本年は、冷戦終結後最も国際的な緊張が高まった年だった。3月にロシアがウクライナのクリミア自治共和国を併合したことにより、欧米等の諸国との対立が続いている。中東ではイスラム国を名乗るイスラム過激派が勢力を拡大した。中国は南シナ海でベトナム・フィリピン等の周辺諸国と摩擦を起こしている。とりわけ我が国にとっては、中国の傍若無人の振る舞いに対応を要する状況となっている。
中国は、尖閣諸島周辺の海域で公船がわが国の領海への侵入を繰り返してきた。尖閣諸島はわが国固有の領土だが、中国は自国領だと主張して、尖閣の奪取をもくろんでいる。中国人民解放軍は25年秋、尖閣奪取のための大規模な軍事訓練を行った。それを知った米国指導層は中国が本気であることを悟り、態度を硬化させた。本年4月23日オバマ大統領が来日し安倍首相と会談し、日米共同声明を発表した。声明は、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲に含まれるとした。また東シナ海及び南シナ海への領土拡大を進める中国を批判し、同時に中国の一方的な防空識別圏設定を批判した。
わが国の政府は、ようやく本年7月1日、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定した。ただし、閣議決定だけで、集団的自衛権の行使ができるのではない。今後、国会で審議がされ、関連法案の整備が進められなければならない。グレーゾーンの問題の対処や領域警備法の制定等を急ぐ必要がある。
多くのマスメディアや有識者が集団的自衛権を行使できるようにすると、外国の戦争に巻き込まれるなどと報道している。だが、自衛力を持つことは、国連でも自然権と認めている。国連憲章は、個別的自衛権と集団的自衛権をともに国家の固有の権利と認めている。集団的自衛権の行使容認は、日本が侵攻戦争を始める準備として行うことではなく、日米の絆を強めることによって、外国の侵攻への抑止力、戦争抑止力を高めるために必要なことである。戦争を起こすためではなく、戦争を防ぎ、平和を守るために、自衛権の整備が必要なのである。
本年9月から11月にかけては、小笠原諸島および伊豆諸島周辺海域に中国漁船団が出没し、赤サンゴの密漁をした。わが国はほぼなすすべなく、サンゴを採り尽くされてしまった。魚も大量に乱獲された。日本人が守ってきた世界自然遺産、海の生態系を破壊された。
海上保安庁は、中国によって、尖閣と小笠原の二正面作戦を強いられた。尖閣諸島の領海警備に十数隻の大型巡視船を振り向けているため、小笠原諸島沖に出せる巡視船は4隻に限られた。とても広大な海域に来る多数の中国密漁船に対応しきれない。10月30日には、212隻もの中国船が来た。これほど多数になると単なる密漁とは考え難い。中国からは燃料代だけで300万円ほどかかる。背後に中国共産党政府の指示・支援があると専門家は見ている。
わが国の政府は重い腰をあげ、違法操業の取り締まりを強化し、国会は罰金引き上げの法改正を行った。だが、泥棒が宝物を奪い、荒らしまわった後に、法律を厳しくしても遅い。他国であれば、外国船が領海に侵入して密漁している疑いがあれば、当然拿捕し、指示に従わねば威嚇射撃、場合によっては撃沈するところである。広大な日本の海を守るには海保だけでは不十分であり、海保と海上自衛隊が連携して対応できるようにする必要がある。
日本人は、今回の中国密漁船「サンゴの海」強奪事件を手痛い教訓とし、サンゴや魚だけではなく、日本そのものを奪われないようにしなければ、いけない。
中国は尖閣を奪取したら、次に沖縄を狙う。沖縄を押さえられたら、わが国は窮地に陥る。サンゴ密漁船の来襲の最中、11月16日に沖縄で知事選が行われ、親中派で辺野古移転反対の翁長雄志氏が当選した。政府は計画どおり辺野古移設を推進するだろうが、工期の遅れや反対運動の激化が予想される。日米関係にも深刻な影響が出る。中国は沖縄を中国の属地にすれば、米軍基地を追い出すことができる。その次に狙うのは日本の属国化である。だから、尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることになる。日本人は国防の重要性を理解し、西南の守りを固める必要がある。
12月14日に行われた衆議院総選挙は、アベノミクスについて国民の信を問う選挙として行われた。その結果、与党の自公が3分の2以上の議席を確保して圧勝した。アベノミクスを国民多数が支持するとともに、実質賃金の上昇や地方創生の具体化を伴う、さらなる成果が期待されている。わが国の当面の課題は、デフレを脱却し、経済成長の軌道に戻ることである。だが、それ以上に重要なのが、憲法改正による国家の立て直しである。アベノミクスの完遂の次は、憲法の改正が課題である。
本年6月、改正国民投票法が成立した。戦後初めて、国会の発議を受けて、国民投票で憲法改正を決するという手続きが具体化した。安倍首相は、憲法改正は自分の「歴史的使命」とし、衆院選後、「最も重要なことは国民投票で過半数の支持を得なければならない。国民の理解と支持を深め、広げていくために、自民党総裁として努力したい」と述べ、憲法改正に意欲を示している。物質的な繁栄を追い求めるだけでは、国家の安泰と持続的な発展は得られない。日本人の手で、日本の歴史・伝統・文化・国柄に基づき、独立主権国家にふさわしい憲法を作り上げてこそ、国家の安泰と持続的な発展を確かなものにできる。
厳しい国際環境のなか、国家の再建を進めていくには、国民の団結が必要である。日本人が日本精神を取り戻し、一致協力することが、国民一人一人の幸福と発展につながる。また、日本を再建することが、世界の平和と発展への貢献となる。日本を愛する人々は、心をつなぎ合って、日本を明るく元気にしていこう。
皆様、よいお年をお迎えください。
以下は、時事通信社による今年の10大ニュース日本編及び海外編。
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●時事通信社が選ぶ10大ニュース
http://www.jiji.com/jc/v?p=10bignews-2014domestic01
<国内>
1位 解釈改憲で集団的自衛権容認
政府は7月1日、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定した。自衛隊の海外での武力行使につながるもので、「専守防衛」を基本方針としてきた戦後日本の安全保障政策は大きく転換した。安倍晋三首相は来年の通常国会に関連法案を提出。日米防衛協力の指針(ガイドライン)再改定作業も進め、自衛隊による米軍支援を拡充する。
首相が憲法改正ではなく憲法解釈の変更という手法を選んだことに対し、野党や言論界からは議会制民主主義の否定だとの批判が出ている。自公両党の間では、中東での機雷掃海活動など自衛隊が新たに行う活動をめぐって温度差が生じている。
2位 衆院選で与党圧勝
安倍晋三首相は11月21日に衆院を解散、第47回衆院選が12月14日に投開票され、自民党が291議席を獲得した。公明党と合わせると、与党で衆院定数の3分の2を上回る326議席を維持。経済政策「アベノミクス」継続の是非が争点となった衆院選は、与党が圧勝した。投票率は52.66%で戦後最低を更新した。
民主党は公示前勢力を上回ったが、海江田万里代表が落選し代表辞任を表明した。「第三局」勢力では維新の党は1議席減だったが、次世代の党は惨敗。生活の党も議席を減らした。共産党は現行制度が導入された1996年以来、18年ぶりに選挙区で議席を獲得するなど躍進した。
3位 消費税率10%への引き上げ延期
安倍晋三首相は、2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを17年4月に1年半延期することを決めた。14年4月に税率を5%から8%に引き上げた後、個人消費が低迷。夏の天候不順もあって、7~9月期の実質GDP(国内総生産)が2期連続のマイナスとなるなど、景気が腰折れし、デフレから脱却できなくなる恐れが出てきたためだ。
先送りに伴い、景気が悪い場合には増税を先送りする「景気条項」を消費税増税法から削除し、再度の延期は行わない。ただ首相は、リーマン・ショック級の経済危機などの際には再延期もあり得るとの考えを示している。
4位 御嶽山が噴火、57人死亡6人不明
9月27日午前11時52分、長野、岐阜県境の御嶽山(3067メートル)が噴火した。紅葉シーズンの週末だったため被害は大きく、逃げ遅れた登山客に噴石が直撃するなどして57人が死亡、6人が行方不明になった。1991年に起きた雲仙・普賢岳の火砕流での死者・不明者43人を上回り、戦後最悪の火山災害となった。
火山噴火予知連絡会の各検討会は、噴火を数分以内にメールなどで登山客に知らせる「火山速報」の導入や、気象庁が常時観測する火山を47から50に増やすことなどを提言。入山者特定に手間取ったことを踏まえ、活火山や遭難多発の山を持つ自治体では、登山届義務化の動きも出た。
5位 広島で土砂災害、住宅流され74人死亡
8月20日、広島市北部で豪雨に伴う土石流が複数箇所で起き、多数の住宅が流された。未明の発生で被害実態がすぐに把握できず、断続的に降り続いた雨のため捜索も難航。最終的には安佐南区の八木、緑井の2地区を中心に死者は74人に達した。避難指示・勧告は一時15万人以上に出され、全面解除までに3カ月かかった。
広島地方気象台は災害当日の午前1時49分に非常に激しい雨を示す「1時間70ミリ」の予測を発表するなど、広島県全域に土砂災害への警戒を促していた。しかし、広島市は災害発生後の同4時すぎに避難勧告を出すなど、情報が生かされず対応の遅れが指摘された。
6位 朝日新聞が記事取り消し、社長が引責辞任
朝日新聞社は8月、従軍慰安婦問題を取り上げた自社報道を検証し、証言に虚偽があったとして一部の記事を取り消すとした特集を掲載。9月には東京電力福島第1原発事故をめぐる吉田昌郎元所長(故人)の聴取記録を基に、「所員が吉田氏の命令に違反し撤退した」などと報じた記事も誤りと認めた。
また記事取り消しだけではなく、謝罪を欠いたことを指摘しようとしたジャーナリストのコラム掲載を、一時見合わせた姿勢も強い批判を浴びた。一連の問題はトップの辞任劇に発展。新社長は就任会見で「手法や意識を根本的に見直す改革が不可欠だ」などと述べ、改めて謝罪した。
7位 日本人3人にノーベル物理学賞
青色発光ダイオード(LED)の開発で、赤崎勇名城大教授と天野浩名古屋大教授、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授がノーベル物理学賞を受賞した。世界の消費電力の4分の1が照明に使われる中、LEDが資源節約に貢献したと高く評価された。
赤崎さんは基礎研究をリード。天野さんは開発のカギ「窒化ガリウム」の結晶を作製、中村さんは実用化を推進した。「20世紀中は不可能」とされた青色LEDの登場で、光の三原色がそろい用途が拡大。消費電力が少なく、白熱電球や蛍光灯に代わる照明のほか、携帯電話のディスプレー、交通信号などに広く使われている。
8位 STAP細胞論文に捏造や改ざん
理化学研究所の小保方晴子氏らは1月、生後1週間のマウスの細胞を弱酸性液に浸すなどの簡単な方法で、多様な細胞に変わる能力を持つ万能細胞を作製したと、英科学誌ネイチャーに発表した。しかし論文の実験画像に疑義が浮上。理研調査委員会が捏造(ねつぞう)や改ざんがあるとして不正を認定した。
ネイチャーは7月、小保方氏らの論文撤回を決定、執筆を指導した理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が8月、自殺した。小保方氏は検証実験でSTAP細胞を再現できず、12月に退職。理研調査委はES細胞(胚性幹細胞)混入の可能性が高いと結論付けた。
9位 7年ぶりの円安・株高
東京外国為替・株式市場では、10月末の日銀による追加金融緩和を機に円安・株高が急速に進んだ。12月に円相場は一時1ドル=121円台に下落し、日経平均株価は取引時間中に1万8000円を回復した。いずれも2007年7月以来、約7年5カ月ぶりの水準だ。
4月の消費税増税後、日本経済がもたついている一方、米国は景気回復で金融の量的緩和策を終了した。米国につられる形で日本の株価も上がり、外為市場ではドル買いが優勢となった。ただ、円安で原材料・燃料の輸入価格は上昇し、食品や日用品が値上がりするなど、家計や中小企業に対するマイナスの影響も広がっている。
10位 テニスの錦織、全米準優勝
男子テニスの錦織圭(日清食品)が9月、全米オープンで快進撃を見せ、アジア選手初の四大大会男子シングルス決勝進出を果たした。決勝ではマリン・チリッチ(クロアチア)に敗れたが、準決勝で世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を倒した。
これまでは2012年全豪8強が最高だった。リターンの精度や軽快な動きを生かし、元全仏優勝者のマイケル・チャン(米国)コーチの指導で強さを増して年間4勝。日本男子初の世界ランクトップ10入り。上位8人のATPツアー・ファイナル(11月)に初出場して4強に進出し、同ランキング5位に躍進した。
<海外>
1位 ウクライナ危機
ウクライナで2月に親ロシア派のヤヌコビッチ政権が反政権デモで崩壊し、親欧州連合(EU)派政権が発足したのを受け、ロシア系住民が多数を占める南部クリミア半島にロシアが軍事介入し、3月に編入に踏み切った。武力を背景に領土拡大を強行したロシアの行動に、冷戦後の国際秩序は大きく揺らいだ。
その後ウクライナ東部でも、ロシアが後ろ盾の親ロ派武装勢力と政府軍が激しい戦闘を続け、死者は4000人を超えた。7月には東部上空でマレーシア機が撃墜され、298人が死亡する悲劇も起きた。欧米や日本は、ロシアが事態収拾に応じていないとして、制裁を発動している。
2位 「イスラム国」が勢力拡大、有志連合空爆
イスラム過激組織「イラク・シリアのイスラム国」が6月、イラク第2の都市モスルを制圧し、指導者のバグダディ容疑者をカリフ(預言者ムハンマドの後継者)とする「イスラム国」の樹立を宣言した。シリア内戦でアサド政権の統治が及ばない北東部やイラクの北西部で活動し、少数派や他宗派の迫害などの残虐行為を続けた。
米軍は8月、イラク領内でイスラム国を標的とした空爆を開始。オバマ政権は有志連合を形成し、9月に開始したシリア空爆にはサウジアラビアなどの中東諸国も加わった。イスラム国は3万人超の戦闘員を擁するとみられ、壊滅には数年を要する見通しだ。
3位 エボラ出血熱感染拡大、死者6000人
西アフリカのエボラ出血熱感染拡大は、ギニア政府が3月、「最初の患者が2月に確認され、既に59人が死亡した」と発表して世界が知ることになった。瞬く間に国境を越え、隣国のシエラレオネ、リベリアに飛び火。世界保健機関(WHO)は12月に入り、死者は6000人を超えたと発表。感染者は2万人に迫ろうとしている。流行は史上最悪の規模になった。
感染は10月になってアフリカ大陸以外にも広がり、スペインや米国で隔離治療が相次いだ。パニックに近い過剰反応もみられたが、欧米では大半が完治。日本でも西アフリカからの帰国者が隔離されたものの、感染はしていなかった。
4位 韓国旅客船事故で304人死亡・不明
韓国南西部の珍島沖で4月16日、旅客船「セウォル号」が沈没し、乗客乗員304人が死亡・行方不明となった。事故は船体の改造や過積載で復原力が低下した状態で、急にかじを切ったため発生。犠牲者の多くは修学旅行中の高校生だった。
乗客を残したまま真っ先に脱出したイ・ジュンソク船長ら乗員だけでなく、利益優先の船会社の経営体質やずさんな行政の監視・救助体制も問題視され、関係者約400人が立件された。一審の光州地裁は船長に対し、遺棄致死罪などで懲役36年の判決を言い渡した。事故直後の政府の対応は世論の批判を浴び、朴槿恵大統領の支持率低下につながった。
5位 米、キューバが国交正常化へ
冷戦時代から対立してきた米国とキューバは12月17日、国交正常化交渉の開始で合意したと発表した。オバマ米大統領はキューバを孤立させ民主化実現を目指すこれまでの政策を「50年間機能しなかった」と判断、数カ月以内にキューバに大使館を置くことや経済制裁の解除などに踏み切ることを目指している。
オバマ大統領は2016年の退任までに、歴史的な政策転換を実現し自らの業績としたい考えだ。ただ、米国は、キューバをテロ支援国に指定し、人権状況などを問題視してきた。キューバは北朝鮮との武器取引を続けてきており、米国内では国交正常化への反発も根強い。
6位 米中間選挙で共和が過半数奪還
11月4日の米中間選挙は野党・共和党が上院の過半数を奪還し、下院でも多数派を維持した。共和党は2016年の大統領選に向け、オバマ大統領との対決姿勢を強めるとみられ、過激組織「イスラム国」への対応や移民制度改革など、国内外の重要課題にも影響を与えつつある。
オバマ大統領は中間選挙後、主要政策の一つで共和党が反対している移民制度改革について、議会の承認を得ない大統領権限の行使を表明。民主、共和両党は予算案では妥協したものの、共和党は年明けの新議会でオバマ大統領に移民制度改革で方向転換を迫る方針で、激しい攻防が再燃する可能性もある。
7位 英スコットランド住民投票で独立否決
英北部スコットランドで9月18日、英国からの分離・独立の是非を問う住民投票が行われた。事前の世論調査では賛否が伯仲していたが、開票の結果、独立賛成44.7%、反対55.3%で独立は否決。英国分裂という歴史的事態は、かろうじて回避された。
投票は世界的な注目を集め、投票率は85%近くに達した。与党・保守党など主要各党は投票日直前、独立阻止のため自治政府への大幅な権限移譲を発表。独立派が唱えた英国との通貨ポンド共有が英政府に拒絶されるなど、独立後の国の在り方で現実的な青写真を示せなかったことも、独立への支持が伸び悩んだ一因とみられる。
8位 ノーベル平和賞にマララさん
子供の教育の権利を訴えてきたパキスタンの教育活動家マララ・ユスフザイさんがインドの児童人権活動家カイラシュ・サティヤルティさんとともに、ノーベル平和賞を受賞した。17歳での受賞はノーベル賞全部門を通じて史上最年少。
マララさんは、女性の社会進出を否定するイスラム武装勢力タリバンに抑圧された学校生活をブログにつづり、女性の教育の権利を訴えてきた。2012年10月、タリバンに銃撃されて頭部に重傷を負ったが、奇跡的に回復。受賞演説では、全ての子供が学校に行くまで活動を続けると誓い、「これが子供の教育のための最後の闘いとなるよう望む」と述べた。
9位 パキスタンで学校襲撃、140人超死亡
パキスタン北西部ペシャワルで12月16日、イスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)が軍運営の学校を襲撃し、生徒ら140人超が死亡した。パキスタン軍は6月以降、北ワジリスタン地区でTTP掃討作戦を展開しており、学校襲撃はその報復とみられる。シャリフ首相は「子供を標的とした残忍な事件だ」と非難。「テロ組織を駆逐するまで軍事作戦を継続する」と述べ、掃討作戦を強化する意向を示した。
TTPと関係が深い隣国アフガニスタンの反政府勢力タリバンも「罪のない人々、子供や女性を故意に殺害することはイスラムの基本に反する」と異例の非難をした。
10位(1)香港民主派デモ隊、幹線道路を占拠
中国全国人民代表大会(国会)常務委員会が2017年の香港行政長官「普通選挙」で中国当局に批判的な民主派を締め出す方針を決めたのを受け、「真の普通選挙」実施を求める学生らが9月28日から香港中心街の幹線道路を占拠。デモ隊は一時約10万人に膨れ上がり、1997年の香港返還以降、最大の政治的混乱となった。警察の催涙スプレーを傘で防いだことから、「雨傘革命」とも呼ばれた。
ただ、道路占拠が長期化するにつれ、市民の支持は低下。警察は12月11日、政府本部に近い金鐘(アドミラルティー)に陣取る学生らを強制排除し、道路占拠は2カ月半でほぼ終結した。
10位(2)白人警官不起訴、米各地で暴動
米国で黒人男性を死亡させた白人警官が相次いで不起訴となり、これに反発する抗議デモや暴動が各地に広がった。黒人初の大統領として人種問題への深入りを避けてきたオバマ大統領も「人々が公正に扱われていると自信が持てなくなる例があまりに多い」と苦言を表明。米社会に今も根強い人種差別意識を浮き彫りにする結果となった。
中西部ミズーリ州ファーガソンでは8月、丸腰の黒人青年が白人警官に射殺された。ニューヨークでも7月、白人警官が黒人男性を取り締まり中に首を絞め、死亡させた。白人警官の不起訴を決めた大陪審はいずれも、白人の陪審員が半数を超えていた。
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中国は、尖閣諸島周辺の海域で公船がわが国の領海への侵入を繰り返してきた。尖閣諸島はわが国固有の領土だが、中国は自国領だと主張して、尖閣の奪取をもくろんでいる。中国人民解放軍は25年秋、尖閣奪取のための大規模な軍事訓練を行った。それを知った米国指導層は中国が本気であることを悟り、態度を硬化させた。本年4月23日オバマ大統領が来日し安倍首相と会談し、日米共同声明を発表した。声明は、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲に含まれるとした。また東シナ海及び南シナ海への領土拡大を進める中国を批判し、同時に中国の一方的な防空識別圏設定を批判した。
わが国の政府は、ようやく本年7月1日、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを閣議決定した。ただし、閣議決定だけで、集団的自衛権の行使ができるのではない。今後、国会で審議がされ、関連法案の整備が進められなければならない。グレーゾーンの問題の対処や領域警備法の制定等を急ぐ必要がある。
多くのマスメディアや有識者が集団的自衛権を行使できるようにすると、外国の戦争に巻き込まれるなどと報道している。だが、自衛力を持つことは、国連でも自然権と認めている。国連憲章は、個別的自衛権と集団的自衛権をともに国家の固有の権利と認めている。集団的自衛権の行使容認は、日本が侵攻戦争を始める準備として行うことではなく、日米の絆を強めることによって、外国の侵攻への抑止力、戦争抑止力を高めるために必要なことである。戦争を起こすためではなく、戦争を防ぎ、平和を守るために、自衛権の整備が必要なのである。
本年9月から11月にかけては、小笠原諸島および伊豆諸島周辺海域に中国漁船団が出没し、赤サンゴの密漁をした。わが国はほぼなすすべなく、サンゴを採り尽くされてしまった。魚も大量に乱獲された。日本人が守ってきた世界自然遺産、海の生態系を破壊された。
海上保安庁は、中国によって、尖閣と小笠原の二正面作戦を強いられた。尖閣諸島の領海警備に十数隻の大型巡視船を振り向けているため、小笠原諸島沖に出せる巡視船は4隻に限られた。とても広大な海域に来る多数の中国密漁船に対応しきれない。10月30日には、212隻もの中国船が来た。これほど多数になると単なる密漁とは考え難い。中国からは燃料代だけで300万円ほどかかる。背後に中国共産党政府の指示・支援があると専門家は見ている。
わが国の政府は重い腰をあげ、違法操業の取り締まりを強化し、国会は罰金引き上げの法改正を行った。だが、泥棒が宝物を奪い、荒らしまわった後に、法律を厳しくしても遅い。他国であれば、外国船が領海に侵入して密漁している疑いがあれば、当然拿捕し、指示に従わねば威嚇射撃、場合によっては撃沈するところである。広大な日本の海を守るには海保だけでは不十分であり、海保と海上自衛隊が連携して対応できるようにする必要がある。
日本人は、今回の中国密漁船「サンゴの海」強奪事件を手痛い教訓とし、サンゴや魚だけではなく、日本そのものを奪われないようにしなければ、いけない。
中国は尖閣を奪取したら、次に沖縄を狙う。沖縄を押さえられたら、わが国は窮地に陥る。サンゴ密漁船の来襲の最中、11月16日に沖縄で知事選が行われ、親中派で辺野古移転反対の翁長雄志氏が当選した。政府は計画どおり辺野古移設を推進するだろうが、工期の遅れや反対運動の激化が予想される。日米関係にも深刻な影響が出る。中国は沖縄を中国の属地にすれば、米軍基地を追い出すことができる。その次に狙うのは日本の属国化である。だから、尖閣を守ることは、沖縄を、そして日本を守ることになる。日本人は国防の重要性を理解し、西南の守りを固める必要がある。
12月14日に行われた衆議院総選挙は、アベノミクスについて国民の信を問う選挙として行われた。その結果、与党の自公が3分の2以上の議席を確保して圧勝した。アベノミクスを国民多数が支持するとともに、実質賃金の上昇や地方創生の具体化を伴う、さらなる成果が期待されている。わが国の当面の課題は、デフレを脱却し、経済成長の軌道に戻ることである。だが、それ以上に重要なのが、憲法改正による国家の立て直しである。アベノミクスの完遂の次は、憲法の改正が課題である。
本年6月、改正国民投票法が成立した。戦後初めて、国会の発議を受けて、国民投票で憲法改正を決するという手続きが具体化した。安倍首相は、憲法改正は自分の「歴史的使命」とし、衆院選後、「最も重要なことは国民投票で過半数の支持を得なければならない。国民の理解と支持を深め、広げていくために、自民党総裁として努力したい」と述べ、憲法改正に意欲を示している。物質的な繁栄を追い求めるだけでは、国家の安泰と持続的な発展は得られない。日本人の手で、日本の歴史・伝統・文化・国柄に基づき、独立主権国家にふさわしい憲法を作り上げてこそ、国家の安泰と持続的な発展を確かなものにできる。
厳しい国際環境のなか、国家の再建を進めていくには、国民の団結が必要である。日本人が日本精神を取り戻し、一致協力することが、国民一人一人の幸福と発展につながる。また、日本を再建することが、世界の平和と発展への貢献となる。日本を愛する人々は、心をつなぎ合って、日本を明るく元気にしていこう。
皆様、よいお年をお迎えください。
以下は、時事通信社による今年の10大ニュース日本編及び海外編。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●時事通信社が選ぶ10大ニュース
http://www.jiji.com/jc/v?p=10bignews-2014domestic01
<国内>
1位 解釈改憲で集団的自衛権容認
政府は7月1日、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定した。自衛隊の海外での武力行使につながるもので、「専守防衛」を基本方針としてきた戦後日本の安全保障政策は大きく転換した。安倍晋三首相は来年の通常国会に関連法案を提出。日米防衛協力の指針(ガイドライン)再改定作業も進め、自衛隊による米軍支援を拡充する。
首相が憲法改正ではなく憲法解釈の変更という手法を選んだことに対し、野党や言論界からは議会制民主主義の否定だとの批判が出ている。自公両党の間では、中東での機雷掃海活動など自衛隊が新たに行う活動をめぐって温度差が生じている。
2位 衆院選で与党圧勝
安倍晋三首相は11月21日に衆院を解散、第47回衆院選が12月14日に投開票され、自民党が291議席を獲得した。公明党と合わせると、与党で衆院定数の3分の2を上回る326議席を維持。経済政策「アベノミクス」継続の是非が争点となった衆院選は、与党が圧勝した。投票率は52.66%で戦後最低を更新した。
民主党は公示前勢力を上回ったが、海江田万里代表が落選し代表辞任を表明した。「第三局」勢力では維新の党は1議席減だったが、次世代の党は惨敗。生活の党も議席を減らした。共産党は現行制度が導入された1996年以来、18年ぶりに選挙区で議席を獲得するなど躍進した。
3位 消費税率10%への引き上げ延期
安倍晋三首相は、2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを17年4月に1年半延期することを決めた。14年4月に税率を5%から8%に引き上げた後、個人消費が低迷。夏の天候不順もあって、7~9月期の実質GDP(国内総生産)が2期連続のマイナスとなるなど、景気が腰折れし、デフレから脱却できなくなる恐れが出てきたためだ。
先送りに伴い、景気が悪い場合には増税を先送りする「景気条項」を消費税増税法から削除し、再度の延期は行わない。ただ首相は、リーマン・ショック級の経済危機などの際には再延期もあり得るとの考えを示している。
4位 御嶽山が噴火、57人死亡6人不明
9月27日午前11時52分、長野、岐阜県境の御嶽山(3067メートル)が噴火した。紅葉シーズンの週末だったため被害は大きく、逃げ遅れた登山客に噴石が直撃するなどして57人が死亡、6人が行方不明になった。1991年に起きた雲仙・普賢岳の火砕流での死者・不明者43人を上回り、戦後最悪の火山災害となった。
火山噴火予知連絡会の各検討会は、噴火を数分以内にメールなどで登山客に知らせる「火山速報」の導入や、気象庁が常時観測する火山を47から50に増やすことなどを提言。入山者特定に手間取ったことを踏まえ、活火山や遭難多発の山を持つ自治体では、登山届義務化の動きも出た。
5位 広島で土砂災害、住宅流され74人死亡
8月20日、広島市北部で豪雨に伴う土石流が複数箇所で起き、多数の住宅が流された。未明の発生で被害実態がすぐに把握できず、断続的に降り続いた雨のため捜索も難航。最終的には安佐南区の八木、緑井の2地区を中心に死者は74人に達した。避難指示・勧告は一時15万人以上に出され、全面解除までに3カ月かかった。
広島地方気象台は災害当日の午前1時49分に非常に激しい雨を示す「1時間70ミリ」の予測を発表するなど、広島県全域に土砂災害への警戒を促していた。しかし、広島市は災害発生後の同4時すぎに避難勧告を出すなど、情報が生かされず対応の遅れが指摘された。
6位 朝日新聞が記事取り消し、社長が引責辞任
朝日新聞社は8月、従軍慰安婦問題を取り上げた自社報道を検証し、証言に虚偽があったとして一部の記事を取り消すとした特集を掲載。9月には東京電力福島第1原発事故をめぐる吉田昌郎元所長(故人)の聴取記録を基に、「所員が吉田氏の命令に違反し撤退した」などと報じた記事も誤りと認めた。
また記事取り消しだけではなく、謝罪を欠いたことを指摘しようとしたジャーナリストのコラム掲載を、一時見合わせた姿勢も強い批判を浴びた。一連の問題はトップの辞任劇に発展。新社長は就任会見で「手法や意識を根本的に見直す改革が不可欠だ」などと述べ、改めて謝罪した。
7位 日本人3人にノーベル物理学賞
青色発光ダイオード(LED)の開発で、赤崎勇名城大教授と天野浩名古屋大教授、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授がノーベル物理学賞を受賞した。世界の消費電力の4分の1が照明に使われる中、LEDが資源節約に貢献したと高く評価された。
赤崎さんは基礎研究をリード。天野さんは開発のカギ「窒化ガリウム」の結晶を作製、中村さんは実用化を推進した。「20世紀中は不可能」とされた青色LEDの登場で、光の三原色がそろい用途が拡大。消費電力が少なく、白熱電球や蛍光灯に代わる照明のほか、携帯電話のディスプレー、交通信号などに広く使われている。
8位 STAP細胞論文に捏造や改ざん
理化学研究所の小保方晴子氏らは1月、生後1週間のマウスの細胞を弱酸性液に浸すなどの簡単な方法で、多様な細胞に変わる能力を持つ万能細胞を作製したと、英科学誌ネイチャーに発表した。しかし論文の実験画像に疑義が浮上。理研調査委員会が捏造(ねつぞう)や改ざんがあるとして不正を認定した。
ネイチャーは7月、小保方氏らの論文撤回を決定、執筆を指導した理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が8月、自殺した。小保方氏は検証実験でSTAP細胞を再現できず、12月に退職。理研調査委はES細胞(胚性幹細胞)混入の可能性が高いと結論付けた。
9位 7年ぶりの円安・株高
東京外国為替・株式市場では、10月末の日銀による追加金融緩和を機に円安・株高が急速に進んだ。12月に円相場は一時1ドル=121円台に下落し、日経平均株価は取引時間中に1万8000円を回復した。いずれも2007年7月以来、約7年5カ月ぶりの水準だ。
4月の消費税増税後、日本経済がもたついている一方、米国は景気回復で金融の量的緩和策を終了した。米国につられる形で日本の株価も上がり、外為市場ではドル買いが優勢となった。ただ、円安で原材料・燃料の輸入価格は上昇し、食品や日用品が値上がりするなど、家計や中小企業に対するマイナスの影響も広がっている。
10位 テニスの錦織、全米準優勝
男子テニスの錦織圭(日清食品)が9月、全米オープンで快進撃を見せ、アジア選手初の四大大会男子シングルス決勝進出を果たした。決勝ではマリン・チリッチ(クロアチア)に敗れたが、準決勝で世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を倒した。
これまでは2012年全豪8強が最高だった。リターンの精度や軽快な動きを生かし、元全仏優勝者のマイケル・チャン(米国)コーチの指導で強さを増して年間4勝。日本男子初の世界ランクトップ10入り。上位8人のATPツアー・ファイナル(11月)に初出場して4強に進出し、同ランキング5位に躍進した。
<海外>
1位 ウクライナ危機
ウクライナで2月に親ロシア派のヤヌコビッチ政権が反政権デモで崩壊し、親欧州連合(EU)派政権が発足したのを受け、ロシア系住民が多数を占める南部クリミア半島にロシアが軍事介入し、3月に編入に踏み切った。武力を背景に領土拡大を強行したロシアの行動に、冷戦後の国際秩序は大きく揺らいだ。
その後ウクライナ東部でも、ロシアが後ろ盾の親ロ派武装勢力と政府軍が激しい戦闘を続け、死者は4000人を超えた。7月には東部上空でマレーシア機が撃墜され、298人が死亡する悲劇も起きた。欧米や日本は、ロシアが事態収拾に応じていないとして、制裁を発動している。
2位 「イスラム国」が勢力拡大、有志連合空爆
イスラム過激組織「イラク・シリアのイスラム国」が6月、イラク第2の都市モスルを制圧し、指導者のバグダディ容疑者をカリフ(預言者ムハンマドの後継者)とする「イスラム国」の樹立を宣言した。シリア内戦でアサド政権の統治が及ばない北東部やイラクの北西部で活動し、少数派や他宗派の迫害などの残虐行為を続けた。
米軍は8月、イラク領内でイスラム国を標的とした空爆を開始。オバマ政権は有志連合を形成し、9月に開始したシリア空爆にはサウジアラビアなどの中東諸国も加わった。イスラム国は3万人超の戦闘員を擁するとみられ、壊滅には数年を要する見通しだ。
3位 エボラ出血熱感染拡大、死者6000人
西アフリカのエボラ出血熱感染拡大は、ギニア政府が3月、「最初の患者が2月に確認され、既に59人が死亡した」と発表して世界が知ることになった。瞬く間に国境を越え、隣国のシエラレオネ、リベリアに飛び火。世界保健機関(WHO)は12月に入り、死者は6000人を超えたと発表。感染者は2万人に迫ろうとしている。流行は史上最悪の規模になった。
感染は10月になってアフリカ大陸以外にも広がり、スペインや米国で隔離治療が相次いだ。パニックに近い過剰反応もみられたが、欧米では大半が完治。日本でも西アフリカからの帰国者が隔離されたものの、感染はしていなかった。
4位 韓国旅客船事故で304人死亡・不明
韓国南西部の珍島沖で4月16日、旅客船「セウォル号」が沈没し、乗客乗員304人が死亡・行方不明となった。事故は船体の改造や過積載で復原力が低下した状態で、急にかじを切ったため発生。犠牲者の多くは修学旅行中の高校生だった。
乗客を残したまま真っ先に脱出したイ・ジュンソク船長ら乗員だけでなく、利益優先の船会社の経営体質やずさんな行政の監視・救助体制も問題視され、関係者約400人が立件された。一審の光州地裁は船長に対し、遺棄致死罪などで懲役36年の判決を言い渡した。事故直後の政府の対応は世論の批判を浴び、朴槿恵大統領の支持率低下につながった。
5位 米、キューバが国交正常化へ
冷戦時代から対立してきた米国とキューバは12月17日、国交正常化交渉の開始で合意したと発表した。オバマ米大統領はキューバを孤立させ民主化実現を目指すこれまでの政策を「50年間機能しなかった」と判断、数カ月以内にキューバに大使館を置くことや経済制裁の解除などに踏み切ることを目指している。
オバマ大統領は2016年の退任までに、歴史的な政策転換を実現し自らの業績としたい考えだ。ただ、米国は、キューバをテロ支援国に指定し、人権状況などを問題視してきた。キューバは北朝鮮との武器取引を続けてきており、米国内では国交正常化への反発も根強い。
6位 米中間選挙で共和が過半数奪還
11月4日の米中間選挙は野党・共和党が上院の過半数を奪還し、下院でも多数派を維持した。共和党は2016年の大統領選に向け、オバマ大統領との対決姿勢を強めるとみられ、過激組織「イスラム国」への対応や移民制度改革など、国内外の重要課題にも影響を与えつつある。
オバマ大統領は中間選挙後、主要政策の一つで共和党が反対している移民制度改革について、議会の承認を得ない大統領権限の行使を表明。民主、共和両党は予算案では妥協したものの、共和党は年明けの新議会でオバマ大統領に移民制度改革で方向転換を迫る方針で、激しい攻防が再燃する可能性もある。
7位 英スコットランド住民投票で独立否決
英北部スコットランドで9月18日、英国からの分離・独立の是非を問う住民投票が行われた。事前の世論調査では賛否が伯仲していたが、開票の結果、独立賛成44.7%、反対55.3%で独立は否決。英国分裂という歴史的事態は、かろうじて回避された。
投票は世界的な注目を集め、投票率は85%近くに達した。与党・保守党など主要各党は投票日直前、独立阻止のため自治政府への大幅な権限移譲を発表。独立派が唱えた英国との通貨ポンド共有が英政府に拒絶されるなど、独立後の国の在り方で現実的な青写真を示せなかったことも、独立への支持が伸び悩んだ一因とみられる。
8位 ノーベル平和賞にマララさん
子供の教育の権利を訴えてきたパキスタンの教育活動家マララ・ユスフザイさんがインドの児童人権活動家カイラシュ・サティヤルティさんとともに、ノーベル平和賞を受賞した。17歳での受賞はノーベル賞全部門を通じて史上最年少。
マララさんは、女性の社会進出を否定するイスラム武装勢力タリバンに抑圧された学校生活をブログにつづり、女性の教育の権利を訴えてきた。2012年10月、タリバンに銃撃されて頭部に重傷を負ったが、奇跡的に回復。受賞演説では、全ての子供が学校に行くまで活動を続けると誓い、「これが子供の教育のための最後の闘いとなるよう望む」と述べた。
9位 パキスタンで学校襲撃、140人超死亡
パキスタン北西部ペシャワルで12月16日、イスラム武装勢力「パキスタン・タリバン運動」(TTP)が軍運営の学校を襲撃し、生徒ら140人超が死亡した。パキスタン軍は6月以降、北ワジリスタン地区でTTP掃討作戦を展開しており、学校襲撃はその報復とみられる。シャリフ首相は「子供を標的とした残忍な事件だ」と非難。「テロ組織を駆逐するまで軍事作戦を継続する」と述べ、掃討作戦を強化する意向を示した。
TTPと関係が深い隣国アフガニスタンの反政府勢力タリバンも「罪のない人々、子供や女性を故意に殺害することはイスラムの基本に反する」と異例の非難をした。
10位(1)香港民主派デモ隊、幹線道路を占拠
中国全国人民代表大会(国会)常務委員会が2017年の香港行政長官「普通選挙」で中国当局に批判的な民主派を締め出す方針を決めたのを受け、「真の普通選挙」実施を求める学生らが9月28日から香港中心街の幹線道路を占拠。デモ隊は一時約10万人に膨れ上がり、1997年の香港返還以降、最大の政治的混乱となった。警察の催涙スプレーを傘で防いだことから、「雨傘革命」とも呼ばれた。
ただ、道路占拠が長期化するにつれ、市民の支持は低下。警察は12月11日、政府本部に近い金鐘(アドミラルティー)に陣取る学生らを強制排除し、道路占拠は2カ月半でほぼ終結した。
10位(2)白人警官不起訴、米各地で暴動
米国で黒人男性を死亡させた白人警官が相次いで不起訴となり、これに反発する抗議デモや暴動が各地に広がった。黒人初の大統領として人種問題への深入りを避けてきたオバマ大統領も「人々が公正に扱われていると自信が持てなくなる例があまりに多い」と苦言を表明。米社会に今も根強い人種差別意識を浮き彫りにする結果となった。
中西部ミズーリ州ファーガソンでは8月、丸腰の黒人青年が白人警官に射殺された。ニューヨークでも7月、白人警官が黒人男性を取り締まり中に首を絞め、死亡させた。白人警官の不起訴を決めた大陪審はいずれも、白人の陪審員が半数を超えていた。
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