ハリ天狗の日々奮戦

天狗のごとく山を駆け、野を走る(かな^^;)。 東京は西の端・青梅発、全国行き。日々鍼を打つランニング鍼灸師の奮戦記。

TTR後半戦

2007年05月18日 | 大会レポート

【鴨沢ご褒美休憩】<10:00:43~10:31:24>
風になってしまった前半戦。あまりの早い到着に急に気分も大きくなり、のんびりとくつろぐ。ハリマネと長男・弾があれこれ用意してくれて大助かり。ここへ来て家族のサポートなんてものすごい贅沢で幸せ者。ありがと~!
10分ほどでマコトさん、Sさん、コンタさん到着。一緒に豚汁。
0518_kamosawa_rest マコトさんに「ハリ天狗さん、奥さんが待っているからって張り切っちゃって~」とからかわれたけど。マコトさん、「(マコトさんに)先着するめったにない機会を逃さない嗅覚は流石!」って誉めて~。
あぁ、たっぷりときっちり30分も休んでしまった。
0518_kamosawa01 鴨沢自治会の人達に囲まれて(すごく暇だったみたい)「ライトはどうなってるの」とか、アームウォーマーすると「は、は~ん、工夫してるねぇ」とかハリマネと弾に「こんな所までお父さんの応援に来ちゃうなんて、おばちゃん感激だよ~」「おやついっぱい持ってきな」とか・・・ひとしきりやりとりがあって、ようやく出発。0518_kamosawa_start00まだライトがいらないなんて感激だぁ。あのグランドの横の暗闇に一人入っていくのは勇気がいるのです。



【クラクラ、フラフラとドラマは山場に】

<鴨沢~(3:26:28)~三頭山(CP6)13:27:11>
0518_kamosawa_start さて、しっかり休息し、家族にあって気分も十分にリフレッシュされていて、大寺山の仏舎利塔目指して急登もなんのその。快調に高度を稼ぐ。ようやくヘッドランプも灯し、いよいよ夜の部突入。どうやらマコトさんの言うように今日のハリ天、調子がいいようだ。
・・・とにやけた途端、異変発生。そしてグググッと緊急事態だ。まさに天国から一転奈落の底へ突き落とされそうな気配(まだ落とされてはいない。けど今にも落ちそう、落とされそう)。闇を照らす明かりに酔ったかのような気分がしたと思ったら、何やら気持ちが悪い。吐いちゃった方がいいかな。いや、待て、それはいくらなんでももったいない。鴨沢応援団からいただいたエネルギーだ。
ちょっと我慢しながらスピード落として進んでいたら、今度は頭がクラクラしてきた。こりゃまともに歩けなくなりそう。弱った弱った。ついさっきまでのおちょうしは何処へ。頭の奥の方で、かすかに「リタイヤ」の文字が見え隠れ。
ハリ天、そこで冷静に考えた。しっかり休息しながら胃に食料が入った(豚汁、パイナップル、バナナ、コーラ等々)。今までは筋肉第一に血液を回していたのが、胃を働かせるために一気に胃に回り・・・、これは軽い脳貧血のような状況だ。脳の血糖値が上がればまた大丈夫だ。すぐに糖分補給(トップテン)、早く吸収させるために鴨沢のおいしい湧き水も注入。
・・・注入しながらようやく平坦になった山道をよろよろしていると、やっぱりマコトさんが追いついてきた。
先に行ってもらおうとするが、現在の状況説明なんぞしてしゃべっているうちに脳が働きだしたのか、だんだんに普通になってきて、仏舎利塔、あれっ通過。
林道を下り始めると手にしたハンドライト・スーパーファイヤーがどうだぁと言わんばかりに明るく前方を照らす。二人でダーッと下るのにこれ1本十分。飯場跡のガラス窓も打ち捨てられたトラックもなんのその(怖くない)。ハリ天の体はいつしかすっかり復活を遂げていたのでありました、ヤレヤレ。
金風呂まで降りて、自販機でマコトさんファンタ、ハリ天梅ジュースの一気飲み。うまい!
マコトさんのヘッドランプの電池交換の間に後ろからコンタさんが追いついてきた。が、再スタートするとコンタさんは少しずつ遅れ始め、逆に我々は軽快にピッチを刻む。
玉川キャンプ場、何やらイベントが開催されているのか、怪しい、怪しい雰囲気。大音響で不気味かつ単調なリズムが鳴り響き渡る。
ここからは去年、大いに物の怪の気配を感じた山へ突入する。しかし、泣く子も黙る山ラン職人マコト氏と一緒なので、身の毛がよだつ気配すらない。ないが徐々に今のペースがきつくなってきた。
ここで足を引っ張っては申し訳ない。先に行ってくれとついに口にするが、三頭山までは一緒に行きましょうとマコトさん。そりゃありがたいが付いていけるのか・・・ハリ天。無言。しゃべると力が減りそう。男は黙ってツヅラオレ・・・。相当な辛抱の後、主稜線に合流。なんとか・・・これで・・・三頭山。でもやっぱり相当にいいペース。一昨年の関門はここで15時間。1時間半ものアドバンテージ、チェック、ピッピー。

【風にも色々ありまして】
<三頭山~(2:23:10)~浅間峠(CP7)15:50:21>
一気に高度1000mオーバーを上り、三頭山の山頂でしっかり座り込むものと目論んでいたが、あっという間、風のように通過。どんどん下って避難小屋。ここで一寸休憩。小屋の前のベンチにひっくり返り、両足を上げてブラブラ。怪しい、実に怪しい。男二人でやっているところがさらに怪しい。でもこれで脚はグンと軽くなる。
再びハリ天が前に出て(三頭山のお返しです)、積極的に走る。いい風になっている。下り基調が続く笹尾根ではしっかり稼ぐべし。わかっちゃいるけど平らになるとふと歩くハリ天。「ここはおいしいとこだから走りましょう」とマコトさん先頭交代。ガッガッガッと力強い踏み音。きついところでもう一度「踏ん張るな、風のように・・・」
それでも少しずつ間隔が開き始める。槇寄山を過ぎると完全にライトは遠ざかった・・・。久しぶりの一人旅の始まり。ペースは落ちているが上りの足取りもしっかりしている。このまま、このまま。・・・行くわけなく心拍数はぐんぐん落ちているのに何故か苦しいという・・・う~ん、これは俗に言う「疲労困憊」ですね。もう、すぐ、そこ、と思っている浅間峠がいつまで経っても近づかない。そよ風から無風状態に。意地が悪い。泣きを入れるぞ。・・・でも動いてさえいれば必ず到着。ハセツネの時は人が大勢のチェックポイントも今回は当然無人くん。SIチェックしてから東屋のベンチにひっくり返る。荒れてもないのに呼吸を整えるような感覚。脚もブラブラ。やおら起きあがり、安全ピンを外し、ケイレンしていないが脚の表裏全部をチョンチョンと突く。これは正解。技術ブックに付け加えよう。

【後光射す山道エイド】
<浅間峠~(2:15:09)~陣馬山(CP8)18:05:30>
浅間峠での秘技により多少息を吹き返すものの依然そよ風。次のCP・陣馬山までのちょうど中間あたりに「三国山」あり。掲示板仲間の山道さんが今回負傷欠場、かわりに得意のボッカで三国山頂上エイドを開設して下さるという。
スタート前に「フルーツ缶詰用意しておきますよ」と言われていて、その時は「フルーツ缶詰かぁ・・・」(あ~ごめん!)程度の思いだったのが、「三国山 3km」の標識あたりから、頭の中に、浮かぶ言葉、湧き出るイメージはあの甘酸っぱいフルーツ缶詰ただただ一つ。つばが湧き出る感覚も久しぶりで、とにかく早く山道さんに会いたい、じゃなかったフルーツ缶詰にありつきたい、じゃなかった山道さんの優しい顔を拝みたい・・・という一途な気持ちただひとつ。下を向いて黙々と進むとビニールに包まれたウインブレ発見。マコトさんのらしき・・ウム・・まだ温かい、そう遠くへは行っていまい(こんな所で忍者になってどうするの)。
グワッという感じで三国山頂上。おぉ、マコトさんがいる。は、は、早く~。・・・と思う間もなく目の前には大きめの入れ物にたっぷりのフルーツ(缶詰)がどうぞ!なんというタイミング。ハリ天が今現れるのがわかっていたかのようなタイミング。お礼もそこそこにむさぼり食らう。0518_yamamichi01 うまい、うまい、うまい、うまい。世の中にこんな美味いものがあったのか・・・月並みだけどそう思った。続いて豚汁・・は汁だけいただく。フーフーいって飲み干す。こちらも命の味がする。水場から10リットルを担ぎ上げたから、たらふく飲んで良いと。山で今、何が欲しいか・・・あまりに心憎い気配り。山道さんはご家族でここまで登山を楽しみ、ご本人は徹夜でエイドマン。ただただ頭が下がります。感謝の言葉も見つかりません。三人でべちゃくちゃやっているとかなり辛かった気分も不思議と紛れてきた。
0518_yamamichi02 ここでマコトさんと一緒にTさんの事故を聞く。序盤、御一緒していただけにサーッと血の気が引いた。闇夜の彼方に視線が飛ぶが夢かうつつか・・・。だけど。信じたくなくとも事実であるならば、今の命ある者として、その生を全うするために炎燃やすのが自分の役目。Tさんだってそうするはず。気を取り直し、一足先に出発したマコトさんを追うことに。
山道さんの気持ちの入った見送りを受けて、風よまた吹け。
少しスピードを上げてみるが、遙か前方も真っ暗闇、しばらく闇夜の一人旅だ。
どんどん標高は下がり、和田峠到着。またもやマコトさんと合流。マコトさんは地図を広げて最後の戦略を練っているのか。一昨年はここで無念のリタイアの地点。前を行く女王MさんとTさんと共にレースを止めたと聞いている。その時より時間的にも相当のゆとりもあり、隣に座っていて体からなんとなく気迫を感じ始めた。
和田峠ではボランティアの陣馬山頂の茶屋の親父さん達がドンとペットボトルの水とバナナを持ってきてくださった。「今、あんた達が3位と4位だ」という。そんなはずはない。一昨年時間内完走者の一人Sさんが前にいるはず。しかし、チェック表を見ながら間違いないと。「2位のMさんとの差は30分」・・・「そりゃ、無理だぁ」と口にしながらもマコトさんの眼鏡の奥の目が光ったのをハリ天は見逃してはいませんでしたよ。
一緒に陣馬山への長い長い階段を上る。広々とした頂上に出る。白馬の脚に触れてからSIチェック。

【そよ風の一人旅】
<陣馬山~(3:29:13)~草戸山(CP9)21:34:43>
さて、ここからのコースはランナーのメッカ。当然走れば稼げる。いいピッチのマコトさんの後ろ姿を見ながら快調に下る。体が楽な今のうちにハリマネに「陣馬山通過」のメールをしておこう。携帯を出してカチカチしているうちにスーッと離れてしまった。明王峠の分岐前で完全にちぎられる。明王峠で一度寝転がる。マコトさんのスイッチは完全に入ったようだ。ここまで何度も追いついたが、彼とのレースもどうやらここまで。
少々、気持ちも切れかかりスピードはグンとダウン。なんとか気分転換したくなってザックの一番下に隠し持っていたiPodを出し、ミュージックスタート。しばらくはこれでまぎれたものの鬱陶しくなりストップ。今回の音楽はハリ天を救ってはくれない。
昨年の一人TTRの時には夜明けを迎えた小仏峠、そして城山からヨレヨレと大垂水峠に下る。20号線を進行方向と逆に戻り、自販機探すが最初の店に見あたらず、即あきらめコース復帰。やけに苦しい。大洞山までの1km程が息も絶え絶え。何かあってはいかんのでゆっくりゆっくり。そして頂上のベンチで約3分の完全ノックダウン。
夜も明け、ライトをしまい込む。手に持っていた昨年の一人TTRのタイム表と見比べる。目標の24時間以内はたぶん確実。だけどこのままじゃギリギリの恐れもある。ここまで相当の時間的余裕を手にして来たのだから、どうせなら保ちたい。苦しいが最後じゃないか、力を振り絞ろうよ。誰に言ってるんだ、お前、お前、自分にだよ。
ヤフシゲさんが好きな場所といった津久井湖を見下ろす場所でちょっと休憩。昨夜は星が見えていたのに、今は薄く雲が広がっている。ふと目をさらに遠くに運ぶと真っ白な富士山が見えた。ただそれだけ、でも嬉しい。
この辺りの神奈川県との県境も小刻みにアップダウンが続く。でもいくらかまともになってきた。上りのピッチも負けていない。草戸山のチェックポイント到着。9個目のチェックポイント。いよいよだ。

【もう一度、最後の風よ】
<草戸山~(0:54:03)~浅川金比羅神社(CP10)22:28:46>
この区間が本レース中、最もいやらしい区間。最後の最後に、ニヤニヤしながら、これでもかこれでもかまだまだこれもだこれもだ・・・とアップダウンが続く。それはわかっている。むかついて挑発にのってしまうとひどい目にあう。流石、経験者は違う(一人ぼめ)。冷静に・・・風になれ、風になれ。全てを受け流して、木々を渡る風になれ。頑張れば23時間を切れるかもしれない。上りにも力がこもりだした。
民家の裏をくぐり抜けるようにして再び雑木林上り。たどり着いた金比羅神社。最後のチェックの信号音。感無量。なんだかホッとして気が抜けてきた。

【静かなるゴールへ】
<浅川金比羅神社~(0:22:27)~陵南公園(ゴール)22:51:13>
下りながら用意しておいた「最終ポイント通過メール」を送信。マコトさんもゴールしているだろう。下に降りたら電話をしよう。・・・ボーッとそんなことを考えながら間もなく道路に出ようとした時、突然「来た! ハリ天狗さんだ」という声。ウワッ、ミヤさん、ヤフシゲさん、タマさんの姿。山道さんより、3人は他の参加者と共にTさんの救助活動に携わり、その現場を目の当たりにし、精神的にとてもレース続行は無理と棒ノ嶺でレースを止め下山したとお聞きしていた。・・・のはずの彼らが、こんな朝早くから何故今ここに? 判断力が鈍っているハリ天の頭の中は「!!!???」
「今、4位だよ。もう少し、頑張って!」・・・逆走応援だ。ありがたい、一気に目が覚める。
が、脚はすでにいっぱいか。ゴールに来てくれているハリマネに電話。電話口で「隣でマコトさんが是非とも23時間は切れと言ってるよ~」「いや、ちょっと無理だろう、いっぱいいっぱいだ」弱気な発言。
その電話の途中、たった今別れたばかりの最年長タマさんがスーッと横に現れた。「あっ、タマさんが・・・」と言っているうちに、目が「ハリ天狗さん、行くよ」。有無を言わせぬ強い視線と足取りに、あわてて電話を切り、走り出す。
「あと20分くらいしかないですよ、ちょっと無理ですよねぇ」と私。それに答えてタマさんは、実に冷静な声で「23時間は間違いなく切れます。このペースなら10分ちょっとでゴールですよ。」
距離感がなくなっていて諦め気味だったハリ天は、それを聞いて急に元気になり、一気にスピードアップ。相も変わらず、どうして最後にこんなスピードで走れるんだ。中央線をまたぐ歩道橋もグイグイと上り、甲州街道では赤信号を突破させていただき、ひたすらゴールへ。係員が笑顔で誘導してくださる。そこを曲がるとずっと正面にゴールが見えてきた。陵南公園のゲートのような所まで来ると、「ここからはビクトリーロード、一人で味わってください」とタマさんが現れた時と同じようにスーッと離れて行った。わかっていても急にジンと来た瞬間だ。
0518_finish ハリマネが跳ねるように手を振っている。10人程の人達が拍手で迎えてくれている。マコトさん、コンタさんの姿も目に入った。ハリマネがカメラを構えている。劇的な歓喜の抱擁とかするようかなぁ・・・チラッと考えたけど、ここは宮古島じゃなかった。静かな静かな朝の公園だ。ハリマネの目の前通過、せめてもの笑顔の右ガッツポーズ、渾身のだ。ありがとう!
午前6時51分、静かにフィニッシュラインを通過。

【本日のトレーニング】
・30min.jog/4.8km(気持ちいい~)

緑風堂鍼灸院WEBSITE
ハリ天狗マネージャーの笑顔いっぱい!

コメント (14)
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