く~にゃん雑記帳

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<タニウツギ(谷空木)> 日本原産 漏斗状のピンクの小花を無数に付け

2013年05月18日 | 花の四季

【別名「ベニウツギ」。「田植え花」のほか「葬式花」「火事花」の呼び名も】

 スイカズラ科で日本原産の落葉低木。主に北海道西部から本州日本海側の山野に自生し、5~6月頃、本年枝にピンクや紅色の漏斗状の小花をびっしり付ける。谷間によく生え、幹(髄)が中空(白いスポンジ状)のため、この名が付いた。ほぼ同じ頃に白い花を付ける「ウツギ」はユキノシタ科で別の植物。

 タニウツギはやせ地や日向など土地を選ばない。高木が育ちにくい山の崩壊斜面や雪崩の多発地域などでも育つ。北信越や山陰地方では「田植え花」「早乙女花」などと呼ばれてきた。〝自然暦〟の1つで、ちょうど田植えの時期に開花することによる。この花が咲くと鰯が取れるとの言い伝えから「イワシバナ」と呼ぶ地域もある。若葉は古くから飢饉の際の救荒植物としても利用されてきた。

 一方で忌み嫌われる植物の1つにもなっている。地域によっては「死人花」や「葬式花」「仏花」などと呼ぶ。この枝を使って死者に持たせる杖を作ったり、葬式の際のお骨上げに使う箸を作ったりしたことによる。家に持ち帰ると火事になるといった俗信から「火事花」とも呼ばれた。花には罪がないものの、地域によっては昔からの言い伝えで縁起が悪い植物にもなっているわけだ。

 タニウツギにはまれに白い花を咲かせるものがある。これは「シロバナタニウツギ」。タニウツギ属には東アジアで12種ほどあり、うち9種が日本に自生する。主に太平洋側の山地に分布し、花がうすい黄色から紅色に変わるニシキウツギをはじめ、オオベニウツギ、ハコネウツギ、ウコンウツギ、キバナウツギ、フジベニウツギなど。

 このうちオオベニウツギは福岡県の古処山(朝倉市・嘉麻市)だけに自生する貴重種で、環境省のレッドリストでは絶滅の危険性が高い絶滅危惧Ⅰ類に分類されている。ただ最近の調査では発見できなかった。福岡県の「レッドデータブック2011」によると「絶滅したものと考えられる」。原因は特定できていないが、近年増えてきた鹿の影響が考えられるという。

 この写真を撮っていると大きなクマバチがやって来て、しきりに花の中に頭を突っ込んでいた。花はそのたびに丸々としたクマバチの重みで沈み込んだ。「強引と思うばかりに蜂もぐる 筒花ゆらぐタニウツギかな」(鳥海昭子)。

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