経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

増税の国際公約と税収

2011年11月04日 | 経済
 ドラギECBは、やるね。本コラムはトリシェECBを強く批判していたが、ようやく、ECBが利下げに転じた。今更ながら、4月と7月の利上げは何だったのかと思う。イタリアを始めとするソブリンリスクの高まりは、煎じ詰めると、ECBがどれだけ支えるのかへの不安だ。遅々としつつも、そちらへ向かっているということだろう。

 他方、FOMCは、成長率の見通しを大幅に下方修正したものの、現状維持を決定した。こちらは予想通りというところだろう。その背景には、米国の消費の持ち直しがあるが、筆者は、ドル安・資源高が一服し、消費を抑える作用が薄れたためと見ている。それは、成長の牽引役になっている輸出が、この先、陰ってくることも意味している。

 日本は、FOMCの前に為替介入に踏み切ったわけだから、この結果には、胸をなでおろしていることだろう。この先の金融緩和を示唆されれば、円高に戻りかねないからである。日本の財政当局がFOMCの動きを事前につかんでいて介入していたとすれば立派なものだが、まあ、偶然だろうな。あとは、米国の雇用統計の発表待ちか。

 ところで、日本は、G20で消費増税を国際公約にするらしいが、何の意味があるのかね。ソブリンリスクは、債務残高のGDP比率ではなくて、要は、政府の資金調達力にある。日銀の場合は、金融緩和や債権引受に積極的なのだが。もしかすれば、増税でデフレを長引かせることを印象づけ、「介入はしても、円高傾向は続きますよ」と、訴えたいのかね。

 そもそも、国際会議なのだから、何かを約束するのなら、代わりに得るものが必要だろう。筆者には、それが分からない。増税で内需が弱まれば、欧米にとっての輸出が減ってマイナスのようにも思える。結局、国内の増税への抵抗を押し切るための「錦の御旗」作りなのだろう。いつもながらの、海外で国内政治というものかもしれない。

 さて、月始めの金曜日には、米国の雇用統計の発表があるが、筆者には、もう一つ、月始めに楽しみにしている統計がある。日本の財務省の「租税及び印紙収入、収入額調」である。分かりにくい名称で、目立つことのないものだが、本当に財政破綻を心配するなら、毎度、大騒ぎの債務残高のGDP比率より、足元の税収を見る方が大事だろう。

 その結果は、一般の方には意外なものではないかな。所得税は、9月までの累計額が前年同月比で105.1%になっており、消費税は、同じく104.8と、好調に推移しているからだ。ベースの2010年度決算額は、所得税が13.0兆円、消費税が10.0兆円であるから、単純計算で、100を超える額は、年間で6600億円、4800億円に相当する。

 2011年度予算額は、所得税13.5兆円、消費税10.2兆円であるから、合わせて4400億円の税収上ブレというところか。こういうものを見ると、デフレ下で、復興増税をする必要があるのかと思えてくる。所得増税の実施時期である2013年1月には、成長に従い、もっと上ブレしているのは確実だろう。

 他方、気懸かりなのは、法人税の動向である。これは、時期的に「税収調」では、まだ分からない。筆者は、大震災後、主要企業の収益見通しから、税収は2010年度決算並みと予想していたが、日経によれば、円高のために、10%程度の減益になる模様である。それでも、2011年度予算の税収見込みは7.8兆円と、2010年度決算額9.0兆円と比して極端に低いため、決算額より1割少なくても、3000億円の税収上ブレにはなる計算だ。

 いかがだろうか。税収は、好調、あるいは、手堅く推移している。日本経済は、大震災には耐えたものの、昨年度の無理な緊縮財政に端を発する円高に苦しめられ、財政再建にまで支障が出ている状態だ。欧州でさえ、財政再建は時期が重要と言われるようになり、ECBも徐々に変わりつつある。そして、日本だけが、相変わらずなのだ。

(今日の日経)
 ECBが0.25%の利下げ。ユーロの一層下落も、追加利下げ実施の見方。金融政策、米は維持。FRB、緩和カード温存。企業力・世界ブランドの作り方。消費増税、国際公約に。ブリウス実質値上げ。特集・新しい日本へ。空き室、6か月連続低下。経済教室・次世代電力網の国際標準づくり・依田高典。

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