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MFCオーナーのブログ

More Of That JAZZ

2007年05月09日 23時22分27秒 | 音楽ネタ

Glennmiller

先日、当ブログに「ジャズ・ボーカルの人は、何故曲紹介の時に、題名だけでなく歌詞の内容まで説明するのか」という疑問を書いたが、Brendaさんのブログでも同じ質問をした所、彼女なりの明快な回答を頂いた。この時、ついでにもう一つの疑問、「最初はロックや歌謡曲でも、次第にジャズを志向するボーカリスト(特に女性)が多いのは何故か」というのも、同時にぶつけてみたのだが、同じようにBrendaさんは明快に回答してくれた。つくづく聡明な人である。

誤解と偏見を恐れずに言うと、ロックが“ひらめき”“勢い”“初期衝動”といったキーワードで括られてしまうのに対して、ジャズは“技術”“理論”なとで語られる音楽である。故に、演奏テクニックでも音楽理論でも、ジャズはロックより上、と見なされる訳で、故にロックを志向した人も、ある程度のレベルに達すると、さらに上を目指してジャズを志向するようになるのである。また、当初から“若者の音楽”として登場したロックと違い、ジャズは“大人の音楽”である。つまり、ジャズとは“インテリジェンス溢れる大人の音楽”なのだ。世間一般のジャズに対するイメージも、こんな所だろう。

なので、ロックの人がジャズを志向するようになる背景には、少なからず“コンプレックス”がある。実際の所、僕にも同じような経験があるので、これは頭から否定は出来ない。

もちろん、ロックが一言で説明し切れないように、ジャズだって多種多様である。が、前述した“インテリジェンス溢れる大人の音楽”であるジャズとして、世間がイメージするのは、ピアノ・トリオ或いはそれをバックにしたボーカル、であろうと思われる。ピアノやボーカルの代わりにサックスでもいい。ロックといえば、すぐストーンズやツェッペリンを連想する人が多いのと似たようなものだ。

もちろん、僕も今までに多少はジャズに関わってきた。あまり詳しくはないが^^;

前にも書いたけど、小学生の頃、家にあるLPレコードを端から聴いてみて、当時一番気に入ったのが、グレン・ミラーだった。正確に言うと、「レイ・マッキンレー指揮のグレン・ミラー楽団」のレコードである。クレジットによると、そのLPが録音されたのは1958年頃で、グレン・ミラーは既に亡くなっていたが、そのサウンドを後世に伝えるべく「グレン・ミラー楽団」名義のレコードは作られ、コンサートも行なわれていた。で、そのうちの一枚が我が家にあった訳で、『グレン・ミラー・イン・ウルトラ・ハイ・ファイ』とかいうタイトルのLPを、僕は毎日のように聴いていた。ビートルズもストーンズもクイーンも知らない頃だ。この当時の僕にとって、ジャズとはグレン・ミラーであり、つまり“スイング”だったのである。

その後、ほとんど映画のサウンドトラックを通じてだけど、マイルス・デイビスやらハービー・ハンコックやらといった人たちを知る。が、ロックを聴くようになったせいか、ジャズ自体にはそれ以上興味を持つ事もなく、僕の中では相変わらず“ジャズ=スイング”のままだった。

高校では吹奏楽部にいたという話もしたと思うが(笑)、うちの高校のブラスパンドは、“スイングのビッグバンド”という顔も持っていた。フツーの吹奏楽部でやるような曲の他に、トランペット、トロンボーン、サックス、ドラム、ベースといった編成でスイングも演奏していたのだ。といっても、それは僕が入学する数年前までの話。スイングをやらなくなったのは、スイングを志向する部員が年々減っていった事もあるが、スイングを演奏出来る技量或いはセンスのある人がいなくなってしまった、というのが最大の理由だったらしい。僕自身としてはスイングやりたかったし、先輩や仲間に働きかけてスイングを復活させようとしたが、結局実現しなかった。「(スイングが)好きでない」というより「出来ない」という者の方が多かったのだ。やっぱり、ジャズって簡単に出来る音楽ではないのだ、と僕はその時感じた。

そうこうしてるうちに、フュージョン・ブームが到来し、僕も一時期かなり染まっていた。スイングをやりたい、というのと関連して、ジャズ的なプレイをマスターしようと、自分なりに練習に励んでいたのである。ま、あの頃のフュージョンをジャズと言っていいのかどうかは、意見が分かれる所だろうが、僕も周囲の人間も、“フュージョンはジャズから派生した音楽”と思っていた。それは決して間違いではない、と思う。ただ、“フュージョン=ジャズ”ではない。ジャズの要素はあるが、その上にファンクやラテンはたまたロックの要素を乗せてしまったからこそ“フュージョン(融解)”と呼ばれたのだし。最初の頃、フュージョンにはジャズ系の人が多かったので、“フュージョン”と“ジャズ”を一緒くたに捉えてしまったのだろうと思われる。

そういえば、あの当時、つまり1970年代後半から80年代にかけて、フュージョンも含むジャズは、日本でかなり人気があった。『ライブ・アンダー・ザ・スカイ』に代表されるジャズ・フェスティバルが、日本で毎年開催されてた記憶がある。ジャコ・パストリアスが人気だったなんて、今では信じられない(笑) 僕はウェザー・リポートも好きだったけど、トップ・ジャズメンが集合するVSOPに興味を持って、フェスティバルの中継をテレビで見ていた。高度な技の応酬が実にスリリングに感じられたからだ。

今思うと、この頃、つまり20代の初め頃までが、僕が一番ジャズにも目配りしていた時期だった。その後、徐々に興味を失っていく。なぜか。要するに飽きたのだ。スイングは心地よいけど、今イチ刺激に欠ける。フュージョンは次第に、オシャレなBGMみたいになっていった。高度な技はあるけど、要するにアドリブ合戦してるだけで、それ以上の展開がないVSOPもつまらなく思えてきた。ピアノ・トリオやボーカル物は、元々好きではなかった。

という訳で、そのまま四半世紀(笑)、ほとんどジャズに興味を持つ事もなく過ごしてきた。全く聴かなかった、というのではないが、進んでCDを買ったりとかはしてない。ジャズっぽい感覚を取り入れたロックやポップスというのは、たくさん聴いたけど。ま、嫌いじゃないが、メインじゃない、という事か。昔から、一定のジャンルに限定されてしまうのは好きじゃないしね。正直言うと、「あなたロックの人てすか」と言われるのも、好きじゃない(笑)

好きならジャズでもロックでもいいではないか、と思うのだ。聴く音楽或いはプレイする音楽を、ひとつのジャンルに閉じ込めてしまうなんて無意味だ。音楽はジャンルじゃないよ。コンプレックスは捨てよう(誰に言ってんだ?)

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6 コメント

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本来、ジャズほどひらめきが肝心なジャンルはない... (fxhud402)
2007-05-10 08:27:04
本来、ジャズほどひらめきが肝心なジャンルはないと思うんです。でも非常に個人的なものであるそれをいろんな人と共有しようとした結果、ああいう理論が出てきた。そして日本に限って言えば、一流大学のジャズ研という、良くも悪くも閉じたエリート組織が媒体になったことが、本来の出自とは真逆のイメージを植え付けてしまった、と。きっとテレビのお笑い番組のテーマのイメージの方がジャズ本来の姿に近い。だから、巨泉さんやキダ?タローの洗礼を受けて育ったことは幸せだなと思います。今でもラブ?アタックのテーマとか聞くと、ついノックの光頭が…。もとい。ベニー?グッドマン物語も見ました。とにかくドラマーのジーン?クルーパが格好いいんですよ。あれを見てシングルタムのセットに憧れたのは僕だけじゃないはず。スウィングしなけりゃ意味ないね!
♪fxhud402さん (MFCオーナー)
2007-05-10 18:56:03
♪fxhud402さん

>一流大学のジャズ研という、良くも悪くも閉じたエリート組織が媒体になったことが
そうですね、僕もそういうイメージ持ってます。偏見かもしれないんですけどね。大衆音楽って感じでなくなってます。

>ベニー?グッドマン物語も見ました。とにかくドラマーのジーン?クルーパが格好いいんですよ
僕は見てないんです(汗) そんなにドラムがカッコいいなら、見るべきですね。

>スウィングしなけりゃ意味ないね
激しく同感です。本文にある、スイングを止めたうちの高校のブラスバンドも、スイングしてないスイング、に耐えられなかったのかも。
ジャズも本来は明るい楽しい面も沢山あると思うん... (センベー)
2007-05-10 20:59:21
ジャズも本来は明るい楽しい面も沢山あると思うんですけどね。
こむずかしい顔して腕組んで聴くというイメージは日本人特有なんではないのでしょうか??

大人の音楽というか、大人になっても退屈せずに聴ける音楽という感じがします。
最近、若い時は退屈で何とも感じなかった男性ボーカルのスタンダードなどが、とても良く聴こえてきました。
♪センベーさん (MFCオーナー)
2007-05-11 10:36:42
♪センベーさん

>ジャズも本来は明るい楽しい面も沢山あると思うんですけどね
僕も、そう思いますよ。スイングなんかは、聴いてると楽しくなりますしね。インテリの難しい音楽ではないはずなんですが...

>大人になっても退屈せずに聴ける音楽という感じがします
ジャズは大人の音楽、と書きましたが、大人も楽しめる音楽、と言いたかったのです。ずっとプレイしていても飽きない、というか。ただ、ある種のロックに関しては、そうなりつつあるので、やはり“歴史”の違いなんでしょうか。ロック(若者)に対するジャズ(大人)という公式自体、無意味に感じる今日この頃です(笑)
私にとってジャズはアコースティック中心の編成っ... (KIKUKO)
2007-05-11 17:38:30
私にとってジャズはアコースティック中心の編成って所が心地いいです。
社会で疲れるようになると、打ち込みとかサンプリングとかディストーションが段々しんどくなってきました。
だからジャズでもフリージャズのような緊張感の強いのは良さが判らないです。
♪KIKUKOさん (MFCオーナー)
2007-05-12 00:24:15
♪KIKUKOさん

>ジャズはアコースティック中心の編成って所が心地いいです
歌う立場からすると、そうなのでしょうね。その場合、歌が際だってしまうから難しいでしょうけど。

>フリージャズのような緊張感の強いのは良さが判らないです
緊張感はあっても、独りよがりなアドリブ合戦を延々続けてるのは退屈です(笑)

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