く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 朝日新書「京大式おもろい勉強法」

2015年12月24日 | BOOK

【山極寿一著、朝日新聞出版発行】

 著者山極氏は1年前の2014年秋、京都大学総長に就任。人類の進化を研究テーマとする霊長類学・人類学者で、約40年前京大理学部に入って以来、主にアフリカのジャングルで暮らすゴリラの研究を続けてきた。著書に『ゴリラとヒトの間』『家族進化論』『「サル化」する人間社会』など。本書は「『おもろい』という発想」「考えさせて『自信』を育てる」「相手の立場に立って『信頼』が生まれる」など6章で構成する。

      

 野生動物の調査手法としては餌付けが一般的だが、山極氏らがゴリラの調査で採ったのは「人付け」。自由に動き回るゴリラの群れを追っかけて間近で観察する。当初何度も突進されたりドラミングで威嚇されたりしたが、そのうち警戒心をほどいて、そばにいることを許してくれるようになったそうだ。調査には現地の人たちの情報と案内が欠かせない。そのとき「対人力」や「対話」の重要性を痛感させられ、その術をアフリカの人々から学んだ。

 ゴリラ目線で人間を見ると「人間がとても不思議な動物に見えてきて、いつもとは違う発想がどんどんあふれ出てくる」。学長就任時に掲げたキャッチフレーズは「おもろいことをやりましょう!」。その後事あるごとに「大学はジャングルだ!」と口にしてきた。学内では様々な研究分野に取り組む多彩な研究者が共存する。それが生物多様性の象徴でもあるジャングルに酷似しているというわけだ。「研究者たちは各々ジャングルで暮らす猛獣。猛獣たちを一つの方向に向かわせるなど、しょせん無理な話。それなら彼らに互いに切磋琢磨してもらいながら、新たな考えや技術、思想を生み出してもらえばいい」

 アフリカでの調査は試行錯誤の連続だったが、悩んでいるとき現地の人から「There is no problem. There is a solution」と声を掛けられた。どんな困難に直面しても必ず解決策がある――。人間がゴリラやチンパンジーと違うところは目標を持つことや諦めないこと。「だからこそ、人間はいくつになっても変われる」。夢中になれるものと出合ったら「あの手この手を使ってその道を突き進む」こと。ただし、そのときは①相手の立場に立って物事を考える②状況に即して結論を出す③自分で決定する――の3点を道しるべにすべきだと強調する。

 ゴリラやチンパンジーはサルと違って餌を分け合って食べるそうだ。ゴリラのドラミングはまるで歌舞伎の見得とそっくりに見えたとか。アフリカに最初に行ったとき日本人というだけで空手家と思い込まれ噂に「ブルース・リーと同じ師匠についていたらしい」という尾ひれまで付いた。そんな愉快な話も盛り込まれている。

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