7月16日、横浜スタジアムへ横浜vs広島14回戦に行ってきました。前回観戦の7月1日から横浜は5勝6敗。あの試合がターニングポイントとはならなかったようです。得点力のなさは相変わらずで、この11試合で平均2.45点。前日の広島三連戦の初戦は、今永投手と大瀬良投手の投げ合いで8回まで0vs1とリードしながら、抑えの山崎投手が坂倉選手に本塁打を浴び同点。その後エスコバー投手で逆転を許し敗戦。気が付けば首位を追うどころか、広島に抜かれ、ゲーム差なしの3位に転落してしまいました。
横浜の先発は既に8勝を挙げている東投手。今年の観戦は東投手の登板日が多く、降雨ノーゲームとなった5月18日のゲームも含め、これで3試合目です。その東投手、立ち上がりは13球で広島打線を三者凡退に退け、上々でした。
一方、広島の先発はベテランの野村投手。結果から言いますと、この試合勝ち越されたのは8回だったのですが、僕はこの初回の横浜の攻撃が全てだったと感じています。
まず、この試合で1番に抜擢された梶原選手が右中間を破る二塁打で出塁します。表の東投手の好投に応え、幸先の良い一撃。無死二塁。
ところが、です。続く桑原選手のボテボテのピッチャーゴロに対し、二塁走者の梶原選手が飛び出し、二三塁間に挟まれてしまいます。この間のベイスターズではないので、梶原選手はタッチアウト。カウント1-1、どう考えても慌てて飛び出す場面ではなかったはずです。さらに、なぜ桑原選手は送りバントではなかったのか?確かに序盤の送りバントはデータに反するのかもしれませんし、また桑原選手自身あまりバントが得意でないのかもしれません。しかし、この場合は無死二塁です。送りバントで一死三塁とし佐野選手を迎えられれば攻撃のオプションが広がり、相手投手に与える影響も違ったはずです。まして、このところロクに点が取れていない、相手の先発は投げても6回あたりまでの野村投手、対するこちらが東投手であることを考えれば、何よりも先制点が大事だったはず。
結果的には佐野選手ファーストゴロ、牧選手ボテボテのショート内野安打(これでは仮に三塁走者がいても還れません)、ソト選手ショートゴロで無得点に終わりました。相手の出鼻をくじく先頭打者の会心の二塁打も台無し(自身でその芽を摘んでしまったわけですが)。こうした小さな綻びが、試合全体の流れに影響を与えてしまう。素人とはいえ45年野球を観てきてそう思います。前回7月1日の試合も同様です。
そうした流れの中で2回表の広島の攻撃です。この回先頭の菊池選手がど真ん中のツーシームをセンターに運び二塁打。今度は広島が四番打者から無死二塁の状況を作ります。つづく坂倉選手はセカンドゴロでしたが、右方向への進塁打ということで、最低限の役割は果たしました。
そこで、です。ここまで打率わずか1割9分5厘のデビッドソン選手にライトスタンド上段への本塁打を浴びてしまいます。山本捕手は内側に構えていたので恐らく失投でしょう。ストレートがど真ん中に入ってしまいました。一発か三振かという87年のリック・ランセロッティ(通称、ランス)のようなデビッドソン選手、これを逃すはずがありません。
嫌な予感がしたのは、デビッドソン選手のここまで8本塁打の内2本が横浜だったこともあるかもしれません(最多は巨人の4)。これで9本中3本が横浜となりました。
無死二塁という同じシチュエーション。片や自らのミスで無得点、片や確実に一死三塁の状況を作って本塁打二点。しかも相手は三連勝中と勢いに乗る広島。「流れ」、曖昧な言葉ですが古より「善く戦う者は、之を勢に求めて、人に求めず」(『孫子』勢篇)と言うように、いかに流れを引き寄せるために状況を操作するかが勝負の要だと思います。
流れをこちらに引き寄せるとすれば、信頼できる東投手が広島打線を抑えている間に、野村投手にできる限り球数を投げさせ、できれば5回あたりで捕えたいところです。
1回:26球(13球)
2回:15球(11球)
3回:9球(21球)
4回:8球(10球)
5回:11球(11球)
ただ、1イニングの平均球数が15~16球と言われていることから考えると、2回以降むしろ野村投手は立ち直り、すいすいと投げていた印象です(カッコ内は東投手の球数)。結果的に野村投手は5回5安打、無四球、無失点という十分な内容でした。一方、東投手も7回5安打、無四球、2失点でしたから、2回以降は試合を崩すことなく粘り強く投げてくれたと言えるでしょう。
横浜の反撃は6回裏。広島は二番手に栗林投手が登板。すると先頭の佐野選手が外角低めのストレートを上手くセンター前に弾き返し、出塁。
牧選手は倒れますが、ソト選手がこの試合初めての四球で出塁。一死二塁・一塁。
続く京田選手は良い当たりでしたが、一塁手のデビッドソン選手の好プレイに阻まれ、一塁走者がアウト。二死三塁・一塁。
ここで代打楠本選手が、初球ど真ん中のストレートを左中間へ。打球はフェンス際、レフト末包選手のグラブを弾き二塁打。佐野選手が生還、しかし一塁走者の京田選手は本塁タッチアウト。しかし、とにかく1点を返しました。
前述の通り、東投手は7回表まで好投。7回裏、広島は三番手ターリー投手が登板します。
横浜は山本捕手に代わる関根選手。このところ調子下降気味でスタメンを外れた関根選手でしたが、詰まりながらもセカンドへの内野安打。どんな形であれ、先頭打者として出塁します。
さらに東投手に代わる大和選手は確実に送り、一死二塁。
当然ですが横浜はここを勝負と見て、さらに梶原選手に代わり代打宮﨑選手を送ります。しかし、期待の宮崎選手はセカンドゴロ。二死三塁。
それでも続く桑原選手がフルカウントから四球で出塁します。確かに高めでしたが、154㎞のストレートをよく我慢して見送りました。
すると、次の佐野選手はファウルで粘り、5球目の真ん中に甘く入ったスライダーを見逃さず、ライト線を抜ける二塁打。関根選手が還り、ついに同点。なお二死三塁・二塁。
ここで牧選手を迎え浮足立ったのか、ターリー投手は全ての球が高めに浮き、一つもストライクが入らず四球。二死満塁。この二死とはいえ、相手の動揺で得た流れを掴めていれば…。タラレバになってしまいますが、ソト選手はど真ん中のスライダーを引っ掻け、サードゴロ。「幸運の女神は前髪しかない」ことをこの後知ることとなります。
同点のまま8回表、横浜は二番手伊勢投手が登板します。伊勢投手は代打大盛選手、さらに代打田村選手を連続三振に打ち取り、掴み損ねた流れを再び引き寄せます。幸運の女神はまだ通り過ぎてはいなかったのです。というより、横浜はようやく振り向いた女神の前髪に手をかけていました。
それにもかかわらず、その前髪を手放してしまったのです。何と続く上本選手の何でもないライトフライを、この回からライトの守備に就いた関根選手がまさかの落球。関根選手は手を挙げており、照明が目に入ったようにも見えませんでした。僕も何が起こったのか理解できませんでした。本来、ここでこの回は終わっていたはずなのです。それが一転して二死二塁のピンチに。
そして野間選手にファウルで粘られたカウント1-2からの7球目。フォークボールが真ん中に甘く入り、センターに抜けるヒット。上本選手が生還し逆転。これが決勝点となりました。
そうなれば広島は8回防御率1.91の島内投手、9回防御率1.98の矢崎投手と勝ちパターン継投。
それでも横浜はその矢崎投手から9回裏先頭の大和選手が初球をレフト前に運び出塁。
代打蝦名選手も初球を確実にバントし、一死二塁。
さらには桑原選手がレフト前にポトリと落ちるヒットで一死三塁・一塁。土壇場でこれ以上ないお膳立てをしましたが、頼みの佐野選手、牧選手が倒れ、反撃もここまで。3vs2、しかし、惜敗という試合でも、明日へつながる粘りを見せた試合でもありませんでした。自滅、負けるべくして負けた試合。「神は細部に宿る」、小さな綻びこそ、幸運の女神が最も嫌うものなのかもしれません。
今週末からオールスターゲーム後の後半戦が始まります。セ・リーグはここまで上位3チームが3ゲーム差内という混戦であり、9月が勝負の月となるでしょう。昨年は8月にヤクルトを猛追し、1997年と同じ2.5ゲーム差まで追い詰めましたが、そこで力尽きました。今年は9月そしてCSにピークを持ってくるため、8月は何とか食らいつきつつチーム状態を立て直して欲しいです。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした