ユダヤ教は、現世における利益の追求を肯定し、金銭の獲得を肯定する。ユダヤ教的な価値観が非ユダヤ教徒の間にも広く普及したものこそ、今日に至る資本主義の精神だと私は考えている。
そして、資本主義世界経済の発達によって、ユダヤ教の価値観がヨーロッパ文明のみならず、非ヨーロッパの諸文明にも浸透した。ユダヤ人だけでなく、ユダヤ的な価値観を体得した諸国民が、地球規模の資本主義経済を推進しているのである。
ここにいうユダヤ的価値観が経済機構として現実化したものの一つが、ヨーロッパ各国につくられた中央銀行である。1913年には、アメリカにも連邦準備制度という名のもとに中央銀行がつくられた。また中央銀行制度を核心として、第2次世界大戦後に作られた世界銀行(IBRD)や国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)等の国際経済機構も、ユダヤ的価値観が経済機構として現実化したものだろう、と私は考えている。「国際連合=連合国」は、こうした国際経済機構が世界的に機能するための政治的・軍事的な調整機関となっていると思われる。
第2次大戦後、ドルが基軸通貨となったことにより、アメリカ連邦準備銀行(FRB)は、先進国諸国の中央銀行の中で中心的な存在となった。すなわち基軸通貨ドルを発行し、金利を決定する世界の金融の要となったのである。
世銀やIMFは、巨額の資金を対象国に融資し、戦後の復興の事業で利益を出した。また、その国が経済発展の段階に入ると、中央銀行を設立したり、または傘下にしたりして、その国の経済を管理下に置く。そして金融を通じて国家を支配する活動をしているものと思われる。その世銀にしてもIMFにしても、アメリカからドルの供給を受ける。世銀やIMFは、アメリカの連邦準備銀行がその国際業務を、国際社会の経済機構に担わせたものとも考えられる。そして、連銀は、純粋にアメリカの銀行ではなく、ユダヤ系を中心とする米欧の巨大国際金融資本が共同出資した世界中央銀行的存在と考えられる。
アメリカの連邦準備制度とは、ロスチャイルド家が成し遂げたヨーロッパの金融による支配をアメリカにも拡大したものである。さらに、その制度を基礎とする世銀・IMF等は、それを世界に拡大するものだろう。こうした金融による世界支配は、ユダヤ的な価値観に基づくものだと私は考える。その推進主体は、ユダヤ人に限らない。ユダヤ的価値観を体得した非ユダヤ人が、多数いる。ユダヤ系かどうか、ユダヤ教徒どうかは、本質的ではない。ユダヤ的な価値観を体現しているかどうかがポイントである。言い換えれば、巨大国際金融資本が、金融による世界支配を進めているのであり、その所有者や経営者の中には、ユダヤ人もいれば非ユダヤ人もいるということである。
資本は欲望の権化であり、欲望の物質化・機構化にほかならない。欲望を解放し、欲望が欲望を刺激して、自己増殖するシステムが資本主義である。その欲望の解放・増大を肯定し、促進するのが、ユダヤ的価値観である。
国家間の対立、イデオロギーや体制の違いに関りなく、資本は双方に投資し、国家間の競争を利用して価値増殖運動を続ける。戦争も平和も、好景気も不景気も、すべてビジネス・チャンスであり、諸国家の興亡も、諸文明の隆衰も、資本の成長にとってはすべてが栄養となる。この資本と決定的に対立するもの。それは、自然である。地球の自然こそ、資本の暴走の前に立ちはだかる、もの言わぬ警告者である。自らの欲望を制御できずに突き進む人類に対し、地球の自然は、自滅の危機を黙示している。中でも重大な警告が、地球の温暖化であり、それに伴う気象の異変や生態系の崩壊である。
人類社会を大きく変貌させてきた近代西洋文明の重要要素に、ユダヤ的な価値観がある。その価値観を転換し、人と人、人と自然が調和して生きる価値観を確立し、世界に普及すること。それが、現代人類の重要課題である。
●ロスチャイルド家とロックフェラー家の勢力の変化
ところで、私は、20世紀以降、ヨーロッパの財閥とアメリカの財閥の力関係は、ヨーロッパの国家群とアメリカ合衆国の優劣と相関していると思う。第2次世界大戦後、イギリス、フランス、オランダ、ベルギー等は植民地を失い、国力を下げた。逆にアメリカは、戦時中の軍需生産によって、圧倒的な経済力と軍事力を獲得した。
ロスチャイルド家は、大戦中、ヒトラーによってフランクフルトとウィーン、またムッソリーニによってナポリのロスチャイルド家が滅ぼされた。生き残ったのは、ロンドンとパリの二家のみとなった。
その一方、ロックフェラー家は、躍進したアメリカにおいて、全米の富の半分以上を所有する巨大財閥となった。その結果、ロスチャイルド家は相対的に力を弱め、ロックフェラー家が勢力を伸ばした。
ただし、ロスチャイルド家は、大戦で痛手を受けたとはいえ、なお巨大である。戦後もイギリス王室の繁栄は、ロスチャイルド家の富で支えられ、フランスの国家経済はロスチャイルド家の影響下にある。ウィンストン・チャーチルは戦後も常にロスチャイルド家に忠実であり、ジョルジュ・ポンピドゥーはロスチャイルド銀行の頭取からフランスの首相となった。ユダヤ人を同化したイギリスやフランスは、逆に経済的にはユダヤ人の特定集団に支配される国になったのである。
イギリスは、アラブ対ユダヤの対立に手を焼き、1947年(昭和22年)、パレスチナの委任統治権を「国際連合=連合国」に返上した。以後、ユダヤ人国家を建設しようとするシオニズムの後ろ盾となる国家は、アメリカに替わった。ここで重要な役割を担うことになったのが、ロックフェラー家である。
ロックフェラー財閥は、スタンダード・オイル社の創業者一族であり、代々アメリカの石油、金融、不動産、軍事産業、マスコミなどあらゆる産業を支配してきた。その富をもって、国際政治に強い影響力を発揮してきた。ロックフェラー家はユダヤ系ではないが、ロスチャイルド家とは深い関係にあり、ユダヤ的価値観を体得・体現した財閥である。
アメリカは、イスラエル以外で、世界で最も多くのユダヤ人が住む国家である。アメリカのユダヤ人の6~7割はニューヨークに住む。ニューヨークの人口の3~4割はユダヤ人といわれ、世界の金融を支配するウォール街は、ロンドンのシティとともに、ユダヤ人が活躍する舞台である。それゆえ、英米両政府は、ロスチャイルド家をはじめとする巨大国際金融資本の要望と支援を受けて、ユダヤ人の権利が保障されるような国際社会を実現しようとしてきたと考えられる。
次回に続く。