経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2014年度補正は前回並み

2015年01月11日 | 経済(主なもの)
 1/9に閣議決定された2014年度補正予算は、日経の見出しは「抑制」となっているが、概ね前回並みである。昨年度の補正予算は消費増税を前にして2兆円の緊縮であり、それを増税対策とする不誠実さに怒りを覚えたが、今回は景気対策の看板どおりである。もっとも、いまだ消費増税のショックが癒えておらず、11月の景気動向指数が低下している状況で、これが適当なのかという懸念は残るにしても。

………
 今回の補正は、歳出項目の生活者支援、地方活性化、災害等対応、その他の四つを合わせ、既定経費の減額のうち国債費以外を差し引くと2.7兆円となる。これに復興特会の0.3兆円分を加えた3.0兆円が実質的な大きさと言えるだろう。昨年度は、これが約3兆円であったから、ほぼ同規模である。

 他方、歳入は、税収、税外収入、前年度剰余金の合計が2.9兆円であり、実質的な歳出の規模を、これら増収の範囲に収めた形となった。ちなみに、歳出における地方交付税交付金1.0兆円は、来年度予算に組み込まれるだけであり、復興特会への繰入のうち0.7兆円は、復興債の償還財源に充てられるものだから、いずれも新たな需要にはならない。

 今回の補正の特徴は、2006年度以来となる公債金の減額0.8兆円を行ったことだろう。理想的には、低金利で利払いが少なく済んだ分の国債費1.5兆円と同じだけの減額をしたかったのではないか。むろん、需要管理とは別の問題であり、利払い用の借金を、浮いたからといって、転用して使い尽さないという予算管理上のルールの話である。

 安倍政権は、公債金の減額に縁があり、第一次内閣の時に、2006年度補正で2.5兆円の減額をした上、続く2007年度本予算で4.5兆円の減額まで行っている。当時は、これらを誇らしげに掲げたが、景気回復の勢いを殺ぐ結果となり、その夏の参院選の惨敗と退陣の遠因となった。こうした経緯もあって、あまり良い印象はない。

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 補正に関する筆者の関心は、追加の規模より、税収の見積もりにあった。これは、当初予算の50.0兆円から51.7兆円へ、1.7兆円上方修正された。7割の規模の地方税収も同様に伸びているはずだから、経済には2.9兆円もの増収の圧力がかかっていたことになる。消費増税と合わせると11兆円にもなるのだから、民間消費がトレンドより13兆円も落ちてしまうのも道理である。

 税収の過少見積もりは、いつものことではあるが、大増税をする際に、相も変わらずでは、危険極まりない。もっとも、1997年のときのように、消費増税のショックで一気に不況に突っ込んでいたなら、目論見どおりの税収になっていたかもしれない。当初予算の税収は、消費税以外が前年度実績より1.5兆円も減るという暗澹たるものであり、批判する気にもならなかった。

 さて、補正後の税収は適切か、本コラムの予想と比較してみた。予想は12/21に使ったものの改訂版である。結論的には、政府税収は0.9兆円少ないものの、予想がベースにする2013年度実績の所得税は、増税前の株の益出しという特殊要因で0.3兆円ほど膨らんでいることもあり、この程度なら、堅めの見積もりとして許せる範囲だと思う。

 ついでに、2015年度の税収予想も改訂しておいた。日経の報道を基に、政府見通しの名目成長率2.8%に替え、法人減税を加味し、8%消費税の平年度化分を幾らか多くした。予想は、政府案とされる54.5兆円より1.5兆円多い。財政状況の全体的な評価は、12/21と変わらず、2025年度の基礎的財政収支ゼロに向け順調に進んでいる。ただ、2014年度、2015年度ともに、法人減税の影響で、毎度より小さめの印象を受ける。

 繰言になるが、基礎的財政収支ゼロの目標は、法人減税をしていなければ、2020年度はともかく、2023年度には到達することになっていただろう。復興法人税の廃止は2015年度換算で1.4兆円、2014年度にした企業減税は0.6兆円、来年度の法人減税は0.2兆円にもなる。更なる法人減税も予定されており、目標到達は、法人減税でどれだけ穴を開けないかにかかっていよう。

(表)



………
 11月の景気動向指数は、先行指数が103.8と2か月連続で下がり、消費増税後の最低値だった5月の104.3を下回ってしまった。一致指数も108.9に落ち、8月の最低値108.3とあまり変わらないレベルである。この状況で、補正予算は前回並みで、景気には中立という内容となった。景気の推進力は、原油安と、ようやく上向きつつある輸出に期待することになる。これで、政府見通しとされる、実質1.5%、名目2.8%の成長率に届いてくれたら良いのだがね。 

 景気の行方が心配な向きにしても、補正を膨らますのに、地方にバラまく以外の知恵がないのが現実ではなかろうか。筆者なら、「輝く女性」のため、社会保険の130万円の壁をスロープにすべく、配偶者特別控除のような仕組みを考えるよ。パートの女性がより多くの所得を得て地位を高めるには欠かせないものだが、恒久的な制度になるから、地方創生とは違い、補正予算になじまないとされるかもしれないが。

 しかし、そうした勝手な理屈を付けて補正予算の使途を制約するだけでは、国民にはムダ使いばかりやっているように見える。必要なら、地方交付税と似た仕組みを作り、補正予算から年金特会に繰り入れ、次年度の保険料の軽減に充てるようにすれば良い。要は、やる気の問題ではないか。国民の努力の賜物である税収上ブレを、社会保険で還元する道がないのは不幸なことである。


(昨日の日経)
 介護報酬2.27%下げで決着。小売り業績二極化。米雇用25.2万人増。補正予算3.1兆円、規模抑制。景気一致指数が低下。子育て給付金は継続。交付税加算は半減。トヨタ生産計画は国内前年割れ。産業資材の在庫調整足踏み。

(今日の日経)
 貯蓄保険の販売停止。通信は設備投資を抑制、ピークから2割減。地方の何を創生するか。官民ファンドが乱立。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-01-12 16:40:37
自民党 
奴隷が子供つくらないから労働力がたりないよ
ピコーン
そうだ女を働かせよう。
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