ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

アメリカに収奪される日本

2009-09-29 08:49:36 | 国際関係
 本年2月から7月にかけて、連載「現代の眺望と人類の課題」の第113回から第134回に、日米の経済関係について書きました。その原稿を独立させて一本にまとめ、私のサイトに掲載しました。
 通してお読みになりたい方は、次のページへどうぞ。

■アメリカに収奪される日本~プラザ合意から郵政民営化への展開
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13d.htm

 目次は次の通りです。

第1章 プラザ合意に秘められた意図
第2章 アメリカが仕掛けた大東亜経済戦争
第3章 日本の再従属化が進んだ旧長銀の買収
第4章 作戦を立案・策定した国際組織
第5章 アメリカによる郵政民営化
第6章 売国と利権の構造
第7章 日本再建のためになすべき経済改革

民主党に日本を任せられるか

2009-09-28 09:32:24 | 時事
 民主党の政策に関する連載「外国人参政権付与と地域主権」を一本化して、マイサイトに掲載しました。
 表題は「民主党に日本を任せられるか~外国人参政権付与・地域主権・東アジア共同体」。通してお読みになりたい方は、下記へどうぞ。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13b.htm

 これらの政策の根底にある鳩山首相の「友愛」という理念については、近々別稿にて考察する予定です。

トッドの人口学・国際論11

2009-09-27 09:21:13 | 文明
●伝統的宗教の衰退と近代化の進行

 トッドは「文明の接近」で、「本書の最も根底的な命題は、イスラムは、キリスト教と同様に、俗世間の非宗教化と信仰の消滅にまで行き着くことがありうる、というもの」であると言う。
 世界の主要な既成宗教のうち、現在最も信者が増えているのは、イスラムである。それは、キリスト教諸国の多くで人口減少と脱宗教化が進んでいると対照的である。イスラム諸国の多くでは人口が増加するとともに、伝統的信仰への回帰が目立つ。それゆえ、トッドの先の命題は、大胆な予想である。
 その予想は、近代化の過程についての人口学的研究に基づく。トッドは、「文明の接近」において、識字化と出生調節という二つの指標が、脱宗教化と深く関係していることを、西欧諸国をはじめ、ロシア、日本、シナ等の近代化の過程で跡づけている。そして、次のように言う。
「いかなる宗教も、人口革命を妨害する力を持つとは思われない。その点ではイスラムも、キリスト教や仏教と同様である。しかし人口学的移行期の歴史を見てみるなら、大抵の場合、おそらくはすべての場合に、出生率の低下に先立って宗教的危機が起こっているのであり、宗教的危機の重要性がわかるのである」と。

 宗教的危機とは、伝統的な宗教の権威が揺らぎ、改革運動が起こったり、宗教離れが起こったりすることをいう。トッドは、「宗教的信仰の崩壊が出生率低下の前提条件である」と言う。教育水準の上昇だけでなく、宗教実践の低下が、出生率の低下を引き起こす決定作用であり、「どちらも等しく必要な二つの条件」であるとする。
 宗教的危機は、多くの社会で脱宗教化に帰結する。西欧においては、脱キリスト教化である。トッドは、西欧では脱キリスト教化に従って、出生率の低下が起こったと指摘する。
 「脱キリスト教化を印づけたものは信仰の全般的後退であったが、それにもまして特に印づけたものは、伝統的に信仰に結合しており、個々人につきまとって寝台の中にまで忍び込んでいた、自分とは別の者がすべてを律する他律の体制の崩壊であったのである」と。
 やや暗示的な表現だが、これは女性が個人の意識に目覚め、伝統的な宗教の教えにとらわれず、自分で出生を制御するようになったことを指す。

●脱宗教化と出生率低下の関係

 トッドは、言う。
 「大衆識字化を前提とする宗教の退潮と出生率の低下の時間的な合致は、一般的現象であり、カトリック、プロテスタント、ギリシャ正教というキリスト教の三大分派、そして日本もしくはシナにおける仏教を巻き込んだ。
 フランス、イングランド、ドイツ、ロシア、日本、シナにおいて、宗教実践の転落がまずあり、その後で出生率のきわめて低いレベル、つまり女性一人当たり子供2かそれ以下、時としては子供1.5かそれ以下のレベルへの減少が起こっている」と。
 どうしてこのようなことが起こるのだろうか。トッドは次のように言う。
 「あらゆる宗教は公然もしくは暗然の形で、出産奨励的である。何故なら宗教とは人の命に意味を与えるものだからである。識字化と並んで、宗教の動揺と、それに続いた消失が、出生率の低下の条件になったのは、そのためである」と。
 それゆえ、それぞれの宗教の教えの違いにかかわらず、「普遍的法則」が存在するのではないかとトッドは考えている。そのような考えに立って、トッドは、イスラム諸国について、「脱イスラム教化のプロセスもすでに始動している可能性は大いにある。そして人口動態はその痕跡を示しているのである」「やがては脱イスラム化されたイスラム圏の可能性が、ほとんど確実なものとして輪郭を現している」と述べている。
 本項の最初に、「イスラムは、キリスト教と同様に、俗世間の非宗教化と信仰の消滅にまで行き着くことがありうる」というトッドの命題を挙げたが、その意味するところは、以上に略述した事柄である。

 次回に続く。


外国人参政権付与と地域主権6

2009-09-25 08:57:20 | 時事
最終回。

●地域主権国家が東アジア共同体の一部になる

 民主党のマニフェストは政策の羅列になっており、分類や整理が雑で、全体を統一的に理解することが困難である。読んでも、民主党のめざす国家の全体像は明らかでない。しかし、直接国家像を表す言葉が一つだけ載っている。それが、「地域主権国家」である。地域主権国家については、先にその危険性を述べた。もう一つマニフェストには、国家像に関わる言葉がある。「東アジア共同体」である。地域主権国家は「東アジア共同体」と結びつくことで、さらに危険性を増す。
 民主党のマニフェストは、「5つの約束」の「5 雇用・経済」に「アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立し、東アジア共同体の構築を目指します」と書いている。また「政策各論」の「7 外交」に「52.東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する」と書いている。

 では、永住外国人への地方参政権付与、地域主権の実現、東アジア共同体の構築の三つが合体すると、日本はどうなるか。
 民主党の政策が実現されると、わが国は中央集権国家から地域主権国家に変わっていく。永住外国人は、強大化した地方自治体で、参政権を行使する。民主党は二重国籍を容認することも検討しているから、日本と外国の両方の国籍を持った外国人が増え、国政にも参加する。こうした地域主権国家・日本が、東アジア共同体の一員となる。
 鳩山氏は東アジア共同体の構築を言うが、それがどのような組織・機構なのか、主張に具体性がない。鳩山氏は、ヨーロッパ統合運動の創始者、クーデンホフ=カレルギーの「友愛」を理念として、東アジア共同体を説いているから、ヨーロッパのEU(欧州連合)をモデルとしているらしい。EUでは、加盟国は、経済的・政治的権限の一部を連合に委ねる。軍事的には、NATO(北大西洋条約機構)で、共同防衛体制を組む。こうした国家連合では、加盟国は、主権の一部を譲渡する形となる。
 わが国の民主党は、国内では、日本の主権を地方に分散し、外国人にも分譲する。中央政府は、群小の自治体と対等の関係でしかなく、国内を統治できない。国内基盤の弱い政府は、外交・安全保障においても、外国政府との交渉で、明確な主張と断固たる行動が出来ない。わが国は、こういう国家として、東アジア共同体に加入することになる。

●民主党の政策は、日本をシナ化に導く

 ヨーロッパには、中国のような巨大国家がない。中核国家のドイツとフランス、第2の大国であるイギリスは、経済・軍事・人口等で拮抗している。しかし、東アジアでは、中国が圧倒的な存在となりつつある。民主党の東アジア共同体は、そうした中国が主導する国際組織となるだろう。わが国と中国の間は、経済的には大差はないが、政治的には中国は拒否権を持つ国連安保理常任理事国であり、軍事的には核大国と日本では比較にならず、人口的には1対10もの差がある。
 民主党が構想する地域主権国家となった日本が、中国に政治的・軍事的に圧倒され、中国から多数の移民が流入し、参政権を得て、日本の社会や文化はシナ化していくだろう。中国には、一人っ子政策のために結婚できない青年男子が3千万人はいるという。彼らが日本に移住し、日本の女子との結婚が増えれば、日本民族は漢民族に段々、吸収されていくだろう。漢民族は父系社会ゆえ、シナの価値観、文化・習慣が日本列島に広がっていくだろう。
 それゆえ、私は、永住外国人への地方参政権付与、地域主権の実現、東アジア共同体の構築の三つを合体した民主党の政策は、日本の主権を国の内と外の両方向に解体し、日本が中国に併呑されていく道だと思う。民主党が思い描いているのは、目指すべき国家像ではなく、国家の解体と消滅の方法論なのである。
 中国は、チベットや新疆ウイグルを併呑し、自治区としている。チベット、ウイグルの固有の文化を破壊し、宗教を弾圧し、虐殺・虐待を行い、民族的にも弱小化する政策を強行している。わが国が将来、東アジア共同体という名の下に、中国の実質的な自治区にされていく可能性がある。わが国の政府が、民主党の政権であり、民主党の政策を中長期的に実現するものであれば、確実にわが国は、シナ化されてしまうだろう。
 私が、永住外国人への地方参政権付与、地域主権の実現に反対し、東アジア共同体の構築に異論を唱えるのは、このような危険性が高いからである。

 では、日本がこうした自壊・滅亡の道から逃れるには、どうすればよいか。それは、日本人が日本精神を取り戻し、わが国の伝統・文化・国柄を保守して、日本を再建することである。
 憲法を改正し、国民の自覚を高め、皇室の礎を確かにし、国防を充実させ、誇りある歴史と道徳を教える。こうした政策を実行する時にのみ、わが国は独立自尊の姿勢をもって、日本人の特徴を発揮し、アメリカや中国と共存共栄の道を進むことが出来る。この道を往かなければ、自壊・滅亡の道を下るだろう。(了)


外国人参政権付与と地域主権5

2009-09-24 09:34:49 | 時事
●外国人参政権付与と地域主権の合体は、主権喪失国家へ

 民主党の「地域主権国家」の構想が完了するのは、開始から10数年後である。この間、一気にではなく段階的に、地方自治体は、権限と財源を移譲されていく。この時、永住外国人に地方参政権を与えることが、重要な影響をもたらす。
 永住外国人に地方参政権を与えるだけでなく、地域主権が実現されるならば、現在より遥かに大きな権限と財源を持つ地方自治体において、外国人が参政権を振るうことになる。外国人が外国籍のままで、現在より遥かに強大化した地方自治体で、政治に参加する。外国籍の住民が日本の地方自治体で、自分たちの権利を拡大し、自分たちの主張を実現しようと図る。人口30万人ほどの自治体ゆえ、多数計画的に移住すれば、行政を牛耳ることは容易となる。
 それゆえ、永住外国人に地方参政権を付与したうえで、地域主権の実現を進めることは、劇的な効果を生む。日本の分解と分裂が起こる。地域主権の実現は、主権の分散である。外国人参政権付与は、主権の分譲である。この主権の分散と分譲は、わが国の国家としてのあり方を、劇的に変えることになる。その結果、生まれるのは、「地域主権国家」という形態の国家というより、「主権喪失国家」という国家の残骸である。
 永住外国人への地方参政権付与や地域主権の実現という民主党の政策は、憲法の規定に関わる重大政策である。ところが、民主党は、憲法論議をしないまま、これらの政策を実施しようとしている。
 今回の衆議院議員選挙では、各政党間で憲法に関する論議は全くされなかった。自民党はマニフェストの最後の項目に、自主憲法の制定を挙げている。これに比し、民主党は、マニフェストの最後に、別枠で自由闊達な論議を呼びかけるにとどまっている。こうした国家根幹に関わる問題が、先送りされている。しかし、わが国の憲法は、敗戦後、連合国軍の占領下において、GHQから押し付けられた憲法である。日本人自身の手で作った憲法ではない。この憲法を改正せぬまま、わが国は現在に至っている。21世紀に入り、世界は大きく変化しており、その変化はますます加速しつつある。わが国の存続・繁栄を図るためには、国の基本法である憲法の改正を、政治家が積極的に進めるべきと思う。

●国際社会における日本の独立と主権という自覚を欠く

 今日、憲法を改正する際の課題の一つに、地方自治のあり方の見直しという課題がある。
 自民党は、日本人自らの手になる憲法の制定を、立党以来目標としている政党である。自主憲法の制定は、戦後日本の国家体制を改めるものとなる。しかし、自民党は、この課題を実行せぬまま、今日を迎えている。自民党は憲法改正案を発表しているが、地方自治の章ほど力を入れている章はない。まるで、憲法改正の最大のテーマを、地方自治に置いているのかと疑われるほどである。
 一方、民主党には憲法をめぐって様々な意見があり、護憲派も多く、党内はまとまっていない。しかし、民主党は「地域主権」という考え方を、マニフェストで打ち出している。「明治維新以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、『地域主権国家』へと転換する」と言う。民主党の政策案によれば、中央から地方に大幅に権限と財源を移譲し、300の基礎的自治体に再編成し、将来的には都道府県をなくし、地域主権国家を実現するという。中央政府と地方自治体の関係を「上下・主従の関係から対等・協力の関係へ改める」と言うのだから、国家の形を大きく変えようというものである。その危険性については、先に書いた。
 私も、あまりにも中央集権に傾いた権力構造を改め、地方分権を進めるべきだと考える。しかし、性急に進めること、また極端にまで進めることには反対である。理由は、敗戦後約60年、国民の国家意識が著しく低下し、国民としての自覚が極度に弱くなっており、この状態のまま地方分権を進めると、ますます国家としての紐帯が弱くなり、日本の衰退を早めると思うからである。
 国家統治権と地方自治権が、最も強い緊張関係に置かれるのは、他国による侵攻、内乱・騒擾、大規模自然災害等の場合である。わが国では現状、国民に国防の義務がなく、憲法に非常事態条項がない。こうした憲法のまま、地方分権を進めたならば、万が一の危機のときに、国家分裂・日本解体に陥りかねない。
 民主党の「地域主権国家」の構想には、こうした問題意識が欠如している。国際社会における日本の独立と主権という自覚をしっかりもたずに、「地域主権の実現」を進めると、周辺諸国の軍事力や人口力によって、日本の国家・社会が浸食され、日本人は固有の文化や伝統、精神を失ってしまうおそれがある。
 独立主権国家の基本は、国民が自ら独立と主権を守ることにある。しかし、わが国の国民は、国家安全保障を他国に依存した状態に慣れすぎている。国民の多くは独立と主権の意識が弱く、自ら独立と主権を守ろうという気概を失っている。まず国民が自らの意識を変え、一個の国家としてのあり方を回復・確立することが必要である。その課題をしっかり成し遂げた後に、地方分権を段階的に進めるのがよいと私は思う。

 次回に続く。

外国人参政権付与と地域主権4

2009-09-23 08:43:18 | 時事
●300の小集団に日本を分割

 わが国は明治維新において廃藩置県を断行し、それまで276あった藩を廃止し、中央政府の下に県を置く中央集権国家を建設した。それ以来、わが国は一貫して中央集権体制を誇ってきた。今日その中央集権が行き過ぎ、さまざまな弊害が出ている。そこで地方分権が必要となっているのだが、民主党は単なる行き過ぎの是正ではなく、根本から統治機構を変えようとしている。それが「地域主権国家」への変換である。基礎的自治体の数は300程度にするというのだから、幕藩体制のときの藩の数にほぼ等しい。廃藩置県を元に戻し「廃県置藩」(神保哲生氏)を行うとしていると見方もある。
 地域主権国家への改造の過程は、次のように構想されている。
 政権獲得後、3年程度の準備期間を経て、「第2次平成の合併」を行い、現在ようやく約1800程度になっている基礎的自治体を、700~800程度に減らす。さらに約10年かけて、全国で約300、人口30万人程度の基礎的自治体に集約する。
 基礎的自治体が担えない事業は、当面は広域自治体(都道府県)が担い、広域自治体が担えない事業は国が担う。これを「補完性の原理」と呼び、徹底するという。「補完性の原理」は、ヨーロッパでEUが採用している原理である。中央政府の権限と同時に、現在都道府県が持つ権限の多くも、財源とセットで徐々に基礎的自治体に委譲し、5~10年後には都道府県の役割は現在の半分から3分の1程度に縮小させる。さらに、将来的には都道府県をなくすという。こうして、わが国は「地域主権国家」と呼ばれる国家に改造されていく。

●「地域主権国家」は日本の分解・分裂の道

 私は、この構想には反対である。中央集権の行きすぎを是正し、地方分権を行うことは必要である。一定の権限と財源を移譲し、地方の活性化を図るべきである。しかし、地域主権を実現し、日本を地域主権国家に変えるという民主党の計画は、やりすぎである。
 民主党は地域的な組織に与える権限を、主権と呼ぶ。これは、従来の主権の概念とは、異なる。近代国際社会における国家の主権とは、一国の政府が他の国に対して持つ自立的な統治権である。これは国家の独立を保持するために、不可欠の権限である。また、近代国家内部における主権とは、領土・国民に対する最高の権限である。これは国家の統一を保持するために、不可欠の権限である。こうした主権を地方に移譲することは、主権の分散である。
 主権の分散の結果、政府と地方自治体は「対等・協力の関係」に改められる。だとすると、政府の権限と自治体の権限が、対等だということになる。しかし、そのような権限を主権と呼ぶことはおかしい。主権とは、国内においては領土・国民に対する最高の権限ゆえ、主権を持つものは他より上の権限を持つ。もし自治体の持つ権限こそが主権だとすれば、政府はその自治体に対して主権を持たない。300ある自治体がそれぞれ主権を持つとすれば、政府は各自治体に対して主権を持たない。政府は自治体に対して対等ではありえず、政府の権限は、その地域については、自治体の権限より下になる。そのような政府は、独立主権国家の政府ではない。それゆえ、地域主権の実現は、独立主権国家を否定することになる。
 一般には、一国の内部において、地方組織が中央政府に対して主権を主張するのは、独立を宣言したときである。独立運動は多くの場合、紛争となる。独立運動をする側は外国から支援を受けたり、外国が内紛に介入したりすることが多い。民主党による主権の分散は、地方組織が主権を求めて、独立しようとするのではない。中央政府が合法的に日本を小規模な自治体に分割して、それぞれが半独立の状態になるように強制するものである。これは日本の分解である。
 民主党の構想のままに、わが国が「地域主権国家」となったならば、日本は、権限を極度に縮小された政府と、強大化した自治体が、対等・協力の関係になっている。一国を統率する首相と、300の自治体の首長が、対等の立場でものを言うのだから、国家としての意思統一は困難になる。そうした自治体のいくつかが、国家全体の利益よりも自己の自治体の利益のために、他国の政府と連携する事態もありうる。他国が日本への介入ないし圧力に、地方自治体を利用する事態もありうる。こうした事態は、日本の分裂を招くだろう。

 次回に続く。

外国人参政権付与と地域主権3

2009-09-21 10:23:45 | 時事
●「地域主権の実現」こそ、民主党最大級の政策課題

 永住外国人への地方参政権付与は、地域主権の実現が合体することで、劇的な効果を生む。主権の分散と分譲によって、日本の分解と分裂が起こる。
 永住外国人への地方参政権付与と異なり、地域主権の実現については、民主党のマニフェストに記載されている。
 民主党のマニフェストは政策の羅列のような構成となっている。民主党マニフェストは、「暮らしのための政治を」という鳩山由紀夫氏の呼びかけ文で始まる。その次に「鳩山政権の政権構想」として「5原則」「5策」が列記されている。「5原則」「5策」は、これに続く「5つの約束」と一致していない。その上、最後の「マニフェスト政策各論」は7に分けられており、「原則」「策」「約束」とは一致していない。分類や整理が雑で、全体を統一的に理解することは困難である。そのため、マニフェストを読んでも、民主党のめざす国家の全体像は明らかでない。しかし、直接国家像を表す言葉が一つだけ載っている。それが、「地域主権国家」である。
 まず「5原則」の5番目に「中央集権から地域主権へ」とある。さらに「マニフェスト政策各論」に「4 地域主権」という項目がある。政策番号27として「霞ヶ関を解体・再編し、地域主権を確立する」という政策を掲げ、その目的として「明治維新以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、『地域主権国家』へと転換する」「中央政府は国レベルの仕事に専念し、国と地方自治体の関係を、上下・主従の関係から対等・協力の関係へ改める」等と書いている。
 鳩山氏は、本年(2009)5月16日、西松建設の献金疑惑問題で辞任した小沢氏に替わって民主党の代表に就任した。その際の記者会見で、鳩山氏は、政権を取ったときに最も優先的に実現したい政策は何かと聞かれて、「地域主権の実現」と答えた。
 「子ども手当ての支給」「ガソリン等の暫定税率の廃止」「高速道路の原則無料化」などと違い、地域主権の実現は、多くの人にはわかりにくいだろう。しかし、地域主権の実現こそ、民主党の最大の政策課題とも言える重要政策である。

●政府と地方自治体が対等の国家とは

 極端に中央集権、東京への一極集中が進んだわが国は、そのための弊害が大きくなり、地方分権を必要としている。地方分権とは、端的に言えば権限と財源の委譲である。しかし、民主党の言う「地域主権の実現」は、単に中央政府の権限と財源を地方に委譲することではない。中央の権限を地方に分与する程度ではなく、それぞれの地域が主権を持ち、「地域主権」と呼べるところまで、権力の移行を徹底して進める。それによって、日本の国の体制を根本から変えようとしているのである。
 民主党が構想する新しい国家体制では、最終的に日本は300程度の基礎的自治体に区分される。国が果たす機能を極度に限定し、それ以外の行政機能は基本的にすべて基礎的自治体が担う。国が果たすべき機能は、外交、防衛、危機管理、治安、食料、エネルギー、教育と社会保障の最終責任、通貨、市場経済ルールの確立、国家的大規模プロジェクト等とされる。それ以外の機能は、すべて自治体に移譲されるという。
 移譲される権限は、行政権だけでなく、立法権も含まれるという。現行憲法は、国会は「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」と定めているから、立法権の移譲は憲法の改正を必要とする事柄である。
 こうした自治体への権限・財源の徹底した移譲の結果、生まれる国家体制が「地域主権国家」と呼ばれる。この改造は、明治以来のわが国の国家体制を大きく変えるものとなる。
 マニフェストには「国と地方自治体の関係を、上下・主従の関係から対等・協力の関係へ改める」と書いている。「対等・協力の関係」とは、ひとつの統治機構の中での包括・被包括の関係ではない。自立した組織が連合を組み、政府がその一つ一つとまた連合を組むという二重連合の関係だろうか。
 しかし、この自治体は、アメリカの州、旧ソ連の共和国、EUの構成国家のような自立性を持っていない。規模は現在の都道府県とは比べ物にならないほど小さく、人口30万人ほど。中規模都市というところである。そうした群小の自治体が300。その一つ一つが、政府と対等・協力の関係にあるような国家を、民主党は「地域主権国家」と呼ぶ。その問題点については後述するが、日本を「地域主権国家」なる国家に変えることが、民主党の大目標なのである。

 次回に続く。

外国人参政権付与と地域主権2

2009-09-20 07:53:20 | 時事
●マニフェストにない外国人参政権付与を推進

 本年(2009)8月30日、衆議院議員総選挙は、自民党の惨敗、民主党の圧倒的な勝利に終わった。民主党は、選挙の前に、マニフェストを配布した。マニフェストは政権公約であり、国民との契約だという。その民主党マニフェストには、永住外国人への地方参政権付与は、一言も書いていない。ところが、政権を取るや、永住外国人への地方参政権付与を早期に実現しようと動きはじめている。
 永住外国人への地方参政権付与は、選挙前に国民に、公約した政策ではない。なせマニフェストには載せなかったのか。選挙前は、国民に疑問や反発を与えるような政策は除き、政権を取った後に、推し進めようというやり方だろう。
 もともと民主党は、平成10年(1998)の結党時、基本政策の一つに「定住外国人の地方参政権の実現」を揚げた政党である。参政権付与の法案を繰り返し国会に提出しており、過去の政策論文集でもこの方針を打ち出している。

 民主党随一の実力者が小沢一郎氏であることは言うまでもない。政策にも人事にも、強い影響力を持つ。鳩山内閣は「鳩山・一郎内閣」とも呼ばれる。昨年(2008)2月、小沢氏(当時党代表、現幹事長)は訪韓し、李明博大統領に永住外国人への参政権付与を推進する方針を表明した。これは、党の政策を国際的に公約したに等しい。
 本年の衆議院選挙後の9月11日、小沢氏(当時党代表代行)は、党本部で川上義博参院議員と会談し、永住外国人への地方参政権の付与について、「自分はもともと賛成なので、ぜひ来年の通常国会で方針を決めよう」と述べ、早期実現に積極的な姿勢を示した。川上氏は党の「永住外国人法的地位向上推進議員連盟」(会長・岡田克也氏)の事務局長である。同日の会談には、在日本大韓民国民団の幹部らが同席したと報道されている。さらに19日には、小沢氏は、李大統領の実兄で韓日議員連盟の李相得会長や権哲賢駐日大使に対し、「何とかしなければならない。通常国会で目鼻をつけたい」と語ったという。通常国会は来年1月に始まる。日本の国の在り方に関わる重大な問題ゆえ、国民的な議論が必要である。

●「日本列島は日本人だけの所有物じゃない」

 9月16日、歴史的な政権交代により、鳩山由紀夫内閣が成立した。鳩山氏(当時幹事長)は本年4月17日、インターネット動画サイト「ニコニコ動画」の番組に出演し、永住外国人に参政権を付与すべきとの持論を繰り返した。その上で、鳩山氏は「日本列島は日本人だけの所有物じゃない。仏教の心を日本人が世界で最も持っているはずなのに、なんで他国の人たちが、地方参政権を持つことが許せないのか」と発言した。
 また、同月24日の記者会見で「これはまさに愛のテーマだ。友愛と言っている原点がそこにあるからだ。地球は生きとし、生ける全てのもののものだ。日本列島も同じだ」と述べた。
 永住外国人に地方参政権を与えることは、彼にとっては友愛という理念の実践であるらしい。しかし、先に書いたように、憲法は参政権を「国民固有の権利」と定めている。「国民」とは、日本国籍を持つ者のことであり、日本国籍のない者は、「国民」ではない。故に、外国籍の人間に参政権を与えることは、明白な憲法違反である。
 参政権を望むならば、日本国籍を取得して日本国民となればよいのであり、日本国は帰化したいという外国人には門戸を開いている。日本列島から外国人を排斥したり、追放したりはしていない。仏教の心だ、愛のテーマだなどと、個人の思想・信条を持ち出す事柄ではない。

 鳩山氏は総理大臣になると、法務大臣に千葉景子氏を指名した。当然、小沢氏の了解を得た人事だろう。千葉氏は、外国人参政権法案の呼びかけ人の一人である。参政権付与推進派を法相に起用したことは、鳩山内閣が参政権付与を早期に実現しようと狙っていることの表れである。千葉氏は、国籍選択制度を改めてニ重国籍の取得をも実現しようとしてきた。外国籍を持つ外国人にわが国の国籍との二重国籍を認めれば、地方だけでなく国政への参政権をも与えることになる。千葉氏にとって、地方参政権は参政権付与の第一歩にすぎないのである。
 千葉氏は、北朝鮮による日本人拉致の容疑者・辛光洙の釈放嘆願書に署名したことや、慰安婦問題で米国下院議員マイク・ホンダ氏の根拠なき日本批判に呼応して行動したことなどでも、知られる。国旗・国歌を定める法案にも反対した。国法に関わる法務大臣には、最もふさわしくない思想を持つ政治家である。こうした政治家を法務大臣に任じたところにも、鳩山氏及び民主党の思想が露呈している。

 次回に続く。

トッドの人口学・国際論10

2009-09-19 08:37:40 | 文明
●イスラム諸国における識字率の上昇

 近代化の指標としてトッドが重視するのが、識字率と出生数である。彼は著書「文明の接近」で、識字率の上昇と出生数の低下と深い関係のあるものとして脱宗教化を強調している。
 まず識字化についてだが、本書でトッドは、各国における国勢調査を分析し、20~24歳の男性及び女性における識字率を対照する。そして、社会の近代化において、識字率が50%を超える時点を、近代化におけるキーポイントとしている。識字率が50%を超えると、その社会は近代的社会への移行期に入り、「移行期の危機」を経験する。トッドは言う。この50%超えは、ほとんどの社会で、まず男性で起こり、次に女性で起こる。
 「識字率が50%を越えた社会とはどんな社会か、具体的に思い描いてみる必要がある。それは息子たちは読み書きができるが、父親はできない、そうした世界なのだ。全般化された教育は、やがて家族内での権威関係を不安定化することになる」とトッドは言う。
 私の理解するところ、父親の世代は、大多数が文盲で旧来の権威の影響下にある。息子の世代は、読み書き計算ができ、新しい知識を身につけている。息子の世代は、新知識をもたない父親の世代に権威を感じなくなり、二つの世代がぶつかり合う。それが、政治的な不安定を生み出し、革命や内戦が発生する。トルコでの男性識字化(50%超え)は1932年、エジプトは1960年、イランは1964年であり、この傾向がイスラム諸国でも見られることが分かる。

●劇的な出生数の低下が起こっている

 識字率の上昇とは、家庭や社会における教育の普及である。識字率の上昇は、男性、次いで女性に起こる。男性の識字率が50%を超えると、政治的変動が起こる。女性の識字率が50%を超えると、出生調節が普及し、出生率の低下が起こる。イスラム諸国では、この低下か顕著である。
 「人口学者たちは、ここ30年前から、イスラム圏の出生率が激減しているのを目にしている。その平均は、1975年に女性一人当たり子供6.8であったのが、2005年には3.7まで落ちた。イスラム圏各国の指標は、今ではニジェールの7.6からアゼルジャンの1.7までの間に分布している。出生率の指標は、今やイランとチュニジアでは、フランスのそれと同じなのだ」とトッドは述べている。
 最後のフランスと同じと言うのは、2.0程度を意味する。人口を維持するために必要な合計特殊出生数は、2.08であるから、それをやや下回る水準である。
 女性の識字化は、出生数の低下をもたらすだけではない。伝統的な権威の低下をももたらす。男性の識字化は父親の権威が低下させるが、女性の識字化は、「男女間の伝統的関係、夫の妻に対する権威を揺るがすことになる」とトッドは言う。つまり、識字化によって、父親の権威と夫の権威という二つの権威が失墜する。
 「この二つの権威失墜は、二つ組み合わさるか否かにかかわらず、社会の全般的な当惑を引き起こし、大抵の場合、政治的権威の過渡的崩壊を引き起こす。そしてそれは多くの人間の死をもたらすことにもなり得るのである。別の言い方をすると、識字化と出生調節の時代は、大抵の場合、革命の時代でもある、ということになる。この過程の典型的な例を、イングランド革命、フランス革命、ロシア革命、中国革命は供給している」とトッドは、「文明の接近」で述べている。この記述は、「帝国以後」における記述を補足するものとなる。
 トッドは、識字化と出生調節がイスラムの社会を大きく揺り動かし、男性の権威が低下する一方、女性の地位が向上しつつあることを観察している。イスラムの女性の多くは、依然としてベールで顔を覆い、慣習に従っているが、そのベールの下で、意識の変化が起こっていると見られる。

●伝統的家族構造の変化が、社会に変化をもたらす

 トッドによれば、「移行期の危機」の具体的な現れ方に関する最重要の要因は、各社会の伝統的な家族構造である。家族構造の組織原則たる価値観は、多様である。自由主義的であるか権威主義的であるか、平等主義的であるか不平等主義的であるか、集団が外に開かれることを好むか嫌うか。「識字化によってどのような型の価値が活性化するかによって、どのような型の移行期危機が、文化的に浮上した国を揺り動かすかが、決まるのである」とトッドは、「文明の接近」に書いている。
 トッドは、本書でイスラム諸国における家族構造と近代化の関係を、地域ごとに詳説している。イスラムの分布地域は、中東から中央アジア、南アジア、東南アジア、アフリカ等に広がる。各社会の家族構造は、地域によって異なる。中心地域のアラブ諸国やイラン、トルコ等は、内婚制共同体家族である。その周縁にある中央アジアには、外婚制の諸国があり、さらに遠い最周縁のアフリカ南部には、多種の家族型が存在する。そうした家族型に応じて、近代化の進展はさまざまである。しかし、その多様性は、「移行期の危機」の激しさや速度の違いをもたらしはするが、近代化を阻むものではないとトッドはとらえる。
 イスラムの中心地域であるアラブ諸国では、出生率の低下は、伝統的な家族構造である内婚制共同体家族を実質的に掘り崩していく。内婚制共同体家族は、兄弟が結婚して子供が出来ても親の家にとどまって大家族を形成する。さらに婚姻が父方平行いとこ、すなわち兄弟の子供の間で行なわれる。こうした家族構造は、子供の数が少なくなれば、自ずと解体していく。社会の基礎を成す家族構造の変化は、社会全体に変化をもたらす。
 トッドは、その変化の方向は、デモクラシーの普及だという。識字化は、トッドによれば、デモクラシーの条件である。識字化によって、イスラム諸国もデモクラシーの発達の道をたどっている、とトッドは指摘する。それとともに、トッドは、イスラム諸国における脱宗教化をも大胆に予想する。この点については、次の項目で述べたい。

 次回に続く。


外国人参政権付与と地域主権1

2009-09-18 20:36:24 | 時事
●民主党は主権の分散・分譲を企図

 民主党は、永住外国人への地方参政権付与を早期に進めようとしている。民主党はまた地域主権の実現を推進しようとしている。永住外国人への地方参政権付与と地域主権の実現が合体すると、劇的な効果を生むと私は考える。
 永住外国人への地方参政権付与と地域主権の実現は、ともにわが国の主権を本質から変えるようとする政策である。
 参政権は、憲法に定められた「国民固有の権利」であり、国民とは日本国籍を持つ者のことである。永住外国人に対し、外国籍のまま地方参政権を付与することは、国民の権利を外国人に分与することであり、国民固有の権利であることの否定である。
 民主党の地域主権という概念は、地方分権を徹底し、主権の所在を中央から諸地域に移転しようとする思想である。地域主権は、参政権を持つ者が国民のみであれば、国民の間で地方分権を極度に推し進めたものとなる。これは主権の分散である。
 しかし、永住外国人に地方参政権を付与しながら地域主権を推進したならば、地方自治体の政治は外国籍の有権者の意思によって、大きく左右されるようになる。これは主権の分譲である。
 主権の分散と分譲は、わが国の国家としてのあり方を、劇的に変えることになる。日本の分解と分裂が起こる。わが国が周辺諸国に浸潤され、国内各地に外国籍の有権者があふれ、やがては中国に併呑され、日本のシナ化が進むだろう。

●参政権は「国民固有の権利」

 現行憲法には、参政権は「国民固有の権利」と明記されている。第15条「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と。ここにいう公務員とは、国会議員や地方自治体の首長・議員等が含まれる。また、地方参政権に関しては、第93条「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」とあるが、この「住民」は、「国民」であることを前提としている。このことは、最高裁判決(平成7年2月28日)も認めており、「憲法一五条一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばない」としている。
 「国民」とは、日本国籍を持つ者のことである。日本国籍のない者は、「国民」ではない。故に、外国籍の人間に参政権を与えることは、明白な憲法違反であると私は考える。
 国籍とは、自分が帰属する国家と共に生き、国家と運命をともにするという意思の表れである。多くの国では、自国の国籍を持つ者、すなわち国民に国家に対する忠誠義務と国防の義務を課している。また、国家反逆罪等を設け、いったん国籍をとった外国人が国を裏切らないように縛りをかけてもいる。万が一、戦争となったときは、国民は、自国の一員として生命を投げ出して戦い、国家を守る義務を負うのが、近代国民国家の普通のあり方である。
 それゆえ、参政権とは国家と運命をともにする覚悟のある者が、国家の運命の決定に参与する資格なのである。国の運命を自分の参政権の行使によって決定していくのが、国民の役割であり、使命である。
 国民の権利と義務は本来、表裏をなすものであり、参政権と、国防・国家忠誠の義務は一体のものである。ところが、現行の日本国憲法は、国民の権利を多く保障する反面、国民の義務は少なく、実質的に納税の義務しかない。このように権利と義務がアンバランスな関係にあるため、国民の間に国民の意識が薄いのが、戦後のわが国の状態である。この関係を是正しないまま、外国籍の人間に参政権を与えることは、一層、国民の意識を希薄にすることになる。

●帰化による国籍取得、在日特権廃止、二重国籍不許可が妥当

 私は外国人に外国籍のまま、わが国の参政権を与えてはいけないと考える。参政権を得たい外国人は、日本に帰化するとよい。帰化すれば、日本国民の権利として参政権を得ることができる。
 特別永住者については、帰化がしやすいように、特例的に手続の簡略化・迅速化をするのがよいと思う。帰化を望まない人には、帰国の道もあるから、一定の期間を決めて、どちらかを選択してもらう。その後、入管特例法を改正して「特別永住者」の制度を廃止する。帰化によって日本国籍を取得したコリア系日本人は、基本的に日本国民と同じ権利に限定する。参政権は与えるが、各種の特権、いわゆる在日特権は廃止する。引き続き外国籍のままで日本に在留したい人は、一般永住者の地位で居住を許可する。このようにするのがよいと思う。
 私は、外国人への二重国籍許可には反対する。外国籍を持ったまま、日本国籍も与えるとすれば、その人は、二つの国家に帰属することになる。この場合、わが国がその国と戦争になったら、二重国籍者は相手国を利する行為を行なう可能性があるから、国家安全保障上、二重国籍を認めるべきでない。また、国益に係る重大な問題が生じた場合、二重国籍者はもう一つの祖国の利益のために、行動する可能性があるから、国益上、二重国籍を認めるべきでない。
 とりわけわが国は、現状、憲法に国民に国防の義務がなく、国家忠誠の義務もまた憲法に規定されていない。また刑法は外患援助罪のうち、第83条から89条の通謀利敵に関する条項が、敗戦後GHQにより削除されたままである。このような状態で、外国人に地方参政権を付与し、二重国籍を認めることは、危機管理上、危険である。

 次回に続く。

関連掲示
・外国参政権問題については、拙稿「外国人参政権より、日本国籍取得を」にて在日特権の問題と絡めて論じている。ご参照下さい。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion03f.htm