20世紀末の北海学園大II部写真部で部長を務め、一時代を築いた衣斐(えび)さん(現横浜在住)。
札幌を拠点にモノクロ写真を撮り続けるウリュウさん。
ふたりが、鉄道をテーマに写真展をひらいています。
鉄道写真といっても、それほどマニアックなものではなく、一般の人も楽しめます。
衣斐さんは全点カラー。ウリュウさんはモノクロ。
作風にもそれぞれちがいがありますが、旅への思いをさそわれる写真展です。
今展覧会の公式サイトにある文章です。
衣斐さんの写真は、デジタルで撮った40枚近い写真と、昨年惜しくも廃線になった北海道ちほく高原鉄道「ふるさと銀河線」に焦点をあてた「The Northern Milky Way 北海道ちほく高原鉄道」の、大きく分けて2部構成をとっています。
前者の写真は
落合駅(根室線。上川管内南富良野町)に止まるディーゼルカー
ルピナスの咲く線路わき
こいのぼりが風に揺れるのを望みながら走るディーゼルカー
ぽつんとたつ南美深待合所(宗谷線、上川管内美深町)
古びた由仁駅の前を歩く老女
雪原を走る単行ディーゼルカー
パシクル沼と原野の中を走る10輛編成の特急スーパーおおぞら
疾走する特急宗谷
網走-知床斜里間の列車に乗り込む人々
夕日を浴びて光るレール
などなど。
列車、自然風景、そして人の3つの要素がバランス良くおさめられた、良質の鉄道写真になっています。
筆者が確認できただけでも、厚床(根室市)、母恋(室蘭市)、北星(宗谷線、名寄市)など、いったいいつ撮ってたんだろうと思うほど、撮影地はあちこちにわたっています。
もうひとつの特色は、SLとディーゼルカーがほとんどで、電車は、雪まみれになった車輛を撮った1点だけのこと。
「えーっ、ぜんぜん意識してませんでした」
と、衣斐さんは話しており、車輛マニアではないようです。
もうひとつは、昨年4月に廃止された北海道ちほく高原鉄道の「ふるさと銀河線」(北見-池田間)をテーマにした写真で、20枚。
こちらは、フジクロームRDPIIIで撮影しています。
同線は、国鉄末期に道内のローカル線が軒並み消えていったとき、廃止対象のなかで唯一、第三セクターの鉄路として生き残った路線です。しかし、通学に使う高校生の減少や、車社会の進展などで、乗客が少なくなっていき、1世紀近い歴史に幕を閉じました。
筆者も以前、北見に住んでいたので、何度か乗ったことがありますが、沿線にこれといった観光地がないのも、存続にはネックになったという印象をもちました。
いまひとつ絶景にはとぼしい沿線ですが、衣斐さんは、乳牛のいる牧場と車輛を組み合わせたショットをはじめ、シラカバ林の中を疾走する車輛、待合室に置かれた枝を組み立てたベンチ、松本零士さんがデザインしたディーゼルカーなど、さまざまな被写体をとらえています。
筆者としては、大誉地(およち)駅の前で子どもや先生計15人が歓声をあげている1枚と、ロングシートでひざをかかえて横向きに坐ってぼんやり車窓を眺めている老女を写した1枚が、心に残りました。
最後から2枚目は、廃線の日なのでしょうか、船着場みたいに客とプラットホームの人が紙テープを手にしている印象的なショット。そして最後が、力走する車輛のショットなのも、余韻をふかめています。
こちらは、日高線の車窓から外を見る女の子などの写真。
けっこういい雰囲気だと思います。
写真は、自作を前に、愛機を手にする衣悲斐さんです。
それにしても、衣斐さんが、旧国鉄の深名線(深川-幌加内-名寄間)の廃止を撮影したいがために道内の大学にわざわざ進学したというのは、今回プロフィルを見るまで知りませんでした。
学生時代の衣斐さんは、金村勝を思わせるフットワークで、モノクロで街の風景などをガンガン焼いて発表していました。横浜に帰ったあと、彼のサイトを見ると、只見線など鉄道の写真ばかりなので、意外な感じを持っていたものです。
最近は、深夜バスのムックに文章と写真を載せたり、ますますその分野で活躍しているようです。
さて、つぎは本ブログの読者にはおなじみ、
「これまでのネガをさがしたら、けっこう(鉄道関係のものが)ありましたねー」
と、いつもの笑顔で話すウリュウさんです。
衣斐さんが全点が道内で撮影された作品であるのに対し、ウリュウさんは、道内がメーンでありつつも、英国での写真があるのが、「らしい」なあと思います。(あと、なぜか、東京の桜新町のが1枚)
上の画像の左側は「滝川」と題された1枚。
激しい雨で車窓がうるんだ目のようになっています。
夜の長万部駅構内
海沿いを疾走する電車(「朝里」)
ネオンを反射して輝くすすきのの市電のレール
プラットホームにできた小さな水たまりにうつる列車の姿…
全体的には、あまり車輛そのものや人はフレームに入っておらず、旅愁を漂わせる写真が多いのは、ウリュウさん流。
先だってひらいた個展「想いは旅をする」で展示した作品も3枚ありますが、たしかに、今回の2人展は、その個展の延長線上にあります。
わずかな感傷性は、札幌の若手写真家の多くに共通する感性だと思います。
こちらは、「Real Sapporo Rail Map」。
ネタバレになるので、詳細は記しませんが、展示はアイデア賞ものです。
筆者はおじさんなので
「わー、だいぶ増えたなあ。オレが子どものころは、琴似のつぎは手稲で、そのつぎは銭函だったもんなあ」
というのが、第一の感想です。
そのうち、市電バージョン、地下鉄バージョンもやったらおもしろいと思います。
07年7月17日(火)-22日(日)10:00-19:00(初日15:00-、最終日-17:00)
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G)
□衣斐さんのサイト「ebitks-photo.net」
□衣斐さんのブログ
□ウリュウさんのサイト
□ウリュウさんのブログ「豊平橋停留所」
以下、ウリュウさん関連の展覧会記事
■個展「思いは旅をする」 (07年5ー6月)
■春展(07年4月)
■“SAPPORO”PHOTOS... (07年2月)
■kanecho party(06年12月)
■写真展19761012(06年10月)
■二番街de ddd ART(06年9月)
■小樽鉄路写真展(06年8-9月)
■his life,her life,this life -まちの記憶と記録展-(06年7月)
■04年3月の写真展
(8月7日、衣斐さんの名前を直しました)
札幌を拠点にモノクロ写真を撮り続けるウリュウさん。
ふたりが、鉄道をテーマに写真展をひらいています。
鉄道写真といっても、それほどマニアックなものではなく、一般の人も楽しめます。
衣斐さんは全点カラー。ウリュウさんはモノクロ。
作風にもそれぞれちがいがありますが、旅への思いをさそわれる写真展です。
雄大な風景の中を。都市の生活の中を。
やってきて、そして、走り去る。
静と動。鉄道がある風景。それはきっと、あなたの物語です。
雄大な北海道の風景の中を。そして、都市の生活の中を。列車はやってきて、そして走り去る。
レールのあるところ、人間がいる。レールのあるところ、必ずどこかへとつながっている。
鉄道がある光景。そこには、物語があります。
今展覧会の公式サイトにある文章です。
衣斐さんの写真は、デジタルで撮った40枚近い写真と、昨年惜しくも廃線になった北海道ちほく高原鉄道「ふるさと銀河線」に焦点をあてた「The Northern Milky Way 北海道ちほく高原鉄道」の、大きく分けて2部構成をとっています。
前者の写真は
落合駅(根室線。上川管内南富良野町)に止まるディーゼルカー
ルピナスの咲く線路わき
こいのぼりが風に揺れるのを望みながら走るディーゼルカー
ぽつんとたつ南美深待合所(宗谷線、上川管内美深町)
古びた由仁駅の前を歩く老女
雪原を走る単行ディーゼルカー
パシクル沼と原野の中を走る10輛編成の特急スーパーおおぞら
疾走する特急宗谷
網走-知床斜里間の列車に乗り込む人々
夕日を浴びて光るレール
などなど。
列車、自然風景、そして人の3つの要素がバランス良くおさめられた、良質の鉄道写真になっています。
筆者が確認できただけでも、厚床(根室市)、母恋(室蘭市)、北星(宗谷線、名寄市)など、いったいいつ撮ってたんだろうと思うほど、撮影地はあちこちにわたっています。
もうひとつの特色は、SLとディーゼルカーがほとんどで、電車は、雪まみれになった車輛を撮った1点だけのこと。
「えーっ、ぜんぜん意識してませんでした」
と、衣斐さんは話しており、車輛マニアではないようです。
もうひとつは、昨年4月に廃止された北海道ちほく高原鉄道の「ふるさと銀河線」(北見-池田間)をテーマにした写真で、20枚。
こちらは、フジクロームRDPIIIで撮影しています。
同線は、国鉄末期に道内のローカル線が軒並み消えていったとき、廃止対象のなかで唯一、第三セクターの鉄路として生き残った路線です。しかし、通学に使う高校生の減少や、車社会の進展などで、乗客が少なくなっていき、1世紀近い歴史に幕を閉じました。
筆者も以前、北見に住んでいたので、何度か乗ったことがありますが、沿線にこれといった観光地がないのも、存続にはネックになったという印象をもちました。
いまひとつ絶景にはとぼしい沿線ですが、衣斐さんは、乳牛のいる牧場と車輛を組み合わせたショットをはじめ、シラカバ林の中を疾走する車輛、待合室に置かれた枝を組み立てたベンチ、松本零士さんがデザインしたディーゼルカーなど、さまざまな被写体をとらえています。
筆者としては、大誉地(およち)駅の前で子どもや先生計15人が歓声をあげている1枚と、ロングシートでひざをかかえて横向きに坐ってぼんやり車窓を眺めている老女を写した1枚が、心に残りました。
最後から2枚目は、廃線の日なのでしょうか、船着場みたいに客とプラットホームの人が紙テープを手にしている印象的なショット。そして最後が、力走する車輛のショットなのも、余韻をふかめています。
こちらは、日高線の車窓から外を見る女の子などの写真。
けっこういい雰囲気だと思います。
写真は、自作を前に、愛機を手にする衣
それにしても、衣斐さんが、旧国鉄の深名線(深川-幌加内-名寄間)の廃止を撮影したいがために道内の大学にわざわざ進学したというのは、今回プロフィルを見るまで知りませんでした。
学生時代の衣斐さんは、金村勝を思わせるフットワークで、モノクロで街の風景などをガンガン焼いて発表していました。横浜に帰ったあと、彼のサイトを見ると、只見線など鉄道の写真ばかりなので、意外な感じを持っていたものです。
最近は、深夜バスのムックに文章と写真を載せたり、ますますその分野で活躍しているようです。
さて、つぎは本ブログの読者にはおなじみ、
「これまでのネガをさがしたら、けっこう(鉄道関係のものが)ありましたねー」
と、いつもの笑顔で話すウリュウさんです。
衣斐さんが全点が道内で撮影された作品であるのに対し、ウリュウさんは、道内がメーンでありつつも、英国での写真があるのが、「らしい」なあと思います。(あと、なぜか、東京の桜新町のが1枚)
上の画像の左側は「滝川」と題された1枚。
激しい雨で車窓がうるんだ目のようになっています。
夜の長万部駅構内
海沿いを疾走する電車(「朝里」)
ネオンを反射して輝くすすきのの市電のレール
プラットホームにできた小さな水たまりにうつる列車の姿…
全体的には、あまり車輛そのものや人はフレームに入っておらず、旅愁を漂わせる写真が多いのは、ウリュウさん流。
先だってひらいた個展「想いは旅をする」で展示した作品も3枚ありますが、たしかに、今回の2人展は、その個展の延長線上にあります。
わずかな感傷性は、札幌の若手写真家の多くに共通する感性だと思います。
こちらは、「Real Sapporo Rail Map」。
ネタバレになるので、詳細は記しませんが、展示はアイデア賞ものです。
筆者はおじさんなので
「わー、だいぶ増えたなあ。オレが子どものころは、琴似のつぎは手稲で、そのつぎは銭函だったもんなあ」
というのが、第一の感想です。
そのうち、市電バージョン、地下鉄バージョンもやったらおもしろいと思います。
07年7月17日(火)-22日(日)10:00-19:00(初日15:00-、最終日-17:00)
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G)
□衣斐さんのサイト「ebitks-photo.net」
□衣斐さんのブログ
□ウリュウさんのサイト
□ウリュウさんのブログ「豊平橋停留所」
以下、ウリュウさん関連の展覧会記事
■個展「思いは旅をする」 (07年5ー6月)
■春展(07年4月)
■“SAPPORO”PHOTOS... (07年2月)
■kanecho party(06年12月)
■写真展19761012(06年10月)
■二番街de ddd ART(06年9月)
■小樽鉄路写真展(06年8-9月)
■his life,her life,this life -まちの記憶と記録展-(06年7月)
■04年3月の写真展
(8月7日、衣斐さんの名前を直しました)
いつも会場で衣斐さんと自分の作品を見ていると、挨拶文で書いた「静と動」が、二人それぞれの中にもあるんだな、と感じます。
そう、駅に止まりまた走り出す列車のように。
市電バージョンと地下鉄バージョン、会場で"タネ明かし"をすると皆さんから言われます。やらないわけにゃいかないじゃないですか(笑)。
早いものでもう後半に入りますが、最終日までいい旅を続けていこうと思います。
そうなんですよね、衣斐さんとウリュウさん、どちらかが「動」と「静」っていうんじゃなくて、ふたりとも、双方の要素を持っていると思うんですよ。
いろいろな方が会場を訪れて、「小さな旅」をたのしんでくれればいいなあ。
改めて先日の写真展にお越しいただき、また過分な感想をいただき本当にありがとうございました。
これを機に今度は東京(もしくは横浜)で写真展を開ければと思います。
その際は東京まで来ていただけるのでしょうか?(笑)
それではまたお会いしましょう。
…余談ですが、私の写っている写真の下のコメント。
「写真は、自作を前に、愛機を手にする衣悲さんです。」
名前打ち間違えられて悲しいです…(笑)。
東京…。
行きたいんですけどねえ。
またどこかでお会いしましょう。