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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2012年度予算を評価する その1

2011年12月23日 | 経済
 今日は天皇誕生日の祝日だから、予算編成も一段落。あとは24日に政府予算案の閣議決定を済ますだけだ。今年は、これに続いて、消費税準備法案の素案を決定する運びとなる。日本の場合、日経の見出しの「歳出の削減甘く」に見られるように、バラマキや負担増の批判だけのように思う。「枠」の内側に気を取られ、「枠」そのものを考えようとしない。戦略的な思考が欠けてはいないだろうか。

 まず、税収を点検する。2012年度の42.3兆円は、今年度当初の40.9兆円より、1.4兆円増えている。実は、四次補正で1.1兆円の上方修正をしているので、来年度は、今年度の実績見込みより、0.3兆円しか増えないとする設定だ。補正の修正は堅めにするので、おそらく、決算時には、今年度の税収は42.3兆円くらいになるのではないか。つまり、実質成長率を2.2%と想定しているのに、来年度の税収増を、事実上、ゼロにしているのである。

 2010年度は3.1%成長で2.8兆円の増収だったし、今年度は-0.1%成長で1.1兆円の増収である。また、リーマン・ショック前の2007年度の税収は現在より8兆円多い51.0兆円であった。順調に成長すれば、税収は伸びると考えるのが自然であり、2012年度は2兆円増の44兆円程度にはすべきだ。今年度の当初予算と比較すれば、3兆円の増収を見込むということでもある。

 次に、公債金収入だ。2012年度は44.2兆円で、今年度の44.3兆円から横ばいである。これと裏腹にある国債利払費は約22兆円とされて、今年度の21.5兆円より増えているようだ。来年度の実際の国債費がどうなるかは、長期金利次第である。来年度は、借換債が130兆円、新発債が44兆円であるから、1%を割る状況にある長期金利が、今後、国債の利率の残高加重平均である1.29%まで上昇したとしても、国債費の増は4000億円くらいだろう。

 今年度の国債費は、長期金利の低位での推移によって、四次補正までに1.3兆円も余ることになった。したがって、成長に伴って多少の長期金利上昇があっても、やはり、1兆円程度余るのではないか。ただし、長期金利については、この10年を振り返っても、1%強の水準から年間に0.75%幅で上昇したこともあるので、厚めに予算を用意しておくことは、間違ってはいない。来年度の国債費の大きさは、2.0%まで上昇しても十分に賄えると見ている。

 以上からすれば、2012年度予算は、着実な財政再建の道を歩んでいると評価できる。公式ベースでは、税収42.3兆円、新規国債44.2兆円だから、「税収を上回る国債発行で賄う危機的状況」という、耳にタコの宣伝文句を聞かされ続けるだろうが、実態的には、税収が新規国債を上回るようになる。実態を知らせれば、国民は勇気づけられ、成長を目指して復興に励もうとするだろう。 

 財政の実態から国民が受け取るものは、「成長が大事で、それが財政を好転させる」という認識である。また、財政再建は着実に進んでいて、焦ることはなく、ある程度の金利上昇にも十分対応できるという自信である。不安に駆られ、とにかく消費税という、今の雰囲気とは対照的なものだ。日本には、こうした実態に即したリーダーシップが必要に思える。
(明日に続く)

(今日の日経)
 米独でマイナス金利。給付付き税額控除を明記。皇室典範改正を検討。武器輸出三原則を緩和、27日に官房長官談話。社説・電力値上げと併せ東電の将来像を示せ。東電値上げに不満が続出、東ガス値下げ。歳出の削減甘く、交付国債、積立金、特別枠、コメ所得補償。来年度2.2%成長見通し決定、海外に期待。都内の発電2倍に。乗用車国内生産4%増。経済教室・中国の対外投資・郭四志。

※皇室典範といい武器輸出といい、野田政権は為すべきことをしている。※一歩前進の社説だね。将来像を示すのは社会の木鐸たる日経の役目でもあるよ。※政府の成長見通しが高いのは、外需を高めに見ているだけでなく、個人消費の高ささもある。内需が予想以上に伸びそうな気がする。

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