経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政は肥大化しているのか

2012年04月23日 | 経済(主なもの)
 先日、取り上げたJMMだが、竹中平蔵先生の「矛盾を拡大させる消費増税」(日経ビジネス・デジタル)という論考への評価というスタイルになっている。その中で、竹中先生は、「要するに約10兆円は、政権交代のどさくさで歳出が肥大化した」とするのだが、数字にこだわる筆者としては、いかがかと思う。

 まず、2012年度の予算規模が膨らんだ要因には、復興費と年金1/2国庫負担の交付国債がある。復興費への一般的な認識は、「やむを得ない」というもので、「肥大化」の対象ではなかろう。また、年金は、特会で措置されていたものが移されたからであり、これも「肥大化」とは言い難い。いずれにせよ、これらは一般会計の外になる。

 そこで、2006年度と2012年度の一般会計(当初)を比較してみる。確かに、79.6兆円から90.3兆円へと10兆円以上「肥大化」しているわけだが、内訳をみると、印象は変わる。まず、社会保障費が6兆円増である。これは、高齢化によって年間1兆円ずつ伸びてきたものだ。これについては、竹中先生も、やむを得ないものとしておられるようだ。

 次いで伸びているのは、地方交付税交付金で、3兆円の増である。しかし、地方がムダ使いを始めたというわけではない。地方財政の全体を決める地方財政計画は、概ね横ばいになっている。つまり、これは、地方税の落ち込みを補填しているものなのだ。これをしてなければ、地方は大変なことになったろうし、景気回復の暁には、おそらく戻されるものである。今後、国の財政を好転させる要因ともなろう。

 あとは、国債費が3.2兆円、予備費が1兆円弱の伸びだが、これらの項目は、「肥大化」とは違う。文教科学費は微増、防衛費は微減、そして、公共事業費は2.7兆円の減である。こうしてみると、政権交代後にバラマキが始まって肥大化したという評価を、数字で裏付けることはできないのではないかと考える。

 政権交代後の2010年度予算は、補正後で比較すれば、リーマンショック対策が抜け落ちた結果、10兆円の緊縮予算になっており、これが年度後半の景気失速と円高の理由となった。もし、民主党政権が前年度並みの予算規模を維持するといった「本物のバラマキ」をしていたら、景気回復の勢いは続き、大きな税収増が得られていたかもしれない。

 筆者は、民主党の支持者でも何でもなく、むしろ、保守派の人間だが、数字でつづれば、以上のとおりになる。こういう面倒な数字の話を、あえて持ち出したのは、多くの人が、財政運営をイメージでしか捕らえないからであり、JMMのメンバーの誰も触れていないのが若干、気になったためである。若い人には、財政については、必ず数字をチェックすることを勧めたい。

(今日の日経)
 抗がん剤の保険適用拡大。太陽光買い取り42円。消費に団塊特需の兆し。サムスン・設備過剰の危険を知り抜く。米企業、配当積み増し、投資に慎重。対中依存度・鈴置高史。経済教室・新体制北朝鮮・木村幹。

※こうした妥協が自由診療解禁の極論を抑える。※再稼動と比べ時間のかかること。※おもしろい見方だが、保険医療の伸びではないか。これも内訳が大切。※米国も日本も同じ。

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