一気の消費増税の問題性を疑わず、増税を上手くこなせるか否かが総選挙の争点だとは、残念だね。「異次元緩和もやった、5兆円の補正予算も組んだ、投資・法人減税の成長戦略も打った。それでも、一気の消費増税という愚策は、どうにもならなかった」との認識には、なかなか至らないものらしい。
この認識に立てば、2年後の2%アップも無理筋となるし、金融緩和の行き過ぎや成長戦略の乏しさを批判することは、何の解決にもならない。一気の消費増税で、リーマンショックや大震災を超える過去最大級の打撃を経済に与え、1年前よりGDPを1.2%も縮小させてしまったのだが、そういう事実は、まったく目に入らないようだ。
それほどまでに、「危機的な財政状況なのだから、いかなる緊縮も正しいはず」という信念は強固なのだろう。正しさにも程度の問題があるものを、この信念の下では、どんな悲惨な現実も、避けられているはずの財政破綻と比較すれば、取るに足らないものと感じられ、犠牲者すら、捧げられるべき貴き生け贄にしか見なされないのである。
………
二期連続のマイナスという7-9月期GDP速報が出たことにより、民間調査機関の2014年度成長率の予測は、軒並みマイナス0%台の半ばまで低下した。的確な見通しで実績のある第一生命の新家さんの予測だと、-0.8%となっている。これに対して、政府の経済見通しは、1月の時点で1.4%、7月に1.2%だったから、実に2%もの開きがある。
もし、増税の予算案を国会に提出した折、政府が正確な計量を行い、「財政は好転しますが、成長率は-0.8%になります」としていたら、果たして通っていただろうか。前年度の2%台の成長率よりは低くとも、それなりの成長率が見込まれていたから、納得が得られたのであり、初めからマイナス成長では、冗談じゃないと、与党でさえ許さなかっただろう。
それは当然である。政府債務の信用を裏打ちしているのは、その国の経済であり、政府の取り分が多少増えたにしても、大本の経済を縮小させてしまったら、逆に信用が揺らぎかねないからだ。欧州危機において、イタリアが基礎的財政収支が均衡しているにもかかわらず、国債金利が高騰したのは、成長力を疑われたからである。
財政再建派の中には、「増税をしたのだから、多少、景気が悪くなるのは当たり前」とか、「景気を心配していたら、いつまで経っても増税できない」とか言う人もいるが、経済を縮小させてまで、財政の取り分を多くすることの無意味さを分かってほしい。成長を失わずに増税するというのは、経済運営の重要な評価点なのだから、まじめに考えてもらいたい。
………
それでは、政府の経済見通しの1.2%を、約束どおり実現するには、どのくらいの経済対策が必要だったのか。2%の差を埋めるには、執行可能性はともかく、5.5兆円だった補正予算は、16.1兆円でなければならなかった。8.1兆円の消費増税のために、それに倍するバラマキが必要とは、バカバカしい限りで、いかに一気の消費増税が愚策かが分かろう。
16.1兆円とは、リーマン時の2009年度補正の14兆円、大震災時の2011年度3次補正の12兆円をも上回る。今回の消費増税は、リーマンや大震災を超える経済ショックになったのだから、経済対策も、これに相応しい巨大さになる。増税が見送られるのは、リーマンや大震災並みの異変が起こった場合とされていたが、これを自分で起こしていたのだから、皮肉なものである。
2年後の2%アップにしても、補正予算は10兆円が必要になるだろう。むろん、更なる異次元緩和や重ねての大規模な企業減税も、同様に欠かせない。今回の消費増税で得られた教訓は、消費増税をこなすのは尋常な技ではないということだ。そして、このことは、自然実験の結果として、誰もが知るところとなっている。
すなわち、2年後、政府が今回並みの経済対策で済まそうとするならば、当然、「なぜ、マイナス成長に転落しないのか」という批判が出ることになる。民間調査機関も、ごく普通に、マイナス成長の予測を出して来る。まっとうなら、今回のマイナス成長を再現できない経済モデルを持ち続けたりはしないからだ。
結局、2%アップの再増税は、よほど景気が過熱していない限り、急ブレーキと猛アクセルを同時に踏み込む愚策としか評価されまい。こういう愚策を、必ず実行しますと約束したところで、マーケットが評価するわけはない。むしろ、始末に困るような硬直的な方針は、実行可能性に疑念を生むだけである。
………
今回、財政当局は、再増税の延期を受け入れる代わり、安倍首相に景気配慮条項の削除を呑ませたと聞く。彼らは、政治力には長けていても、経済を計量的に見る能力には乏しいのだろう。そうでなければ、実行に難のある条件を敢えて付けようとするはずがない。たぶん、経済運営を誤った上に、無能さをさらしている自覚すらないのではないか。
誤解のないように言っておくが、筆者は、社会保障を維持・強化するために、消費増税は不可欠だと考えている。大事なのは、その凄まじい破壊力をよく認識し、成長を阻害しないよう、1%ずつに刻むなどの知恵を絞り、安全かつ着実に実行できる工夫をすることである。政治問題だと勘違いし、上げられる時に押し込むでは、とても話にならない。
第一次安倍政権のときには、苦境に陥ると、その浮揚のために、足を引っ張った社保庁が血祭りに上げられた。好調だったアベノミクスは、一気の消費増税を許したがために、暗転することとなった。ここで景気が踏み止まってくれれば良いが、後退によって民心が離れたりすると、また同じ様なことが起こるのではないか。歴史は繰り返すのである。
(昨日の日経)
衆院解散、アベノミクス争点。中国が利下げ2年4か月ぶり。小売り前年割れへ・14年の既存店販売額。
(今日の日経)
再生エネ買い取り再開へ。長野で震度6弱。社説・経済再生へ「アメ」より改革案を競え。両国高・生徒が勝手に教えあう教育。
この認識に立てば、2年後の2%アップも無理筋となるし、金融緩和の行き過ぎや成長戦略の乏しさを批判することは、何の解決にもならない。一気の消費増税で、リーマンショックや大震災を超える過去最大級の打撃を経済に与え、1年前よりGDPを1.2%も縮小させてしまったのだが、そういう事実は、まったく目に入らないようだ。
それほどまでに、「危機的な財政状況なのだから、いかなる緊縮も正しいはず」という信念は強固なのだろう。正しさにも程度の問題があるものを、この信念の下では、どんな悲惨な現実も、避けられているはずの財政破綻と比較すれば、取るに足らないものと感じられ、犠牲者すら、捧げられるべき貴き生け贄にしか見なされないのである。
………
二期連続のマイナスという7-9月期GDP速報が出たことにより、民間調査機関の2014年度成長率の予測は、軒並みマイナス0%台の半ばまで低下した。的確な見通しで実績のある第一生命の新家さんの予測だと、-0.8%となっている。これに対して、政府の経済見通しは、1月の時点で1.4%、7月に1.2%だったから、実に2%もの開きがある。
もし、増税の予算案を国会に提出した折、政府が正確な計量を行い、「財政は好転しますが、成長率は-0.8%になります」としていたら、果たして通っていただろうか。前年度の2%台の成長率よりは低くとも、それなりの成長率が見込まれていたから、納得が得られたのであり、初めからマイナス成長では、冗談じゃないと、与党でさえ許さなかっただろう。
それは当然である。政府債務の信用を裏打ちしているのは、その国の経済であり、政府の取り分が多少増えたにしても、大本の経済を縮小させてしまったら、逆に信用が揺らぎかねないからだ。欧州危機において、イタリアが基礎的財政収支が均衡しているにもかかわらず、国債金利が高騰したのは、成長力を疑われたからである。
財政再建派の中には、「増税をしたのだから、多少、景気が悪くなるのは当たり前」とか、「景気を心配していたら、いつまで経っても増税できない」とか言う人もいるが、経済を縮小させてまで、財政の取り分を多くすることの無意味さを分かってほしい。成長を失わずに増税するというのは、経済運営の重要な評価点なのだから、まじめに考えてもらいたい。
………
それでは、政府の経済見通しの1.2%を、約束どおり実現するには、どのくらいの経済対策が必要だったのか。2%の差を埋めるには、執行可能性はともかく、5.5兆円だった補正予算は、16.1兆円でなければならなかった。8.1兆円の消費増税のために、それに倍するバラマキが必要とは、バカバカしい限りで、いかに一気の消費増税が愚策かが分かろう。
16.1兆円とは、リーマン時の2009年度補正の14兆円、大震災時の2011年度3次補正の12兆円をも上回る。今回の消費増税は、リーマンや大震災を超える経済ショックになったのだから、経済対策も、これに相応しい巨大さになる。増税が見送られるのは、リーマンや大震災並みの異変が起こった場合とされていたが、これを自分で起こしていたのだから、皮肉なものである。
2年後の2%アップにしても、補正予算は10兆円が必要になるだろう。むろん、更なる異次元緩和や重ねての大規模な企業減税も、同様に欠かせない。今回の消費増税で得られた教訓は、消費増税をこなすのは尋常な技ではないということだ。そして、このことは、自然実験の結果として、誰もが知るところとなっている。
すなわち、2年後、政府が今回並みの経済対策で済まそうとするならば、当然、「なぜ、マイナス成長に転落しないのか」という批判が出ることになる。民間調査機関も、ごく普通に、マイナス成長の予測を出して来る。まっとうなら、今回のマイナス成長を再現できない経済モデルを持ち続けたりはしないからだ。
結局、2%アップの再増税は、よほど景気が過熱していない限り、急ブレーキと猛アクセルを同時に踏み込む愚策としか評価されまい。こういう愚策を、必ず実行しますと約束したところで、マーケットが評価するわけはない。むしろ、始末に困るような硬直的な方針は、実行可能性に疑念を生むだけである。
………
今回、財政当局は、再増税の延期を受け入れる代わり、安倍首相に景気配慮条項の削除を呑ませたと聞く。彼らは、政治力には長けていても、経済を計量的に見る能力には乏しいのだろう。そうでなければ、実行に難のある条件を敢えて付けようとするはずがない。たぶん、経済運営を誤った上に、無能さをさらしている自覚すらないのではないか。
誤解のないように言っておくが、筆者は、社会保障を維持・強化するために、消費増税は不可欠だと考えている。大事なのは、その凄まじい破壊力をよく認識し、成長を阻害しないよう、1%ずつに刻むなどの知恵を絞り、安全かつ着実に実行できる工夫をすることである。政治問題だと勘違いし、上げられる時に押し込むでは、とても話にならない。
第一次安倍政権のときには、苦境に陥ると、その浮揚のために、足を引っ張った社保庁が血祭りに上げられた。好調だったアベノミクスは、一気の消費増税を許したがために、暗転することとなった。ここで景気が踏み止まってくれれば良いが、後退によって民心が離れたりすると、また同じ様なことが起こるのではないか。歴史は繰り返すのである。
(昨日の日経)
衆院解散、アベノミクス争点。中国が利下げ2年4か月ぶり。小売り前年割れへ・14年の既存店販売額。
(今日の日経)
再生エネ買い取り再開へ。長野で震度6弱。社説・経済再生へ「アメ」より改革案を競え。両国高・生徒が勝手に教えあう教育。
時間稼ぎは、結局 円高、デフレ政策 消費税増税なしの
穴熊戦術がよかったとおもう。
車産業も家電みたいに中国や東南アジアに追いつかれるから、自民党は早くそれに替わる産業を国民にしめすべきだとおもう。もう時間があまり残ってない
勘違いしてる人が多いですが、経済成長とは効率的になったり便利になったりすることではなく、膨張することですからね
円高デフレ維持なんてもってのほかなのは言うまでもないです