経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

気がかりな消費の動向

2011年10月03日 | 経済
 この土日、統計局のHPは、メンテナンスのせいか、お休みになっていた。土日に家計調査の結果が見られないだけでイラついてしまうとは、筆者も、病膏肓に入ったというところか。世の中には、家計調査ファンなんて、少ないのだろうなあ。

 さて、8月の家計調査の結果について、総務省は、基調判断を「減少しているものの、下げ止まりつつある」に据え置いたのだが、どうもねえ。家計調査は、振れ易いところがあるといっても、今回の減少は、かなり大きい。

 筆者が重視するのは、消費支出の季節調整済実質指数の推移なのだが、震災以降、緩慢にでも回復してきたものが、横ばいとなってしまった。消費支出(除く住居等)に至っては、4月の水準まで逆戻りである。今回の減少を特殊要因だと思っていると、足元をすくわれるような気がする。

 震災前の2月の消費指数は98.6だった。震災で3月に95.8まで落ちて、この8月は97.9だから、1か月当たりで0.42しか伸びていない。このペースだと、震災前水準に到達するのは、10月になってしまう。しかも、2月は、昨年8月のピーク時の101.4より、2.8も落ち込んでいた。この水準を取り戻すには、単純計算で更に7か月もかかってしまう。

 日本の消費は、これほど弱い。震災による痛手からの回復はもちろん、昨年の急激な景気対策の打ち切りによる緊縮財政と、それで生じた円高による消費の打撃からも、まったく癒えていない。「民の竈からの煙を見て政治をせよ」と言われるが、現代の竈の煙は、家計調査である。これでどうして、日本のリーダーは増税に熱心になるのか。

 悪評高い「子ども手当」だが、消費支出(除く住居等)を見てみると、支給月の昨年6月、10月、今年2月、6月と、いずれも前月より増加していることが分かる。効率が悪いという評価はあるにせよ、家計の助けにはなっている。この10月も、消費を少しは助けてくれるはずだ。もっとも、来年になると、給付削減が行われ、年少扶養控除の地方税分ものしかかってくる。

 ロイターは、9/29に日本語H.P.で、「国内消費に失速の可能性、生産活動に外需減とのダブルパンチも」と報じた。筆者も、まったく同感だ。9月ロイター短観の小売業DIは、12月にかけて23ポイント悪化という結果になっているようである。震災前や昨夏水準の回復前にこうなるというのは、深刻な事態だ。

 家計調査を眺めれば、民が疲弊しているのは明らかだ。財政再建は大事かもしれないが、この状態で増税をするのだろうか。所得税増税は1年3か月先かもしれないが、わざわざ2012年度内の1月にして、今のうちに決定しようとするのは、家計の状況を見るつもりなど、まったくない証拠である。増税の時期は、3か月遅らせ、2013年4月からの増税を、来年秋に、家計の状況を確かめてから決めるので良いではないか。その頃、消費は、ようやく前回水準を取り戻しているはずである。

(今日の日経)

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