経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

魚の群れの動きと経済学

2012年10月09日 | 経済(主なもの)
 数週間前の日経書評を見て「群れはなぜ同じ方向を目指すのか?」という本を手に入れた。筆者は、元からポピュラーサイエンスが好きで、しかも、複雑系の内容となれば、見逃せない。期待にたがわぬ楽しさだった。加えて、経済学の視野を広げるという意味でもね。

 魚の群れの動きのような「複雑で、ある程度、秩序立った」ものは、どのような原理で形作られるのだろうか。それは、前の魚の後を追う、横にいる魚と速度をそろえるという、たった二つの個体の反応に基づいている。こうして作られる「群れ」は、外敵から身を守るのに役に立つわけである。

 それでは、企業が設備投資を判断する際に、需要の後を追うとともに、同業他社に遅れないようにするという戦略を取っていたとすると、経済は、どんな動きをみせ、どの様な秩序が現れるだろうか。そうした戦略は、利益最大化という膨大な計算量が必要になる戦略よりも遥かに多く、現実には採られているものである。 

 本コラムは、「どうすれば経済学」として、「設備投資は需要に従う」という考え方を基礎にしている。人間には命の時間の制約があって、合理的に投資リスクを取れず、短い人生ではリカバリーできないような大きなリスクを避けるため、小さな機会利益を捨てる「不合理」な行動を取ってしまうというものだ。投資判断が、金利などより、リスクに大きく左右されるとする以上、リスクを癒すものである需要に従うのは当然のことになる。

 もちろん、それは、リスクを避けながら、利益を確保する上で、有効な戦略になっているのだが、他方で、小さな機会利益を捨てるという個々の不合理が相互作用を起こし、正のフィードバックが起きて、思わぬ大不況に陥る場合もある。特に、財政までが赤字を嫌って緊縮に走り、リスクを増大させる側に回る場合には。

 魚の群れとて、それがいつでも外敵に対して有効であるとは限らないように、需要に従う企業の戦略も、普段は利益をもたらしつつも、まれに恐慌に至ることもある。筆者としては、利益最大化のミクロの行動原理よりは、マクロ経済の現実を良く描けるように思うが、いかがであろうか。まあ、魚を見てすら、秋の味覚を思わず、経済学を考えるようでは、病膏肓に入るであるなぁ。

(今日の日経)
 山中氏にノーベル賞・iPS細胞を作製。インドネシア首都圏整備に政府合意へ。離島防衛の強化急ぐ。欧州金融安全網が発足。借金危険水域4割減、地方債残高は07年度比2兆円減。社会保険・建設業の加入促す新制度。EV走行距離3割長く2年以内に実用化。解体電力ピラミッド・縮む原発、進む新陳代謝。地熱・2010年に107万kw。経済教室・領土問題の処理急ぐな・小寺彰。

※めでたい限りだ。「日本という国が受賞した」と言ってくれたこともうれしいね。社会面にあるボスト・アメリカ・ディスプレッションを越えての成果だ。※地方は着実に財政状況が良くなっている。財政は国だけではない。※解体電力ピラミッドは良い観点の特集だね。※時宜を得た良い経済教室だ。企画も誉めたい。

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