世の中、社会保障の負担をどうするかに血眼になっているときに、筆者は、まったく別のことを思っている。日本における最大の課題は社会保険料の段差だなんてね。これが格差是正の足枷になっているなんて、誰も思っていないだろうなあ。
日本は自殺大国だ。こうなったのは、1997年のハシモトデフレからである。これで経済状況が悪化したことが大きな原因になっている。この時から、失業が増大し、就職が難しくなったというだけでなく、非正規と正社員の二分化が進んだことも、人々に大きなストレスを与えるようなった。
改めて言うまでもないが、非正規にしかなれなければ、将来に希望が持てない。かたや正社員となると、長時間労働は避けがたい。ちょうど中間がないのである。がんばれると思ったら正社員になり、辛くなったら短時間労働に変わるというわけにはいかない。こうした望みや逃げ場のない環境は、実にストレスフルである。
では、なぜ企業はこんなハイローミックスの雇用方針を取っているのか。それは、正社員にした途端、賃金の25%以上の社会保険料がかかってくるからである。これだけ段差があると、正社員は最小限に絞り、追加は本当に今の人数では立ち行かなくなってからにするのは、当たり前の対応であろう。しかも、日本の財政は、少し景気が上向くと、緊縮で成長の芽を摘むから、人材の先行投資はとてもできない。
本当は、社会保険料ゼロのパートから、年収300万円の正社員まで、徐々に保険料率が上がっていく形であれば、柔軟な雇用ができる。労働コストを、人数で調整するのではなく、労働時間で調整することが可能になるからだ。むろん、働く側にとっても、家庭の事情によって、変えることが容易になる。「社保完備」を失う心配をすることなく。
ワークライフバランスなどというものもあるが、残業しないで家庭生活を大事にしようと言われたところで、長時間労働にまみれる者にとっても、パートで十分に稼げないと思う者にとっても、虚しいものがある。バランスの悪さが人々の意識や文化の問題だと思っているうちは、問題は解決されないだろう。
日本に、こういう問題が横たわっていることは、なかなか表に出て来ない。個々人は、とにかく正社員になりたいだけで、中間的なものを望まないし、経営者も社会保険料の適用拡大なんて、とんでもないという感じだ。日本では、唯一、社会保障の制度設計ができる厚労省も保険料を減らす発想は持ちにくい。政治家には期待するだけムダだろう。
かくして、二極分化の日本社会は続いていく。そして、例年同様、今月の徴収から厚生年金の保険料は引き上げられ、段差は更に広がった。この問題が気付かれる日は来るのだろうか。消費税とは違って、毎年、少しずつ引き上げられるから変化を感じられないが、問題は大きくなりつつあるのだ。
(今日の日経)
ルネサス出資2000億円に。化学工場の設備高度化もろ刃の剣。大機・エコノミスト予測。
※コンセンサス予測が良いのは、ランダム性があるからでは。
日本は自殺大国だ。こうなったのは、1997年のハシモトデフレからである。これで経済状況が悪化したことが大きな原因になっている。この時から、失業が増大し、就職が難しくなったというだけでなく、非正規と正社員の二分化が進んだことも、人々に大きなストレスを与えるようなった。
改めて言うまでもないが、非正規にしかなれなければ、将来に希望が持てない。かたや正社員となると、長時間労働は避けがたい。ちょうど中間がないのである。がんばれると思ったら正社員になり、辛くなったら短時間労働に変わるというわけにはいかない。こうした望みや逃げ場のない環境は、実にストレスフルである。
では、なぜ企業はこんなハイローミックスの雇用方針を取っているのか。それは、正社員にした途端、賃金の25%以上の社会保険料がかかってくるからである。これだけ段差があると、正社員は最小限に絞り、追加は本当に今の人数では立ち行かなくなってからにするのは、当たり前の対応であろう。しかも、日本の財政は、少し景気が上向くと、緊縮で成長の芽を摘むから、人材の先行投資はとてもできない。
本当は、社会保険料ゼロのパートから、年収300万円の正社員まで、徐々に保険料率が上がっていく形であれば、柔軟な雇用ができる。労働コストを、人数で調整するのではなく、労働時間で調整することが可能になるからだ。むろん、働く側にとっても、家庭の事情によって、変えることが容易になる。「社保完備」を失う心配をすることなく。
ワークライフバランスなどというものもあるが、残業しないで家庭生活を大事にしようと言われたところで、長時間労働にまみれる者にとっても、パートで十分に稼げないと思う者にとっても、虚しいものがある。バランスの悪さが人々の意識や文化の問題だと思っているうちは、問題は解決されないだろう。
日本に、こういう問題が横たわっていることは、なかなか表に出て来ない。個々人は、とにかく正社員になりたいだけで、中間的なものを望まないし、経営者も社会保険料の適用拡大なんて、とんでもないという感じだ。日本では、唯一、社会保障の制度設計ができる厚労省も保険料を減らす発想は持ちにくい。政治家には期待するだけムダだろう。
かくして、二極分化の日本社会は続いていく。そして、例年同様、今月の徴収から厚生年金の保険料は引き上げられ、段差は更に広がった。この問題が気付かれる日は来るのだろうか。消費税とは違って、毎年、少しずつ引き上げられるから変化を感じられないが、問題は大きくなりつつあるのだ。
(今日の日経)
ルネサス出資2000億円に。化学工場の設備高度化もろ刃の剣。大機・エコノミスト予測。
※コンセンサス予測が良いのは、ランダム性があるからでは。
実際、社会保険料の計算ってコンピュータがない時代に制度化されたままで、現代にはそぐわないものになってしまっています。税理士達も大幅な修正が必要だと考えているようです。