北海道美術ネット別館

美術、書道、写真の展覧会情報や紹介。2013年7月末、北見から札幌に帰還。コメント、トラバはお気軽に。略称「ほびねべ」

■さっぽろフォトステージ (11月16日まで)

2008年11月10日 21時28分23秒 | 展覧会の紹介-写真
 
 8日から始まった現代アート展「FIX・MIX・MAX! 2」に連動して始まった写真展。
 いわゆるネイチャーフォトや、モデル撮影会の写真とはひと味違う、現代的な作風に取り組んでいる札幌の8人が出品しました。
 会場は、札幌市写真ライブラリーの常設展示室。ふだんは札幌の古い写真が並んでいる一室であり、ここが常設展以外の用途に貸し出されるのは、1993年の開設以来初めてのことだそうです。
 浅野久男さんが声を掛け、佐々木秀明、竹本英樹、鳴海伸一、Kensyo、メタ佐藤、黒田拓、ウリュウユウキの計8氏という、多彩な作風の作家が集まりました。
 テキストを添えている人が多いのも特徴かもしれません。

 ただ、この会場には、8人はちょっと多すぎた感があります。5人ぐらいがちょうどよかったのでは?

 冒頭の画像は、10月末に、ほぼ同時に3カ所へ作品を搬入するという、大忙しのウリュウユウキさん。
 いちばん下のリンクからも一目瞭然ですが、とても精力的な発表活動を行っています。
 今回は「Sappororhythm」と題したモノクロ4点。
 組写真で一連のストーリーめいた流れを見せるウリュウさんとしては、ちょっと枚数が少なめで、物足りなさも、ないでもありません。
 ただ、少ないなりに、前景を大きくあけた空き地、プラットフォームに入ってくる地下鉄など、ウリュウさんなりにとらえた「札幌のリズム」が展開されていると思います。


           

 展示順と紹介順がばらばらになってすいません。
 いわゆる「写真専業」でない人(佐々木さんと鳴海さん)が入っているのもラインナップの特徴といえそうです。
 鳴海さんの本業は版画家です。ただし、ピンホール写真の個展をひらいたこともあります。
 時が化石化したような茫漠とした画面は、版画の画面づくりに共通するものがあるといえるのかもしれません。
 「行方」「時の糸口」「Wall」「Arishima」「初雪」「走る光線」の6点。


           

 光がゆらめく独特のインスタレーションで知られる美術作家の佐々木さんは、静かなモノクロのスナップ写真も手がけます。
 今回は「新川河口付近 2008」「野幌 2007」「積丹 2008」の計11枚で、とくに「積丹」が8枚と多いです。たぶん、東川フォト・フェスタのあとで行ったときに撮ってきたんじゃないかと推察しますが、使われなくなったトンネルを淡々と、感情抜きにとらえる技法は、佐々木さんならでは。プリントの完成度は高いです。


           

 8ミリフィルムのコマをスチール・フィルムカメラで撮り直すことで、独特の粒子感がある作品をつくりだす竹本さんは、あのテロ事件の直前、2001年8月に訪れたニューヨークでのスナップ6点。
 ブルックリンで歓喜の表情を見せるアフリカ系の人たちや、自由の女神。竹本さんが現在の技法を見いだすきっかけとなった、いわば「原点」の写真です。

 左はメタ佐藤さんのモノクロ9点組み「皮膜の配置」。
 メタ佐藤さんは昨年、ラジレコでの個展が良かったので、たのしみにしていました。
 野外のいすや、ガードレールなどを写したすごくセンスのいい(別な見方をすると、凄絶なまでに孤独な)スナップにまじって、テレビ画面を接写したとおぼしき、米大統領や力士の写真もならんでいます。それ自体は、森山大道もしていたことですが、彼の作品ほど粒状性はないこともあり、スナップと「引用」を等価にならべることは、やはり新鮮に見えます。

 ただ、今回も、木工作家とのコラボレーションがありますが、これが佐藤さんの作品系列のなかでどういった位置づけを占めるのか、もうすこし作品に接してみないことには、まだちょっとわかりづらい面があります。
 附されたテキストは非常に思弁的で、筆者の頭脳では残念ながら理解できませんでした。


           

 Kensyoさんは近年、裸身の女性と金網を組み合わせた作品に取り組んでいます。今回の「Biotop」は、3点のうち、中央が実際の金網の入った額の中に女性の写真を入れ、左右の2点は、金網の向こう側にいる女性の写真です。
 金網が、現実に存在していたり、写真の被写体だったりすることで、一種の異化効果を発揮しています。
 Kensyoさんが、写真業界の「ヌード」の文脈でこれらの作品を撮っているのではないことは、明らかです。
 言葉にしてしまうとつまらなくなりますが、世界に対して彼が抱いている閉塞感の表現ではないかと思うのです。
 ただし、単なる閉塞感ではなく、この行き詰まり情況をどこかでぬくぬくと心地よく感じている自分がいるような、そんな両義性が、彼の作品にあるような気がしてなりません。

 黒田さんはカラー6枚。
 車や夜景など、無人の光景のスナップです。
 この顔ぶれの中では、彼の写真は叙情的な味を帯びて見えます。

 最後に、浅野さんは得意のピンホールで撮った家族の写真です。
 「自転車に乗って 北海道2006」「祭りの日 北海道2007」など4点の写真は、かぎりなくプライヴェイトでありながら、どの家族の写真にも共通する雰囲気を宿しています。


11月3日(月)-16日(日)10:00-19:00(最終日は17:00まで)、月曜休館(祝日の場合は開館)
札幌市写真ライブラリー(北2東4 サッポロファクトリーレンガ館 3階)

http://photo-stage.seesaa.net/

北の彫刻展-心の中の自由な世界(佐々木さん出品。2008年。画像なし)
佐々木秀明個展 雫を聴く2007
渡辺博史・佐々木秀明写真展(07年5-6月)
北の創造者たち2001
美登位創作の家アートプロジェクト2000 記憶の繭

□浅野久男PHOTOGRAPHS http://www.k2.dion.ne.jp/~asano/
□浅野久男写真通信 http://blog.livedoor.jp/asano_hisao/
浅野久男写真展「微光の記憶」(2008年4月、画像なし)
「透明な視覚‐長時間露光による仮想的現実世界の写真表現」浅野久男/黒田拓(2005年)
passage 札幌展(03年)
passage 経過する風景III 8名の写真家によるランドスケープ(2002年、画像なし)
passage 経過する風景II 北海道在住の8名の写真家によるランドスケープ(2001年、画像なし)

□竹本英樹さんのサイト http://www.hidekitakemoto.com/index2.html
竹本英樹 PHOTOGRAPH SHOW "OUTTAKES" (2007年)
竹本英樹写真展「銀遊詩人」(2007年)

□Shin-ichi Narumi art exhibition http://www7a.biglobe.ne.jp/~art-narumi/
□CITY SWIMMER(鳴海さんのブログ) http://blog.goo.ne.jp/wright1867-1959/
鳴海伸一さんのインスタレーション(2008年夏)
中坪淳彦+中井明仁+藤沢レオ+鳴海伸一ライブリポート(07年)
鳴海伸一ピエゾグラフ ピンホール写真展(06年)
鳴海伸一版画展(06年)

□EXTraCt from WOrLds http://kensyo-web.net/
FIX MIX MAX!アワード入賞作品展(2007年。Kensyoさん入賞)
鈴木謙彰個展#4「P.U.」 (04年)
鈴木謙彰個展#3 Parametric eyes(03年)

□メタ佐藤さんブログ metasynbol http://vlvlv.exblog.jp/

□PHOTO CRASH(黒田拓さんのサイト) http://www.h7.dion.ne.jp/~p-crush/

□days clip(ウリュウさんのサイト) http://www.yuukiuryu.com/index.html
□豊平橋停留所(ウリュウさんのブログ) http://blog.yuukiuryu.com/
2008小樽・鉄路・写真展
ウリュウ ユウキ『南11条西13丁目停留所』 (08年5月)
ウリュウユウキ写真展「春を迎えに行く」chapter 1-夜を越えて(08年4月)
『カナコ雪造カンパニー』~除雪原風景へのオマージュ~(08年1月)
「旅をするフィルム-LIKE A ROAD MOVIE-」ウリュウユウキ写真展 (07年11月)
Railway Story 衣斐隆・ウリュウユウキ写真2人展(07年7月)
個展「思いは旅をする」 (07年5-6月)
春展(07年4月)
“SAPPORO”PHOTOS... (07年2月)
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写真展19761012(06年10月)
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小樽鉄路写真展(06年8-9月)
his life,her life,this life -まちの記憶と記録展-(06年7月)
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さっぽろフォトステージ記事掲載! (さっぽろ フォトステージ)
残す会期も残り少なくなってまいりました。 今日(11日)の北海道新聞朝刊にさっぽろフォトステージをご紹介いただきました。 また、北海道美術ネットでもご紹介いただいております。 是非ご高覧下さい。