ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

移民につながる入管法改正に反対する

2018-11-30 09:13:05 | 時事
 入管法改正案(出入国管理・難民認定法)は衆院を通過し、審議の舞台は参院に移りました。
 多くの論点が置き去りのまま、法改正がなされようとしています。毎日新聞は11月28日号で、外国人労働者受け入れを巡る主な論点を表にして掲げています。

 来年4月の制度開始:来年4月開始になぜこだわる? 諸対策は間に合うのか?
 受け入れ業種・分野:なぜ14業種が検討対象に? 各業種・分野の技能水準は?
 受け入れ見込み人数:算定の根拠が曖昧では? 最終的な見込み人数は?
 日本人雇用への影響:日本人と仕事の奪い合いになる恐れはないか?
 技能実習生の失踪:失踪した実習生の動機などを記載した「聴取票」を野党が調べたところ「最低賃金以下」が8割超
 労働環境:賃金支払いや雇用契約などは適正に行われるか?
 「移民政策」か否か:条件が整えば永住への道も開ける。「移民政策」なのでは?
 社会保障:医療、健康保険などのコストは? 年金制度はどうなる?
 受け入れ環境整備:日本語教育の体制は? 行政サービスの窓口になる地方自治体への支援は?
 地方への効果:大都市部に集中して、地方の人手不足は解消されないのでは?
 治安:不法滞在・不法就労、犯罪、トラブルが増加するのでは?
https://mainichi.jp/graphs/20181128/hpj/00m/010/001000g/4

 どの項目も重要な論点であり、長期的に見て「受け入れ見込み人数」「日本人雇用への影響」「『移民政策』か否か」「社会保障」「治安」は、日本の国家のあり方と国民生活に大きな影響をもたらすことは、明らかです。とりわけ重大なのは、このままの法改正は、移民拡大につながることです。
 11月27日東京都文京区の文京シビックセンターで『移民に繋がる入管法改正に反対しよう!"緊急”反対集会』が行われました。主催は、英霊の名誉を守り顕彰する会です。その集会の登壇者が賛同採択し、自民党本部に提出した意見書を紹介します。

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平成30年11月27日

日本国内閣総理大臣
安倍 晋三 殿

事実上の移民政策を意味する入管法改正案に反対する意見書

 日夜、日本国の内政・外交に尽力しておられるお姿に敬意を表します。  

 しかし、現在の日本国政府の諸政策のうち、今国会で審議されている入管法改正案に対し、私たちは異議を表明し、現時点での法案成立に反対する意見書を提出いたします。  

 安倍総理は常々、現内閣は移民政策を取らないことを表明してこられました。しかし、現在の入管法改正案を見る限り、この法律は実質的には移民政策と判断せざるを得ません。  本改正法案の骨子は「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に、就労可能な「特定技能1号」を与え(在留期間は通算5年、家族の帯同は認めない)さらに高度な技能を持つ外国人には「特定技能2号」の資格を与え、将来的には永住権付与の可能性も開けることになっています。さらに、政府は農業や介護、建設、造船、宿泊など、労働力が不足する14業種において外国人労働者を受け入れることを表明しています。  

 移民の定義とは「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12ヶ月間当該国に居住する人」(国連事務総長報告、1997年)であり、この「外国人労働者」は完全に「移民」です。  このような労働現場での移民の受け入れは、労働現場において、現在報じられる外国人実習生の取り扱いにみられるような、日本企業のモラルの低下をもたらし、日本国民、移民いずれもが低い賃金に抑えられる結果を招きかねません。

 それはアベノミクスの現在の成果を後退させるデフレ状況を生み、更なる日本国の少子化につながります。 また、上記の業種の労働力不足を移民によって埋めようとすれば、当然のことながらその後も継続的にその業種は外国人労働者を必要とすることになり、継続的な移民受け入れが生じます。 また、期限付きの雇用では、5年間でやっと仕事を覚えた労働者を雇用者側は失うことになり、おそらく在留資格の更新や再入国の方法を模索し、結局、永住への道を自動的に開くことになるでしょう。また、技能実習生は「特定技能1号」に無試験で移行できることになっていますが、現状の技能実習制度においても、年間数千人以上が職場から逃亡し、行方不明になっています。入国管理局は失踪者の行方を把握しておらず、警察も事件が発生するまで動きません。その結果、失踪者は野放しで、毎日不法移民が増大し、その数は累計で数万人に達しています。この問題が解決されないまま、看板の掛け替えだけで受け入れ人数の拡大が行われようとしているわけですから、不法移民を激増させることは自明の理です。入国管理庁が稼働し、本格的な対策が講じられるまで法案の審議は延期されるべきです。

 以上から、今回の入管法改正は、日本を後戻りできない移民社会に導くことになります。  日本が少子化や労働力不足に直面していることは事実です。しかし、現状でも国内に失業者は存在し、望まぬ非正規労働や低賃金に悩んでいる国民も多数存在します。日本政府がまず行うべきことは景気回復のためのさらなる努力であり、日本国民の雇用安定と生活向上ではないでしょうか。  

 さらに、この移民政策はさらに深刻な危険性があります。 移民は機械や部品ではなく、日本人とは異なる文化、伝統、風習を持つ個々人です。西欧諸国における移民受け入れは、国民と移民との間に生じた様々な文化摩擦を生んでいます。結果として、国民の側には外国人に対する不信感が生じ、移民の側にも、疎外感や文化的孤立感から犯罪に走るものや、「ホームグロウン・テロリスト」と呼ばれる社会破壊分子を生むことにもつながっています。
 このような文化摩擦を防ぐためには、日本語教育、社会教育、職業訓練を含む充実した教育体制、犯罪者への徹底的な捜査、逮捕、再入国禁止などを可能とする管理体制と捜査体制の確立などが絶対に必要なのですが、その準備はできていません。

 また、日本にはいまだに、スパイ防止法に相当する、国外からの工作活動を処罰する法制度が確立されておらず、移民として工作員が潜入することが十分可能です。 一例をあげれば、北京オリンピックが開催された年、長野の町を一夜にして中国国旗を持った中国人が埋め尽くしました。彼らは中国人留学生たちであり、在日本中国大使館により「動員」されたのでした。中国からの移民にこのような指令が再び行われる危険性も、私たちは危惧しております。 そして、この長野の事例で観られるように、日本に敵対的な発想を抱きそのような教育を青少年に行っている国家からは、移民のみならず、留学生の受け入れも極めて危険であることを日本政府は認識すべきでしょう。そのような国家からの国費留学制度は中止すべきです。同じ意味で、先般の日中首脳会談で合意された日中青少年3万人交換計画は、わざわざ日本国内でのあらゆる工作活動を許しながら、無防備な日本人青少年を反日洗脳教育に晒す行為であり、絶対に実施すべきではありません。

 私たちは、外国人への差別や偏見を扇動する意思は全くありません。むしろ、移民を不幸にし、また、日本社会に不可逆的なダメージを与えることを何よりも畏れるからこそ、安易な移民政策に反対しているのです。日本は古来から、外国の文化を積極的に受け入れることによって、わが国の発展を成し遂げてきました。そして同時に、一定の文化的均一性、他民族との適切な距離感を保つことによって、文化的成熟度に基づく平和な秩序と伝統を保ってきたのです。安倍総理の「美しい国」とは、まさにそのような国家を指すのではないでしょうか 現在の入管法改正は、事実上の「規律なき移民受け入れ法案」として、わが国の将来に大きな禍根を残す危険性を抱いています。安倍首相におかれましては、直ちにこの法案の廃案、もしくは根本からの見直しを、日本国の主権と伝統、そして未来を担う内閣総理大臣として決断してくださることを求めます(終)

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キリスト教125~フランスにおける宗教的対立と国王権の伸長

2018-11-29 09:28:43 | 心と宗教
●フランスにおける宗教的対立と国王権の伸長

 次に、フランスの近代史について述べる。
話は中世にさかのぼるが、神聖ローマ帝国では中世を通じて教皇権と皇帝権の勢力争いがあったのに対し、フランスでは教皇権と国王権の争いが繰り広げられた。そして、国王権が徐々に強化され、教皇権は衰退していった。
 フランスで特筆すべきは、アヴィニョン捕囚と教会の大分裂である。1309~77年、教皇7代が南仏のアヴィニョンに移され、フランス国王の支配下に置かれた。続いて、1378年から1417年までは、ローマとアヴィニョンに教皇が並立し、カトリック教会が両派に分裂する状態だった。バビロン捕囚の時期の途中に、英仏百年戦争が起こり、その戦争の最中には、カトリック教会が分裂していた。こうした出来事は、神聖ローマ帝国では起こり得なかった事象であり、フランスにおける王権の強大さを示すものである。
 近代に入り、16世紀初めになると、フランスでは、王権が著しく伸長し、王の意思は領地に行きわたり、ひとたび王が命令を発すれば、たちまち国家全体が動き出すといっても過言ではないほどだったといわれる。こうした国王権が増勢し、教皇権が後退していたフランスにも、宗教改革の波が押し寄せた。
 フランスでは、カルヴァンの思想が広がった。カルヴァン派プロテスタントは、ユグノーと呼ばれた。教義争いは政治的な争いに発展した。1562年、カトリック派の首領ギー公によるユグノー虐殺事件をきっかけに、ユグノーとカトリック派によるユグノー戦争が始まった。ユグノー戦争は、ドイツ30年戦争に先立つキリスト教徒同士の宗教戦争だった。ギー公と対立するブルボン家は、ユグノーを支持した。8次に及ぶ戦争は、1598年ナントの王令によって、カルヴァン派の信仰が公認され、終結した。ナントの王令は、約40年前の神聖ローマ帝国におけるアウグスブルグ宗教和議の内容に通じるものだった。
 ユグノーは、暴君放伐論を唱えた。神の法に従わない君主に従う義務はなく、暴君は追放すべきだという主張である。この主張は、ロックの抵抗権・革命権の思想の先駆であり、ロックに影響を与えた。
 ユグノー戦争の間、ユグノーを支持した国王アンリ3世は、カトリックの修道士に暗殺された。それによって、ヴァロア朝は断絶し、ブルボン朝に移った。
 ブルボン家は以前、ユグノーを支持していたが、王位を得ると、カトリック信仰に戻った。ハプスブルグ家に対抗し、ドイツ30年戦争に参戦して、ウェストファリア条約を主導した。主権国家体制が生まれた西欧において、大陸ではフランスが優位を占めた。そして絶対王政の主権国家として勢力を伸長していった。
 近代主権国家は、国王に権力が集中し、官僚制と常備軍を備えた絶対王政国家として姿を現した。王権の強大化によって形成された政治体制が、絶対王政(absolute monarchism)である。絶対と形容されるのは、王が絶対者(the Absolute)すなわち神の代理人を任じ、絶対的すなわち専制的な政治を行って、無制約に権力を振るう様を表すものと言えよう。
 絶対王政の王権の確立によって、近代的な主権が登場した。同時に、近代的な主権を持つ国家が形成された。近代国家は、国境によって区画された領域、国家に所属する人民、国家を統治する主権という3要素を備えた政治団体である。
 絶対王政は、封建制国家から資本主義的な近代国家への過渡期に位置付けられる政治体制である。封建制国家では、統治権は君主と貴族が分有するが、その上に教皇がおり、神聖ローマ帝国には皇帝がいるという複雑で多元的な関係になっていた。西欧の中世から近代への政治的変化は、まずこの多元的な封建政治から専制的な君主政治へ移行した。そして、教皇の主権、皇帝の主権に替わって、国王の主権が地域的に確立していった。正確に言えば、それらが新たな近代主権国家体制に組み直されたのである。

 次回に続く。

キリスト教124~第2次世界大戦と核兵器の開発・使用

2018-11-27 09:36:54 | 心と宗教
●第2次世界大戦と核兵器の開発・使用

 アメリカは、ニューディール政策を実施するとともに、関税引き上げなど保護主義的な政策を行い、ラテン・アメリカ諸国との外交を強化し、通商の拡大に努めた。世界恐慌後の経済危機を乗り越えるため、既にイギリスは、1932年保護関税政策を始め、さらにイギリス連邦内に特恵制度を取って、スターリング・ブロックを設定していた。フランスもこれに対抗して、植民地を基盤として、自国中心のフラン・ブロックを形成し、域外からの輸入品に高い関税をかける等の措置を講じた。資本主義列強が取ったこうした経済政策が、ブロック経済である。 排他的な経済圏の成立は、第1次世界大戦で植民地を失ったドイツや、もともと経済基盤の弱い日本、イタリア等の経済を一層悪化させるものとなった。これらの国々では、危機を打開しようとして、排外的なナショナリズムや全体主義が台頭した。
 こうして、第1次世界大戦後、戦勝国によって築かれた国際社会の秩序は、世界恐慌によって大きく動揺した。各国は自衛と生存のために、自己本位の政策を推し進めた。その結果、アメリカ、イギリス、フランス等の「持てる国」とドイツ、イタリア、日本等の「持たざる国」との対立が深まっていった。その対立が、2度目の世界大戦に至った。
 1939年9月にヨーロッパで第2次世界大戦がはじまって以来、アメリカは2年以上、参戦せず、事態の展開を見ていた。参戦の機会を待ち望んでいたFDRは、日本に対して禁輸措置を行い、ハル・ノートを突きつけて、日本の方から侵攻するように仕組んだ。追い込まれた日本が真珠湾攻撃を行うと、FDRは今だとばかりに米国民にこれを「だまし討ち(スニーク・アタック)」だと訴え、米国民を戦争に駆り立てた。アメリカは、対日戦でも対独戦でも圧倒的な生産力を発揮した。西方キリスト教文化圏において、かつてない破壊が繰り広げられた。その破壊力は、軍事に応用された科学工業力によるものである。その破壊力の追求のピークに誕生したのが、原子爆弾である。
 アメリカは、本土空襲で傷つき、終戦を模索する日本に対して、1945年8月、6日には広島、9日には長崎に2発の原子爆弾を投下した。原子爆弾は、悪魔の兵器と言われた。それを開発したのはキリスト教徒であり、それに協力したユダヤ人である。また、それを実戦で使用し、無辜の一般市民を核エネルギーで虐殺したのは、キリスト教国・アメリカである。 第2次世界大戦中に進められた原爆の研究は、「マンハッタン計画」と呼ばれた。国家最高機密事項であり、大統領やヘンリー・スティムソン陸軍長官など限られた関係者のみしか知らず、議会への報告などは一切行なわれなかった。大統領直轄の最優先プロジェクトとして、膨大な資金と人材が投入された。ユダヤの「死の商人」バーナード・バルークにとって、原爆は巨大なビジネス・チャンスだった。マンハッタン計画は優秀なユダヤ人科学者が多数参加して、進められた。
 1945年4月にルーズベルトが急死し、副大統領のハリー・トルーマンが大統領に就任した。原爆が完成すると、バルークはトルーマンに原爆の対日使用を積極的に勧めた。彼は、京都への原爆投下を主張した。これに反対し、広島と長崎への投下を決定したのは、陸軍長官スティムソンだった。
 スティムソンは、原爆使用に対する批判が起ると、「原爆投下によって、戦争を早く終わらせ、100万人の米国兵士の生命が救われた」と発言して、使用を正当化した。それが、今日も米国の世論の多数意見となっている。だが、それが理由であれば、広島に続いて長崎に投下する必要はなかった。広島にはウラン型原爆のリトル・ボーイ、長崎にはプルトニウム型原爆のファット・マンが投下された。これら2種の効果を実験するために投下されたのである。また、ソ連に対して核兵器の脅威を与え、大戦後の世界で優位を確保することが目的だったと見られる。
 原爆投下は、ハリー・トルーマン大統領が決定したというのが長く定説になっていた。だが実は大統領は決定を知らなかったことが明らかになった。また原爆使用の実際の理由は、膨大な開発費が投じられてきたことを正当化するためだったという説が有力になっている。
 ドイツ30年戦争以後、「死の商人」として戦争で巨富を獲得したユダヤ人がいたが、2度の世界大戦と原爆の開発・増産の時代に軍需産業で活躍したバルークこそ、ユダヤの「死の商人」の典型である。また、国家間に積極的に戦争を起こさせ、多数の人命と国土の破壊を通じて、富を増大しようとする彼のビジネスは、ユダヤ的価値観の一つの究極の姿と言えるだろう。
 近代以降の世界において、キリスト教徒とユダヤ人には、相補的な関係が見られる。キリスト教徒の権力者が富とさらなる権力を求める時、ユダヤ人が金と武器を提供する。こうしたキリスト教徒とユダヤ人の相補性が、世界の支配と破壊を推し進める巨大な力を生み出している。

 次回に続く。

韓国との歴史戦に対応を~西岡力氏

2018-11-26 09:35:29 | 国際関係
 朝鮮半島問題専門家の西岡力氏は、平成30年11月1日付の産経新聞に韓国の自称元徴用工裁判について書いた。
 西岡氏は、この裁判の結果を予想して、二つの提言をしてきた。第一に、政府が積極的に介入して民間企業の財産を守ること、第2に官民が協力して国際社会に、戦時労働動員と日韓戦後処理の真実を広報することである。だが、政府は西岡氏の提言を採用していない。そして、韓国の最高裁が新日鉄住金に対して原告4人への損害賠償を支払うよう命じた判決が下してから、あわてて対応しているように見える。
 西岡氏は記事の中で、原告の4人は、徴用ではなく、「募集」「官斡旋」で渡日したと書いている。原告は、戦時における合法的な民間企業での期限契約賃労働で働いたのである。また、韓国は日韓協定で3億ドルを受け取り、それを以て未払い賃金や貯金があった者への清算を行ったので、原告もそのとき清算を受けられたはずだと、西岡氏は指摘する。日本政府は、こうした事実関係を調査し、韓国政府に突き付ける必要があるだろう。
 西岡氏によると、韓国の廬武鉉政権は、首相傘下の「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」をつくり、「動員被害者」として22万人を認定した。今回の不当判決によって、今後、これら22万人が損害賠償を請求してくる可能性がある。一人1千万円として、合計2兆2千億円という巨額になる。
西岡氏は、「わが国が10年以上、韓国政府の歴史戦に政府レベルで対応してこなかったつけだ」と指摘する。そして、「日本の立場からの徹底した調査研究と国際広報を行うため、わが国も公的な研究広報組織をつくるべきときが来ている」とその設立を提案している。
 日本国政府は、わが国の国益と日本人の誇りを守るため、早急に対韓歴史戦を担う機関を立ち上げ、西岡氏らのような専門家を協力者として組織すべきである。
https://special.sankei.com/f/seiron/article/20181101/0001.html

キリスト教123~アメリカ発の世界恐慌とFDR政権

2018-11-24 09:29:14 | 心と宗教
●アメリカ発の世界恐慌とFDR政権

 第1次大戦を通じて世界最大の債権国となったアメリカは、大戦後、世界経済を主導する大国となった。大戦期の輸出で発展した重工業の成長、ベルトコンベアで生産される自動車の大衆化、洗濯機・掃除機・冷蔵庫等の電気製品の普及、ラジオ・映画等の大衆文化の発達等によって、アメリカは「黄金の20年代」と呼ばれる空前の繁栄を手にした。
 また、国際金融の中心は、ロンドンのシティからニューヨークのウォール街に移った。近代世界システムの中心都市となったニューヨークは、1920年には、人口800万人を超える世界最大の都市となった。
 大戦後の好景気を謳歌するアメリカで、だぶついた資金は株式市場に流入した。投機熱によって、ダウ平均株価は24年からの5年間で5倍も高騰した。しかし、その一方、アメリカでは、農業不況の慢性化、鉄道や石炭産業部門の不振、合理化による雇用抑制等が生じていた。29年に入ってからは、工業製品が生産過剰に陥っていた。
 これらの要因が複合して、1929年10月24日ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落した。わずか1週間で、当時のアメリカの連邦年間予算の10倍にも相当する富が消失した。銀行や工場は次々と閉鎖に追い込まれ、かつてない恐慌に発展した。これが大恐慌である。
未曽有の事態に直面したアメリカの投資家は、世界各国に投資していた資金を引き上げた。そのため、恐慌は世界に波及し、史上最大規模の世界恐慌となった。
 アメリカでは混迷を打開するため、フランクリン・D・ルーズベルトが大胆な政策を提案し、現職大統領のフーバーを破って、1933年に大統領に就任した。
 就任後、ルーズベルトは、議会に働きかけて矢継ぎ早に法案を審議させた。全国産業振興法(NIRA)で労働時間の短縮や最低賃金の確保、農業調整法(AAA)で生産量の調整、民間資源保存団(CCC)による大規模雇用、テネシー川流域開発公社(TVA)等の公共事業による失業対策等を、ルーズベルトは、強力に進めた。これらの一連の政策が、ニューディール政策である。
 1933年に、アメリカの失業率は25.2%という最悪の数字を記録したが、ニューディール政策によって、37年には14.3%に失業率が下がった。景気も回復の兆しが現れた。しかし、政策のいくつかに対し、最高裁が違憲判決を出し、また、統制主義的な政策には反対勢力が根強く存在した。そのため、ルーズベルト政権は、中途半端な形でしか政策を実行できなかった。38年、累積債務の増大を憂う財政均衡論の意見に押されて、政府は連邦支出を削減した。すると、GNPは6.3%減少、失業率は19.1%に跳ね上がって、危機的な状況に陥った。
 結局、アメリカが失業問題を解決できたのは、第2次世界大戦が始まってからである。軍需の増加によって初めて完全雇用を実現できたのである。そのうえ、アメリカの工業生産は、戦争中かつてない規模に拡大した。
 大恐慌からFDR政権の時代に、アメリカのユダヤ人はさらにその経済力を強めた。大恐慌によって、それまでWASP支配が強固だったウォール・ストリートで、ユダヤ人の投資家が躍進した。1930年代に入ると、ユダヤ人が消費産業やラジオ・映画産業部門で事業を発展させた。FDR政権では、大統領周辺にユダヤ人が集まり、政治を直接動かすほどになった。ユダヤ人の新興事業家たちはニューディール政策を支持する財界の支柱の一つになった。FDR政権でアメリカが第2次世界大戦に参戦すると、ユダヤ人は軍需産業を中心にさらに勢力を拡大した。
 FDR政権の成立後、ユダヤ人は黒人等の少数民族や労働組合と連携してリベラル連合を形成して民主党を支えつつ政治的な影響力を増していった。それによって、WASPの影響力が低下した。そして、WASP的な価値観に取って代わって、ユダヤ的価値観が支配的になっていった。WASPの支配集団にユダヤ人が参入し、WASPとユダヤ人が融合して、アングロ・サクソン=ユダヤ連合が出来た。その過程で、WASPにユダヤ的価値観が浸透した。このことは、キリスト教にユダヤ的価値観が深く融合したことを意味する。

 次回に続く。

警察権と防衛力を持つ「海洋警備隊」の創設を~山田吉彦氏

2018-11-23 08:42:55 | 時事
 東海大学教授・山田吉彦氏は、 産経新聞平成30年10月24日の記事で、中国の動きを踏まえて、警察権と防衛力を持つ「海洋警備隊」の創設を提案している。
 山田氏によると、中国は海洋進出の過程で、海上警備体制の改革を進めてきた。2013年には、海上での法執行機関を統合し、日本の海上保安庁を規模や装備面でしのぐ「中国海警局」を創設した。今年7月には同局は中央軍事委員会の指導下にある中国人民武装警察部隊(武警)に編入され、「中国人民武装警察部隊海警総隊」となった。すなわち、「軍隊の一部に変貌し、人民解放軍や民兵と一体化して戦う組織に変わった」のである。
この中国海警局の改編は、米国の沿岸警備隊(USCG)に対抗したものである。「USCGは、国土安全保障省に属する法執行機関だが、米国が戦争状態となった場合は、大統領令により国防総省の指揮下に入る軍事機関」である。
 山田氏は、米国に対抗する中国の動きを踏まえて、次のように提案する。「広範囲な海域における海洋安全に寄与するには、内外の軍事的な機関と連携できるUSCGに匹敵する警察権と防衛力を併せ持った「海洋警備隊」の創設が必要である」と。
 山田氏は、世界の海は海賊の重武装化や凶悪化が進み、海保が警察機関として対応できる能力をはるかに超えており、南シナ海では「中国の軍拡で、アジアの海洋安全保障は警察権を重視した体制から軍事的な体制へと移行している」指摘している。
 山田氏は、記事の結尾部に「国際社会からの期待に応え、新設された陸上自衛隊水陸機動団などとも連携して、日本の海、世界の海の安全に寄与する体制を構築すべきだと考える。海洋安全保障における国際水準に対応できなければ、日本だけが取り残されることになりかねない」としか書いていない。
 だが、この一節より前の部分に、「海上保安庁法第25条は海保が軍隊として組織、訓練され、または軍隊の機能を持つことを禁じている」と書いており、海洋警備隊の創設には、海上保安庁法の改正が必要と思われる。
 以下は、山田氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成30年10月24日

https://www.sankei.com/column/news/181024/clm1810240004-n1.html
【正論】防衛力持つ「海洋警備隊」創設を 東海大学教授・山田吉彦
2018.10.24 12:30

 ベトナムのフック首相は10月6日、ハノイで日本の記者団に対し「航行の自由や、平和と安定の維持に向け、日本が引き続き役割を担うことを期待する」と発言した。フィリピン、インドネシアなども日本の海洋秩序の構築に対する貢献を求めている。日本は、中国に脅かされているアジア海域の安定のために行動を起こさなければならない。それは、日本のシーレーンを守ることと一体である。

≪沿岸上陸作戦を想定する中国≫
 中国の覇権戦略は、中国経済圏の拡大と軍事展開を同時に進めるというものだ。艦艇や武器を充実させ、アジア、アフリカ諸国の港湾を経済的に支配し、海洋拠点を形成して「一帯一路」を進めることで、中華民族の復興を目指している。
 しかし、強引な経済進出は各国に警戒心を抱かせ、中国からの経済支援や共同事業を敬遠する風潮も生んでいる。米国は政治経済・安全保障面で対中抑止を強めており、中国は膨張した海洋進出を見直し、南シナ海での海洋支配の地固めに重点を置き始めている。
 現在、南シナ海スプラトリー諸島のスービ礁では400棟以上の建造物、3000メートル級滑走路、ミサイル発射台などの軍事施設が確認されている。またミスチーフ礁とファイアリークロス礁にも同様の施設が建造されている。
 中国は海洋進出の過程で、海上警備体制の改革を進めてきた。2013年、海上での法執行機関を統合し、日本の海上保安庁を規模や装備面でしのぐ「中国海警局」を創設した。さらに今年7月には、同局を中央軍事委員会の指導下にある中国人民武装警察部隊(武警)に編入し、「中国人民武装警察部隊海警総隊」となった。
 対外的な呼称は「中国海警局」だが、軍隊の一部に変貌し、人民解放軍や民兵と一体化して戦う組織に変わったのだ。
中国海警局の改編は、米国の沿岸警備隊(USCG)に対抗したものである。USCGは、国土安全保障省に属する法執行機関だが、米国が戦争状態となった場合は、大統領令により国防総省の指揮下に入る軍事機関だ。
 中国海警局は常時、人民解放軍と一元化した指揮系統を持ち、USCGよりも速やかに軍事展開できるとされる。
 また、強襲上陸による支配地の拡大と島嶼(とうしょ)における拠点防衛などを任務とする海軍陸戦隊を、20年に3万人にまで増員する計画だ。中国海警局と陸戦隊の拡充は、沿岸上陸作戦を想定したものであり、アジア海域に対して、さらなる脅威を与えている。

≪海保の警察力では追いつかない≫
 わが国では海保と自衛隊が連携するため、自衛隊法第82条で海上における日本人の生命財産の保護や、治安維持に必要があると防衛相が判断した場合は、首相の承認を得て「海上警備行動」を発令する。海保が行う任務を自衛隊が遂行し、海保は防衛相の指揮下に入ると想定されている。
 しかし、海保は国際水準では「準軍事機関」に相当するものの、防衛的な役割で軍事的任務に就くことは許されていない。海上保安庁法第25条は海保が軍隊として組織、訓練され、または軍隊の機能を持つことを禁じている。
 1950年、海保は国連軍の要請により朝鮮戦争における掃海活動に従事し、その際に触雷して掃海艇が沈没。1人が死亡し18人が負傷した。死者を出したことは海保にとって重圧となり、以後、純粋な警察機関として、アジア各国の海上警備協力をリードする役割を担った。特に当初は、海賊対策に効力を発揮した。
 しかし、世界の海は海賊の重武装化や、イエメン沖での反政府組織によるタンカーへの砲撃などで凶悪化が進み、海保が警察機関として対応できる能力をはるかに超えてしまった。さらに南シナ海も中国の軍拡で、アジアの海洋安全保障は警察権を重視した体制から軍事的な体制へと移行している。

≪国際水準に対応した体制に≫
 日本国内においても、外国船による管轄海域への侵入や密漁、北朝鮮船の漂着などに対応する任務が拡大している。政府は海保の人員を増強し、2018年度の定員は前年度比250人増の1万3994人となった。しかし、実数は約1万2700人で、1000人を超える欠員を補いながら「日本の海」を守っているのが実情だ。海保の任務はあまりにも多く、すでに、遠洋におけるシーレーンの安全確保は海保の能力の範疇(はんちゅう)を超えている。
 広範囲な海域における海洋安全に寄与するには、内外の軍事的な機関と連携できるUSCGに匹敵する警察権と防衛力を併せ持った「海洋警備隊」の創設が必要である。領海は海保、その外側は新組織に役割を分担するのも一案だ。
 国際社会からの期待に応え、新設された陸上自衛隊水陸機動団などとも連携して、日本の海、世界の海の安全に寄与する体制を構築すべきだと考える。海洋安全保障における国際水準に対応できなければ、日本だけが取り残されることになりかねない。(やまだ よしひこ)
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キリスト教122~東アジア・太平洋地域にワシントン体制を実現

2018-11-22 12:36:07 | 心と宗教
●東アジア・太平洋地域にワシントン体制を実現

 第1次世界大戦後、アメリカが国際連盟に加入しなかったのは、伝統的なアイソレイショニズムによる。アメリカの不干渉主義は、ヨーロッパの争いに関わらないことが独立と繁栄を維持する最善の策であるという考えに基づく。ただし、それはヨーロッパとの間の不干渉であり、他の地域に対しては、アメリカは積極的に進出した。フィリピン、グアム、ハワイ等がそうである。こうしたアメリカが第1次世界大戦後、積極的に東アジアや太平洋地域での国際秩序の形成を主導したのが、ワシントン会議である。
 ワシントン会議におけるアメリカの狙いは、主に三つあった。東アジアと太平洋地域で高まるナショナリズムへの対処、宿願であるシナの門戸開放、そして日本へのけん制である。
 そのうち最も注目したいのは、日本へのけん制である。わが国は、第1次大戦が始まると、日英同盟を根拠として、ドイツがシナから租借した山東省の膠州湾に進出した。また、中華民国の袁世凱政権に対して、21か条要求を突きつけた。ヨーロッパで消耗戦を続けている列強の隙を衝いて、シナ大陸での権益を拡大した。また、大戦後は、旧ドイツ領の南洋諸島の統治を国際連盟から委任された。国際連盟の常任理事国ともなり、有色人種の国でありながら、列強の一員となった。
 こうしたわが国に対し、アメリカは警戒感を表した。かつてペリー提督やハリス領事が開国させた日本が、東アジア、太平洋地域で勢力を増すのは、目ざわりだった。わが国は日露戦争でロシアに勝った。すると、アメリカは日本の台頭を警戒し、日本を仮想敵国として対日戦争に備える「オレンジ計画」の策定を開始した。そして日米対決の時に備えて、長期的な戦略を練っていた。また、シナ大陸への進出を狙うアメリカは、日本がイギリスと同盟関係にあることを嫌った。そこで、日本とイギリスの関係を絶ち、自国とイギリスの結束を強めようとした。
 第1次世界大戦後、アメリカは、東アジア・太平洋地域に関係するワシントン会議を主導した。この会議の結果、アメリカには海軍軍縮条約により、イギリスと同等の海軍力を保有することが認められた。また、米英仏日の間で太平洋諸島の現状維持を確認する四カ国条約が結ばれた。この条約は日英同盟を不要なものとして破棄させ、日本の後ろ盾をなくすものだった。アメリカは、日本の外交的な孤立を図ることに成功した。また、イタリアや中国などを加えた九カ国条約で、シナに対する門戸解放や機会均等を確認した。九カ国条約によって、アメリカは、日本がドイツから奪った山東省の権益を中華民国に返還させることに成功した。アメリカの巧妙な外交を前に、わが国はほとんどなすすべがなかった。
 ワシントン会議でつくられた体制をワシントン体制という。ヴェルサイユ体制と合わせて、ヴェルサイユ=ワシントン体制とも呼ぶ。ヴェルサイユ=ワシントン体制のもと、アメリカの対日政策は、排日運動へとエスカレートしていった。欧米では、黒人奴隷制の廃止後、黒人奴隷に替わる安価な労働力として、シナ人やインド人を利用した。日本人もまた仕事を求めて入国していた。しかし、第1次大戦後、アメリカは、日本人に対しては、差別を厳しくした。
 日露戦争後、カリフォルニアでは、排日運動が激しくなり、1913年には大統領の立法阻止を無視して、日本人の土地所有権、一部借地権が否認された。さらに20年には借地権を完全に否認する排日土地法が制定された。これが各州に広がりを見せた。
 22年には、アメリカの連邦最高裁は、帰化権剥奪に関する訴訟において、「黄色人種は帰化不能外人であって、帰化権はない」との判断を示した。この場合の黄色人種は、日本人を指す。しかも、この判決は、適用を過去に溯るという近代法の原則を無視したものだった。既にアメリカに帰化した者であっても、日系ということを理由に、その権利を剥奪された。第1次大戦でアメリカ軍兵士として従軍し、帰化権を得た日本人までが、権利を剥奪された。合衆国憲法の修正第14条「アメリカ合衆国で生まれた子どもは、すべてアメリカ人である」という条項には、ただし「日本人移民の子はアメリカで生まれてもアメリカ人とはしない」という補助第19条が付記された。さらに、24年には、日本人の移民を完全に禁止した。
 こうした露骨な排日政策は、日米戦争の遠因の一つとなる。排日政策は人種差別的なものである。そこには、キリスト教徒による非キリスト教徒への差別がある。ただし、根本動機はワシントン体制の形成と同じものである。すなわち、シナへの本格的な進出をめざすアメリカが、競争相手と成り得る日本を抑え込もうとしたのである。
 わが国は、アメリカによって外交的に孤立させられ、また排日運動を蒙るという厳しい風を受けることになった。

 次回に続く。

キリスト教121~第1次世界大戦とその後の展開

2018-11-20 12:41:47 | 心と宗教
●第1次世界大戦とその後の展開

 アメリカは、広大な土地と資源と人口を持つ。ヨーロッパ諸国のように海外に植民地を求めなくとも、着実に発展することができた。
 ヨーロッパで第1次世界大戦が勃発した時、アメリカは中立の立場を取った。1917年4月、ドイツが中立国の商船をも警告なしに攻撃する無制限潜水艦作戦を宣言した。それをきっかけとしてアメリカがドイツに宣戦した。アメリカは強力な工業力と軍事力を発揮して、英仏をドイツに勝利せしめた。大戦後、戦いで疲弊した西欧諸国は、アメリカの経済力に頼らざるを得なくなった。これによって、近代世界システムの中核部で、覇権国家がイギリスからアメリカに移動した。世界的なキリスト教の歴史上、最大最強のキリスト教国家が誕生した。
 第1次世界大戦後の混乱を収拾するため、1919年1月から連合国によるパリ講和会議が開かれた。ウィルソン大統領は、国際連盟の設立、秘密外交の廃止、軍備縮小、民族自決等を唱える「14か条の平和原則」を提案した。しかし、英仏はドイツへの報復を主張し、平和原則は実現を阻まれた。採用されたのは、国際連盟の設立のみだった。その提案も、自国の議会の反対を受けたため、ウィルソンはアメリカの国際連盟加入を実現できなかった。ウィルソンは超国家・脱国家の思想を推進する勢力が擁立した政治家だった。
 だが、アメリカ国民の間では、伝統的なアイソレイショニズム(不干渉主義)が根強かった。議会はウィルソンの提案を退け、ヴェルサイユ条約の批准も、国際連盟の加盟も否決した。このため、国際連盟の構想は失敗した。アメリカを欠く国際組織は、基盤が脆弱だった。大戦後の平和は束の間のものとなり、1920年代に入ると、国際社会は不安定の度を増していった。
 さて、第1次世界大戦の前後に、アメリカのキリスト教徒とユダヤ人の関係において、重大なことが二つ起こった。一つは中央銀行制度の設立であり、もう一つは外交問題評議会のの創設である。
 1913年、アメリカで中央銀行制度が設立された。イギリスを始めヨーロッパでは、17~19世紀に各国に中央銀行が作られた。それらは、ロスチャイルド家の資金力によるものだった。アメリカでは、中央銀行の設立はアメリカがヨーロッパの資本家に従属することになるとして、建国以来、数度にわたって国家指導者が設立を阻止してきた。だが、遂にアメリカにも中央銀行制度が作られることになった。アメリカの中央銀行の名称は、連邦準備制度(FRS:Federal Reserve System)という。全国12箇所に存在する連邦準備銀行を統括する組織として、連邦準備制度理事会(FRB:Federal Reserve Board)を置く。
 アメリカ連邦準備銀行の設立当時、10大株主のうち7つまでが西欧の財閥や会社だった。またアメリカの新興財閥であるプロテスタント系のロックフェラー家を除くと、みなユダヤ系だった。いわばユダヤ系の巨大国際金融資本に、アメリカ政府が事実上金融面から乗っ取られた状態となったのである。また、アメリカに中央銀行制度が出来上がったことは、イギリスで17世紀後半から構築されてきたアングロ・サクソン=ユダヤ連合がアメリカで支配構造を確立したことを意味する。
 連邦準備制度は、設立当初から、その危険性を多くの政治家が何度も指摘した。1922年、セオドア・ルーズベルト元大統領は、ロックフェラー家と国際的銀行家を「陰の政府」と呼んだ。ニューヨーク市長ジョン・ハイランは、この元大統領の発言を受け、彼らが合衆国政府を事実上運営していると公言した。
 アメリカの連邦準備銀行は、民間団体でありながら通貨発行権を握っている。連銀は、その特権によって、連邦政府が印刷した紙幣を原価並みの値段で買い取る。それを政府は連銀から額面どおりの値段で借りる。その結果、利子の支払いが生じる。政府からほぼ原価で引き取った紙幣を、政府に額面どおりに売り、そのうえ利子を取るのだから、利益は莫大となる。
 連邦準備制度では、アメリカの連邦政府は、連銀から借りる紙幣の利子を支払うことになった。連邦準備制度が創設された際、巨額の利子の支払いのため、巨大国際金融資本は、政治家に働きかけ、国民の税金を支払いに当てることを同時に制度化しようとした。その目的で導入されたのが、個人の連邦所得税である。当時、連邦所得税は合衆国憲法に違反するという判決を最高裁が出していた。しかし、それにもかかわらず、連邦所得税が導入された。その徴税を担う役所が国税庁(IRS)であり、連銀と同じ1913年に設立された。以後、連邦所得税は、連銀への利子の支払いに当てられている。ユダヤ系金融資本家たちは、金融と税制の両面からアメリカを支配する体制を作った。アメリカのキリスト教徒資本家は、これに協力することで莫大な利益を得た。
 連邦準備制度の設立の後、1921年にアメリカで外交問題評議会(CFR:Council on Foreign Relations)が設立された。イギリスの円卓会議の指揮のもと、王立国際問題研究所(RIIA)のニューヨーク支部として造られたものである。CFRは、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織である。設立後、CFRは、アメリカの政治、特に外交政策の決定に対し、著しい影響力を振るってきた。会員には、政界、財界、官界、学界、マスコミ、法曹界、教育界等、広範な分野のトップ・クラスの人材が集まっている。 CFRは超党派の組織であり、共和党・民主党の違いに関わらず、歴代大統領の多くがその会員であり、政府高官も多く輩出してきた。外交誌『フォーリン・アフェアーズ』を通じて、世界中の知識人にアメリカ的価値観や米英主導の世界政策を広めている。
 アメリカ合衆国は、伝統的にWASPが社会の主流を成してきた。上流階層の社交クラブでは、ユダヤ系アメリカ人の入会が認められない時代が続いた。しかし、CFRは、設立時から有力なユダヤ人を含み、WASPが支配する社会で、ユダヤ人が地位を築き、活躍していくのに、格好の場となった。キリスト教徒の支配集団に参入したユダヤ人は、その卓越した能力を発揮した。CFRが世界に広めるアメリカ的価値観とは、アメリカ・ユダヤ文化による価値観、ユダヤ的価値観でもある。また、米英主導の世界政策とは、アングロ・サクソン=ユダヤ連合による世界政策でもある。
 連邦準備制度と外交問題評議会によって、アメリカは金融と外交の両面から超国家的・脱国家的な思想を持つ集団の影響を強く受けるようになった。それはキリスト教徒がユダヤ人資本家を受け入れ、それと連携する体制が確立したことを意味する。こうした政治・経済の動きを論じることのない単なる宗教史としてのキリスト教史は、世界的なキリスト教史をひどく矮小化したものとなる。

 次回に続く。

消費増税⇒デフレ⇒余るカネは中国へ~田村秀男氏

2018-11-19 06:53:03 | 経済
 産経新聞の有名エコノミスト・田村秀男氏は、消費増税を中止すべきと繰り返し主張しています。平成30年10月28日の記事では、概略次のように書いています。
 「デフレの主因は緊縮財政にあり、緊縮の最たるものが消費税増税である」。安倍政権は14年度には消費税率を5%から8%に引き上げ、さらに財政支出も大幅に削減した。「その結果、日本のインフレ率はゼロ%前後で推移し、いまだにデフレから抜け出せない」。
 「消費税増税がもたらすデフレ圧力と、日銀の異次元金融緩和政策が組み合わされる結果、カネが回らないので、金融機関は国内ではもうけられない。海外融資に重点を置くしかない」「それは国内の中小企業設備投資を押さえつけ、賃上げの抑制、デフレという悪循環をもたらす」
 こうしたところに、米中貿易戦争が勃発し、中国は窮地に立たされ、日本にすり寄ってきている。「トランプ米政権の対中制裁関税は中国の主力外貨源である対米貿易黒字を大幅に減らすことが確実」である。そこで「外貨難に苦しむ中国が「日中友好」の甘い言葉をささやき続け、通貨スワップ協定に日本を誘い込んだ」。さらに、わが国の経済界は、「経団連は技術とカネ両面の対中協力に前のめりで、野村証券などの金融機関大手も中国と共同での投資ファンド設立に走る」。
 このような状況で、安倍政権は来年10月の消費増税実施を約束している。それを実施すれば、「デフレ圧力は強まり、国内資金需要低迷は確実、余ったカネは中国へと流れる」と田村氏は警告しています。

 私は、正しい選択は、消費増税を中止し、財政出動を含む積極財政を行って、デフレ脱却に徹すること。米国の制裁で窮地に陥っている中国を中途半端に助けるようなことは、決してしないことだと思います。

 以下は、田村氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成30年10月28日

https://www.sankei.com/premium/news/181028/prm1810280008-n1.html
【田村秀男の日曜経済講座】消費税増税はだれのためなのか デフレで余るカネは中国に
2018.10.28 08:00

 世界が同時株安に揺れる。国際金融市場安定の鍵を握るのは世界最大の貸し手である日本だが、もっぱら中国に吸い寄せられる。なぜなのか。



 いきなりだがグラフを見よう。ことし6月末の邦銀の対外融資残高などをアベノミクスが始まる前の2012年6月末と比べた増減額である。その額は1兆1167億ドル(約125兆円)で、国際金融を総覧する国際決裁銀行(BIS)加盟国の銀行融資の合計増額1兆1161億ドルとほぼ一致する。米銀の対外融資額は2681億ドル増、英国の銀行は6182億ドル減。邦銀が国際金融市場を全面的に支えてきたのだ。
 同期間の大半は、異次元金融緩和の日銀が373兆円の資金を国内金融機関に流し込んだが、実にその3分の1相当額がニューヨーク、ロンドンなどの主要国際金融市場に流れ込んだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金を大量発行する量的緩和政策を14年秋に打ち止めたあと利上げに転じている。ドル金利上昇は新興国や発展途上国から米国への資金還流を促す。FRBの金融引き締めに伴う世界への衝撃を和らげるのが日銀緩和で、融資を担うのが邦銀だ。
 融資は債務と表裏一体である。国際金融市場からの最大の借り手は中国であり、中国側統計によればその対外債務増加額は1兆848億ドルに上る。邦銀の対中直接融資増加額は300億ドルにとどまるが、カネに色はない。中国は国際市場経由で日本発の資金を存分に調達してきた。
 それにしても、なぜ日本の金融機関はこうも外向きなのか。日銀統計によれば、同じ期間の国内銀行の国内向け貸出増加額は61兆円、BIS統計が示す対外融資増の半分にとどまる。メガバンクの融資担当は「国内の資金需要がない」と口をそろえるが、需要がないのは、国内経済がデフレ圧力にさらされているからだ。
 デフレの主因は緊縮財政にあり、緊縮の最たるものが消費税増税である。アベノミクスは当初こそ、財政支出を増やして金融緩和と連動させて内需を喚起したが、政府は14年度には消費税率を5%から一挙に8%に引き上げた。3%分の増税は毎年の家計消費の8兆円に相当する。
 安倍晋三政権はさらに財政支出も大幅に削減した。増税後もこの緊縮財政路線を堅持しているので、家計消費水準は停滞を続けている。その結果、日本のインフレ率はゼロ%前後で推移し、いまだにデフレから抜け出せない。
 消費税増税がもたらすデフレ圧力と、日銀の異次元金融緩和政策が組み合わされる結果カネが回らないので、金融機関は国内ではもうけられない。海外融資に重点を置くしかないわけだが、それは国内の中小企業設備投資を押さえつけ、賃上げの抑制、デフレという悪循環をもたらす。せっかくの異次元緩和は国内のためになっているとは言い難いのだ。
そんな中、米中貿易戦争の余波で国際金融市場が荒れている。中でも、流入するドル資金をベースにした異形の金融システムによって成り立つ中国経済の不安は高まるばかりだ。トランプ米政権の対中制裁関税は中国の主力外貨源である対米貿易黒字を大幅に減らすことが確実なので、金融制度の根幹が危うくなる。
 上海株式市場は一本調子で下落し、外国為替市場では大量の人民元売りが続く。トランプ大統領は対中貿易制裁をさらに強め、対中輸入品すべてに高関税をかける準備を指示しているから、中国の習近平国家主席はますます窮地に追い込まれる。
習氏が熱望してきたのが、日本の対中金融協力だ。安倍晋三首相は今回の訪中で、3兆円規模の通貨スワップ協定に応じた。通貨スワップは通貨危機時に2国間で自国通貨を融通し合うという建前で、中国は韓国とも結んでいる。しかし、韓国ウォン、人民元ともローカル通貨に過ぎず、国際金融市場ではドルとの交換が難しいので、中韓協定の実効性は限られる。その点、円はいつでもどこでもドルに換えられる正真正銘の国際通貨だ。外貨難に苦しむ中国が「日中友好」の甘い言葉をささやき続け、通貨スワップ協定に日本を誘い込んだ。
 政官ばかりではない。経団連は技術とカネ両面の対中協力に前のめりで、野村証券などの金融機関大手も中国と共同での投資ファンド設立に走る。安倍政権のほうは来年10月からの消費税増税実施を約束している。デフレ圧力は強まり、国内資金需要低迷は確実、余ったカネは中国へと流れる。いったい、増税はだれのためなのか。(編集委員)
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