当然の結果ではないだろうか。今回の円高局面である。日本は、2010年度後半に、10兆円もの緊縮財政を行い、デフレを放置した。他方、米国はQE2を行い、ドル安と資源高によって、物価高となったのだから、円高ドル安にならない方がおかしい。
もちろん、物価差が開いても、日銀が金利を下げ、金利差をつけることができれば、円高を緩和できるのだが、短期金利はゼロに近く、長期金利は1%割るところまで来ているのだから、それは無理な話である。昨日の夕刊で日経は、円高の背景には日米の金利差縮小があると報じている。米国の長期金利は、3%程度であったものが、この1か月で2%程度まで低下した。日本の長期金利は、もともと1%程度しかないのだから、従来の金利差を維持しようと思えば、マイナス金利にでもしなければならない。
金融政策には限界があるのだから、円高のためにも、デフレが続くような緊縮財政をすべきではないのである。「えっ、そんなことしてたの?」という声が聞こえてきそうだか、先日公表された政府の「経済財政の中長期試算」を、よく見たら良い。国・地方の基礎的財政収支の対GDP比が、2009年度の-8%から2010年度の-6%に改善されている。これは、額で言えば、約10兆円である。
さて、ここでクイズだ。「需要と供給が均衡している状態で、需要を抜いたら、物価はどう動くでしょう?」 まあ、物価が下がってデフレになるくらい、学部の学生だって分かるだろう。「政府がそんなことをしているなんて聞いてない」って? やれやれ、日本のエリートは、大本営が「デフレ覚悟で緊縮財政をします」と発表しないと、分からないのかね。
日本の経済界は、不思議なことに、財政再建が大好きで、消費増税にも積極的である。それなら、円高になったからと言って、不満は言わないことだ。今日の日経には、円高に対する経営者の「悲鳴」が書き連ねてあるが、「10兆円の財政再建を果たしたのだから、円高なんて当然です」くらいの気骨を見せてほしい。まあ、そんな覚悟もあるまいが。
日本の財政当局は、この1年で、為替介入を7兆円も行った。彼らは、特別会計の事業仕分けの際に、介入で累積した外為特会のカネは、埋蔵「借金」だと言い張っていたが、この調子で行けば、介入は10兆円を超えるかもしれない。そうすると、デフレ覚悟で10兆円の緊縮財政をしたのに、それを帳消しにするような蕩尽もするわけだ。なんと素晴らしい経済運営ではないか。
為替介入とは、ドルを札束で置くわけではないので、結局は米国債を買うのと同じになる。同じカネを使うのに、何が悲しゅうて、日本人からは吸い上げ、米国人にバラ撒かなければならないのか。昨年度後半、景気対策を次々にぶった切り、急激な緊縮を行ったが、経過措置をとって、緩やかに締めるという、平凡な財政をしておけば良かっただけのことだ。そうしていれば、デフレから脱して、ひどい円高にもならずに済んだろう。
それで、「これから、日本経済はどうなる」って? いやだなあ、さっきの「中長期試算」に、今年度から来年にかけて、基礎的財政収支がGDP比で1.2%改善すると書いてありますよ。6兆円も緊縮財政をかけるのだから、デフレが長引き、更なる円高に向かうでしょう。まあ、米国の景気が回復すれば、話は別ですが。
「復興で支出がかさむのに、どうして、そうなるのか」って? 本当に、日本人は財政当局から何も教えてもらえないんですね。今年度の一次と二次補正で6兆円の復興費を用意したわけですが、これは増税なしに用意したものなので、来年度、その支出がなくなると、財政収支は改善するわけです。もちろん、来年度も復興費は用意されるでしょうが、それは、見合いの復興増税で賄われることになっているので、財政収支には中立なのです。
おっと、諭す気持ちが入ったら、思わず、「ですます調」になってしまった。経営者の諸君よ、財政再建に理解を示すなんて格好をつけず、本音を出して、内需をよこせと言うべきだろう。内需があれば、円高でも耐えられるし、そもそも、円高にもなり難くなる。介入しても投機筋に食われるばかりだ。まともな経済あっての財政である。今こそ、経営者の実感を取り戻すときであろう。
(今日の日経)
大災害時の政府機能を西日本で補完。政府、円高総合対策へ。マネー動乱、逃避先は円・滝田洋一。社説・さらなる介入と金融緩和をためらうな。風見鶏・一票の格差・西田睦美。円高についての経営者コメント。協調介入G7冷淡、そろわぬ足並み。米がドル安容認、輸出拡大。中外時評・携帯市場を変えたアップル・関口和一。損保会社がトラブルナビ。読書・オバマの戦争。
※こんなことより耐震工事でもしたらどうか。※子ども手当を切って、円高バラマキだ。※逃避だけではなく、経済運営の差もある。※輸出企業に補助金を出す方が安上がりだよ。※日本が緊縮財政で自ら招いた円高に、米国が協調してくれるわけもなし。
もちろん、物価差が開いても、日銀が金利を下げ、金利差をつけることができれば、円高を緩和できるのだが、短期金利はゼロに近く、長期金利は1%割るところまで来ているのだから、それは無理な話である。昨日の夕刊で日経は、円高の背景には日米の金利差縮小があると報じている。米国の長期金利は、3%程度であったものが、この1か月で2%程度まで低下した。日本の長期金利は、もともと1%程度しかないのだから、従来の金利差を維持しようと思えば、マイナス金利にでもしなければならない。
金融政策には限界があるのだから、円高のためにも、デフレが続くような緊縮財政をすべきではないのである。「えっ、そんなことしてたの?」という声が聞こえてきそうだか、先日公表された政府の「経済財政の中長期試算」を、よく見たら良い。国・地方の基礎的財政収支の対GDP比が、2009年度の-8%から2010年度の-6%に改善されている。これは、額で言えば、約10兆円である。
さて、ここでクイズだ。「需要と供給が均衡している状態で、需要を抜いたら、物価はどう動くでしょう?」 まあ、物価が下がってデフレになるくらい、学部の学生だって分かるだろう。「政府がそんなことをしているなんて聞いてない」って? やれやれ、日本のエリートは、大本営が「デフレ覚悟で緊縮財政をします」と発表しないと、分からないのかね。
日本の経済界は、不思議なことに、財政再建が大好きで、消費増税にも積極的である。それなら、円高になったからと言って、不満は言わないことだ。今日の日経には、円高に対する経営者の「悲鳴」が書き連ねてあるが、「10兆円の財政再建を果たしたのだから、円高なんて当然です」くらいの気骨を見せてほしい。まあ、そんな覚悟もあるまいが。
日本の財政当局は、この1年で、為替介入を7兆円も行った。彼らは、特別会計の事業仕分けの際に、介入で累積した外為特会のカネは、埋蔵「借金」だと言い張っていたが、この調子で行けば、介入は10兆円を超えるかもしれない。そうすると、デフレ覚悟で10兆円の緊縮財政をしたのに、それを帳消しにするような蕩尽もするわけだ。なんと素晴らしい経済運営ではないか。
為替介入とは、ドルを札束で置くわけではないので、結局は米国債を買うのと同じになる。同じカネを使うのに、何が悲しゅうて、日本人からは吸い上げ、米国人にバラ撒かなければならないのか。昨年度後半、景気対策を次々にぶった切り、急激な緊縮を行ったが、経過措置をとって、緩やかに締めるという、平凡な財政をしておけば良かっただけのことだ。そうしていれば、デフレから脱して、ひどい円高にもならずに済んだろう。
それで、「これから、日本経済はどうなる」って? いやだなあ、さっきの「中長期試算」に、今年度から来年にかけて、基礎的財政収支がGDP比で1.2%改善すると書いてありますよ。6兆円も緊縮財政をかけるのだから、デフレが長引き、更なる円高に向かうでしょう。まあ、米国の景気が回復すれば、話は別ですが。
「復興で支出がかさむのに、どうして、そうなるのか」って? 本当に、日本人は財政当局から何も教えてもらえないんですね。今年度の一次と二次補正で6兆円の復興費を用意したわけですが、これは増税なしに用意したものなので、来年度、その支出がなくなると、財政収支は改善するわけです。もちろん、来年度も復興費は用意されるでしょうが、それは、見合いの復興増税で賄われることになっているので、財政収支には中立なのです。
おっと、諭す気持ちが入ったら、思わず、「ですます調」になってしまった。経営者の諸君よ、財政再建に理解を示すなんて格好をつけず、本音を出して、内需をよこせと言うべきだろう。内需があれば、円高でも耐えられるし、そもそも、円高にもなり難くなる。介入しても投機筋に食われるばかりだ。まともな経済あっての財政である。今こそ、経営者の実感を取り戻すときであろう。
(今日の日経)
大災害時の政府機能を西日本で補完。政府、円高総合対策へ。マネー動乱、逃避先は円・滝田洋一。社説・さらなる介入と金融緩和をためらうな。風見鶏・一票の格差・西田睦美。円高についての経営者コメント。協調介入G7冷淡、そろわぬ足並み。米がドル安容認、輸出拡大。中外時評・携帯市場を変えたアップル・関口和一。損保会社がトラブルナビ。読書・オバマの戦争。
※こんなことより耐震工事でもしたらどうか。※子ども手当を切って、円高バラマキだ。※逃避だけではなく、経済運営の差もある。※輸出企業に補助金を出す方が安上がりだよ。※日本が緊縮財政で自ら招いた円高に、米国が協調してくれるわけもなし。
ドルの国アメリカはインフレ政策を採用していて、円の国日本はデフレの真っ只中にあるわけですから、ドルに対して円が高くなるのは当たり前だと感じていたのですが、自信がありませんでした。
でも、この記事を読ましていただいて、「やはり、そうなのだ」と納得することができました。