経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

初任給と結婚の貧困

2024年03月17日 | 経済
 今年の賃上げは、連合の1次集計で5.28%と、1991年以来の高さになりそうだ。これを受けて日銀は週上げに利上げに踏み切る運びで、名実ともにデフレ脱却の画期と言える。また、人手不足を反映し、初任給を大きく引き上げる例も多い。裏返せば、デフレ期には、若者の苦境が続いてきたということである。足下の結婚や出産は低調だが、こちらにも変化は訪れるのであろうか。

 大学卒男性の初任給の推移を、消費者物価指数の総合で割って実質化したもので見ると、わずかながら増えているが、さらに社会保険料を抜いたものを試算すると、横ばいというか、アベノミクスの頃は減っている状態だ。これでは、結婚や出産が難しくなるのも無理はない。社会保険料にも責任の一端はある。なお、2020年の増加は、通勤手当を含むように集計方法が変わっただけで、その後も減り気味である。

 合計特殊出生率は、2015年の1.45人をピークに下がり始め、2019年以降、大きく低下して、2023年は1.21人程になっている。コロナ禍という特殊な事情があったにせよ、未だに低下が続いており、「結婚は贅沢品」という意識が拡がっていて、恐るべき状況だ。「若者の〇〇離れ」というのが言われて久しいが、いよいよ結婚離れとなると、事態は深刻である。そうしないためには、まずは、賃上げということになる。

 加えて、再分配の観点も必要だ。2010年以降、大学で奨学金を受給する割合は5割程になっており、今の若者は、就職した後、借金を返済することが普通になっている。実質的な初任給は増えず、返済で生活は苦しく、結婚のハードルになる。大学の授業料を高くし、教育で再分配をしなかったことの咎めが表れている。政策的な負債をどう始末するか、まじめに考えなければならないだろう。

(図) 



(今日までの日経)
 日銀、マイナス金利解除へ 17年ぶり利上げ。国債買い入れ継続。保育所、「落選狙い」は制度悪用か 少子化対策ちぐはぐ。大手賃上げ、5%超相次ぐ。賃金、頭打ちの30年に転機。

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