熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

観世能楽堂・・・梅若玄祥の「土蜘蛛」と桂南光の「火焔太鼓」

2018年01月26日 | 能・狂言
   先日、米團治の独演会に行ったとき、チラシを貰って、能と落語 至高の華 と言う面白い公演があることを知って、直近の公演なのでダメだろうと思ったのだがチケットが取れたので出かけた。
   何故、能の人間国宝の梅若玄祥と上方落語の桂南光のコラボレーションが実現したのか、昨年秋に、国立能楽堂で、南光の落語を聞いたので、能楽堂での落語は兎も角として、普通では、接点など考えられないし、キンチョウとカンワの古典芸能が、能舞台で実現するのは稀有であろう。
   
   
   

   これについては、この日の冒頭の二人の「新春スペッシャルトーク」で、玄祥師が、この公演の経緯を語った。
   祖父の梅若実が、落語家の圓朝に毎日通い顔パスで通る昵懇の間柄で、家に頂戴した名作のかしき面があるのを記憶していて、新しい風を起こせるのではないかと思って、南光師に話して、大阪で能と落語 至高の華を開いたら好評であったので、東京でも実現した。と言う事であった。
   南光、”私、平成の圓朝かナァ。小朝が文句言うデェ”
   この日、この公演をプロデュースした西尾智子さんが、このトークの司会をして、二人の興味深い話を引き出して楽しかった。

   南光が、能との出会いを語った。
   贔屓筋から招待されて能楽堂に行き、最初に観たのは、土蜘蛛だったが、良く分からなくて寝ていた。殆どお客さんも寝ていたが、終わったら、今日の能良かったなぁと言っていたと笑わせていた。
   この南光が、能「安宅」を観て、弁慶と富樫の心の対決に感激し、能は凄いなあと思ったと語り、NHKホールの公演で、泣いていたと西尾さんが言っていた。
   南光、”観る方も、習うより慣れろでっせ。”

   南光の落語は、名調子の「火焔太鼓」。
   まわりに華麗な火焔の枠組みのある太鼓である。
   いつもゲテモノしか仕入れられず売れない冴えない道具屋の主人が、掘り出し物の埃まみれの火焔太鼓を仕入れてきて、ビックリするような値段で買い取られると言う噺である。養子の旦那が、お嬢さんと呼ばざるを得ない妻に、コテンパンに罵られるのだが、最後に留飲を下げると言う人情噺で、心地よいテンポが秀逸。
   これは、江戸落語だが、南光は、上方落語で、太鼓を買ってくれるのは、江戸落語では赤井御門守と言うお殿様だが、住友の大旦那に代わっている。
   オチは、江戸では、火焔太鼓に味をしめて、今度は、景気よく火の見櫓の半鐘を仕入れようと言ったら、妻が「半鐘はいけないよ、おジャンになるから」だが、
   上方は、「買えん太鼓」のようだが、南光は、夫婦円満になったと噺を締めくくった。  
   私は、前に、たまの「火焔太鼓」を聞いているが、江戸落語はまだ聞いていない。
   増上寺に立派な火焔太鼓があり、先日、このブログでも紹介した。

   さて、梅若玄祥がシテ/怪僧・蜘蛛の精を舞う「土蜘蛛」。
   人間国宝の土蜘蛛を鑑賞できるなど、期待以上であった。
   トークで、キシメンのような太い昔の糸から蜘蛛の糸の噺や投げ方などを興味深く語っていたが、この日は、目付柱を取り外しての公演で、南光が心配していたが、熊坂の面でも問題なかったので大丈夫だと語っていた。
   蜘蛛の糸については、20弱と語っていたが、少し勢いは弱いが非常に的確で華麗な放物線を描いて美しく、特に、両手で一気に投げつけるシーンが多くて迫力があった。

   先日、国立能楽堂で、金剛流の土蜘「土蜘蛛」を、シテ廣田幸稔で観たのだが、非常にエネルギッシュでダイナミックな舞を披露していて興味深かったが、結構、糸の扱いが難しいようで、橋掛かりで独武者に投げかける糸がすっぽ抜けて白砂に落ちた。
   この土蜘蛛で興味深いのは、ラストの土蜘蛛が首を切り落とされるシーンだが、この舞台では、シテは切戸から静かに消えて行ったが、玄祥師の時には、作り物の塚に隠れて退場して行った。

   今回の能で、印象的だったのは、ツレ/胡蝶/(西尾萌)が、化粧した直面で舞い、美しいと思った。
   「問答入り ササ蟹」と小書きがついていて、面をつけた派手な衣装のアイが、面白い舞台を演じた。
   頼光/馬野正基、独武者/殿田謙吉、
   出演者は、比較的若くて清新な舞台で好感。

   この後、少し遅くなったが、時間があったので、国立能楽堂の「世界と能楽」のシンポジュウムに行き、ラストの能金春流「枕慈童」を鑑賞する機会を得た。
   慈童/高橋忍、臣下/宝生欣哉
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