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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

4-6月期GDP2次・経済「戦術」の拙さ

2017年09月10日 | 経済
 金曜にGDP2次速報が公表され、4-6月期は、下方修正されたものの、成長率は年率3%に届く強いものだった。家計消費が前期比+0.7と伸び、設備投資は+0.9と先行する、内需中心の理想的な景気回復の形となった。実は、以上の数字は「名目」の話である。実質での年率2.5%成長とはズレがあり、内容のイメージも少し違ってくる。今回は、こうしたズレが、経済と政策を読む上でポイントになることを説明しよう。

………
 日経は「設備投資の推計に甘さ」と軽く書いているが、1次速報での先行指標による読みは、相当、難しいものだった。一つは、機械設備を示す鉱工業指数、中でも輸入が高く、「全部が投資になってるの?」という内容だった。二つに、民間企業の建設投資の指標も上ブレしていて、「ホントかね」というレベルだった。そこで、筆者は、予想し得る幅で最も低い値を選んで予測することにし、「実質の成長率は2%台後半、殊によると3%」としたわけである。

 内閣府のGDP推計は一定の手法に従ってなされ、こうした総合判断はできないので、高いと分かっていても、それで出すしかない。筆者は、これを当てることには、あまり意味がないと思っていて、実態に近い見通しを示すように心がけている。そして、大事なのは、ブレたことより、中身である。すると、下方修正のお陰で、名目の設備投資は+0.9なのに、実質は+0.5と、減価が目立つ形になった。つまり、設備投資に限ってはインフレが生じている。

 これには、建設投資での価格の高まりがある。全産業活動指数では、4-6月期の企業の建設投資は前期比+9.7と急加速した。しかも、拙いことに、公共事業まで急増させている。この1年の公共事業は、7-9期-1.1、10-12月期-6.0だったのが、1-3月期+1.3、4-6月期+9.3となっており、まさに、急ブレーキと猛アクセルだ。これでは、供給がネックになり、せっかくの設備投資が空回りしてしまう。

(図)



………
 日本の経済政策は、デフレ下で財政再建を優先して消費増税をするといった、「戦略」のなさで世界的に有名だが、公共事業の調節という「戦術」ですら、ひどくお粗末である。消費増税前、消費も住宅も盛り上がっているときに、一緒になって増やしたり、増税ショック後には、浮揚力を失っただけでなく、更に落ち込んで、景気を停滞させりした。加えて、この1年の急ブレーキと猛アクセルである。もう、行き当たりばったりとしか言いようがない。

 安倍政権に加え、前原民進党も、2019年に消費増税をするつもりのようだが、消費増税の恐ろしさは、消費への圧迫にとどまらない。「増税できる環境に」と称して、金融緩和や財政出動を絞り尽くし、住宅の駆け込みと反動を伴なわせ、いわば、成長の推進力を全部使い切った中で、一気の消費削減にダイブする。外需に恵まれなければ、経済が破綻する、ロシアンルーレット型の政策なのだ。2014年は弾が飛び出ずに済んだだけである。

 正直、公共事業という経済「戦術」も、まともに管理できないのに、一気の消費増税に挑もうなんて、身の程を知らなさ過ぎる。夜郎自大もいいところだ。IMFだけでなく、タカ派の河野龍太郎さんも、「刻んで増税」と言うようになっている。筆者は、2014年増税の前から主張していて、当時は異端扱いだったが、実際に消費の停滞を潜り抜け、ようやく、世間の認識も変わりつつある。みんな、いい加減、学ぼうよ。

………
 さて、今後だが、設備投資は、過去3期が名目前期比で+2.1、+0.9、+0.9と推移し、鉱工業指数の予測や短観の設備投資計画も良好なので、順調に推移するだろう。家計消費も+0.5、+0.2、+0.7と来ており、常用雇用の毎期+0.6のペースと現金給与の上昇開始を踏まえれば、着実な伸びが期待できる。全体としては、ちょっと強気かもしれないが、今期と同様の2%台後半の成長と見ている。

 景気は快調だが、補正予算は、前年と同規模のものを打たないと緊縮になってしまうため、必須となる。中身としては、税収の上ブレが少ないから。建設国債で公共事業という安易な流れになりそうだが、民間の建設需要との調整がいる。むしろ、公需は人的投資に使いたい。とりあえず、つなぎ国債で賄い、あとで利子配当課税を1%引き上げ、恒久財源としてはどうか。大機(8/23)のミストさんによれば、1%アップで2000~3000億円は出る。

 こども保険ということで、どうしても賃金へ負荷したいようだが、企業が収益を持て余している実態があるのだから、戦略的には資本課税である。特に、これから金利が上がろうかという局面では、財政の信任を得るためにも、極めて重要な一手となる。日経の「子会社」の論説委員が言う「債務との共生」に必要な次のパーツだよ。おっと、「戦術」も分からない日本人に、「戦略」を教えても仕様がなかったね。


(今日までの日経)
 M字カーブ「谷」緩やかに。夏消費 明暗くっきり。GDP・設備投資の推計に甘さ。[FT]日本の公的債務への懸念は行き過ぎだ。

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-09-11 17:35:04
日本のGDPってブレすぎじゃないですか?1次速報はいらないかもしれません。景気の動向は他の指標で判断できますし。
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Unknown (Unknown)
2017-09-12 20:35:33
前原代表はともかく、安倍総理は本当は増税したくないんじゃないですか?骨太の方針でも再増税への言及が削除されてますし。
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Unknown (Unknown)
2017-09-13 20:14:27
そもそも2014年時の増税にしても景気による判断が必要だったのに増税した人ですからねぇ・・・
増税はしないが緊縮はするという方針になるかもしれないので油断できませんな
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GDP、基準改定で19.8兆円かさ上げ (Unknown)
2017-10-22 11:40:28
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H4U_V10C16A9EE8000/

このことはどう見れば良いのでしょうか
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