経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

日本にウルフはいない

2011年09月09日 | 経済
 FTのマーチン・ウルフの「大収縮への処方箋、カネを借りて使え!」(JBプレス)には、思わず苦笑いをしたよ。市場主義を信奉する人々が長期金利低下の「市場の声」に耳を傾けないことを皮肉っているのだが、そうしたことは本コラムでも前に書いた。財政赤字を減らそうとするのは良いが、減らした分を誰が埋めるのかという基本的な問いも、本コラムに同じだ

 「処方箋」では、高名なカーメン・ラインハート氏やケネス・ロゴフ教授にも、堂々と反論し、ドイツのショイブレ財務相の政策も根本から批判しているのだから立派なものだ。日本の財政当局が絶対に認めようとしない過去の緊縮財政の失敗を、英国人に引かれているあたりは、日本人として気恥ずかしいところもあるが。

 日本の問題は、日経と朝毎読が揃って緊縮と増税を志向していることだ。産経は、増税には反対だが、緊縮は大好きである。それが正しいか否かは別として、こういう日本の一色ぶりが、筆者は非常に嫌である。多様性のない中での政策論議は、大きな失敗をする原因になりかねないからだ。

 日本でも反増税論者はいるが、それは「埋蔵金派」とも言うべき人たちである。高橋洋一先生などが、その代表であろう。ダイヤモンド.O.Lの「増税一直線の野田政権に告ぐ、増税に代わる財源を示そう」を見てもらえば分かるが、要は「経理操作」であり、形式的に赤字国債は増発しないが、経済的には、それと変わるところがない。

 それならば、日銀引受けなどの「奇手」を用いず、正面から国債増発を主張すれば良いように思うが、まあ、それは、財政当局の「赤字国債を一切増やせない」という頑な主張に対抗する意味合いがあろうし、「国債を増発しなくても」という部分がないと、世間的にはアピールしないということでもあろう。

 正論となるはずの「金利水準や需給状況から十分に国債増発の余地があり、それが貯蓄投資の不均衡を是正するために必要」といった地味な主張、これはデフレ・インフレ両方の局面で使える普遍的な議論なのだが、日本では全然見られない。その意味で、日本にウルフはいないのだ。絶滅しているのは、日本狼だけではないのである。

(今日の日経)
 パソコン生産、国内回帰、中国とコスト差縮小。ECB、成長予測を下方修正。インドネシアに新工場・トヨタ。節電の大きかった代償・情報開示に課題。前原氏、武器輸出三原則の見直しを。住宅エコポイント・優遇金利の再開・国交省が三次補正で。北朝鮮・合法収入が非合法に迫る。ミャンマー外資規制緩和。トリシェ総裁が銀行環境に言及。昭シェル・高効率の太陽電池。パナ・ベトナムに2工場。工作機械受注、海外向けが減速。経済教室・富裕層向け輸出モデル・小幡績。

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