many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

狂骨の夢

2019-06-30 14:38:22 | 読んだ本

京極夏彦 2000年 講談社文庫版
持ってるのは2008年2月の22刷。
札幌の書店のカバーかかってるし、そのころ読んだに違いないんだが。
当ブログ始めたの2008年12月だから、ここにあげるのもれちゃってて、まあたいがいの持ってる本はここに並べてるから、それもなんだかと思い、ひまなのをいいことに読み直した。
「姑獲鳥の夏」と「魍魎の匣」につづく第三弾で、おなじ年の12月ころに起きた話ってことになってる、猟奇殺人多くて大変だあね、戦後まもない時期は。
最初ふたつの人生の記憶がごっちゃになってるような女の夢の話から始まって要領をえないんだが、前二作でおなじみのメンバーもなかなか登場してこない。
つづいて出てくるのが、榎木津探偵と戦争中にいっしょだった伊佐間だけど、このひとは探偵でもワトソンでもない、「全く怖がらぬ男なのだ。完全な超常音痴、心霊音痴なのである」ということで、妖怪小説のわりには淡々と進行させる役目なのかと。
なかなか京極堂が登場しそうにないなと思いながら読んでくと、ようやく「井中の白骨」という怪談を書いた小説家が、作家の関口と京極堂の妹に身内のからむ事件の相談をもちかけて、こっからが本編かあって気にさせられた。
でも神経の弱い関口は、「事件と云う言葉も、解決と云う言葉も、共に嫌い」でノリ気ぢゃない。
おまけにどこで聞いたかその小説家が、友人の探偵を紹介してくれなんて言うんで、あの榎木津の活動に巻き込まれるなんて嫌で嫌でしょうがないんだが、まあそういう展開にならざるをえない。
かくして殺人事件が起きて、警察はすぐに容疑者を逮捕するんだが、ここで榎木津探偵がダメ出しするのがおもしろくて笑った。
「それはお前、実につまらない結末だ! そんな下品な結末など願い下げだね!」
「大体そんな結末を新聞に載せたら面白くないと云って投書が山のように来るぞ。何にも解決してないじゃないか!」(p.559)
そう言うのはもっともで、単なる殺人事件以外に、その周辺に、金色髑髏事件とか、逗子湾生首殺人事件とか、坊主による誘拐事件とか、集団自殺事件とか、八年前の首なし屍体とか失踪とか、その他登場人物たちの摩訶不思議な体験がいっぱいあるので、なんも解決してない。
ということで、最後は京極堂が、「これは間抜けな事件だ」(p.646)なんて大胆なこと言って、全部をつなげて、一同の憑物を落とすんだが。
私の感想としては、よく収拾がついたなと感心するのはたしかなんだけど、なんかわかりにくい話だなあって気がする。

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東京するめクラブ 地球のはぐれ方

2019-06-23 20:15:46 | 村上春樹

村上春樹・吉本由美・都築響一 2008年 文春文庫版
これはわりと最近買った中古の文庫。
村上さん以外の二人の著者については知らないけど。
三人で、ちょっと変なものを見に行って、面白いと思ったものを書いた旅行記ということのようで。
時代は2000年代前半で、日本の景気はあまりよくなかったころみたい。
たとえば、最初に名古屋のちょっとヘンなところクローズアップしてるけど、名古屋めしが脚光を浴びるのはもうちょっと後だったと思うから、先見の明があったというか。
食べものとりあげてるだけなら、なんかミーハーなだけかもしれないけど、街をよく観察して若者が遊ぶ場所がないような状態について、
>それはなぜかというと、名古屋の場合、若い人たちの実家率が高いっていうこともあるんじゃないかと思うんですよ。要するに、最後は実家に帰ってご飯が待っている。東京のように独り暮らしが多いところって、街がそいつの居場所になるんです。(略)それで街が面白くなるんです、独り暮らしが多い所っていうのは。でも、名古屋という街には、そういう機能があまり求められていないんだよね。(p.111)
みたいな分析をしてたりするところが、けっこういいと思った。
あと名古屋に赤字分を税金で補てんしている大仰な美術館があることについて、
>だいたい名古屋に〈名古屋ボストン美術館〉があるからって、それで名古屋の都市としての文化的価値がぐっと上がるってものでもないだろうし(下がるとまでは言わないけど)、わざわざ大金をはたいてそんなことをする意味がどこにあるんだろうってつくづく思います。(p.66)
っていう村上さんの意見とかは妙に納得しちゃったりする。
それでも名古屋はパワフルなとこあるからいいようなもんとして、さびれてく一方の熱海なんかについては厳しい。
>結局のところ熱海って、日本の観光地の悪いところの縮図なんだよ。そういう要素が全部集まっているっていう。(p.192)
なんて結論が出ちゃってる。改造計画をよその人に出させるべしということか。
それが江の島になると、その脱力加減が逆にほめたたえられてたりしておかしい。
「そういう向上心がないところに行くと、僕たちはとても落ち着く」とか、「すべてを年取って見せる、すごいいい味がある」とか、「やる気のブラックホール」とか、そこ肯定しちゃってる、おもしろい。
タイプちがうけどハワイも、アクティブになろうとしなくていいし、刺激とかとは無縁でいいってことがプラスとされて、「要するに知的文化ってものが存在しないんだよね」とまで言って、それは再開発なんかするもんぢゃなくて、そのままでいいって意見になってたりする。
全編とおして、いちばん興味深かった文章は、村上さんの「サハリン大旅行」かな、読んだことないけどチェーホフの話なんかもあって。
あと、「〈ラ・マリアナ〉はあなたがいつまでもそこにいたいと思ってしまうようなお店である。」と紹介している、ハワイ編の「(ほぼ)最後のチキ・バー」もいい感じだと思った。
大きな章立ては以下のとおり。
「魔都、名古屋に挑む」
「62万ドルの夜景もまた楽し―熱海」
「このゆるさがとってもたまらない―ハワイ」
「誰も(たぶん)知らない江の島」
「ああ、サハリンの灯は遠く」
「清里―夢のひとつのどんづまり」

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マンガ茶の湯入門

2019-06-22 17:59:09 | マンガ

監修/千葉猷道 作画/さとうたかし 一九八八年 平凡社
これまた、最近になって、30年ぶりくらいに(たぶん)、実家の押し入れから発掘したもの。
読んだ記憶なんか全然ないんだが、どういうわけか現物が存在してるんだから、人間というのはわからんものだ。
持ってるのは1990年の9刷、版を重ねてるってことは売れてるんだね、だから書店で目について手にとったのかも。(当時ネットなんてなかった。)
なかみは、タイトルのとおりで、お茶の入門書のマンガ、あたりまえだ。
(そういえば、子どものころは、入門書マンガ、好きだったかもしれない。)
若い男性社員二人組が、上司から代わりに茶席へ行ってこいって言われて、資料室の定年間近の大先輩社員にいろいろ教わるという筋立て。
読んでみたら、けっこうおもしろかった。
あまり知識・教養をおしつけるんぢゃなくて、「心を かたちで あらわす んだヨ」みたいな、やさしい解説のノリがいいんで。
んー、当時お茶に興味もってたのかな、俺?
そういやあ、どっか鎌倉の寺で拝観のついでにお茶ごちそうになったこともあったような気がする。
そういうとき、さりげに上手に立ち回れたらいいなとは思う、それはいまでも思う。
コンテンツは以下のとおり。
第一話 はじめはかたちから
第二話 茶の湯と露地
第三話 掃除が大事
第四話 点前
第五話 稽古はじめ(その一)
第六話 稽古はじめ(その二)
第七話 運び点前
第八話 茶事

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Baby Faith

2019-06-16 18:58:03 | CD・DVD・ビデオ

渡辺美里 1994年 EPICソニー
えーと、何枚目のアルバムなんだろう、わかんないや、そういうこまかいこと、もう。
なんでもってんのかもわかんないしね、これ、1994年っていったら初めて関西住んでたころだ、うーむ、音楽はいまより聞いてたかも。
しかし、聴くたび、これ、けっこう好きだなって思う、なかなかいい。
今回はちょっと「あなたの全部」が聴きたくなってとりだしたんだけど、最初っから最後まで飽きるとこなくグワーっと聴いちゃう。
ふたり奏でたハーモニー 夢の途中で針とびした
って、いいね、針とび、リアルに知ってないと通じないボキャブラリーだとは思うが。
あと、「ムーンライト ピクニック」は好きですね、ドカドカいってるリズムが好みの調子です。
Moonlight Picnic 瞳はクレッシェンド
ってとこのフレーズは、毎度うきうきします、テンションにひびくものあるなあ。
それから、やっぱ「I Wish」も、いい。
なんの曲だかいつも忘れてるくせに、聴くたびに、あー、3日つづきのカレーも好きだった って、そうそう、この曲だよって思い出す。
アルバムラストに置いとくには絶好の曲だといつも思う。
うん、やっぱフェイバリットアルバムといっていいな、これ。
1.あなたの全部
2.20th Century Children
3.真夏のサンタクロース
4.SHOUT[ココロの花びら]
5.初恋
6.CHANGE
7.BABY
8.チェリーが3つ並ばない
9.こんな風の日には
10.ムーンライト ピクニック
11.I Wish

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怪しい花婿

2019-06-15 17:58:49 | 読んだ本

E・S・ガードナー/田中融二訳 一九七六年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
ひまつぶしに読む、ペリイ・メイスンシリーズ。
しまいかたがバラバラなもんだから、発表順に時代追って読めたりしないが、どっから読んでも問題ない、 原題「THE CASE OF THE DUBIOUS BRIDEGROOM」は1949(1941 ※2019年7月27日訂正)年の作品。
持ってんの1990年の11刷だけど、古本ではなさそう、なぜか小倉の書店のブックカバーかかってるし、1991年ころ出先で買ったのかも。
怪しい花婿ってのは、メイスンの依頼人である鉱物資源開発会社とやらのお偉いさん自身の言葉。
会社で秘書やってた女性と結婚したが、そのうちすったもんだでうまくいかなくなって、新しい若い女性に夢中になって、物語の時点では二度目の結婚生活に入ってるんだが。
前の妻との離婚はメキシコでの手続きなんだけど、それが合衆国でほんとに有効かどうかわからない、そうなると再婚も認められない、「わたしはどっちつかずの怪しげな花婿なんて身分はまっぴらだ」と言うわけだ。
おまけに前の妻というのが、かなり利口なので、そうなると財産譲渡でも容赦ない攻撃をしかけてくるに決ってるので、どうにかならんかと。
株主総会の開催にひっかけて、重婚での告発もしてこようかという前妻とわたりあうため、メイスンは依頼人をメキシコ領に逃がすという作戦をとるが。
そうこうしてるうちに、例によって殺人が起こり、メイスンの依頼人に疑いがかけられる。
それで困ったことに、これまたいつものように依頼人が弁護士に隠しごとなんかするもんだから、裁判が始まってから検察側の爆弾のような証言でてきて、ただでさえ不利なのに、ますます窮地に立たされるメイスンは、反対訊問でがんばる展開になる。
裁判の相手は、いつものハミルトン・バーガーなんかぢゃなくて、事件の起きた土地からサン・ディエゴ郡の地方検事が出てくる。
これがあまりメイスンのやりくちとかに慣れてないせいか、裁判すすめるうちにカッカしてくるとこがおもしろい。
で、それはそうと、物語は、依頼人の登場より前に、メイスンの事務所の外の非常階段に、美しい女性が脚もあらわに降りてくるのをメイスンが見つけた夜から始まる。
その娘が降りてきたメイスンの上のフロアは、今回の依頼人の会社なんだけど、その美人はそこに勤めてるなんてウソついたうえでその晩はメイスンからうまく逃げおおせる。
何者だったか何してたか謎だったんだけど、事件に関わる拳銃をおっかけてるうちに、メイスンはその女性と再会することになり、彼女は重要な関係者として位置づけられてく。

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