経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

国家にとっての努力と結果

2012年02月08日 | 経済
 自分が何をして来たということは、後で分かるものである。その時の努力(effort)がどういう結果を招くのか、分かってから意味を知るということだ。今日の日経は、上場企業の今期利益ランキングで通信・商社が上位になっていることを伝えている。これは、緊縮財政をして、デフレを続け、円高にすれば、当然こうなるということに過ぎない。

 日本がどういう財政運営をしてきたかは、9/17「財政のデフレ的実態」や、11/18「2012、2013年度の財政見通し」などを見ていただくとして、デフレと円高では、輸入型産業が栄え、輸出型産業が衰えるのは当たり前である。商社が輸入型なのは分かり良いが、通信もスマホの「輸入」が背景になっている。

 おまけに、日本は、投資減税を縮小して、法人税率を下げようとしているのだから、この傾向に更に拍車をかけている。また、過去の損失があって目立たないが、銀行・金融も着実に収益が上げられる環境にある。そうすると、日本は、モノ作りが大切と言いながら、実は、藤井彰夫さんが言うような英米型の国家を目指しているのかもしれない。

 今のような財政運営をしていては、為替介入をしたり、金融緩和をしてもムダである。昨秋の8兆円もの巨額の為替介入がまったく効果がなかったことは、今日の日経にあるとおり。多少は下がったように見えたのも、1兆円の覆面介入という見せ掛けだったことが明かされている。介入の結果も工作し、無意味さを隠蔽していたわけだ。

 今日の日経の大機・カトーさんのように、財政運営の実態を知らない人は、日銀を責めたりしているのだが、こういうのは、財政当局の思うツボだ。むろん、日銀にも課題がないわけではない。筆者は、巷間言われるインフレ目標より、長期金利目標のようなものが必要ではないかと思う。例えば、向こう2年の長期金利の上限目標を示し、その確保のために、国債買入れ枠は柔軟に対応する方針を打ち出すといったものだ。

 まあ、すべては、後になって分かるということさ。筆者は、日本のあるべき国家像は、英米型の金融立国ではなく、内需と技術を活用してエコ的なライフスタイルを開発し、世界に広めるものだと思っている。現実には、緊縮財政でそうした道を捨て、時代遅れになりつつある英米のマネに走るのだろう。

 戦前の日本は、金本位制や植民地確保といった時代遅れの国家像を目指して破綻したが、当時は、そういう努力をすることが、どういう結果になるか分からなかった。このあたりで日本も、自分で国家像を創造しても良いように思うのだがね。

(今日の日経)
 上場企業の今期利益ランキングは通信・商社が上位に。トヨタの純利益51%減に上方修正。ドコモ通信障害、設備・技術者追いつかず。社説・電力市場。米軍再編見直し・苦肉の大枠合意。9兆円介入も円高続く、覆面4日で1兆円。国債、日銀保有1割突破。開かれた英国、日本の道標・藤井彰夫。大機・より進化した仕組み・カトー。経済教室・火力技術・石井彰。

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1 コメント

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Unknown (経済学初心者)
2012-02-09 06:28:59
日本のアカデミズム(ジャーナリズムもそうですが)は、戦後一貫してマルキシズムの強い影響のもとにあったわけですが、それが冷戦終結後に一掃されてしまうんですね。で、そのあとはネオリベの影響下のもとに置かれてしまったわけで。それが、バブル崩壊後英米賞賛というかたちで、それこそ「体制翼賛」と見まがう形で政財学含めてネオリベ的体制改革に邁進するようになってしまった原因だと思います。
問題はネオリベ的改革がすでに破たんしたにもかかわらず(当の英米を見ればそれは一目瞭然なのですが)、ほかのオルタナティブな路線が見いだせないということでこの国では依然としてネオリベ的路線が幅を利かせてることなんですよね。というより、破たんしたことをうけて、なんとか下々の人間にはそれと悟らせないようにあの手この手での延命措置を施してるというべきでしょうか。
いずれにせよ、本来政財のカウンター的要素を求められるべきアカデミズムやジャーナリズムがネオリベ的体制翼賛に邁進している現状は、後世の人間に「当時の日本人は自ら没落の道を歩んでいる」と思われても仕方のない状況にあるんですが…。
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