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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

アメリカン・マスターピース 凖古典篇

2024-03-14 18:58:05 | 読んだ本
柴田元幸編訳 2023年 スイッチ・パブリッシング
これは去年の8月ころだったか書店で見かけて、なんかおもしろそうな気がして、しかしちゃんと読むかなと、ちと迷ってから買ったもの、案の定ずっと放っておいて読んだの最近。
副題に「柴田元幸翻訳叢書」となっていて、柴田元幸さんは『本当の翻訳の話をしよう』とかでおもしろかったんで、信頼して買ったってとこはある。
帯に「アメリカ合衆国で書かれた短篇小説、その“名作中の名作”を選ぶ。」とあってアンソロジーなんだが、これに先立つもので「古典篇」っつーのがあるらしく、第2弾だというがそんな企画が進行していたなんてまったく知らんかった。
編訳者あとがきにいわく、二十世紀前半の1919年から1947年に書かれた作品を集めたが、
>今日人々が最新の配信映画・ドラマを「あれ観た?」と話題にするように、優れた短篇が雑誌に載れば「あれ読んだ?」と話題になった時代の粋を集めた一冊である。再読、再々読に堪える作品ばかりである。何度も味わっていただければと思う。(p.253)
ということらしい、いやー、どれも知らんもんで不勉強が恥ずかしいが、こういう出版はありがたいねえ。
なんの話なのか要約っつーか説明っつーかしづらいものもあって、すべてがおもしろいとまでは思わなかったけど、一読したなかで気に入ったのは、「三時」かな。
推理小説系の短篇集と並行して読んでたって私的な事情も影響してんだろうけど、妻の浮気を疑って、謎の訪問者が来るであろう午後に、二人とも吹っ飛ばしてしまおうと自宅の地下に手製の時限爆弾を仕掛ける時計職人の話なんだけど、なかなかスリリングで、オチもあって安心する。
気になったのは「失われた十年」かな、フィッツジェラルドって私はろくに読んでないけど、もしかして村上春樹さんはこういうのを書きたかったんぢゃないだろうかって気がする、根拠ないけど、ただの印象として。
週刊誌の編集者オリソン・ブラウンは編集長から訪問客のルイス・トリンブルを昼食に連れてってやってくれと言われる、トリンブル氏は長いこと、そう十年近く離れていたので「いろんなものを見ていないと感じておられる」状態と紹介される。
だけど十年どこで何してたか訊いてみても、話したくないのか明瞭な答えはかえってこないので、オリソンはあまり詮索しないでガイドに徹する。
でも、「何を一番ご覧になりたいですか」って訊いたら、「人々の後頭部」とか答えてくるんで、いろんなひとと連れ歩くのに慣れてるオリソンにとっても、ほんと謎のひとなんだが。
おかしいのか哀しいのかわかんなくなるようなとこがいいですね。
収録作は以下のとおり、並びは発表年順だそうだ。(「広場でのパーティ」は作者の死後に発見されたらしいけど。)
グロテスクなものたちの書 The Book of the Grotesque(1919) シャーウッド・アンダーソン
インディアン村 Indian Camp(1924) アーネスト・ヘミングウェイ
ハーレムの書 The Book of Harlem(1927) ゾラ・ニール・ハーストン
ローマ熱 Roman Fever(1934) イーディス・ウォートン
心が高地にある男 The Man with the Heart in the Highlands(1936) ウィリアム・サローヤン
夢の中で責任が始まる In Dreams Begin Responsibilities(1937) デルモア・シュウォーツ
三時 Three O'Clock(1938) コーネル・ウールリッチ
納屋を焼く Barn Burning(1939) ウィリアム・フォークナー
失われた十年 The Lost Decade(1939) F・スコット・フィッツジェラルド
広場でのパーティ A Party Down at the Square(1996;1930年代後半執筆と推測される) ラルフ・エリスン
何度も歩いた道 A Worn Path(1941) ユードラ・ウェルティ
分署長は悪い夢を見る――または、ヒル&ヒルにアミタールを入れたのは誰だ? The Captain Has Bad Dreams: or Who Put the Sodium Amytal in the Hill & Hill?(1947) ネルソン・オルグレン

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