浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】小熊英二『生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後』(岩波新書)

2017-09-07 21:39:26 | その他
 先日静岡に行った。2時間の会議のために、交通費2500円をつかった。浜松から静岡まで、鈍行で往復2500円である。静岡が県庁所在地なので、私の属している研究会はじめ、いろいろな行事は静岡市で行われる。そのたびに、私は往復2500円をつかって静岡ー浜松を往復する。

 会議が終わって書店にいった。ふと目に入ったのがこの本である。『世界』で連載していたものだが、あまり読んではいなかった。そこで購入して、カバンの中には他の本が入っていたが、帰路読み始めた。これがまた面白い、面白いということばをつかうのはあまりよくないが、興味深く読めた。

 小熊英二は、今では学者・文化人として名が知られているが、父君は決してそうではない。まあ市井の人である。その人が、1925年に生まれてからの人生の軌跡を息子の小熊英二が聞き取り叙述したものだが、有名人ではない市井の人がどのように生き、政治社会の諸現象にどのような感慨を持ち、どのように行動したのかは、歴史を学ぶ者としてたいへん参考になった。

 父君である小熊謙二は北海道で生まれた。裕福と言えるような家庭ではないし、親族が結核で亡くなったりして、どちらかというと下層に近い生活を送った。

 早稲田実業に入り卒業して富士通信機製造に入社、ほどなく兵士となる。大陸に送られ、戦後はシベリアに抑留される。抑留中「民主運動」を眺める。帰国してからは転職を繰り返し、中小企業をわたりあるく。そして結核により療養所に入所。退所後はスポーツ用品の販売に従事。高度経済成長の中で生活にもゆとりがでてきる。老いてから戦後補償裁判や自然保護運動に参加。

 それぞれの体験のなかで、どういうことを考えたかが記されているが、それが「なるほど」と思わせる。ということは、一般の歴史書からは読み取れない市井の人の感慨を知ることができるということだ。

 あとがきも参考になる。

 小熊謙二という普通の人が生きた近現代史、という内容である。よい本だ。付箋だらけになっている。



 
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知らなかったこと

2017-09-07 21:19:01 | その他
 先日図書館に行って目についた『アフリカに進出する日本の新宗教』(花伝社)を借りてきた。

 アフリカでは、日本の新宗教である幸福の科学、真如苑、崇教真光、統一教会、創価学会、日蓮正宗などの信者がいるのだそうだ。私にとっては訳の分からない宗教教団であるし、日本ではあまりよく思われていない宗教である。

 それぞれの教団が、アフリカのあちこちの国で信者を獲得し、また信者を増やしているそうだ。

 「日本の」宗教、というと、それぞれの教団が日本を背負うから、それだけで関心を呼び寄せてしまうのだろう。
 
 なかには反社会的な教団もあるが、アフリカではあんがいおとなしくしているようだ。

 買って読むほどの本ではないが、知らなかったということで読んでみただけである。

 アフリカにはアニミズム的なものがあるそうだから、そういうものと結合しているのだろうか。
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