ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

仏教174~アメリカ仏教の限界

2021-06-30 10:11:30 | 心と宗教
●現代社会の特徴とアメリカ仏教(続き)

5.個人化

 ケネス・田中は、現代社会は「個人化が進んだ結果、共同体の重要性が弱まってきた」とし、それによって、社会における心の不安と個人の孤立化が「自己のアイデンティティの不安定を生み、自分が本当は何者であるかが不明であるという人々を増やしてきた」という。「その結果、多くの人々は『真実の自己』を求めているのである」と述べている。また、欧米の仏教はそうした「人々の精神的なニーズに応えてきた」として、その点を現代社会で受容されやすい理由の一つとしている。
 私見を述べると、現代社会の個人化とは、家族、親族、村落、地域等の共同体が解体することによって進んできた現象である。共同体から離脱した個人は、自由を得るとともに不安と孤独感を抱える。そうした個人に安心や新たな帰属の場所を与えることは、宗教の機能の一つとなっている。この機能は、仏教に限らず、他の宗教にもあるものではある。問題は、従来の宗教が多くの人々を、自己の本質ないし真の自己の探求、発見、開発、実現に導くことが出来ているかである。一定程度の機能を発揮してはいても、自己の本質ないし真の自己の開発、実現に導くまでには至っていないと私は見ている。言い換えれば、悟りとしての「目覚め」まで、諸個人を導くことは、できていないということである。詳しくは、「信じる宗教」と「目覚める宗教」の項目に書いたところである。
 
 以上、ケネス・田中が現代社会の特徴としてあげる平等化、理性化、多様化、世俗化、個人化とアメリカ仏教の関係について、私見を述べた。この考察によって、アメリカ仏教の限界が、より明確になったと思う。

◆アメリカ仏教の限界

 アメリカ仏教の限界について、これまで各項目に私見を書いてきたが、それを補足する形で、アメリカ仏教に関するまとめとしたい。
 キリスト教の腐敗・堕落に幻滅を感じた欧米人の中には、科学と矛盾せず合理的に見える仏教に魅力を感じる人々がいる。キリスト教のように教会から与えられた教義を信じ、儀礼に参加するのではなく、自らメディテーションを実践して悟りを目指すアメリカ仏教は、彼らにとって受け入れやすいものなのだろう。
 今日アメリカでは、仏教のメディテーションの心理的・医学的効果が評価され、メディテーションを実践する人が増えており、今後も実践者の増加が予想されている。だが、仏教の教えにはほとんど実証が伴っていない。また簡略化された実践によって悟りを得るのは、至難である。もし仏教のメディテーションが真に効果的なものであるならば、仏教は、古代にインドで社会の隅々まで広がり、インド文明は仏教文明になっていただろう。実際は、仏教は、ヒンドゥー教の影響を受けてヒンドゥー化を続け、13世紀以降、インドでは消滅してしまった。また、それまでの過程において、仏教の中で法滅思想や末法思想が現れ、仏教が廃れることを説いてきた。わが国では、平安時代中期から末法思想が流行し、1052年(永承7年)から末法に入ったとされた。そして、末法の時代の信仰のあり方として、浄土信仰や法華経信仰が盛んになったという歴史がある。アメリカに仏教を伝えた伝道師たちは、こうした仏教の歴史をアメリカ人によく伝えることなく、禅や密教等の瞑想法を教え広めたのだろう。そのため、仏教の法と力の限界が目立ちにくい状態になっているものと見られる。
 チベットでは、8世紀後半にインドから密教を取り入れ、民族宗教のボン教と習合したチベット仏教が生まれた。チベット仏教では、ゲルク派のダライ・ラマが宗教的な最高指導者であるとともに君主となって、宗教・政治・文化をすべて統率する体制が続いた。だが、チベット仏教は、20世紀半ばから共産中国の侵攻・支配を受け、ダライ・ラマ14世が国外に亡命し、多くの僧侶は海外で活動せざるを得ない状態が続いている。チベットでは、中国共産党による仏教への弾圧、僧侶の虐待・殺害、民族浄化が強行されている。そこには、仏教の法と力の限界が強く現れている。仏教では、共産主義から国家と人民を守ることができないのである。これは、チベット仏教の問題だけというだけではなく、仏教全体の問題である。アメリカ仏教では、チベットへの支援や中国共産党への抗議が行われているが、チベットの悲劇は、仏教そのものの限界と広く認識されてはいないようである。
 やがてアメリカの人々は仏教の法と力の限界に気がついて、仏教を超えたものを求めるようになるだろう。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

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中国はどういうシナリオで台湾・尖閣を攻めるか3

2021-06-29 08:50:15 | 国際関係
●岩田清文元陸将、武居智久元海将、尾上定正元空将らによるシナリオ

 自衛隊の元最高幹部らが『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』(新潮新書)という対談本を本年4月20日に出版した。対談は、岩田清文(元陸将、陸上幕僚長)、武居智久(元海将、海上幕僚長)、尾上定正(元空将、航空自衛隊補給本部長)の各氏と兼原信克氏(元内閣官房副長官補、国家安全保障局次長)の4人で行われた。本書は、令和の国防について全般的に論じたものだが、その中から中国の台湾侵攻・尖閣奪取に関わる部分を抜粋し、編集を加えて、以下に掲載する。

◆台湾と米国および日本の関係

 兼原「台湾は、米中国交回復後、日米同盟のような米国との同盟関係はありません」「米国には台湾を防衛する国際法上の義務はありません。米国の国内法で台湾防衛の能力保持を定めているだけです」「米軍との共同作戦も共同演習もない」「共同の作戦があって毎年演習をしていないと、違う国の軍隊同士が共に戦うことは容易ではない」「ましてや日本とは何もない」
 尾上「台湾には日米安保条約みたいなしっかりした条約もないし、日米の共同統合演習のような演習もない」
 兼原「実際に紛争が起こった時に誰が何をどうするのかも、静かに考えておかねばなりません」
 「(註 台湾は)米本土と1万キロ以上離れている。一方、大陸本土とは200キロも離れていません」「台湾は仮に中国が台湾に攻め込むと決めたら、中国の侵略に反撃する米軍が到着する前に台湾の抵抗が終わってしまっている可能性すらあります」

◆中国の台湾侵攻のシナリオ

 尾上「中国の台湾侵攻シナリオを研究した『プロジェクト2049研究所』のイアン・イーストンが、『中国侵攻の脅威』という著書で具体的なシナリオを書いています。中国は、『Joint Island Attack Campaign』即ち統合島嶼攻撃作戦という本格的な侵攻作戦を準備している、と結論しています。
 イーストンは2019年1月に発表した論文で、人民解放軍は五つの計画を持っている、と分析しています。まず第一が統合火力打撃戦ということで、弾道ミサイルや巡航ミサイル、あるいは爆撃機の爆撃によって台湾の軍事拠点を徹底的に叩く。次に海上封鎖による台湾の孤立化。三つ目が台湾海峡を越える着上陸侵攻。四つ目が、アメリカが参戦してきた場合のカウンター攻撃や防空作戦。五つ目は、インドなど係争中の案件を抱える国から紛争を仕掛けられた場合への対抗作戦。この五つの本格的な軍事計画を持っている、とイアン・イーストンは分析しています」
 岩田「実際に中国が台湾に侵攻してくるとしたら、どういう展開になるのか。これは『中国、日本侵攻のリアル』という拙著にも書いたのですが、複合領域に亘る短期決戦を仕掛けてくるのだろうと思います。軍事的威圧を加えながらも努めて軍事侵攻を避ける形で、斬首作戦により独立派を事前に相当殺傷し、新政権を樹立して寝返らせるのが中国にとってベストです。それができない場合は、台湾国内に騒擾状態を作りだし、恫喝と経済封鎖と宣伝戦を組み合わせ、総統の斬首作戦と政権転覆を図り、あらゆる手段を駆使して米軍の介入を妨害し、米軍が来援できないうちに早期に軍事作戦により台湾を占領する、というシナリオがいちばんありうるかなと思います」

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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仏教173~現代社会の特徴とアメリカ仏教(続き)

2021-06-28 09:22:42 | 心と宗教
●現代社会の特徴とアメリカ仏教(続き)

3.多様化

 ケネス・田中は「欧米社会では多様化が進んでいる。特にアメリカでは、人種や民族そして宗教が共存しているために、寛容的で開放的な考えが必要となる」とし、「仏教の寛容的で開放的な態度は、多くの一神教の考えとは異なるゆえに多様性を容認する人々の間で、高く評価されているのである」と書いている。また、それが欧米の仏教が現代社会で受け入れられる理由ともしている。
 田中は、宗教間の関係には、三つの態度があるという。

(1)排他的態度: 自分の宗教が唯一正しく、他の宗教は間違いであると見て他の宗教を排除する態度
(2)包容的態度: 他宗教にも部分的に正しい点があることを認め、それらの宗教との交流も排除しない考え方
(3)多元的態度: 他宗教を間違い、あるいは劣るものとは見ず、正しい宗教は多数あり、自分の宗教もその一つであるという態度

 これらである。
 田中は、多元的態度について、「これこそ本来の仏教の態度であり、今後、世界の宗教間の健全な関係および世界平和のために不可欠である」という。そして、「この必要性は、宗教間対話の分野で有名なハンス・キュング博士の有名な発言に現れている。『宗教間の平和なしには、世界平和はあり得ない。そして、宗教間の対話なしには、宗教間の平和はあり得ない』。私は、仏教こそが、宗教間のさらなる対話を大いに促進できるリーダーとしての素質をもっている宗教であると思っている」と書いている。
 私見を述べると、世界の諸宗教には宗教間の対話が期待されており、仏教がそのために貢献し得るのであれば、結構なことである。ただし、多様化という点では、仏教の歴史はまさに多様化の歴史である。多様化の拡大の程度は、キリスト教をはるかに超える。仏教は一見合理的に見えるが、深く広く見ていくと、実際にはキリスト教の何倍もの多様性に満ち、混沌とした世界であることが分かってくる。また、この多様性によって、仏教の諸宗派間には統一性がなく、また仏教界全体には統合の中心もない。仏教では、一部の宗派間で対話が行われてきてはいるが、その対話には収斂が見えない。こうした仏教が仏教以外の宗教間の対話を進めるとき、世界の諸宗教は多様なものの共存を目指すべきものとなるだろう。だが、今後、人類社会で真に求められるのは、古代的な宗教の共存ではなく、それらが発展的に解消し、従来の宗教を超えたものへと進化することであると私は考える。

4.世俗化

 世俗化について、田中は、現代社会では「科学万能主義や政教分離の思想が蔓延」し、「宗教の影響力が低下している」という。「経済力が向上し、寿命が延びて自由な生き方を選べる」ようになっている現代社会では、「人々は『あの世』よりも『この世』を重視する」ようになり、欧米の仏教は「『この世』の課題に力を注いできた」という。「欧米の仏教は、現代宗教として当初から社会のニーズに対応しながら発展してきた。とりわけ1965年以降、現代社会の日常的なニーズに応えることに力を注いできた」とし、これも欧米の宗教が現代社会で受容されやすい理由としている。
 私見を述べると、世俗化は社会から宗教の影響力が失われていくことであるとともに、これを宗教の個人化ないし私生活化ととらえることができる。例えば、宗教社会学者のトーマス・ルックマンは、世俗化とは宗教が社会において公的機能を失い、私的な事柄となり、社会的には「見えない宗教」となることであると説いている。人間には自己実現・自己超越の欲求があり、また人間が死すべきものである限り、宗教の必要性はなくならない。私は、世俗化によって宗教の個人化ないし私生活化が進むなかで、宗教は社会における役割を変化させながら、これまでとは違う形で宗教独自の価値を発揮していくだろうと考える。
 田中の言うように、現代の先進国の社会では、人々が「あの世」より「この世」を重視するようになっており、宗教は人々の日常的なニーズに応えることが求められている。伝統的な概念でいえば、現世利益の追求である。だが、宗教は単に日常生活の利益を可能にするだけでなく、人間に内在する自己実現・自己超越の欲求を実現し、さらに死の問題について確かな回答を与えられるものでなければ、真に価値あるものとはではない。この点で、仏教の法と力には限界があるのである。

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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中国はどういうシナリオで台湾・尖閣を攻めるか2

2021-06-26 08:16:17 | 国際関係
●渡部悦和元陸将によるシナリオ(続き)

 「中国は、台湾問題の最終的解決のために、台湾の完全な降伏を追求し、大規模な軍事作戦に着手する可能性がある。しかし、そのアプローチは、平時からあらゆる領域(戦う空間)で実施される漸進的なものになるであろう。何カ月にもわたってゆっくりと行われる中国の漸進的なアプローチは、米国が強力な介入をすることを困難にする。
 ここで、強調したいことは、以前は『平時』と思っていた期間は決して平和な時ではなく、情報戦、宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦などが普通に行われる期間だということだ。この考え方は、中国の孫子の兵法以来の伝統的な考え方である『戦わずして勝つ』という原則に通じるものがある。
 領域は戦う空間のことだが、『自然に存在する領域』と『人工的な領域』に区分することができる。例えば、陸・海・空・宇宙領域は『自然に存在する目に見える領域』で理解しやすい。一方、『人工的な領域』には、サイバー・情報・認知(cognition)・技術・政治・外交・経済・文化・宗教・メディア・歴史など多数の領域がある。特に人間の頭脳などを含む認知領域はヒューマン領域とも呼ばれ、最近非常に注目されている。
 各々の領域を舞台とする戦い(warfare)があり、陸戦、海戦、空戦、宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦などと呼称される。
 情報領域での戦いは『情報戦』だが、その中には政治戦、影響工作(Influence Operation)、心理戦など広範囲な戦いがある。認知領域での戦いは(認知において人間の脳をコントロールする意味で)『制脳戦』や『認知戦(cognitive warfare)』と呼ぶ。AI同士の戦いを『アルゴリズム戦』と呼ぶ。そのほかにも金融戦、貿易戦、外交戦、文化戦、宗教戦、メディア戦、歴史戦、技術戦、デジタル戦など多数考えられる。
 現代戦は、戦いの目的に応じて、各種領域における戦いを融合した形式で行う。(略)つまり、目標を達成するために、あらゆる軍事的手段や非軍事的手段、目に見える手段と目に見えない手段を組み合わせて戦うということだ。
 中国の『戦わずして勝つ』を現代的に表現すると、欧米では『ハイブリッド戦』であり、中国では『混合戦』だが、私は『全領域戦』と呼んでいる。『全領域戦』は、米国防省や米軍が最近主張している全領域作戦(ADO: All-Domain Operations)からヒントを得ている。
 米陸軍の作戦構想は、陸・海・空・宇宙・サイバー空間を主たる作戦領域とする多領域作戦(MDO: Multi -Domain Operations)だ。米国防省や米軍(特に空軍)は最近、多領域作戦を一歩進めた全領域作戦を提唱していて、その具体化を進めている。米軍の全領域作戦は軍隊が行う軍事作戦であるが、筆者が提案する全領域戦は軍隊のみならず、政府を中心として多くの組織が参加し、あらゆる領域(陸・海・空・宇宙・サイバー・電磁波領域・情報・認知領域など)を利用して行う戦いである。中国の超限戦は実は全領域戦と呼ぶべき戦いであるし、中国の台湾攻略は全領域戦にならざるを得ないというのが筆者の考えである。
 中国が一番重視しているのが情報戦(特に影響工作)だ。通常の民主主義国家の情報戦は、主として軍事作戦に必要な情報活動を意味する。しかし、中国は情報戦を広い概念でとらえていて、解放軍の軍事作戦に寄与する情報活動のみならず、2016年の米国大統領選挙以来有名になった政治戦、影響工作、心理戦、謀略戦、大外宣戦などをすべて含むものだと理解すべきであろう。
 解放軍にとっては情報戦が現代戦の最も基本となる戦いになる。情報戦を基本として、宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦などが存在する。
 中国ではこれらすべての戦いを担当する非常に重要な戦略支援部隊(拙著「中国人民解放軍の全貌」を参照)が存在することは全領域戦の観点で特筆すべきことである。戦略支援部隊は、解放軍の台湾作戦においても重要な役割を果たすことになる」
 「全領域戦を中国の台湾統一のケースに当てはめると以下のようになるであろう。
 第1の作戦は、最も重要な平時における作戦だ。あらゆる手段を使って平和裏に台湾を支配下に置く算段を追求するであろう。
 例えば、情報戦(政治戦、影響工作、心理戦、外交戦、核の威嚇)、破壊・転覆(サボタージュ、誘拐、要人暗殺、暴力的デモ、浸透工作)は常に行われるであろう。また、台湾はあらゆる分野(政治・経済・軍事・メディア・アカデミアなど)に大陸からのスパイが浸透しているので、情報戦や破壊・転覆活動は頻繁に行われると覚悟すべきだろう。そして現在、中国が日常的に行っている台湾周辺での海空戦力を中心としたISR(情報・警戒・監視)や軍事演習は台湾軍を疲弊させ、解放軍の軍事行動を既成事実化し、台湾を守ることができないことを世界に示す効果がある。
 第2の作戦は、封鎖作戦である。昔の封鎖作戦は、海や空のみの封鎖であったが、現代の封鎖作戦では、あらゆる領域における封鎖(使用拒否)を覚悟せざるを得ない。サイバー空間の封鎖はサイバー戦、電磁波領域の封鎖は電子戦、宇宙の封鎖は宇宙戦によって行われる。
 第3の作戦は、離島攻撃(東沙島・太平島・澎湖島)だ。これらの島を占領し、『離島を諦めるのか、奪回するのか』などの難しい決断を台湾政府に強い、台湾国内を混沌とした状況にさせる効果があるだろう。
 第4の作戦は、火力打撃(ミサイル攻撃、航空攻撃)だ。解放軍のミサイル攻撃と航空攻撃により、台湾軍の主要拠点を破壊するのみならず、あわよくば台湾の武装解除(当初は軍と政府、その後は市民)を狙った作戦であり、それによって台湾が中国の要求に従うことを強制する。
 第5の作戦は、最終的な作戦で本格的な着上陸作戦を行うであろう。その際に、中国は台湾への段階的な侵攻の一環として、最初に台湾の沖合いの島々に上陸する可能性はある。
 中国の視点から見た本格的な台湾侵攻作戦の魅力は、奇襲の可能性にある。
 奇襲が成功すると、米国は軍事的に対応することが難しくなる。この場合、米国大統領が中国への攻撃を承認することは政治的に困難になる」

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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仏教172~現代社会の特徴とアメリカ仏教

2021-06-25 10:08:43 | 心と宗教
●現代社会の特徴とアメリカ仏教

 ケネス・田中は、仏教の将来について、次のように予想する。
 「仏教は、21世紀の半ばへ向かってカナダ、西ヨーロッパ、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)などの西側先進国、特にアメリカで伸びていくと思われる」(『目覚める宗教』)
 「アメリカにおける仏教の成長は、多くの人々の間での、伝統宗教からスピリチュアリティーへという移行を意味している(略)。しかし、この現象はアメリカに限ったことではなく、他の国々、特に西洋やアジアの先進国において見いだされることである。この点は日本も例外ではない」(「アメリカに浸透する仏教―その現状と意義」)
 「アメリカ的な仏教が、今後、グローバル化する世界で伸びる傾向があることは確かである。それは、教育水準が高まる世の中では、人格的な神を信じるという宗教には納得できない人々は増えるからである。一方、アインシュタインも発言したように、科学と矛盾しない『広大無辺の宗教』の代表である仏教こそが、今後より多くの人々に受け入れられていくのである。その広大無辺の宗教こそが、『信じる宗教』ではなく、『目覚める宗教』なのである」(『目覚める宗教』)
 ここで田中が「広大無辺の宗教」と書いているのは、”a cosmic religion“の訳語だろう。アインシュタインは、仏教には“cosmic religious feeling(宇宙的な宗教感覚)”が強くあると認めていた。彼のいう“cosmic religious feeling”のある宗教は、しばしば “cosmic religion(宇宙的な宗教)”と呼ばれている。
 田中は、仏教は、今後アメリカ等の先進国を中心に伸びる、またアメリカ的な仏教がグローバル化する世界で伸びる傾向にあると見ている。その理由として、上記の引用文では、多くの人々における伝統宗教からスピリチュアリティへの移行、仏教は科学と矛盾しない「広大無辺の宗教」であること、「信じる宗教」ではなく「目覚める宗教」であることを挙げている。
 これまでアメリカ仏教について書いてきたことから上記の記述を補うならば、出家者と在家者、男性と女性の平等化が進んでいること、教義や儀礼よりメディテーションの実践が中心であること、宗派を超えた交流に積極的であること、宗教が個人化する傾向に応えてきていることもアメリカ仏教の特徴に挙げられよう。これらの特徴も成長要因となって、アメリカ的な仏教が今後、先進国を中心に世界的に伸びると、田中は予想していると理解される。
 また、こうした予想は、現代社会には仏教が伸びる条件があると田中が見ていることにもよっている。いわば先に挙げた点が主体的な要因、次に挙げる点が環境的な要因である、前者を因ないし内因、後者を縁ないし外縁とすれば、これも因縁による生起となる。
 田中は、著書『目覚める宗教』において、「先進国の日本やアメリカが代表する現代社会には、その差は幾分かあるにしても共通した五つの特徴が挙げられる」として、平等化、理性化、多様化、世俗化、個人化を挙げている。そして、「これら五つの特徴は、今後世界のグローバル化が進むにつれて、世界的規模に広まり深まるであろう」と書いている。次に、アメリカ仏教の内因に対する外縁となるそれらの特徴について、田中が書いていることの大意をもとに、私見を述べたい。
 なお、田中は「アメリカ仏教」「アメリカ的な仏教」「欧米の仏教」という三つの言い方をしているが、これらの定義が示されていない。そこで、あいまいなままではあるが、田中による文脈に応じてそのまま書くことにする。

1.平等化

 現代社会における平等化とは、伝統による様々な差別が減少していく傾向である。田中によると、アメリカ仏教は、出家者と在家者、男性と女性の平等化が進んでいるので、先進国では受け入れやすいと見ている。
 私見を述べると、歴史的に仏教には女性は解脱や成仏ができないという思想があり、極めて差別的だった。それに対し、女性も救われると説く経典や宗派が現れ、多くの女性信者を集めるようになった。欧米では男女平等の価値観が発達し、それが仏教をはじめ、キリスト教の一部にも浸透している。アジアにおいても、仏教における男尊女卑の傾向は、一定程度、改められていくだろう。ただし、欧米には、男女の自然な性差をも否定する極端な思想がある。男女の権利における平等と、自然な性差の否定は、別の事柄である。自然な性差をも否定する極端な思想に迎合する宗教は、人類を本来の自然なあり方から外れる方向に誤導するものとなる。特に共産主義に根差す過激なフェミニズムには、注意を要する。
 出家者と在家者の平等化については、その問題点について、アメリカ仏教の項目に書いたので、ここでは省略する。

2.理性化

 田中は「教育水準が高まるにつれ、現代人は科学的で理性的な思考能力を持つように」なっていると書いている。「欧米では仏教は一神教とは異なり科学と矛盾しないとのイメージが強い。特にアメリカでは心理学と仏教の融合が進み、心理療法に仏教の瞑想が取り入れられ、痛みの軽減や免疫の強化にも有効であるとして医学治療にまでおよんでいる」とし、「アメリカ仏教は、理性的思考に訴える」ことにより、教育の進んだ国や地域では受け入れやすい、と田中は見ている。
 私見を述べると、科学の発達した現代社会においては、科学と矛盾しない宗教が求められている。仏教は多くの科学者から高く評価されていることを先に書いた。だが、仏教は本質的に古代に発生した宗教であるので、科学の知見と矛盾する点は少なくない。例えば、輪廻転生は、古代インドで自然の観察から発達した観念だが、その自然観察は科学以前の素朴なものである。そこから生まれた観念がインドの諸宗教とともに仏教の根本に存在する。
 仏教は、アメリカでは、キリスト教のような人格的な唯一神の意思に従うではなく、宇宙の法則に従う教えであり、またキリスト教のような非科学的・神話的な教義がないとして、理性的な教えと理解されているようである。確かに初期仏教は、そのように理解され得る合理的な性格を持っている。だが、大乗仏教の諸宗派において、禅は釈迦仏ないし阿弥陀仏、チベット仏教は毘盧遮那仏ないし大日如来を信仰対象としている。そのことをはじめ、非科学的・神話的な要素は少なくない。単に瞑想を実践するだけでなく、仏教の聖典を読み、その内容を深く学ぶならば、単純に理性的とは言えないことがわかるだろう。

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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 『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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中国はどういうシナリオで台湾・尖閣を攻めるか1

2021-06-24 10:07:59 | 国際関係
 共産中国の台湾侵攻の時期が迫っている。最も起こり得るシナリオは、台湾侵攻と尖閣奪取を一体のものとしたシナリオである。言い換えれば、台湾有事は、即日本有事となるということである。
 本稿は、その事態に備えるため、日本や米国の防衛・安全保障の専門家たちが想定する中国の台湾侵攻・尖閣奪取のシナリオを紹介するものである。10回ほどの連載を予定している。

●図上演習では何度も米軍が敗れる

 本年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン前司令官は、「中国が向こう6年以内に台湾に侵攻する」との見通しを述べた。6年後に、人民解放軍は建軍100周年を迎える。それまでに成果を上げようとするだろうという見方である。4月下旬にデービッドソン交代したジョン・アキリーノ現司令官は「中国の台湾侵攻は大多数が考えるより間近だ」と警告している。
 本年3月27日米NBCニュースは、中国の台湾侵攻を想定した米国防総省の図上演習で、米軍がしばしば敗北しているとし、数日から数週間のうちに中国による台湾全面侵攻が完了する可能性が高いことが明らかになったと報道した。
 この図上演習は米国を想定したブルーチームと、中国を想定したレッドチームに分かれて行われた。元米国防次官補代理で、演習に協力している米シンクタンク、ランド研究所のデビッド・オクメネク研究員は、NBCに対して「台湾の空軍は数分間で全滅し、太平洋地域の米空軍基地が攻撃を受け、米国の戦艦と戦闘機は中国の長距離ミサイルに阻止される」と説明した。「ブルーチームが断固として介入した場合も、(レッドチームの)侵攻を退けるとは限らない」とも語った。
 オクメネクは朝日新聞の取材に応じ、「中国の軍事ドクトリンは、紛争の早い段階で台湾の空軍基地やその他の標的を攻撃すると想定している。米軍は台湾防衛を支援するために迅速に対応する姿勢をとらなければならない」と語った。
 また、米国の国防ウエブサイト「Defense News」は、次のように伝えている。
 「2018年に実施された南シナ海シナリオに関する米中戦争の兵棋演習(ウォーゲーム)において、米軍はほぼ現在の戦力で戦ったが、記録的な短時間で大敗北を喫した」「2019年に実施された台湾シナリオでは、米軍のインサイド部隊(註 第1列島線に配置された部隊)とアウトサイド部隊(註 第1列島線の外側から戦力を発揮する米海軍や米空軍など)の効果を比較する形式で行ったが、米軍が敗北した。その結果を基にして、インサイド部隊とアウトサイド部隊の最善の組み合わせを考えることになった」
 「これら2回の兵棋演習の結果を踏まえ、2030年を想定した兵棋演習においては、まだ具体化されていない装備等を含め、様々な施策を実施した想定で米軍戦力を準備した結果、米軍が解放軍に勝利した」と。
 こうした報道から読み取れるのは、現時点では、共産中国が台湾侵攻を行った時、米軍が勝利することは極めて難しいということである。その状況を数年内に逆転できるのかについて、私の知る限り確かな見通しは示されていない。また、中国は、その間にも戦力をさらに増強し、また台湾統一のためにあらゆる手段を取るだろうことを認識しなければならない。

●渡部悦和元陸将氏によるシナリオ

 元陸将の渡部悦和氏は、共著『現代戦争論―超「超限戦」- これが21世紀の戦いだ』 (ワニブックス)で、共産中国の超限戦を解き明かし、これに対抗するため「超・超限戦」を説いている。「超・超限戦」とは、超限戦が邪道であるのに対して、日本が取るべき正道の戦い方である。
 中国の超限戦とは、人民解放軍の喬良と王湘穂という二人の空軍大佐が1999年に発表した戦略である。世界の戦争史の画期となった湾岸戦争(1990年~1991年)などにおける米軍の戦略、作戦、戦術を研究して導き出された戦略であり、シナの伝統である孫子の兵法を融合したものである。
 渡部氏によると、中国の超限戦とは、「文字通りに『限界を超えた戦争』であり、あらゆる制約や境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法、倫理など)を超越し、あらゆる手段を駆使する『制約のない戦争(Unrestricted Warfare)』である。正規軍同士の戦いである通常戦のみならず、非軍事組織を使った非正規戦、外交戦、国家テロ戦、金融戦、サイバー戦、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)などを駆使し、目的を達成しようとする戦略である。倫理や法の支配さえも無視をする極めて厄介な戦争観である」(「中国が仕かける超限戦の実態と人民解放軍改革」)
 中国やロシアは、超限戦の戦略思想を取り入れ、米軍の戦略を超える新たな戦略を生み出した。欧米では、それを「ハイブリッド戦」と呼ぶ。渡部氏は「全領域戦」と呼んでいる。領域とは、米軍が使用しているドメイン(domain)という用語の和訳である。陸・海・空といった領域に留まらず、宇宙・サイバー・電磁波という領域を合わせて、全領域と言う。
 渡部氏は、共産中国は、台湾侵攻において全領域戦(all-domain operations)を展開すると見ている。2020年代の今日における現代戦は、宇宙・サイバー・電磁波の領域を重視した戦争であり、台湾侵攻が全領域戦として遂行されるのは当然である。我々はこうした認識を以って、中国のシナリオを想定・検討しなければならない。また、中国の戦略は超限戦の思想に基づくものゆえ、戦時と平時、軍事と非軍事等の区別はなく、軍事的な侵攻以前から「非軍事組織を使った非正規戦、外交戦、国家テロ戦、金融戦、サイバー戦、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)などを駆使し、目的を達成しようとする戦略」が台湾に対して実行されることを理解しなければならない。
 さて、渡部氏は、JBPress 2021.6.17付けに「衝撃、中国人の7割が武力による台湾統一を支持~台湾有事の引き金は、中国の自信と驕りによって引かれる」と題した論文を載せた。この論文の中で、渡辺氏は、中国による台湾侵攻のシナリオについて書いている。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65698?fbclid=IwAR1WO7KcaaNHVt6Ll6Q1TecaW6OeK5dOq07z3cm_svr5ZG55WdgPfg2HcoQ
 その論文からポイントなる部分を抜粋して紹介する。
 「中国にとって、台湾の平和的な統一を実現できれば理想的だが、言うは易く行うは難しい。そのため、習近平主席は、台湾併合のためには軍事力の使用を含むあらゆる手段を排除しないと明言している。その軍事的統一の裏付けが2015年末から習近平主席が主導してきた人民解放軍の大改革である。軍の大改革の主目的は台湾軍事統一に不可欠な米軍のような統合作戦能力を獲得することである。
 習近平主席は、台湾有事について、やり方によっては米軍に対抗できると思っている可能性が高い。彼が狙っているのは、米軍の対応ができない方法で奇襲的に台湾を占領することであろう」
 「習近平主席の人民解放軍改革は、戦略支援部隊の新編などにより、中国の宇宙戦、サイバー戦、電磁波戦の能力を向上させた。例えば、電子戦を使い米軍の早期警戒システムの機能を不全にすることも考えられる。サイバー攻撃により、重要インフラに局地的かつ一時的な破壊的影響を及ぼす可能性もある。
 弾道ミサイルや巡航ミサイルを含む中国の攻撃兵器は、数日のうちに西太平洋の米軍基地を破壊する可能性がある」

 次回に続く。

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 『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
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仏教171~「信じる宗教」と「目覚める宗教」

2021-06-23 08:41:27 | 心と宗教
◆「信じる宗教」と「目覚める宗教」

 ケネス・田中は、アメリカで仏教に目を向ける人々は、仏教を「信じる宗教」(religion of faith)ではなく、「目覚める宗教」(religion of awakening)ととらえているという。田中は、次のように書いている。
 「どの宗教でも経典を信じ指導者を信頼することは大事である。仏教徒もこれは必須ではあるが、仏教徒の最終目標は信じた後の『目覚め』である。つまりブッダ(目覚めた者)になることこそが最終目標である」(『目覚める宗教』)
 「キリスト教から仏教へ改宗した人たちに尋ねると、キリストの復活を『信じる』ことより、煩悩による誤った見方を是正して自らが『目覚める』ことを究極の目的にする仏教の教えのほうが魅力的だと答える人が実に多い」(『目覚める宗教』)。
 彼らは「キリスト教などには、立派な教義があるが、その教えを体験する方法が明確ではないのに対し、仏教は誰もが日々実践できる瞑想などを通して実際に教えを体験できることにひかれると話す」(「欧米人を魅了する仏教の秘密 信じる宗教から目覚める宗教へ」中日新聞2011年12月3日夕刊)。
 「欧米では(略)多くの人がこの『目覚める宗教』に魅了されている。ただ単に教えのみを信じ込む従来型の宗教形態が、欧米のような先進国では崩れ始めているといえる」(中日新聞2011年12月3日夕刊)
 このように、田中は、欧米では「信じる宗教」から「目覚める宗教」への移行が起こっているという。この移行は、受動的な姿勢から能動的な姿勢へ、追従的な心理から主体的な心理へ、集団的から実践から個人的な実践へという変化といえよう。こうした変化が、特にアメリカにおけるキリスト教から仏教への移行において起こっていると見られる。
 田中は、宗教において信じることの重要性を否定しているのではない。「どの宗教でも経典を信じ指導者を信頼することは大事である。仏教徒もこれは必須ではある」と述べている。そのうえで、「仏教徒の最終目標は信じた後の『目覚め』である」と強調する。
 この点について、私見を述べると、まず問題は、信じることの内容だろう。アメリカ人のキリスト教徒には、キリストの復活等が信じがたくなっている。そこで彼らの一部は仏教に魅力を感じるというわけだが、彼らが仏教の複雑で多様な教義内容を知れば、そこにも信じがたい点が多くあることを見出すだろう。アメリカ仏教の指導者は、教義の教育を重視せず、実践中心の指導をしている。そのため、多くのアメリカ人は仏教を真に信じられるかどうかという壁にぶつかることが避けられているのだろうと私は考える。
 また、田中が仏教徒の最終目標は「信じた後の『目覚め』」であると主張する点についても検討が必要である。田中は浄土真宗を信奉しているとのことだが、浄土真宗は、修行の必要がなく、信仰による救済を求める宗派であり、他力宗と呼ばれる。浄土信仰では、阿弥陀仏を信じ、阿弥陀仏による救済を求める。阿弥陀浄土への往生は、多くの信者にとって「目覚め」とは意識されていないだろう。信仰の目標は、「目覚め」ではなく救いだからである。実際のところ、アメリカ仏教で「目覚め」を目指すのは、禅・密教・部派仏教の系統である。日本では、それらの宗派は、修行を重んじ、自力による成仏を目指すことから、自力宗といわれる。そして、自力ではいかなる難行苦行をしても「目覚め」に到達し得ないということから、阿弥陀信仰や法華経信仰が盛んになったという歴史がある。
 次に、仏教の最終目標は「目覚め」、言い換えれば悟りだが、実際にどれだけの実践者が悟りに到達し得ているかということである。ここで悟りに到達したというのは、ブッダ(悟った者)になったという意味である。(註1)仏教の2千数百年の歴史で悟りに到達し得たと認められる者は、ごく少ない。弥勒信仰では、釈迦の入滅後、弥勒菩薩が下生するまでの間は無仏の時代であり、誰も悟りに至れる者は現れないと予想されている。アメリカ仏教の60年ほどの歴史において、釈迦に続いて悟りとしての「目覚め」に到達し得たと客観的に認められる者は、何人いるのだろうか。仏教の歴史では、釈迦の教えに従って出家して一生を修行に打ち込んだ者たちであっても、ほとんどが悟りに至り得ずに、今日に至っている。それゆえ、アメリカ仏教では、出家をせず、在家者の立場で、厳しい修行をすることなく、半ば世俗的な生活をしながら、「目覚め」に到達し得ているとは、非常に考えにくい。アメリカ仏教では大安楽往生の確かな事例の報告が見られないことは、何らかの精神的な向上はできても、大安楽往生を達成するには、至っていないことを意味するだろう。
 それゆえ、「信じる宗教」としてのキリスト教から「目覚める宗教」としての仏教に移行したと思っている人々は、新たな種類の混迷の領域に入り込み、幻滅と失望に至る可能性が高い。


(1) 田中は、仏教徒の最終目標を「目覚め」とし、ブッダ(悟った者)となることとしている。だが、伝統的な仏教では、田中のいう「目覚め」すなわち「悟り」に至るまでには、いくつかの段階があるとされている。インド仏教では、「悟り」に至る修行の段階を、見道、修道、無学道の三道に分ける。また、修行の道を進む聖人を預流、一来、不還、阿羅漢の4つの階位に分け、これらにそれぞれ向と果の級位を設けて、四向四果とし、合わせて8つの階級があるとしている。また、「悟り」に至る過程で、自己亡失、真如顕現、自我解消、基層転換、叡智獲得という5段階の体験があることを大竹晋は、解明している。田中の所説は、伝統的な三道、四向四果、「悟り」に至る過程での5段階の体験を無視して、究極の「目覚め」すなわちブッダになる「悟り」のみを説くものである。
 もしアメリカ仏教に、三道、四向四果、「悟り」に至る過程での5段階の体験が知られていないとすれば、アメリカの仏教徒は、伝統的な仏教では、聖人の体験とは見なされないレベルの体験を以て、究極の「悟り」に近いものと誤解し、仏教の修行を極めて安易に捉えていることになるだろう。伝統的な仏教では、聖人の最も低い階位である預流とは、天上道と人間道を七度往復する間に修行が進んで悟りを得る者とされている。すなわち、輪廻転生を7回繰り返して、ようやく悟りを得ることのできるレベルということである。

 次回に続く。

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新型コロナウイルスの起源の徹底解明を3

2021-06-22 10:13:13 | 国際関係
 産経新聞6月20日付に「武漢研究所流出説を葬ろうとした人々」と題した村上政俊氏(国際政治学者)の記事が掲載された。
 村上氏は次のように書いている。
 「新型コロナウイルスの発生源は一体どこなのか。全世界に甚大な被害をもたらしているパンデミックの核心をめぐって、いま再び議論が高まりをみせている。きっかけの一つが、中国・武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所からの流出の可能性について論じた英国生まれの科学ジャーナリスト、ニコラス・ウェイド氏の論考である。
 研究所からの流出説はトランプ米政権によっても唱えられていたが、多くの米国メディアは陰謀論としてまともに取り合おうとはしなかった。しかし、5月にウェイド論考が発表され、他にも科学を専門とする研究者やジャーナリストによる指摘が相次いだこともあり、にわかに研究所流出説が注目されるようになったのである。トランプ前大統領に批判的な現在のバイデン政権も情報機関への再調査を命じ、世界保健機関(WHO)総会では発生源についての再調査を求めた。研究所流出説をめぐるこの変化は、いったい何なのか」
 ニコラス・ウェイドは、世界的に有名な英国の作家兼ジャーナリストである。科学雑誌 Nature、Science、およびニューヨークタイムズの科学セクションのスタッフライターおよび編集者を務めてきた。数多くの本の著者であり、著書『宗教を生みだす本能』(NTT出版)は松岡正剛氏が千夜千冊で取り上げ、『人類のやっかいな遺産──遺伝子、人種、進化の歴史』(晶文社)などが世界的なベストセラーになっている。
 このウェイドが新型コロナウイルスの起源問題について書いた論文「COVIDの由来:手がかりを探る」(2021.4.21)の和訳が下記のサイトに掲載されている。
https://www.subculture.at/origin-of-covid-%E2%80%94-following-the-clues1/?fbclid=IwAR2KiNKQclh7APOJ-7zit8tTkyu3BGVC4ujhSllbk-ljhdS924-O3B-BThk
 結論部より引用する。
 「300万人もの死者を出したウイルスの起源について、もっともらしい説があれば、真剣に調査する価値があると考えるかもしれない。あるいは、ウイルスの起源にかかわらず、機能獲得型の研究を続けることの賢明さについても、検討する価値があるだろう。
 また、NIH(註 アメリカ国立衛生研究所)やNIAID(註 アメリカ国立アレルギー感染症研究所)が機能獲得型研究への資金提供をモラトリアム期間中に行っていることについても、調査が必要である。メディアが明らかに好奇心を失っているのはなぜだろうか。
 その理由の一つは、ウイルス学者たちの沈黙の掟である。科学記者は、政治記者とは異なり、情報源の動機に懐疑的になることはほとんどなく、自分の役割は科学者の知恵を一般大衆に伝えることだと考えている。そのため、情報源が協力してくれないと、彼らは途方に暮れてしまうのだ。
 もうひとつの理由は、メディアの多くが政治的に左に移動していることだろう。トランプ大統領が『ウイルスは武漢の研究所から流出した』と言ったため、編集者はその考えをほとんど信用しなかった。
 彼らはウイルス学者と一緒になって、ラボ・エスケープを否定可能な陰謀論とみなした。トランプ政権下では、『実験室流出の可能性は否定できない』という情報機関の見解を否定することに苦労しなかった。しかし、バイデン大統領の国家情報長官であるアブリル・ヘインズが同じことを言っても、彼女もほとんど無視された。
 これは、編集者が実験室流出のシナリオを支持すべきだったということではなく、その可能性を十分かつ公正に検討すべきだったということである。
 この1年間、家に閉じこもっていた世界中の人々は、メディアが提供する以上の答えを求めているかもしれない。おそらく、そのうちに一つは出てくるだろう。何しろ、自然発生説が一片の裏付けも得られないまま月日が経てば経つほど、その信憑性は薄れていくのだから。
 もしかしたら、国際的なウイルス学者のコミュニティは、偽りで利己的なガイドと見られるようになるかもしれない。
 武漢でパンデミックが発生したのは、武漢の研究室が安全でない環境で危険度MAXの新型ウイルスを作っていたことと関係があるのではないかという常識的な認識は、トランプが何を言っても真実であるはずがないというイデオロギー的な主張を最終的には覆すことができる」
 ウェイドは、新型コロナウイルスの起源について中国武漢の研究所からの流出の可能性を認め、調査・研究の必要性を主張している。流出説が正しいかどうかの判断はしていない。しかし、ウェイドの論文を読めば、人工説については、それを裏付ける専門家の論文が多数あり、また状況証拠が豊富であるのに対し、自然変異説については、それを裏付ける確かな研究はなく、また人工説を科学的に否定する証拠はないと、多くの読者は考えるのではないか。
 新型コロナウイルスの起源は、徹底的に解明されなければならない。この問題は、中国共産党の言うことを何の疑いもなく信じるか、科学的・合理的・実証的に物事を考えるかという人間としての基本的な態度に関わる事柄なのである。

 以後、随時掲載。

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仏教170~宗教団体とスピリチュアリティ系の団体

2021-06-21 10:22:42 | 心と宗教
●宗教団体とスピリチュアリティ系の団体

 宗教とスピリチュアリティを区別して考える場合、宗教団体とスピリチュアリティ系の団体は、どう違うのだろうか。
 私は、先に書いたように、宗教を「人間や自然を超えた力や存在を信じ、それに関わる体験を共有する集団によって形成された信念と象徴の体系」と定義している。この「人間や自然を超えた力や存在を信じる」という要素が、スピリチュアリティ系の団体にあるかどうかが、まず重要な判断基準となる。スピリチュアリティ系の団体は自らを宗教ではないと称したり、またその団体に所属する人々がその団体は宗教とは違うと意識していたりする。だが、禅の系統にしても、チベット仏教の系統にしても、テーラワーダ仏教の系統にしても、もとは仏教の宗派であり、教義には法身仏、如来、菩薩等が説かれている。それゆえ、それらを完全に否定したものでない限り、スピリチュアリティ系の団体もまた、「人間や自然を超えた力や存在を信じる」という要素を持つことになる。
 次に、宗教には教義、組織、実践、体験という四つの構造的要素があるという私の見方によると、宗教団体に比べてスピリチュアリティ系の団体には、次のような傾向がある。
 教義に関しては、あまり深く立ち入らず、実践中心である。
 組織に関しては、アジアの仏教国では社会がそのまま仏教組織でもあるのに対し、スピリチュアリティ系団体は、個人が自由意思で参加する。また、社会的にも団体的にも義務や拘束の少ないゆるい組織と見られる。
 実践に関しては、実践の要素としての儀礼・信仰・修行のうち、集団的な儀礼の一つである慣習的儀式を重視しない。信仰より瞑想による修行を中心とする。
 体験に関しては、瞑想による個人の体験を重視する。
 それゆえ、教義より実践が中心、儀礼・信仰より修行が中心、個人の体験を重視という傾向がある。
 スピリチュアリティ系の団体は、上記のような傾向を持つが、私の見方では、宗教団体と全く違うものではない。宗教団体を基準とすれば、疑似宗教ということもできる。また、宗教ではあることを隠したり、宗教ではないと装うことによって、人々を引きつけ、詐欺的な行為をする団体もあることに注意しなければならない。
 アメリカでは、宗教とスピリチュアリティは対比されるものとなっているが、実は、キリスト教の主流派以外の多くの宗教・宗派においては、宗教とスピリチュアリティは相違・対立するものではない。1960年代以降、アメリカの若者がスピリチュアリティを求めた仏教やヒンドゥー教では、儀礼・信仰・修行はみなスピリチュアリティに関する実践である。
 宗教団体においても、スピリチュアリティすなわちスピリットの探求、発見、開発、実現は可能である。それのできない団体から今、人々が離れつつあるのである。また、スピリットの探求、発見、開発、実現をする団体が、新たな宗教団体に発展することもあり得る。
 宗教が制度化され、形式化した時、神秘主義が盛んになって、これらが対立することが、宗教の歴史では繰り返されてきた。宗教が神秘主義を失ったとき、信仰は形骸化する。宗教的な権威を持つ官僚による精神的な支配が行われる。その時、神秘主義は、宗教の硬直状態を打ち破る。体験こそ宗教で最も重要な要素であり、神秘主義は非日常的な体験に基づいて、宗教の価値を再確認させる。それによって、り、宗教に活力を回復させるのである。
 アメリカにおいて宗教からスピリチュアリティへの移行とされる現象が生じた大きな原因は、組織化され、制度化されたキリスト教における腐敗・堕落や硬直化に対して、若者や知識人が幻滅し、疑問を持ち、反発したにあるだろう。これは、日本の既成の仏教でも見られる現象である。葬式仏教と化した日本の仏教に幻滅した若者たちの一部は、チベットの仏教やヒンドゥー教、アメリカのスピリチュアル・ムーヴメントに共感し、そこにスピリチュアリティを求めるようになっている。

 次回に続く。

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小室家の重大疑惑~元暴力団関係者との付き合い、遺族年金の不正受給

2021-06-20 10:05:46 | 皇室
 秋篠宮眞子内親王殿下の小室圭氏とのご結婚問題に関して、私は強く反対する立場から発言している。主な発言内容は、下記に掲示している。

 拙稿「秋篠宮眞子内親王殿下の破滅的なご結婚に反対する」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion05d.htm
 拙稿「眞子様のご結婚強行は皇室への信頼を損なう」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion05e.htm

 小室圭氏は、5月に留学していた米フォーダム大学のロースクールを卒業し、7月にニューヨーク州の弁護士試験を受ける予定である。その後、同州の弁護士事務所か同州にある国連関係の国際機関に就職するのではないかと見られている。
 こうしたなか、女性セブン 2021.5.20付は、ご結婚問題に関して重大な問題点を網羅した記事を載せた。既報の内容が多いがが、新たな情報を含む部分もある。その部分を抜粋して以下に掲載する。

―――――――
元暴力団関係者との付き合い

 敏勝さんと善吉さんがこの世を去った直後、佳代さんは驚きの行動に打って出る。
 「善吉さんの死後に問題となったのは、遺産を“誰が相続するのか?”について。佳代さんは“孫である圭も相続する権利がある”と主張したのです。旦那さんと義理のお父さんが亡くなり、親戚一同が悲しみに暮れる中だったので、冷たい人だと感じました。ただ、マイホームの件で敏勝さんの家族と揉めていた手前、佳代さんは自らが交渉のテーブルにつくことを嫌がっていましたね」(小室家の関係者)
 そこで佳代さんが頼ったのが、懇意にしていた“元暴力団関係者”の男性・Aさんだ。週刊女性は彼に接触し、当時の話を聞いた。
 「もともと小室さん親子は、当時私が営んでいた飲食店に週1くらいで来店する常連さんでした。敏勝さんが亡くなった後は頻繁に店に来て“お金がなくて生きていけない”と涙を浮かべていました。気の毒だったので食事をごちそうしたり、閉店時間を過ぎた後も相談を受けていました。
 そんなとき、敏勝さんのご実家の遺産相続について“代わりに交渉してくれないか”と、私を頼ってきたのです。かなり昔のことですが、私が暴力団に関係していたこともあり、経歴を利用できると思ったのかもしれません」
 佳代さんは「夫の実家は遺産相続の話をしても相手にしてくれない」などと同情を誘い、Aさんは敏勝さんの実家に向かったのだが─。
 「佳代さんから聞く話とはまったく違って、敏勝さんのご親戚たちは“きちんと対応します”と誠実に向き合ってくれる方々だったのです。安心した私は、その場で相続の話をまとめ、その後は佳代さんたちにも十分な遺産が入ったはずですよ。
 しかし、相続の話が終わって間もなく、佳代さんはお金が入った封筒を持参して“手を引いてください”と言ってきたのです。意味がわからずに腹が立った私は、封筒はもちろん受け取らず、佳代さんとは絶交しました」(Aさん)
 (略)最近、佳代さんが「遺族年金を不正受給していたのでは?」という疑惑が浮上した。

年金の不正受給疑惑

 「敏勝さんが亡くなったことにより、佳代さんは遺族年金を受け取っています。竹田さんと婚約中に受け取っていたとされる年金額は、『遺族共済年金(当時)』と『中高齢寡婦年金』を合わせて年約110万円。
 ただ、遺族年金は受給対象者が再婚したり、事実婚の状態になると、法的に受給資格が失われます。竹田さんと婚約したことで、遺族年金の受給資格の失効を危惧した佳代さんは“事実婚は内密にしてほしい”と、彼にメールで伝えていました。つまり、竹田さんから生活費などの援助を受けていたにもかかわらず、受給資格を失うはずの遺族年金も受け取っていたという“詐取疑惑”が浮かび上がったのです」(皇室担当記者) 
 『弁護士法人 天音総合法律事務所』の正木絢生代表弁護士によると「佳代さんと竹田さんが事実婚状態にあったのかがポイント」だという。
 「遺族年金とは、夫によって生計を維持していた配偶者や子どもに対する給付です。
 妻が再婚した場合だけではなく、事実婚の状態にあるときも失権、つまり年金がもらえなくなります。
 ただ、婚約と事実婚はちがう概念であり、婚約中でも同居していない場合や財布が別であれば、事実婚として扱われないこともあり、受給資格は失われません」
 小室さんが先日公表した新文書の中で、竹田さんからの金銭に対して《母は贈与税を納付しています》と記述している。これは「遺族年金を不正受給していない」と主張したいということだろう。
 「婚姻関係や事実婚状態ではない第三者から、年間110万円以上の金銭がわたった場合、贈与税を支払う義務が発生します。佳代さんは贈与税を納付したことで、“事実婚状態ではなかった”と主張したかったのでしょう。事実婚状態でなければ、婚約中に受給していた遺族年金も、違法にはあたらないですから。
 しかし、当時佳代さんが竹田さんに送ったメールには“事実婚はなるべくどなたにも知られたくない”などと記されており、明らかに事実婚と認識していたはずなのです」(前出・皇室担当記者)
 法律をかいくぐるための主張を行い、遺族年金の受給資格を保持し続けた佳代さん。(略)
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 元暴力団関係者でさえ、佳代氏とは絶交するというのは、凄い話である。
 最大の問題は、遺族年金の不正受給疑惑である。これは、完全に黒だろう。司法当局は、しっかり仕事をしてほしいものである。
 なお、5月中旬、小室圭氏の母親・佳代氏の弟は、指定暴力団・六代目山口組・二代目浜尾組顧問で角田組組長の角田真一なる人物ではないかとの噂が広がった。浜尾組・角田組は、神奈川県横浜市に本部を置く暴力団とのことである小室圭氏は、顔が上記の人物(事実なら叔父)とよく似ているとも噂されている。
 しかし、佳代氏は55歳であり、上記の人物はそれより年齢が10数歳は上らしく、弟ではあり得ないとのことである。
 こういう噂がマサカと思われず世間に広まるところに、小室家の根本的な問題がある。皇族が結婚の対象とし、親族関係を結ぶべき相手では絶対にない。

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