経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

人材力ムダ使いの仕分け作業

2012年11月25日 | 経済
 日本で圧倒的に足りないのは「人材力」である。ただし、筆者が言うのは、強いリーダーシップを発揮する人材が足りないという意味ではなく、ごく普通の人材が活かされていないことである。今週の日経ビジネスでは、「大学生の就職の実情」として、法政大の上西充子先生がリポートしているが、そこで示されているのは、大卒の4人に1人は正規の職につけない現実だ。

 フルタイムの職でなければ、その人の能力は十分に発揮されないし、働き先がなければ、使われる能力はゼロということになる。こういうムダ使いは、財政赤字と違って、「見える化」されていない。刑務所の職業訓練用の重機購入費3000万円が復興費のムダ使いと袋叩きにされたが、働けていない大卒者9万人が年に250万円稼ぐとしたら、空費された能力は2250億円分にもなるのに、誰も問題視しない。 

………
 しからば、財政赤字を出して、救ってやったらどうだ。財政資金で全員を雇い、絶対的に不足している介護や保育に従事させる。ムダ使いかもしれないが、見えなかったものが「見える化」されるだけのことである。しかも、彼らは、納税者と保険料負担者にもなるから、実質的には、2250億円の25%引きくらいの財政赤字で済む。

 そして、かれらは低所得者であるので、ほとんどを消費するだろう。新たに1700億円の需要が発生し、所得が増えて税と保険料が増す。大まかに言って、実質の財政赤字は半分ほどで済むはずだ。こういうことができるのは、今はデフレであって、労働力も資金も有り余っているからである。

 さて、効率よく大卒の無業者を救えるわけだが、財政赤字が増えることに違いはない。それを将来返すとなると、世代間の不公平が拡大することにならないか。不公平論者は、なぜか負担増が大好きである。理屈では、子どもや若者への社会保障を増やしても、バランスを取れるはずだが、それを口にしないのは不思議なことだ。

 財政赤字に必要な国債の大半を買っているのは、究極的には高齢者である。彼らが貯蓄を使うことなく亡くなってしまえば、相続税などで回収され、問題の多くが解決される。亡くなる前に消費に充てようとすれば、景気が回復して増税が可能になる。増税に失敗して、物価が上昇したとしても、困るのは貯蓄が減価する高齢者であって、物価に連れて賃金が上がる現役世代は、大して損をしない。

 結局、財政赤字を増やしても、若者の能力を活かせるなら、不公平なことにはなりにくい。しかも、職を得ることによって結婚確率が上昇し、出生率が上がれば、世代間の不公平の根本的な原因である少子化が緩む。これは年金財政の好転にとどまらず、完全な賦課方式になっている医療の負担と給付の改善にも及ぶ。むろん、人材力どころか、人そのものを産み出さず、長期的に社会を崩しかねない少子化の解決につながる。

………
 日本の財政当局のエリートは、目から鼻に抜けるような有能さであり、国際的にも遜色があるようには見えない。ただ一点、違和感を覚えるのは、結局のところ、彼らは、増税だの、緊縮だのといった、与えられた課題に対してのみ、恐るべき力を発揮するだけなのだ。これが日本における「人材力」の定義なのかと思ってしまう。

 筆者は、途上国の若者には、「経済開発を目指すだけでなく、ベタープレイスが何なのかを考えなさい、それは伝統や文化の中にあるのかもしれない」と説いてきた。本当のリーダーシップとは、何が課題かを定義する力にある。それがあれば、困難な現実を変えようと知恵を絞る中で、おのずと戦略力は培われていく。

 情けなくなった日本への責任は、去りゆく世代にある。バブル崩壊から20年、日本は何を最優先の課題としてきたのか。社会問題を解決すべく格闘していたら、逆に経済や財政の問題は解けていたような気もする。今更ながらであるが、課題を表してみることも、前世代の役割かもしれぬ。そんな思いで筆をとった3日間であった。

(今日の日経)
 素材安アジアで拡大。中国に親しみ最低の18%。スーチー神話・伊奈久喜。日銀のリスク資産購入には副作用も。安倍相場・上場企業60兆円死に金、公約に投資の記述なし。民主党の功罪・政治主導は掛け声倒れ。大連立頓挫・福田康夫。東南アで賃上げの波、購買力高め成長狙う。オバマ2期・Jストーン。ロケット発射は2人で。分子が勝手に自己組織化。

※こういうのを見ると中国が底入れしたとは思えなくなる。※中国が自己主張するようになってから下がる一方だ。※どうせならユーロ債でも買ったらどうか、安値バブルが弾ければ、米国債が下がって円安にもなろうよ。※ダウに連れて日経が上がっただけではないか。ダウ上昇も安倍総裁のお陰かね。

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