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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

東大卒ポーカー王者が教える勝つための確率思考

2020-11-29 18:20:08 | 読んだ本

木原直哉 2013年 中経出版
著者の名前を初めて見かけたのは、たしか棋士・片上大輔七段のブログだったんぢゃないかと思うんだが、なんか気になったので一冊読んでみた。
プロのポーカー・プレイヤーだそうだけど、そういう人いるんだ、って、まずはふつうに驚いた。
それにしてもこの本のタイトルどうなのって、ちょっと思ったんだが、本文中に「自分は利用できるものは何でも利用するので」と書いてあって、校名ブランドをつけたらしい。
プロのプレイヤーというのはすごいものらしく、目先のカネだけを目当てにマカオへでも行けば、年間5000万円から1億円は稼げるのだという。
でも、そういうダンナ相手の遊びをしてると、次第に実力が落ちてってしまい、トッププロを相手にはできなくなるし、長期的に見ればやがては負ける側になってしまうかもしれないから、やらないんだと。
そこには、競技のチャンピオンの賞金はもっと高いってのもあるけど、やっぱチャンピオンになることの名誉っつーか、喜びが大きいって理由がある。
ちょっと安心するよね、確率とか、戦略とか持ち出して金銭的成功の秘訣を説く一方かと思いきや、カネよりも幸福を感じたいとか言われると。
いやー、でも、ゲーム上のことぢゃなくて、実生活のなかでのリスクとかあらためて突きつけられると勉強になるとは思った。
たとえば東京から大阪行くのに、新幹線乗るか高速バスで行くかって、費用と時間だけのことかと思ってたら、新幹線の乗客死亡事故はゼロ、それに比べて交通事故の可能性は一定程度ある、なんて言われちゃうと、今回の自分だけは事故にあうまいってすら考えてなかったのは甘いとしかいいようがなく思える。
大学入るのに一年浪人したら、卒業後サラリーマンになるとした場合、定年まで働く期間が一年減って、金銭に換算すると年収一年分損とか、計算しちゃったら怖くて第一志望にこだわるとかしたくなくなるのでは。
でも細かい計算しようとしても、ゲームとちがって、ほんとの確率がわかんないから人生はむずかしいわけで。
それに、確率ってのは、無限回数繰り返して試行すれば、確率どおりのとこに出る目は落ち着くんだけど、人生の選択はそんな数多く繰り返さないから。
(逆に、ゲームのギャンブルで負けたくなかったら、分散を大きくして、いい目が出たとき勝ち逃げしろ、ってのがセオリーっつーことは知ってんだけどね。→『ツキの法則』」)
そのへんのとこ、どうして人は客観的に検証しないのかってことを、
「世の中の事象は複雑すぎて確率がうまく計算できない」
「確率が分っても、それに対する試行回数がまったく不足している」
「人間は基本的に自分が見聞きしたり経験したりした数少ない事象に引きずられてしまう」(p.72-73)
という理由によると著者はあげている。
自分のわずかばかりの経験に引きずられちゃうってのは、たまたま勝つ目が出ただけなのに、俺は天才だとか、俺は強運だとか、って思いこんぢゃうことにつながるんで危ない、危ない。
直前の回で勝ったからって、この流れと勢いで次回も勝てる、とかって考えちゃうのは次回の試行は独立したものだってこと無視してるっつーか理解してないわけで。
なんだかんだいって、確率を知ろうとか、期待値にそった行動をとろうとか、っていう前に、
>その時点で起きている事象に対し、自分の幸運・不運は考えても仕方がありません。考えても意味のないことは、一切考えるべきではないです。(p.72)
って著者が言ってることを認識できるかが大事なんぢゃなかろうか。
それでも私なんかはツキを呼び込むことは可能なんだって前提でものごと考えるけどね。
(私には『人間における勝負の研究』の「米長哲学」の影響が大きいからね。)
章立ては以下のとおり。
第1章 本当のリスクマネジメントとは
第2章 チャンスを引き寄せる確率的な思考力
第3章 「お金」との正しいつき合い方
第4章 最大のリスクとは何か
第5章 必要なのは「失敗」か? 「挑戦」か?
第6章 自ら選択する生き方
第7章 不安を消し去る方法

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「日本型政治」の本質

2020-11-28 18:04:50 | 読んだ本

ジェラルド・カーティス/山岡清二訳 1987年 TBSブリタニカ
また、三十年ぶりに学生んときの課題図書を、紙の色も変わってこようかというところを引っ張り出してきてみた。
著者は「代議士の誕生」で有名な、コロンビア大学教授、日本政治の研究者。
本書の副題は「自民党支配の民主主義」で、80年代後半の時点だけど、今後も自民党が唯一の政権党でありつづけるだろうってことの考察。
んー、いつも思うんだけど、80年代後半ってのは1955年に自民党ができてから30年経ったって時点なんだけど、そっから現在までがまた30年ちょっと経ってしまっている、って時間の幅に気づくと、なんか愕然とする。
この本の「現在」ってのが、いま2020年の学生からみたら、この本からみた吉田茂がまだ首相だったころ、みたいな距離感になるのかと思うと、なんかねえ、すごい、時代がちがうってことだ。
まあ自分だって当時の教授のトシをとっくに越えちゃって年寄りになってんだから当たり前なんだけど。
私の感慨はどうでもいいとして、だから本書の第一章なんかは戦後の歴史の教科書として、まとまっててわかりやすい。
主題である自民党の現実的能力については、簡単にいうと、
>自民党が政権を維持できたのは、社会的、経済的環境の変化を敏感にかぎとり、それに合わせた政策をとる能力にたけていたからである。(p.60)
みたいなことになる、高度経済成長のときにはそれなりに、そのあと予算がそう簡単には増やせなくなってもあの手この手で。
それに対して、社会党は「変化への適応能力欠如」とかけちょんけちょんに言われることになる。
もちろん自民党・日本政府にしても、国民の支持獲得だけぢゃなくて、
>内需拡大、失業対策に加えて、七七年には世界経済に刺激を与えるため日本はもっと貢献せよとするアメリカの要求に応えるためにも、政府資金が経済に投入されることになったのである。(p.84)
って理由があったのは、今も昔も変わらないことではある。
そこんとこを捌くにあたって、
>内需拡大のために政府支出を増やせという外国からの要求が、経済的刺激が最大となるように資金を配分する際の前提としてあった。しかし、支出の増加はすべて、支持者のために平等の扱いを要求する自民党の政治家たちによって論議され、結局のところ、公共事業への金の配分が、必ずしも経済的に最も有効な方法によってではなく、それぞれの利益を代表する自民党代議士に対して平等になるよう行われるのが、日本政治の常である。(p.91)
っていう具合のやりかたでいくのがうまいところ。
幅広い支持層をかかえてんだけど、誰にも不利にならないようにとりはからって、また得票率を高めて、政権を安定させていく、それが日本流の勝利第一主義の適応性。
第一章 日本の政党システムの変革
第二章 自民党――永続支配の構造
第三章 自民党――政治権力の機構
第四章 日本社会党――万年野党の「力学」
第五章 選挙運動、政治資金から見た日本の「近代政党」
第六章 変化する日本の選挙民
エピローグ 「日本型政治」の手法

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サルまん 新装版サルでも描けるまんが教室

2020-11-22 18:07:19 | マンガ

相原コージ・竹熊健太郎 1997年 小学館・スピリッツ青春プレイバックコミックス(上・下巻)
ちょっと前に『マンガ原稿料はなぜ安いのか?』なんて本を読んだばっかりに、どうしてもこれ読みたくなってしまい、古本を買い求めた。
「スピリッツ」で連載やってたのは1990年ころかな、毎週購読はしてなかったから、ときどき飛び飛びで読んでた記憶があるんだけど、妙におもしろかったのをおぼえてる。
しかし、あらためて単行本でまとめて読んでみると、なんつーか細かい細かい、いやーすごく字が多くて疲れるわ、これ。
周知のとおり、マンガでヒット飛ばす夢をみてる二人が、あれこれマンガの描き方議論して、そこにパロディとかふんだんというつくりなんだけど。
上巻は、「ウケる○○まんがの描き方」みたいなのが、ずらっと並んでるのがおもしろくて、毎回ヒットのための傾向と対策を研究しては、最後は二人が「野望に近づいた」って手ごたえ感じるみたいなパターン。
下巻は、ついに少年誌に連載もって、それが有名な劇中マンガ「とんち番長」なんだが、ヒットしたのはいいけど、やめたくてもやめられず、最後は二人がこわれてくって展開、マンガ家残酷物語か。
ちなみにこの単行本が「青春プレイバックコミックス」なんてラベルになってるのは、いまは落ちぶれてしまった二人が若かったころの栄光を回顧する位置になってるからってことになる。
おおまかなコンテンツは以下のとおり。本筋とはべつに、ときどき「まんがなんでもQ&A」とか小ネタのページが挟まれてたりするんで、やっぱ芸が細かいわー。
上巻
第一章 基礎テクニック
第二章 ジャンル別傾向と対策
第三章 まんが――その果てしなき未来
第四章 デビューの秘訣
第五章 新連載の秘訣
第六章 付録
下巻
第一章 新連載の道
第二章 大ヒットへの道
第三章 クライマックスと大団円
第四章 継続と打ち切り
第五章 最後のサルの惑星
第六章 サルでもやれる編集者教室

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映画と本の意外な関係!

2020-11-21 18:09:59 | 読んだ本

町山智浩 二〇一七年 集英社インターナショナル新書
こないだ読んだ『映画には「動機」がある』と出版順には前後するんだが、そのあと読んだ町山さんによる映画関係の本。
初出の季刊誌の連載でのタイトルは「映画の台詞」だったそうですが。
「映画と本」っていっても、ただ映画の原作ストーリーにあたるだけぢゃなくて、それこそ登場人物のセリフは何て本のどこからの引用かとか、背景をみせてくれたりするとこが勉強になる。
映画の登場人物の部屋の本棚にどんな本があるかで、そのキャラクターが暗示されてるなんて観点を教えられちゃうと、すごく興味もたされるけど、大きなスクリーンに行くことしないから、見えないって細かいとこ、私の映画の見方では。
あいかわらず、採りあげられてる映画の半分もみていないので、シーンのイメージが浮かばないんだけど、それでも読んでればおもしろい。
どの作品がどうということでもないが、なんとなく、従来の映画って、女のひとの描き方が男性の作者からみたステレオタイプみたいなもの、って歴史があったんぢゃないかなという印象を受けた。
まあ、それは性別にかぎらず、人種とか、社会階層とか、善いもんと悪いもんとか、パターンなんだよパターンってつくりが多かったんだろうってことなのかもしれないけど。
あと、ときどき映画のなかに詩をあつかうものが出てくるんだけど(詩を暗誦するとか、詩をつくれるとかって何かの素養みたいになってる?)、いまいち意味がわからなかったんで、最終章で、アメリカ人にとってホイットマンがどういうものなのか、ってのを解説してくれてるのは、ためになったなあ。
コンテンツと出てくる映画は以下のとおり。
第1章 信じて跳べ 『世にも怪奇な物語』
第2章 金は眠らない 『ウォール・ストリート』
第3章 本当の根性 『トゥルー・グリット』
第4章 真夜中のパリ 『ミッドナイト・イン・パリ』
第5章 3月15日に気をつけろ 『スーパー・チューズデー~正義を売った日~』
第6章 メイド・オブ・オナー 『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』
第7章 さらば我が愛、我が友、我が痛み、我が喜び 『ファミリー・ツリー』
第8章 彼女と同じものをいただくわ 『恋人たちの予感』
第9章 天墜つる 『OO7 スカイフォール』
第10章 リンカーンのユーモア 『リンカーン』
第11章 そこに連れて行くよ 『ソウルガールズ』
第12章 貴様らが我々を騙すなら、我々も貴様らを騙す 『ザ・イースト』
第13章 時は征服できない 『ビフォア・ミッドナイト』
第14章 すべての探求は最後に出発地点に戻り、初めてそこだったと知るのだ 『あなたを抱きしめる日まで』
第15章 あんなに短かった愛なのに、永遠に忘れられない 『物語る私たち』
第16章 イケてる女 『ゴーン・ガール』
第17章 愛について語るときに我々の語ること 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
第18章 「何があったの? シモンさん」 『ニーナ・シモン 魂の歌』
第19章 愛と赦し 『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
第20章 人はいつも、手に入らないものに恋い焦がれるんですね 『キャロル』
第21章 縄ない 『ブルックリン』
第22章 アメリカ映画の詩が聴こえる 『眼下の敵』

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金の国水の国

2020-11-15 18:16:20 | マンガ

岩本ナオ 2016年 小学館フラワーコミックスαスペシャル
NHK教育テレビで「浦沢直樹の漫勉」って、すごくおもしろい番組があって、毎度みてるんだが。
最新シリーズを今やってて、前回はついについに諸星大二郎先生が登場、いつもは録画して翌日ってこと多いんだけど、放送時間にテレビの前正座して観ましたよ、ファンとしては。
感動した、手塚治虫をしてマネできないと言わしめたという、あのタッチがどういうペンの動かし方から生まれるのか見られたんだもの。
それはいいとして、今日のところは、本題はべつなので。
今回出演してるマンガ家さんのなかで、岩本ナオさんというひとの回が気になったので、何か読んでみたいと思ったわけで。
(ちなみに、顔出しNGらしく、自身の似顔絵でテレビ画面には出てたけど、かえって気になる。)
ただ、「完全に女の子に向けて描いているので 漫画って 私は」という発言があったから、理解できなかったらどうしよって、ちょっと気がかりだったんだけど。
とりあえず、完結してて、そんな長くないのがいいだろと、探してみたら、これが一冊もののようなので買い求めてみた。
隣り合う仲の悪いA国とB国の物語(どうでもいいが国名はつけてほしかった、ABは味気ない)、二国はつい最近も戦争をしたばっかり。
仲直り案として、A国の第93王女サーラの元へ「B国で一番賢い若者」が婿に来るはず、だったのに、おくられてきたのは犬。
B国の図書館長の息子で土木技師のナランバヤルのとこへ「A国で一番美しい娘」が嫁に来るはず、だったのに、おくられてきたのは猫、お互いの国の長は相手バカにしててまともに付き合う気がない。
で、サーラとナランバヤルは、当然のことながら、偶然のように森で出会うわけだが、お互いの事情は知らぬまま、婿の代わりとか嫁のふりの役を演じてくれって騒ぎに巻き込まれてく。
A国は商業国家で、市民の生活もまあ豊かそうだけど人口過多で、砂と岩ばかり、やがてオアシスが枯れていく国土。一方のB国は戦で町も荒れて国力はもう弱く、だけど水と緑の豊かな国。
ナランバヤルって男は、「あることないことペラッペラ適当にいけそうですよ」とか、「口だけは達者なんですぜ」とか、いい加減そうにみせて、戦争は避けなきゃと考えて意外とマジメ。
さらには、B国からA国へ水をひくっていう事業を立ち上げたいと思い立つんだけど、王族間とか大臣同士の確執もからんで、なんだかんだと騒動になるのを無事乗り切れるのかハラハラドキドキということになる。
いや、おもしろいっす、女の子向けかと心配したけど全然問題ない、あっし(←というのはナランバヤルの一人称)にも十分おもしろい。
相手に好意を抱いた瞬間に、顔が赤くなるって描写があるんだけど、それは浦沢直樹作品からインスパイアされたものだって「漫勉」で語られてたけど、とてもいい効果をあげていると思う。

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