動は規制を要する。国旗への侮辱、国旗の損壊等は、罰せられねばならない。こうした義務は、まず日本人自身が担う意思を持たねばならない。そして、それゆえに日本の国籍を与える者にも、義務として履行してもらうというのでなければ、ならないものである。
 私は、上記のポイントを中心として憲法を改正し、国家・国民のあり方を根本から立て直さない限り、日本は大量の移民を受け入れてはならないと訴える。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「日本国憲法は亡国憲法~改正せねば国が滅ぶ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08c.htm

北朝鮮と連携したイランの核

2011-12-27 09:37:29 | 国際関係
 北朝鮮の金正日総書記が死去して、改めて北が核兵器を保有しているという脅威が浮かび上がった。良かれ悪しかれ金正日は国内で最高の権威を持ち、軍部の暴走を抑える影響力を持ってきた。彼に替わった金正恩は年齢28歳。国家の政治的・軍事的指導にほとんど経験がなく、権力基盤は親の七光りだけである。もし北朝鮮軍部に、核兵器を使って、わが国や韓国に外交的圧力をかけたり、軍事的侵攻をしたりしようという好戦的な指導者が台頭した場合、金正恩にこれを抑える力があるか疑わしい。
 こうしたなか、北朝鮮とともに、改めて核の脅威を感じさせるのが、中東のイランである。外交評論家の加瀬英明氏は、昨年末、今年の予想として、イランに関して次のように書いていた。
 「中東では火薬庫まで伸びた導火線に、火花が刻々と走っている。イランが北朝鮮と協力して、核兵器開発を進めており、二、三年以内に核弾頭を保有することになるものと、みられている。イランのラフサンジャニ大統領は、『イスラエルを地図のうえから、抹殺する』と、公然と呼号している。
 アメリカ、ヨーロッパ諸国、日本をはじめとする諸国が核開発を放棄させようとして、イランにも、北朝鮮と同様に経済制裁を加えているが、ロシア、中国がかげで援けていることもあって、効果を奏していない」「サウジアラビアなどの諸国は、イランの核施設を破壊するために、イスラエルが外科的なミサイル攻撃を加えることを、望んでいる。
 もし、イランが向う一、二年のあいだに、核開発を放棄しない場合には、イスラエルが空、あるいは地上、海から攻撃を加えて、イラクの核施設を摘出することがありえよう。そうなれば、イランがペルシャ湾の出口の狭いホルムズ海峡を封鎖して、アラビア半島からの石油の供給が絶たれることになる」と。

 今日、中国はイスラム諸国と外交を強めており、中東の石油を押さえる外交を行っている。イランやパキスタンとは関係が深く、サウジアラビアにも進出している。中東からの石油をマラッカ海峡を通らずに、中国南部に運び込もうとして、インド洋に軍港(ミャンマー等)を作り、パイプラインを敷いている。
 イスラム文明には、突出した中核国家が存在しないが、そのうちの最強国はイランである。 アメリカにとっても、イスラエルにとっても、イランは相当の強敵である。
 加瀬氏の予想は、本年末にわかに現実味を帯びてきた。11月29日、首都テヘランにある英大使館に、学生等のデモ隊約20人が乱入し、英国旗を燃やし、大使館内を荒らした。これに対し、英政府は在英イラン大使館を閉鎖し、欧州連合(EU)も追加制裁を断行した。今後、何かのきっかけで、アメリカとイラン、またはイスラエルとイランの間で紛争が勃発する可能性がある。
 アジア太平洋地域において、米中の軍事的緊張が高まってはいるが、世界的に見ると、現在真の焦点はイランを中心とする中東である。動向を注目していきたい。
 以下は関連する報道記事。

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●産経新聞 平成23年2月14~17日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110214/plc11021422590013-n1.htm
【核ドミノの時代】
2011.2.14 22:57

 (略)内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が暴露した米外交公電によるとサウジアラビア、エジプトはイランが核兵器開発に成功した場合には、自国も核開発に着手する可能性があると米国に警告した。(略)イスラエルの対外特務機関モサドの前長官、メイル・ダガンがイランの核保有について2015年以降になるとの見通しを示すなど、いつ核開発に成功するかは不明だが、サウジなどの反応はイランの核保有を引き金に中東で「核のドミノ」が起きる可能性を示したといえる。(略)

●産経新聞 平成23年11月6日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111106/mds11110622490007-n1.htm
イラン核疑惑に起爆施設の新情報 イスラエルで高まる強硬論、米は苦慮
2011.11.6 22:48

 イランの核兵器開発疑惑をめぐり、核起爆装置の実験に使用できる施設がテヘラン郊外に建設されたとの新たな情報が流れた。イスラエルによるイラン核施設への軍事攻撃も取り沙汰される中、緊張が高まりつつある。強硬姿勢を続けるイランを前に、大統領選まで1年に迫ったオバマ米大統領は対応に苦慮している。(略)

 【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米政権は、イスラエルが単独でイラン核施設の攻撃に乗り出す可能性に懸念を強めている。イランが核施設攻撃の報復に打って出れば、原油高騰など世界経済に悪影響を及ぼすのは確実。一方で大統領選をちょうど1年後に控え、米国内のユダヤ票の行方には神経質にならざるを得ない。イランの核問題はオバマ大統領の再選戦略を揺るがしかねない。
(略)専門家によると、イランは空爆を予想し、あえて都市部周辺に核施設を建設しているという。市民に犠牲が出れば、イスラム諸国に反イスラエルや反米感情が吹き荒れかねない。

●産経新聞 平成23年11月10日

北朝鮮、イランと共同で核研究所を運営 IAEA、核兵器製造の実験推進と報告
2011.11.10 00:56

 国際原子力機関(IAEA)は8日、イランが高性能爆薬など核兵器開発に向けた実験を行ったとみられるとする報告書をまとめた。これに関連し、中東情勢に詳しい情報筋は9日、北朝鮮がイランと共同で核研究所を運営し、最新のソフトウエアを使って核兵器開発に向けたシミュレーション実験を行っていると明らかにした。3つある研究所は、イラン革命防衛隊の基地内の地下に秘密裏に設置されているという。北朝鮮による核拡散の深刻さを浮き彫りにしたといえる。

●産経新聞 平成23年11月13日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111113/kor11111314370002-n1.htm
北朝鮮の数百人がイラン核開発支援 技術者ら派遣
2011.11.13 14:36

 韓国の聯合ニュースは13日、外交消息筋の話として、イランの核やミサイル関連の十数カ所の施設で、北朝鮮の技術者や科学者数百人が開発を支援していると報じた。
 技術者らは朝鮮労働党で軍事工業を扱う「99号室」の出身で、イラン中部コム近郊の核施設などで数年前から3~6カ月ごとに交代しながら勤務しているという。
 北朝鮮はミサイルの輸出や共同研究を通じイランと軍事協力を深めてきた。イランは2009年に北朝鮮産の濃縮ウランの原料を入手したとみられるなど、核開発でも両国が協力を進めていることは確実視されている。(共同)

●産経新聞 平成23年12月5日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111205/mds11120503120001-n1.htm
【主張】
イランと核 日本も制裁強化の検討を
2011.12.5 03:11

 イランの学生デモ隊が首都テヘランの英大使館に乱入して館内を荒らし、英政府が在英イラン大使館を閉鎖し、欧州連合(EU)も追加制裁に踏み切った。
 外国公館を損壊や侵入から保護することは、ウィーン条約に基づく各国の義務である。しかも、暴徒はイラン・イスラム体制を護持する革命防衛隊の傘下組織に関係し、乱入は体制保守派が黙認していたともみられる。
 大使館乱入は、そうした二重の意味で断じて許されない。英国とEUの対抗措置は当然である。
 事件は、11月の国際原子力機関(IAEA)報告を受け、英国がイラン中央銀行との取引を全面停止する最も厳しい金融制裁を敷いたことが、引き金の一つともされる。問題の根源は、報告が裏付けたイランの核兵器開発にある。
 報告がイスラエルによるイラン核施設攻撃の臆測を一段と強める中で起きた乱入事件は、そんな緊張状況をさらに高めかねない。
 それを回避するには、当面、制裁でイランを核開発断念に追い込む以外にない。実際、EUの追加制裁も、新たに、核開発に関わる約180の企業や個人に対し資産凍結や渡航禁止を科している。
 そうした中、日本の対応が目に見えないのはどうしてか。玄葉光一郎外相は、遺憾の意を談話と記者会見で表明しはしたが、国内外にほとんど伝わらなかった。
日本はイランの行動を認めない姿勢を明確に発信し、同時に金融などの制裁を強化すべきだ。
 コーエン米財務次官はさらに、イラン原油の大口輸出先の欧州、中国、日本に輸入削減を迫り、EUも削減を検討しだしている。
 日本は輸入原油の約10%をイラン産に頼るが、このところ依存度を毎年1%ずつ減らしている。油質に比して割高だからともいう。日米同盟を配慮して、削減を検討すべきだろう。
 重要なのは、制裁に後ろ向きの中露両国、特に中国を巻き込まない限り、イランに罰を加える効果はいまひとつという点だ。
 中国は、日本を凌(しの)ぐイラン原油の最大の輸出先であり、同国内にかなりの石油、天然ガスの権益も有している。今回も、制裁に対して早くも牽制(けんせい)球を投げている。
 今月中旬、初訪中する野田佳彦首相には、首脳会談でイラン問題も取り上げ、制裁に応じるよう、中国側を説得してもらいたい。
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北朝鮮の分析・予想3

2011-12-26 08:42:15 | 国際関係
 次に、北朝鮮による国際社会への動き、及び北朝鮮に対する国際社会の行動に関する発言を記しておく。

●西岡力氏(東京基督教大学教授) 産経新聞 平成23年12月23日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111223/kor11122303030001-n1.htm
 「1994年の金日成氏死後、北朝鮮は核問題などで融和姿勢を装い、だまされた日米韓は大量の食糧と重油などを支援した。金正恩氏の後継体制が安定するには、住民らに配る食糧がどうしても必要だから、同じ詐欺的政策に出てくる可能性は高い。
 日本にとって、拉致命令を下した帳本人の金正日氏の死は、人質を取って立てこもるテロ集団の首謀者が逮捕されないまま病死し、息子が首謀者を継いだに等しく、人質全員解放という譲れない課題が進展したことにはならない。
 したがって、金正恩体制が口で何を言おうと、こちらから先に制裁を緩めたり支援をしたりしてはならない。彼らが、被害者を返すという具体的行動を取るまで圧力を継続し、父親による悪事を認めざる得ないところまで、息子を追い込むほかない。従来の方針を変える必要は全くないのである」

●倉田秀也氏(防衛大学校教授) 産経新聞 平成23年12月21日「正論」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111221/plc11122103120003-n1.htm
 「軍強硬派が『金正恩体制」の確立を焦って再び軍事攻勢に出た場合、金正日氏という重石が取れた北朝鮮が、対米協議などを目指して軍事攻勢から平和攻勢に転じてくる保証、暴走だけはしないという保証はないのである」

●マーク・フィッツパトリック氏(英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)核不拡散部長) 産経新聞 平成23年12月21日「私はこう見る 金総書記死去」
 ※紙面から引用
 「中国は北朝鮮を思うように動かせるとも北朝鮮が無秩序状態に陥るとも考えていないが、もし体制が崩壊すれば軍隊を派遣してでも秩序維持に努めるだろう。万が一の場合、中国は正恩氏に代わるカードとして金総書記の長男、金正男氏をマカオに抱えている」
 「米国や韓国は北朝鮮によるウラン濃縮活動の即時停止を6か月協議再開の条件にしており、北朝鮮は強硬手段として来年4月以降に3回目の核実験を行う可能性がある。中距離弾道ミサイルも試射するだろう。金総書記なら軍に『待て』ということができたたが、軍が核実験を行うと決断した場合、正恩氏に止めるだけの力はまだない。また、正恩氏が強さを見せるため、領有権問題が存在する海域などで韓国に対し軍事的挑発行動を起こす恐れは十分にある」

●小此木政夫氏(九州大特任教授) 毎日新聞 平成23年12月20日号
http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2011/12/20/20111220ddm010030040000c.html
 「米韓側のやり方によって、北の出方はずいぶん変わるが、可能性として高いのは父親がやったやり方だろう。それは米国との関係を改善するために6カ国協議を再開させる。そして、中国の支援をうけながら、ある意味では、中国の被保護国となってもやむを得ないというような形で経済的な形で支援を受けながら、自分の体制作りを優先させていくと思う。最も注目するのは年明けあたりで6カ国協議が本当に再開されるのか。再開されれば本当にその方向に向かうという一つの証拠になるわけで、そういかなければ武力挑発も警戒しないといけない。危機管理のシナリオを考えないといけない」

●李鍾元氏(立教大教授) 毎日新聞 平成23年12月20日号
http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2011/12/20/20111220ddm010030040000c.html
 「核、ミサイル、拉致問題という懸案を6カ国協議の枠組みで総合的に解決することが北朝鮮の体制立て直しにもプラスになる。関係国はそれを具体的に示すことで、後継体制の行方に中長期的に影響を与えることができると思う。だが、その能力が日米韓3カ国の政権にあるかどうかは疑問だ。韓国と米国は選挙を控える。来年はさらに情勢の不透明感が高まるだろう」

●岡崎久彦氏(元駐タイ大使) 産経新聞 平成23年12月22日産経新聞「正論」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111222/kor11122202480001-n1.htm
 「最近の東アジアにおける『対中統一戦線」の結成という情勢の下で、中国の戦略家が将来の米中対決を視野の一部に入れていることは間違いない。その場合、中朝国境を流れる鴨緑江まで米韓の勢力が及ぶことは中国としては避けたいであろう。そうなると、中国は国際的に評判の悪い北朝鮮との親密化に躊躇(ちゅうちょ)は感じつつも、北朝鮮に対する影響力確保は、国家戦略上の要請となってくる。
 筆者の個人的感触としては、将来、北朝鮮が崩壊するような場合に、中国は、核施設の安全確保、あるいは難民の流入阻止などの口実はあろうが、北朝鮮の少なくとも北部は占領してなかなか引かないのではないかと感じている。中朝の戦略的一体化の状況は進んでいると考えざるを得ない」
(了)

トッドの移民論と日本121

2011-12-25 08:31:08 | 国際関係
●日本復興のための提言

 移民問題への対処は、単なる移民政策ではなく、日本の再建に関する問題である。
 私は、今日日本人がまず為すべきは、日本精神の復興であり、日本の伝統・文化・国柄の継承・発展であると考える。これをしっかり成し遂げることなく、多文化主義を採り、移民を多く受け入れ、多民族国家に向うと、日本は崩壊する。日本精神の復興、日本の伝統・文化・国柄の継承・発展は、日本人の自覚を高める。日本人として、日本国民として、また日本民族としての意識が回復・発達すると、家族の形成、子育て、勤労、社会貢献等への意欲が高まり、婚姻率・出生率が上がり、生産労働人口が増え、またニートが減るなど、社会が活性化してくる。安易に外国人移民に頼らずとも、日本人自身がもっと能力を発揮するようになる。その結果、移民1000万人計画は不要のものとなる、と考える。
 現在わが国は、平成23年(2011)3月11日に起こった東日本大震災による国難にある。地震・津波によって甚大な人的・物的被害を受けたうえに、8月24日現在(※執筆時)福島原子力発電所の事故はまだ収束せず、放射性物質による汚染と電力供給量の低下が、日本経済と国民生活に重大な影響をもたらしている。折から、世界経済は、アメリカの財政悪化、ギリシャの一部デフォルト等により、リーマン・ショック以後、最も深刻な状況にある。平成10年(1998)以来のデフレを脱却できないでいる日本を戦後最高値の円高が襲っている。
 大震災・経済危機への対処は短中期的な問題であり、移民問題の対処は中長期的な問題である。そのような違いはあるが、どちらも日本の興亡にかかわる問題である。私はこれらに共通する日本人の最重要課題は、日本の精神的復興であると考える。そして、日本の復興は日本精神の復興から、と訴えるものである。
 私は、自分のサイトに、この日本の精神的復興という最重要課題のもと、現下の緊急課題として、①東北の地域復興、②デフレ脱却で経済成長、③高度防災国家の実現、④エネルギーの転換、という4つを揚げている。
 これらの緊急課題は、戦後日本を再建するための基本的な課題と密接不可分のものである。その基本課題として、私は、①大東亜戦争の総括、②占領政策の克服、③自主憲法の制定、④皇室の復興、⑤国民の復活、⑥自主国防の整備、⑦誇りある歴史の教育、⑧日本的道徳の回復、⑨家族の復権、⑩生命力の発揮、⑪自然との調和、⑫精神的な向上、これら12を掲げている。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinionaa.htm
 これらの諸課題は、最重要課題である日本の精神的復興を促進し、日本人が日本精神を取り戻すならば、同時的かつ相関的に実現できると私は考える。逆に言えば、日本精神の復興が促進されなければ、わが国は、上記のどの課題もまとも実現できない。
 移民問題への対処もまた、日本復興のための上記課題を、どれだけ遂行できるかに、かかっている。5年後、10年後、30年後に、上記課題が着実に実行されていれば、移民問題への対処は、主体的かつ戦略的に行われている。反対に、上記課題がほとんど実行されていなければ、わが国はずるずると衰退の坂を下り、国内にあふれる外国人移民に浸食されながら、亡国に至るだろう。
 このような認識をもって、移民問題への対処のポイントとして、5点挙げたい。

1.憲法の改正と国民による国防
2.官僚政治からの脱却
3.雇用拡大と生産性の向上
4.脱少子化の推進
5.教育の立て直し

 先に日本国際フォーラムの政策提言「外国人受入れの展望と課題」を紹介したが、そこで提案されているような具体的な政策の前に、移民問題への対処におけるより重要なポイントと私が考えるのが、これから述べる5点である。

 次回に続く。

北朝鮮の分析・予想2

2011-12-24 08:40:39 | 国際関係
■北朝鮮の国内事情(続き)

●ワシーリー・ミヘーエフ氏(ロシアの世界経済国際関係研究所副所長) 産経新聞 平成23年12月22日インタビュー記事
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111222/kor11122208100006-n1.htm
 「1994年に金日成国家主席が死去したとき、金正日氏は完全に国を管理し、情勢をコントロールしていたが、今回は(権力委譲の)過程が始まったばかりだった。集団指導体制は北ではあり得ないが、金一族や党、軍などがバランスを取ることはあり得る。金正恩氏は、実質的に何もコントロールしておらず、すべての集団にとって都合がよいので、今は存在できている。みな、自らの立場を守るというただひとつの目的で彼を支持しており、将来の政治情勢がどう動くかは極めて不透明だ。
 私見をいえば、(今後の情勢をみる上での)キーパーソンは張成沢氏だ。昨年9月の党代表者会で60歳代の人々が政治局員候補になった。最年少は54歳だ。彼らは張氏の庇護(ひご)に基盤を置いており、張氏は国家を管理するための党行政機構の中に支援者を持っているようにみえる」

●岡崎久彦氏(元駐タイ大使) 産経新聞 平成23年12月22日「正論」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111222/kor11122202480001-n1.htm
 「今回の継承は金正日氏の意向の下に、3年前から一貫して準備されてきた路線であり、まして、実力者である軍の支持があるのであるから、当面、後継体制が揺らぐことはなく、政権交代が北朝鮮の政局、政治に及ぼす影響はあまりないと判断される」
 「第2世代で最も発言力があるのは、金正日の実妹の金敬姫氏であり、形式主義排除なら、女性でも良いことになる。そして、その夫の張成沢氏は軍のタカ派路線に対し経済改革派と呼ばれている」「金正日氏の死で、権力闘争の可能性があるとすれば、金敬姫-張成沢路線と軍との相克であろう」「実妹に対する金正日氏の配慮がなくなった後、もし、軍との間に相克が起これば、金敬姫氏の地位は危うくなろう。そして、それが、政策面におけるタカ派路線とハト派路線の相克を意味するのならば、北朝鮮の内外政策にも影響して来ることになる」

●小此木政夫氏(九州大特任教授) 毎日新聞 平成23年12月20日
http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2011/12/20/20111220ddm010030040000c.html
 「亡くなった金正日総書記にしても、ずっとナンバー2だった。父親と共同統治をやってきた。それでも父親の死後、体制確立には4年かかっている。その意味で正恩氏はもっと大変だ。党内で集団指導的な色彩はどうしても出てくる。たとえば、金総書記の実妹である金慶喜(キムギョンヒ)氏やその夫の張成沢(チャンソンテク)氏に助けられながら、自分の体制を何年かかけてつくっていく。その過程がスムーズにいくかどうかだ。今ただちに権力闘争が起こるということではないが。」
 「正恩氏もいつまでも後見人の下にいることを潔しとしない。金正日氏と同様に、自分の独裁体制なり、自分が最高指導者であるという確たる体制をつくりたい、と思った時、トラブルが起こる可能性はある」

●金賢姫氏(元北朝鮮工作員) 産経新聞 平成23年12月22日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111222/kor11122220040018-n1.htm
 「これまで2代にわたって国民を食べさせられなかったのだからそのやり方は完全な失敗だった。このままだと未来はない。体制が揺らぐという危険はあるだろうが開放・改革への決断しか復興・発展の道はない。金正恩は外国留学の経験もあり北がどうにもならない状態であることはよく知っているはず」
 「当面は団結、安定が強調されるが落ち着けば新しい動きが出るだろう。ただ後見役の張成沢(国防委員会副委員長)の影響力が強まれば軍部との摩擦もありうる。金正男や金正哲など他の兄弟は、金正日がやったように徹底的に権力から遠ざけられる。金正日の時は異母兄弟の金平日(現駐ポーランド大使)排除のためその友人たちまで平壌から追放された」

●重村智計氏(早稲田大学教授) 夕刊フジ 平成23年12月19日
 ※紙面から引用
 「北朝鮮は表面的には大きな混乱もなく、金正恩氏への後継が淡々と進むだろう。対外的に大きな変化が起こることも考えにくい。しかし、正恩のカリスマ性は誰一人として認めていないのが実情で、国家の実権は軍部が掌握する。これにより、政府中枢では世代交代の抵抗勢力だった李英鎬・朝鮮人民軍総参謀長や総書記の義弟である張成沢・国防委員会副委員長を中心とした親・正日派と、親・正恩派のポスト争いが過熱することになる。
 最悪の場合、1-2年後に軍内部の衝突が起きても不思議ではない。ただ、北朝鮮人民を巻き込んだ国家の革命に至るようなことはないだろう。一般市民の大半はいまだに、正恩の存在すら知らされていないからだ。正日の死去を機に、一部で反体制運動が起こる恐れはあるが、一斉蜂起するほどの情報力や体力はない。結局、軍部の統治が強化されることで、より厳しい管理体制が敷かれることになるだろう」

●久保田るり子氏(産経新聞記者) 産経新聞 平成22年10月3日「淋しき王子、金正恩氏の未来」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110115/kor11011500070003-n1.htm
 ※金正日死去前の記事
 「金正恩氏(略)は「淋(さび)しき王子」になる運命を背負っている。父の威光の残り時間はわずか。その死後、後見するはずの身内、叔母の金敬姫(政治局員)とその夫、張成沢(国防委員会副委員長)が果たしてどう振る舞うのか、それは誰にも分からない。実母、高英姫夫人(故人)は在日韓国・朝鮮人出身で「革命伝統」の神格化に耐えない身分だ。王子の未来には、波乱と激動が待っている」
 「正恩氏には、王子として胸を張れる正当性がない。2004年にパリで死亡したとされる正恩氏の母、高英姫氏は金総書記の内縁の妻である。金総書記の正妻は父、金日成の認めた金英淑という女性だが、消息はまったく不明だ。
高英姫氏は日本系の娘で、出身地は韓国・済州島である。また正恩氏は長男ではなく3男。実母も自身も、儒教的な直系の正当性がなく、「革命伝統」にはふさわしくない」「正恩氏が3代目のカリスマと指導力を確立できるかどうかは、(略)年齢、北朝鮮の逼迫(ひっぱく)した国内・国際情勢から、悲観的な見方のほうが説得力があるだろう」

 次回に続く。

北朝鮮の分析・予想1

2011-12-23 09:53:45 | 国際関係
 北朝鮮は12月19日の特別放送で、金総書記が「17日朝に現地指導の途上、急病で逝去した」「人民の幸福のため昼夜分かたず活動していた」「走る野戦列車内で心筋梗塞を起こした」と発表した。
 だが、米国の偵察衛星情報による分析では、16~18日金総書記の専用列車は平壌・竜城(リョンソン)1号駅から動いていない。また、金総書記の急変に対応する通信の電波も傍受されていない。そのため、金総書記は執務室や病院で死亡したという見方が出ている。
 北朝鮮は、これまで歴史的事実をねつ造してきた。故金日成主席は、氏名・年齢の違う人物が、伝説の英雄の「金日成」になりすましていると見られる。旧ソ連が、旧ソ連軍に所属していた朝鮮人を、反日運動の指導者、百戦錬磨の英雄に仕立て、北朝鮮の指導者にした。息子の金正日はロシアのハバロフスクの生まれだが、聖地・白頭山のふもとで誕生したとする伝説を作った。金親子はねつ造の指導者であり、金王朝は虚偽の世襲王朝である。
 このたびの金総書記の死に関する発表内容は、金正日を最後まで人民のために尽くし、「革命」に邁進したと礼賛し、金日成とともに神聖化するとともに、金正恩体制を固めるための物語の創作だろう。その物語が北朝鮮国内で創作と知られるとき、建国以来の虚偽・ねつ造が暴露され、金王朝、及び先軍主義の専制体制は崩壊に向かうだろう。

 金総書記の死去により、今後の北朝鮮はどうなるか。内外の専門家や有識者、元工作員の発言を収集してみた。

■北朝鮮の国内事情

 まず北朝鮮国内の動きに関する分析と予想に関するもの。

●倉田秀也氏(防衛大学校教授) 産経新聞 平成23年12月21日「正論」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111221/plc11122103120003-n1.htm
 「『金正恩体制」という同心円をつくることは、金正日氏が『強盛大国の大門を開く」として来年2012年に自らに課した目標であった。『大門」を開くのを目前に金正日氏は死去したことになる」
 「金正日氏の統治下、盛んにスローガンに掲げた『先軍」とは煎じ詰めれば、軍が権力から寝返って反体制勢力に加担しないように叫ばれたものであった。軍をあの社会で最も恵まれた部門にすることでそれを掌握し、軍もまた、金正日を祭り上げることで金正日氏と運命共同体たろうとした。金正日氏死去後の軍も当面は、金正恩氏を祭り上げることで引き続き、『先軍」の恩恵に与(あずか)ろうとするであろう」

●マーク・フィッツパトリック氏(英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)核不拡散部長) 産経新聞 平成23年12月21日「私はこう見る 金総書記死去」
 ※紙面から引用
 「これまでのところ金体制に亀裂は見えない。軍も体制が崩壊すればすべてを失うことをわかっており、正恩氏を後継者として受け入れるというのが最もありうるシナリオだ。しかし、権力闘争が起きて体制が崩壊する可能性も3分の1ほど残っている」

●李鍾元氏(立教大教授) 毎日新聞 平成23年12月20日
http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2011/12/20/20111220ddm010030040000c.html
 「数カ月は多分、様子見で、そんなに動かない。不満がある人がいたとしてもすぐには動かないだろう。課題は山積している。経済の不満もある。これらについて新体制が有効な手を打てないとなると、権力構造が流動化して、対抗しようとする人たちが発言権を高めるかもしれない。ただ当面は表面的には、大きく抵抗や反抗する人も多分いないだろうし、今示されている形でやっていくだろう。今回の金正日氏の死去の発表を見ても、内部の安定に必死だという印象を受ける。本来発表しない医学の所見書まで出している」

 次回に続く。

天皇誕生日を寿ぐ

2011-12-23 09:52:11 | 皇室
 本日は、天皇誕生日である。
 世界に比類ない長い歴史をもつ日本皇室の「仁」の伝統を体現される今上陛下は、「民の父母」として国民の安寧に心を砕かれつつ、世界の平和と万民の幸福を願い、ご公務に専心しておられる。
 天皇は日本国の象徴、日本国民統合の象徴であるとともに、日本国民の誇りである。
 陛下が78歳の誕生日を迎えられたこの佳き日に当たり、聖寿の万々歳を祈念申し上げる。

トッドの移民論と日本120

2011-12-22 08:46:47 | 国際関係
●日本国際フォーラムによる政策提言の内容(続き)

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◇提言6 日本語能力を持たない外国人に対し、地域における日本語学習の機会を保障する体制を整備せよ。

 外国人受入れに当たっては、地域社会に異文化集団地域が発生し、日本人社会や他の外国人集団との間でコミュニケーション不足や誤解・敵意が発生することのないよう配慮する必要がある。定住外国人の受入れに当たって、予め日本語能力の有無を確認するのも一つの方法ではあるが、すでに合法的に入国しており、今後一定期間以上日本に滞在が予定される外国人には、日本語学習を奨励し、さらにはその機会を保障することも必要である。国は、生活・就労・就学に必要な日本語能力を判定する基準を設け、簡易に日本語の能力判定ができる仕組を、まず整備すべきである。
 さらに、市町村など関係機関においては、在留する外国人が生活に必要な日本語能力を有しないと判定された場合、一定期間(例えば入国後3年)以内であれば、市町村が当該外国人に対して受講の指示を行い、少ない個人負担で実践的な日本語を学ぶ機会を提供すべきである。自治体が受講指示を行った場合、当該外国人が雇用されている企業・団体は、受講のために労働時間などの面で配慮するべきである。外国人の子どもたちが早急に日本の小中学校に同化できるよう、日本語の特別補講を行うこと等の施策も講ずべきである。

◇提言7 秩序ある労働者受入れと労働者保護のために、「外国人雇用法」を制定するとともに、二国間「労働協定」を締結せよ。

 わが国では、外国人労働者の雇用・労働条件は、労働関係法令と出入国管理関係法令の二つの法体系によって規定されているが、必ずしも整合性がとれておらず、また、企業のコムプライアンス(法令順守)も不十分である。そこで、わが国と周辺国が二国間で「労働協定」を締結し、両国がそれぞれに義務と役割を分担し、秩序ある労働者受入れを実現し、もって効果的に外国人労働者の保護が確保されるようにすべきである。この場合、「労働協定」を国内的に担保するために「外国人雇用法」を制定することが必要になる。雇用対策法に規定した雇用状況届の規定などを「外国人雇用法」に移管するとともに、権利侵害からの迅速な救済の仕組を規定し、出入国管理行政と労働行政が協力して法律を施行する体制を構築すべきである。
 雇用の非正規化が進むなかで、健康リスクや失業リスクに対するセーフティ・ネットは十分に機能していないが、労働・社会保障法上の措置とは別に、入管法上の措置として、労働・社会保険加入の確認ができない外国人の雇用は禁止し、当該違反に対して罰則を適用すべきである。また、非正規な外国人労働者の斡旋、雇用及びトラフィッキングなどを行う者に対しては、周辺国とも協力して厳正に対応すべきである。

◇提言8 「社会保障協定」の締結を促進し、国内外を移動する日本人及び外国人に配慮した社会保障制度とせよ。

 わが国は、独、米、英、仏、加などの先進諸国及びブラジルとの間では「社会保障協定」を締結したが、今後往来の増大が予想される中国、韓国、東南アジア諸国、インドなどとの間では「社会保障協定」の締結交渉は遅れている。「社会保障協定」がない国に滞在する日本人や邦人企業は二重に社会保険料を支払うという不利益を蒙っている。
 他方、わが国において就労する外国人にとっては、公的年金の脱退一時金制度や、5年以上25年未満しか滞在しない外国人の基礎年金の保険料が掛け捨てになる問題が解決されず、外国人の社会保険加入意欲を著しく削いでいる。そのことが、同時加入の健康保険の無保険者を増やす結果ももたらしている。このため、外国人に限り、最低加入年数を25年から10年程度に短縮すると同時に、「社会保障協定」がある場合原則として加入期間を通算する措置を準用し、外国人の社会保険加入率の向上を促進すべきである。海外で活躍する日本人、日本で就労する外国人双方にとって不利益をもたらしている状況を早期になくすために、政府は、主要国や新興国と「社会保障協定」の締結を急ぐべきである。

◇提言9 永住外国人への地方参政権の付与は、憲法違反の可能性が高く、政治的にも懸念を抱かせる要素があり、慎重な議論が必要と考える。

 2009年末においてわが国における「外国人登録者」の数は218万人であるが、そのうち10年以上日本に住む「永住者」は94万人である。内訳は、1945年以前から引き続き日本に在留する者とその子孫である「特別永住者」が40万人、それ以外の「一般永住者」が53万人である。「特別永住者」の99%は韓国・朝鮮籍の人々である。「一般永住者」の中で最も多いのは中国人で、この10年間に5倍に増えている。次いでブラジル人、フィリピン人、韓国・朝鮮人の順である。
 永住外国人への地方参政権の付与に関しては、1995年の最高裁判決が、主文において「憲法第93条第2項にいう(地方選挙権を持つ)『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味する」と明言している。主文とは別に、異論を述べた傍論があるが、法律上の効力はない。永住外国人への地方参政権付与は、憲法違反の可能性が高いのみならず、かれらが地方参政権を梃子に、領土問題や安全保障問題の帰趨に影響を及ぼす恐れがあり、慎重な議論が必要であると考える。ただし、日本国籍を取得した外国人が国と地方の双方において選挙権のみならず被選挙権を有することは、言うまでもない
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 以上である。

●独立主権国家として国益を踏まえた移民政策を

 私は、日本国際フォーラムによる政策提言「外国人受入れの展望と課題」は、各論・詳細においては異論があるものの、方向性においては妥当なものと考える。私がこの政策提言を評価するのは、わが国は、欧州における多文化主義の反省に立った「選択的移民政策」で行くべきであり、「移民は受入れ国社会への統合が可能であり、さらには受入れ国への貢献が期待できる者に限るとの原則」を採用すべきだと主張している点にある。この主張は、独立主権国家である日本は、国益を踏まえて移民政策を行うべきだという基本的な姿勢にとるものである。
 この姿勢は、日本を移民国家・多民族国家に変造しようとする坂中英徳氏とは、大きく違う。坂中氏は「日本復活に向けて取り組むべき最優先課題は移民国家の確立」だという。そのとんでもない亡説が、自民党・民主党の政治家の相当数に影響を与え、また日本経団連をはじめとする財界の意向に適ったものとなっている。こうした現状において、日本国際フォーラムが、日本の現実を踏まえつつ、独立主権国家として国益を踏まえた移民政策を提言していることは、坂中氏の妄説に対抗するうえで、有効だと私は思う。
 ただし、この政策提言には、数値目標とスケジュールがない。この点、坂中氏は、2050年に人口1億人、うち移民が10%で1000万人という数値目標とスケジュールを示している。私は後に紹介する金子勇氏の提案を受け、適正人口1億人、30年後に合計特殊出生率1.80を目標とした脱少子化を進め、これに移民政策を加えて、移民は人口の上限3%の300万人まで、うち中国人は100万人まで、としたい。
 さて、日本国際フォーラムの提言で示されるような移民政策を企画するには、移民政策に入る前に大前提となる方針がなくてはならないと私は考える。その方針とは、わが国の最重要課題である日本の精神的復興を進め、自主憲法の制定、自主国防の整備、誇りある歴史の教育、日本的道徳の回復、家族の復権等の課題の実行である。その点について、次に述べたいと思う。

 次回に続く。

参考資料
・財団法人日本国際フォーラムのサイト
http://www.jfir.or.jp/j/index.htm
・同フォーラムによる政策提言「外国人受入れの展望と課題」
http://www.jfir.or.jp/j/pr/pdf/33.pdf