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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

蜘蛛の糸は必ず切れる

2012-06-02 19:07:08 | 諸星大二郎
諸星大二郎 2007年 講談社
きのうのつづき。諸星大二郎の小説集、第二弾。
「船を待つ」
なんかうらぶれた港町で、船を待っている。船はいつ来るかもわからない。
船に乗らなきゃいけない理由も、煎じつめるとよくわからなかったりする。そのことに気づくのは怖い。
そんな何人かが、港の近くの倉庫に雑魚寝して、船を待っている。
ここぢゃないどこかに出ていきたいんだけど、なかなか出ていけない、諸星マンガにときどきあるパターンに似ている。
「いないはずの彼女」
不幸な出来事がつぎつぎ起こる会社が舞台。その会社にある都市伝説みたいなウワサが“いないはずの彼女”。
誰かいるみたい、あるいはそのときにはハッキリとOLの姿があった、でも後で探してみたり思い起こしても、そんな人物はいない、そんなウワサ。
そして、この物語は、語り部がクルクル変わる。なんか「藪の中」的手法をときどき持ちだしてくる諸星マンガに似ている。
「同窓会の夜」
中学の同窓会があって、クラスメイトたちが集まる。
イタズラ好きだった、ちょっとヘンな奴の思い出話がでてくるんだけど、当人は不在。死んだってウワサもある。
同窓会に出る「俺」の一人称で書かれてるけど、誰が実在で誰がホントはいないのか分からなくなる、自己の存在の不確かさを不気味に描く諸星マンガテイストではある。
「蜘蛛の糸は必ず切れる」
おなじみ芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が元ネタ。当然、犍陀多(カンダタ)が主人公。
釈迦牟尼の垂らした蜘蛛の糸が切れるとこまでは誰でも知ってるだろうけど、そのあとのストーリーを描いている。
カンダタは地獄からの脱出をあきらめない。再び蜘蛛の糸は降りてくるのか、それをつかむことはできるのか。
永遠の責め苦が続く、地獄のありようを「システム」と表現してるとこが、秀逸。
コメント
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