く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「写真民俗学 東西の神々」

2017年12月12日 | BOOK

【芳賀日出男著、角川書店発行】

 著者の芳賀氏は1921年、満州(中国東北部)生まれ、96歳。民俗写真家の草分けとして長年にわたり世界各地の祭りや民俗芸能を取材してきた。日本写真家協会創立者の一人でもある。1970年の大阪万博ではお祭り広場のプロデューサーを務め、73年には全日本郷土芸能協会を創立した。『日本の祭』『日本の民俗 祭りと芸能』『神さまたちの季節』『神の子 神の民』など多くの著書がある。

       

 本書はA5版312ページ。タイトルの「東西の神々」が示すように、世界各地の人と神々との多様な交わり・祭礼を「神を迎える」「神を纏(まと)う」「神が顕(あらわ)る」「神に供す」の4部14巻に分類して紹介する。掲載写真は400枚を超え、その大半を迫力のあるカラー写真が占める。「先輩や友人に恵まれたおかげでプロの写真家の一人に加わることができた。まさかこの年齢までカメラマンが続けられるとも、酒が呑めるとも思ってもいなかった。まあ、恵まれた人生なのだろう」。芳賀氏は巻末の「カメラを手にして九十年」の中でこう述懐する。本書は世界を旅してきた民俗写真家人生のまさに集大成ともいえる。

 民族や宗教が違っても、世界各地に日本とよく似た祭りがある――。本書を通読しての感想を一言で表現するとこうなる。例えば「来訪神」。日本では年の変わり目に様々な歳神が現れ子どもたちを諭す。秋田の「ナマハゲ」、能登の「アマメハギ」、下甑島(鹿児島県薩摩川内市)の「トシドン」……。一方、オーストリアの聖ニコラウスの祭りには全身を麦わらで覆ったり異様な鬼面を着けたりした魔物が登場し、スイスのクロイゼの祭りには体中に木の葉や岩苔を貼り付けた〝植物人間〟が出没する。

 「火」「仮面」「人形」「獅子」「巨人」などをキーワードとする祭りにも内外で類似点や共通点が多い。巨人の祭りは日本では鹿児島の「弥五郎どん」や三重県四日市市「大四日市まつり」の「大入道」などが有名。一方、海外ではスペイン・タラゴナの巨人の祭り、オーストリアのサムソンの祭りなど。1992年にスペイン・バルセロナで世界巨人博覧会が開かれ、日本からは「弥五郎どん」が参加したそうだ。「人々を魅了する巨人たち。姿は違えど、その大きな力に憧れ、縋(すが)り、崇める。巨人とは人類共通の『夢の現れ』ではなかろうか」(芳賀氏)。日本で法螺貝といえば山伏を連想するが、その法螺貝が祭りの楽器として広く東南アジア諸国やオセアニア、ハワイなど太平洋沿岸地域で使われていることも本書で初めて知ることができた。


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