経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・生活苦の中の少子化

2024年03月03日 | 経済(主なもの)
 1月の商業動態・小売業は、前月比+0.9だったものの、12月が-2.9も落ちていたので、10-12月期の水準より-0.6も低い。株価は4万円の大台をうかがうが、不況の只中を示す指標ばかりが並ぶ。しょせん、米国市場のミラーでしかないが、そんな中でも、2月の消費者態度・雇用は、4か月連続の上昇で夏のピークを取り戻した。所得増から消費増へと向ってほしいものである。

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 景気は、昨年夏をピークに停滞したが、これは、コロナ禍からの消費復元が一服し、雇用者報酬が増えているのに、可処分所得を抑制したため、消費が停滞したことによる。足下では、雇用者報酬が盛り返し、物価上昇も落ち着いてきており、消費者態度に見られるような形で景気が上向いているように思う。

 もっとも、1月の労働力調査では、失業率こそ低下したが、就業者も、雇用者もマイナスであり、新規求人倍率は、除くパートは横ばいで、パートのみ+0.05の上昇だった。2023年は水準を下げてばかりで、ようやく底入れという状況である。世間的には、人手不足が言われるものの、こちらには表れてこない。

 1月の鉱工業生産は、自動車の生産停止と能登半島地震の影響で、前月比-7.9の大幅な低下となった。2月に+4.8、3月に+2.0の予測になっているが、それでも、1-3月期は大幅な低下が避けられそうにない。2023年からの一進一退の状況から、抜けられる気配がない。実質輸出も1月はマイナスで、昨年来の停滞が続く。

 住宅着工も1月がマイナスで、一進一退だ。鉱工業の建設財の生産は、予測を含めて1-3月月期は前期比-0.5となっている。マンションの家賃は最高を更新したようだが、建設投資はさっぱりだ。バブルのときは、土地と株だったが、今回は株のみで、ITバブルのときのような感じである。

(図)


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 今週は、2023年の出生の大幅な低下が公表されたが、一番の問題は、止まる気配がないことである。婚姻の動向からは加速さえ心配される。韓国の場合、2015年までは低水準でも安定していたものが、急速に低下して2023年に合計特殊出生率が0.72になった。コロナ後の若者の結婚への諦念の広がりからして、日本も同じ轍を踏むのではないかと怖くなった。

 韓国ほどではないが、日本の若者の生活は苦しい。新規学卒者の税・保険料抜きの初任給は、出生率が1.66あった1988年の水準を、2019年になっても上回れなかった。加えて、奨学金は大学生の約5割が受けるようになり、返済の負担ものしかかる。消費増税とコロナ禍で苦しめられた世代が結婚に臨む時期になっている。

 少子化の原因には、若者の生活苦があると指摘されているのに、政策では無視され、結婚に成功した者への支援策が並ぶ。既に生まれた子供への給付なのだから、効果が薄いのは当然だ。結婚したら、育児休業給付が受けられる、幼児保育は無料であるとならなければ、とても無理である。肝心なところを外すのは、賃金は上向いているし、結婚を再分配の問題にしたくないと、頑なに思っているのだろう。


(今日までの日経)
 エンゲル係数は00年以降で最高。就活解禁、内定はや3割超。建設業、無理な工期禁止。「年収の壁」14万人解消 助成利用。社説・出生・婚姻減を招く社会構造に切り込め。韓国の昨年出生率、最低の0.72 将来不安・育児負担重く。16年になって底が割れたように急落。

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