北海道美術ネット別館

略称「ほびねべ」。美術、書道、写真の展覧会情報を発信。2010年7月から北見に隠棲中。コメント、トラバはお気軽に。

■阿部典英のすべて〜工作少年、イメージの深海をゆく〜 (4・鎮魂)=2012年5月6日まで、札幌

2012年04月16日 22時21分40秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前

 さて、テンエイさんは、下のリンク先以外にも、パリや東京での個展、釧路での「ヴァガボンド」展など、精力的に活動している。
 ことしは、これまで鯉江良二ら道外の気鋭の作家を招いて毎年開いてきた「交差する視点とかたち」が釧路芸術館などでも開催される予定で、旺盛な制作意欲はとどまるところを知らない。

 冒頭の大作は
「ネエ ダンナサン あるいは飛べない面長始祖鳥」
を裏側から見たもの。
 今展覧会の直前に完成した、できたてほやほやの新作である。

 阿部典英さんはこの作品を作りながら、米谷雄平、砂澤ビッキ、菅原弘記、丹野信吾…のことを思ったという。
 いずれも、北海道の美術の最前線をいっしょになって切り開いてきた盟友であり、いずれも鬼籍に入った作家たちでもある。

 テンエイさんなりの祈りであり、鎮魂のかたちなんだろうと思う。



 もうひとつ、私事にわたって恐縮だが、書いておきたいことがある。

 阿部典英さんは、札幌東高校を卒業して、ゴム会社に就職した。
 当時の大学進学率は昨今よりもはるかに低かったから、一般論としては、高卒で就職というのは、ごくふつうのことである。

 ただ、これは、裏返していえば、美術に関してはまったくの独学であったということだ。

 この事実は、筆者を非常に元気づけた。
 そして、励まされるのは、筆者だけではないと思う。
 
 阿部典英さんと同列に並べること自体おこがましいことかもしれないが、筆者も美術についてはまったくの独学であり、しろうとである。

 筆者の無知蒙昧さにあきれた体験をお持ちの方も多いだろう。
 見ることについて、とくに格段の才能があるわけでもない。
 専門的教育を受けていないということが、大きなコンプレックスとして、いままでじぶんを苦しめてきた。

 しかし、今回の展覧会を見て、やる気があって、一生懸命、かつ楽しんで取り組めば、なんとかなるのかもしれないと思えてきた。
 あるいは、なんとかならないのかもしれないが、卑屈になることなく、地道に続けていこうと思った。

 いちばん大事なのは、専門的教育を受けたかどうか、ではなく、持続する志なのだろう。


2012年4月7日(土)〜5月6日(日)午前9:30〜午後5:00(入場〜4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D

一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど



・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分

ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています


★オープニング・トーク
4月7日(土)9:30〜(約40分)
トーク/阿部典英
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)

★トーク&ジョーク・ショー「走るブリキ男と工作少年、大いに語る」
4月14日(土)午後2〜4時
トーク/秋山祐徳太子(美術家)、阿部典英
会場/講堂(240席・先着順) 参加無料

★ワークショップ(募集制)「自由に、グランブルー!〜深海を想像して描く〜」
4月28日(土)午後1:30〜4:30
講師/阿部典英
会場/特別展示室と当館造形室(観覧券が必要です)
展覧会を作家や学芸員と一緒に観覧した後、海の底のようすや生き物を自由に想像して全員で描くワークショップ。大人も子どもも参加できます。定員50人。4月10日(火)募集開始。

★ギャラリー・ツアー(作品解説)
4月7日(土)、5月5日(土)、各日午後3:00〜(約40分)
解説/当館学芸員
会場・特別展示室 (観覧券が必要です)

★ギャラリー・トーク
4月21日(土)午後3:00〜(約40分)
トーク/当館学芸員
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)


 関連記事

阿部典英さん、北見に登場!

■ハルカヤマ藝術要塞(2011年。執筆中)
■ 「札幌作家グループ展」阿部典英+柿崎熙+下沢敏也 帯広コンテンポラリーアート−真正閣の100日(2011)

【告知】阿部典英展 「ネエ、ダンナサン…」(2011)
【告知】第7回 2011新春特別企画展 阿部典英展 TEN-EI ABE EXHIBITION(2011年1〜3月)

■北海道立体表現展(2010年、執筆中)
交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年)
阿部典英 Ten-ei Abe Exhibition(2009年)
さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年)
SAPPORO ART PLANETS展 (2009年5月)
見えるもの⇔見えないもの−イマジネーションのちから− (2009年1−3月)

交差する視点とかたち vol.2 (2008年7月)

交差する視点とかたち 川上力三・阿部典英・下沢敏也(07年7月)
SCAN DO SCAN(07年10−12月)
企画展「07→08」(画像なし)

WAVE NOW 06(阿部さんが参加)
北海道立体表現展(06年、画像なし)

冬の定山渓(「ミスカッパ」の画像あり)

阿部典英個展(2002年)
北方圏美術展(2002年、阿部さんが参加)


※この項終わり
コメント (4) |  トラックバック (0) | 

■阿部典英のすべて〜工作少年、イメージの深海をゆく〜 (3・展開)=2012年5月6日まで、札幌

2012年04月15日 22時32分54秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前

 後半は木彫がメーンとなる。

 「ネエ ダンナサン」の2点がならんだ部屋。
 ステンレスがあわせ鏡のように用いられていて、なんの気なしにのぞき込むと、永遠の奈落に落ち込みそうな錯覚に陥る。
 天国と地獄。あるいは、生と永遠。
 そのあいだに、わたし(=鑑賞者)がいる。

 背後には、膨大な数のデッサンがならんでいる。
 阿部典英さんは、おそらく、ちょっと時間があれば、手が動いてしまう人なんだろうと思う。北海道弁でいえば、絵が描かさるのだろうなあ。
 魚介類が多いのがおもしろい。

 つぎの展示室は、窓を開放していた。
 壁には、「ネエ オヨメサン」シリーズがびっしりと並んで圧巻。
 いかにも、どこかとぼけたユーモアをたたえたものが多い。
 魚介や昆虫を聯想させ、見ていると楽しくなってくる。



 ところが、その近くに置かれたインスタレーション「ネエ ダンナサン あるいは原風景」は、森閑とした北海道の原生林のようなたたずまいだ。
 この作品は、1998年、スカイホール全室を使って開かれた個展の中心となった大作であり、筆者が初めて阿部作品と本格的に向き合った、個人的に懐かしいものでもある(当時書いたテキストは、こちらのページの下に引用してある)。



 むりやり図式をつくることは差し控えた方がいいのかもしれないが、オヨメサンのユーモアと、ダンナサンの峻厳さは、とてもおなじ作家の手になるとは思えないほど、対照的なものに、筆者には感じられる。

 さらに興味深いのは、オヨメサンが海に由来、ダンナサンが森に由来しているように思われることだ。

 一般論を述べれば、森は、確かに原風景的な感興にわたしたちを誘うものを持っているが、その感興を純化することは、精神性や内面性へと潜行していくことであり、同時に、ドイツロマン派的なナショナリズムにつながるような危険性をどこかに秘めているように思う。
 対して、海のもつおおらかさは、開放性、コスモポリタニズムの暗喩たりえている。

 もし「父なる大地、母なる海」という言い方が可能であれば、阿部典英芸術は、その両方をうまくバランスを取って自らのうちに養っているとはいえないだろうか。
(先に言及した1998年当時のテキストは、わたしが、典英さんのユーモラスな面に触れる前に書いたものだったので、ドイツロマン派的な側面の強いものになっており、いま読み直すとかなり偏った感をまぬかれない)




 こちらは、2002年に札幌・円山のCAIで開いた「阿部典英個展 [Propagation]」のインスタレーション。当時は、上述の作品と同じく「ネエ ダンナサン あるいは原風景」と呼ばれていたようだ。
 最初見た当時は、濃厚なエロティシズムを感じたことを記憶しているが、今回見ると、より根源的な生命とか、精神的なものも秘めているように思う。




 祭壇のような作品の両側に居並ぶのが、「ネエ ダンナサン あるいは否・非・悲」。アフガニスタン戦争に材を得た木彫で、たしかに、うつむいて悲しむ母親のように見えてくる。
 ただ、すぐれた彫刻作品がみなそうであるように、これも、きっかけとなった時事的な事件を離れて見ても、人間の根源的なかなしみを訴えている作品たりえているのではないか。



2012年4月7日(土)〜5月6日(日)午前9:30〜午後5:00(入場〜4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D

一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど




関連行事、関連記事へのリンクは、(1)に書いてあります。



・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分

ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

■阿部典英のすべて〜工作少年、イメージの深海をゆく〜 (2・出発)=2012年5月6日まで、札幌

2012年04月14日 22時34分51秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前

 さて、会場にはいるとまず目につくのが、半紙に書いた大量の書がびっしりと壁を埋めつくしている情景だ。
 しかも、一般的な漢字やかなではなく、いわゆる「前衛書」が大半を占める。

 昨年5月、北海道新聞に連載されていた「私のなかの歴史」でも回想されていたが、阿部典英さんは札幌東高時代、美術部とは肌が合わず、書道部に所属していた。
(最初、美術部に入っていた頃描いた絵が1枚だけ展示されている。長屋を描いた具象画だ)

 当時、書道の先生が偉かったのは、ほかの生徒が授業時間にふつうの書の練習をしていたのに、彼だけには自由に書くことを認めていたことだ。
 しかも、ある時は「ぼくよりも才能がある」という意味の文を書いていた。
 この高評価に当時の阿部少年がいかに励まされたか。想像に難くない。

 壁にずらりと並んだ書は、モノクロの抽象画のようでもある。
 たしかに井上有一の影響は歴然としているが、それを差し引いても、ほとばしる才能がわかる。
 このまま書の道を進んでも、大成したことは間違いないと思う(と、ヤナイのお墨付きを得たところで、なんの保証にもなるまいが)。
 もっとも、書壇の雰囲気は、阿部典英さんには合わないかもしれない。




 高校を出て働きながら、全道展や行動展、シェル美術賞で2年連続佳作賞など、数々の受賞を重ねていた1960年前後の絵画。
 当時、画壇を席捲していたアンフォルメル絵画、前衛絵画との共通性が感じられるが、いま見ても、独自のスピード感に満ちている。




 手前はソフトスカルプチャー。
 その奥に見える、床面から何本もはえている銀色の突起は、今回の展覧会ポスターにも使われている「手」である。

 右側には、似顔絵漫画のような、人の顔をかたどった金属作品が並んでいる。
 魚の骨をそのまま作品にしたものもあり、ポップで楽しい展示室になっている。

 つぎのような文が、壁に貼られていて、あまりのかっこよさに思わず脱帽した。
 文中の「ここ」は、後志管内島牧村。

(前略)ここが私にとって最初の海との出合いであった。夏の静かな穏やかな海も、冬が近づくと狂ったように暴れる。それは狩場山からの山颪、茂津多岬の山背風によるのだろうか。どの家でも冬囲いをして、この強風を防ぐ。しかしいま思い返せばこの少年時代の一つ一つが私の創作活動の源になっている。大きな石や岩礁に砕けよとばかりぶつかる大きな波は、ジャクソン・ポロックよりもはるかに大きく力強いドリッピングであったしそれにガンとして対峙した石や岩礁はフォートリエやタピエスの画肌のように傷つけられることなく、またヘンリー・ムーアの研ぎすまされたかたちより強い塊である事を教えてくれた。今でも行き詰り思案にくれる時は海に行くことにしている。荒れ狂う海は人々を近づけず忍耐を問い思考を強いる。そして凪の海は活動を促し行為を強いる。




2012年4月7日(土)〜5月6日(日)午前9:30〜午後5:00(入場〜4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D

一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど

関連行事、関連記事へのリンクは、(1)に書いてあります。



・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分

ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

■阿部典英のすべて〜工作少年、イメージの深海をゆく〜 (1・総論)=2012年5月6日まで、札幌

2012年04月14日 08時18分21秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
Ten-ei Abe Retrospective
2012 April 7 (Sat.)- May 6(Sun.) 9:30am - 5:00pm(enter till 4:30pm)

at Hokkaido modern art museum
(N1W17,Chuo-ku,Sapporo-city,JAPAN)

 
 1939年生まれ、北海道を代表する美術家のひとりとして今なお精力的に制作を続ける阿部典英てんえいさんの回顧展。
 とにかく楽しいので、おすすめ。

 この楽しさは、なんだろうと考えていた。
 ユーモラスな作品はたしかに多いのだが、けっして、お気楽なものばかりではない。
 人間の生と死に正面から切り込んでいる大作も、いくつもある。

 この問いには、ブログ「散歩日記 X」のSHさんが見事な答えを出していた。
 それは
「作家の「もの造りが大好き」という感じが伝わってくるんですよね。」
というもの。
 筆者もそのとおりだと思う。


 冒頭の画像は 
「ネエ ダンナサン あるいは 静・緩・歩」。

 黒鉛を表面に塗り込んだこのシリーズ中でも、最大の1点だ。
 巨大な昆虫を思わせてどこかユーモアが漂う。同時に、黒光りする表面は重厚で、時代の虚飾や戦争を撃つかのようでもある。

 この、楽しさと重々しさの同居こそが、阿部典英さんの作品の最大のポイントではないかと、今回感じたのだった。




 以下、この展覧会の大きな特徴をふたつ挙げておく。

 ひとつは「すべて」と、わざわざ銘打っていることについて。

 じつは、美術館の企画による「阿部典英展」は、2003年に札幌芸術の森美術館でも開かれている。
 このときは、出品作はすべて立体であった。
 しかし、今回は、ほんとうに多彩である。立体のほかに、

・高校時代の書
・初期の絵画
・デザインしたスキー靴
・表紙にイラストを描いた雑誌

などまで展示している。「すべて」というのは、誇張ではない。

 なお、美術家にとって、公立や大きな私立の美術館が企画して個展を開くというのは、最大の名誉のひとつといっていい。
 生前に複数回の個展が開かれた北海道ゆかりの美術家は、これまで、一原有徳、難波田龍起なん ば た たつおき、鎌田俳捺子ひなこの3人しかいないはずである。


 もうひとつは、全作品、写真撮影がオーケーだということ。
 むろん、三脚やストロボの使用はだめなのだが。

 これについては、作者が以前、北見にいらしたとき、この意向を漏らしていたので、筆者が
釧路芸術館で池田緑さんの個展をしたときも、撮影可だったので、美術館に話してみては」
と言ったことがある。
 もちろん、自分のおかげだと言うつもりはないが、日本の美術館は欧米に比べると撮影不可のことが多すぎるので、今回の展覧会がその風潮に風穴を開けてくれればいいと思う。

 長くなってきたので、続きは別項で。

 
2012年4月7日(土)〜5月6日(日)午前9:30〜午後5:00(入場〜4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D

一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど



・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分

ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています


★オープニング・トーク
4月7日(土)9:30〜(約40分)
トーク/阿部典英
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)

★トーク&ジョーク・ショー「走るブリキ男と工作少年、大いに語る」
4月14日(土)午後2〜4時
トーク/秋山祐徳太子(美術家)、阿部典英
会場/講堂(240席・先着順) 参加無料

★ワークショップ(募集制)「自由に、グランブルー!〜深海を想像して描く〜」
4月28日(土)午後1:30〜4:30
講師/阿部典英
会場/特別展示室と当館造形室(観覧券が必要です)
展覧会を作家や学芸員と一緒に観覧した後、海の底のようすや生き物を自由に想像して全員で描くワークショップ。大人も子どもも参加できます。定員50人。4月10日(火)募集開始。

★ギャラリー・ツアー(作品解説)
4月7日(土)、5月5日(土)、各日午後3:00〜(約40分)
解説/当館学芸員
会場・特別展示室 (観覧券が必要です)

★ギャラリー・トーク
4月21日(土)午後3:00〜(約40分)
トーク/当館学芸員
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)


 関連記事

阿部典英さん、北見に登場!

■ハルカヤマ藝術要塞(2011年。執筆中)
■ 「札幌作家グループ展」阿部典英+柿崎熙+下沢敏也 帯広コンテンポラリーアート−真正閣の100日(2011)
【告知】第7回 2011新春特別企画展 阿部典英展 TEN-EI ABE EXHIBITION(2011年1〜3月)

■北海道立体表現展(2010年、執筆中)
交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年)
阿部典英 Ten-ei Abe Exhibition(2009年)
さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年)
SAPPORO ART PLANETS展 (2009年5月)
見えるもの⇔見えないもの−イマジネーションのちから− (2009年1−3月)

交差する視点とかたち vol.2 (2008年7月)

交差する視点とかたち 川上力三・阿部典英・下沢敏也(07年7月)
SCAN DO SCAN(07年10−12月)
企画展「07→08」(画像なし)

WAVE NOW 06(阿部さんが参加)
北海道立体表現展(06年、画像なし)

冬の定山渓(「ミスカッパ」の画像あり)

阿部典英個展(2002年)
北方圏美術展(2002年、阿部さんが参加)
コメント (8) |  トラックバック (0) | 

■第11回サッポロ未来展 RENEWAL (2012年3月19〜24日札幌、3月28日〜4月1日小樽)

2012年03月28日 21時32分03秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
(敬称略。長文です)

Exhibition Sapporo Mirai
2012 March 19 - 24 at Sapporo Tokeidai Gallery
March 28 - April 1 at Otaru City Museum of Art

 40歳以下の道内在住・出身者によるグループ展で、毎年開かれている。
 昨年春は、道立近代美術館で10回目を記念した大規模な展覧会を催した。祭太郎のパフォーマンスなどもあり、絵画から現代美術までさまざまなジャンルにおよぶ、楽しい会場だった。

 それに比べると、ことしは第1〜9回の会場に戻り、時計台ギャラリーの7室すべてを使っているのであるが、非常におとなしくなった感じがした。
 これまでこの未来展を引っ張ってきた札幌の波田浩司(正確には江別在住だけど)や東京の村山之都、渡辺元佳といった面々が「卒業」してしまったこともあるのだろう。出品者が少なくて地味な展覧会になったという印象は否定できない。

 そんな中で、絵画で光っていたのが、佐藤仁敬(冒頭画像の右側)。
 木の輪とふたりの女性が苦しげな格好で宙に浮かぶ「paranoid」シリーズもあったが、完全にモノクロームの「ツミキのニオイ」が新境地を開拓しようという苦闘を感じさせる。

 初期からのメンバーで、今回から事務局長を務める宮地明人は「Paradox」という題の作品を2点。



 宮地さんとは展覧会全体の話ばかりをして、肝心の、絵のことを尋ねるのを忘れていた。
 卓越した描写力は相変わらずなのだが、右側の女性は、どうして脚がないのだろう。

 宮地さんの絵は、単にリアルなだけではなく、画面のどこかで
「これは、絵に過ぎないんですよ」
ということをわざわざ表明しているかのように、筆者には思えてくるのだ。

 洋画(絵画)では、やはりこの2人が目を引いた。

 ほかに、神保光宏「海の見える風景」は、石狩・厚田の高台だろうか。
 どうしても北山寛一を思い出さずにはおれない。
(※追記。北山さんの名前が誤っていたので訂正しました。申し訳ございません。)


 全体的には、微細な描写よりも、わりあいおおまかなタッチの絵が多いようだった。

 日本画では谷地元麗子。



 「夢模様」は、金箔、アヤメなど、従来の日本画の伝統を踏まえている。
 ここでいう「日本画」とは、西洋画の導入の危機感にともなって誕生した絵画ジャンルではなく、それ以前から存在する作品である。
 彼女の絵には透視図法的な奥行きはつねに存在しない。その意味で「現代的」なのだが、「前近代的(=伝統的)」であることと何ら不自然さなく共存していることが、彼女の絵の真骨頂というか、おもしろみであると思う。 

 3階は、絵画以外の作品が集められている。
 コンセプチュアルな現代美術作品が減って、木工や陶芸など、従来はこの展覧会であまりなかったタイプの作品が散見される。

 澁木智宏「庭」はG室全部を使用した。



 単なる枯山水ではなく、すべて羊毛でできているのがこの作品のキモであろう。


 出品作は次の通り。
宮地明人 「Paradox」(同題2点)
手塚昌広 「ten.」「side」「corner.」
佐藤仁敬 「知性のハコ」「paranoid」「ツミキのニオイ」
藤井敦子 「History of Life Sciences」(同題2点)
田村美樹 「動じない日々」
谷掛幸恵 「業火 I」「業火 II」「業火 III」

谷地元麗子「夢模様」「寒椿」「カトレア」「蓮花」 「菊」(同題2点)
渡邊里美 「雪かき」「馳せる」「棲み処」
神保光宏 「回復」「海の見える風景」「無題」
高村宏奈 「白露」「芳」

風間雄飛 「tef-tef」「たられば」「だれかれかさん」
北岡依知子「progress」
若林啓  「組手」
佐々木ゆか「dress」
河野健  「トリケラトプス」
藤田遼子 「parallel」
中川治  「アクアリスト〜希望の陽の中へ〜」「アクアリスト〜朝日の大輪〜」
安居沙織 「MIRROR BALL」「曖昧な場所」

小川由佳 「windows」
戸倉彩音 「ぽこぽこころ」
齋藤一  「空空」
佐藤舞  「再生」
川内隼人 「twig」
佐藤誠  「内向系男子」「浸食−空−」「浸食−地−」「無機生命体−逆−」「魑魅魍魎−欲−」「人生紙風船〜一期一会〜」「神様の遊び〜洋風魔人〜」「消灯時間」「匿名希望」「地に足が付かない」「酒の酔い本性違わず」「一寸先は闇」
深瀬暢希 「around me」 「ツイッターからの抜粋」(4点)
澁木智宏 「庭」

2012年3月19日(月)〜24日(土)10:00〜6:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
3月28日(水)〜4月1日(日)
市立小樽美術館(小樽市色内2)

□サッポロ未来展 http://www.sapporomiraiten.com/
□Facebook http://www.facebook.com/exhibition.sapporo.mirai
□twitter https://twitter.com/#!/miraiten

・関連する当ブログの記事
第9回サッポロ未来展「Forum」
第8回 (2009年)
第7回 ■第7回続き
第6回
第5回
第3回
第2回
第1回




・JR小樽駅から約700メートル、徒歩9分
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

■棟方志功 幻の肉筆画展 (2012年3月3〜25日、札幌)

2012年03月25日 01時10分08秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
 このブログの読者で棟方志功を知らない人はあまりいないと思う。
 1903年青森県生まれ、75年歿。20世紀日本を代表する木版画家である(ただし、本人は「版画」とは言わず、「板画」と称した)。

 今回の展覧会は、「湧然する女者達々」や、大作「追開心経頌」といった板画もあるが、大半が肉筆画であるところがポイント。京都の友人宅のふすまや扉に、自由奔放に描いた絵や書を、まるごと札幌に持ってきて展示しているのだ。
 ふすまに大書した「乾坤無妙」など、見ているうちに
「ぐおおおおお」
という擬音が聞こえてきそうなほどの迫力と勢いがある。
 会場の一角には、和室をまるごと再現したコーナーもあり、ふすま絵などがどういう雰囲気でしつらえられていたのか、知ることができた。
 興味深い展覧会であり、貴重な機会であることは、まちがいない。

 しかし…、筆者は考えてしまった。

 会場に出ているものの質が悪いといっているのではない。
 大半のものは、棟方志功が、不特定多数の他人に見せようと意図して制作したものではない。
 親しい人のために個人的に描いたり書いたりしたものである。だから、ここまで「作品」ということばはいっさい使っていない。いわゆる「作品」とは言えないと思うからだ。
 そういう性質のものをとらえて、いいとか悪いとか言う権利が、わたしたちにあるのだろうか。

 もうひとつ。
 会場に並んでいるのは、大半が一軒の家の中に本来あったものである。
 そういうものを、展覧会場に持ってきて、明るいフラットな光のもとで、解説の文章や題名のキャプションつきで眺めているのは、よく考えると奇妙な事態である。
 歴史的に見て、芸術の鑑賞方法はひとつではない。ラファエロの美しい聖母像はもともとは教会の注文に応じて信仰に資する目的で描かれたものであろうし、ルーベンスの肖像画は王族の屋敷に麗々しく飾られるためのものだったろう。
 そして、日本の場合は、茶室や床の間に掛けられる軸であったり、部屋を囲むふすまや屏風であったりしたのである。

 筆者も、ブログの読者のみなさんも、ギャラリーや美術館で美術品を鑑賞することが多いと思うが、長い歴史の中では、その方が特殊な慣習であるといえそうである。
 ホワイトキューブのなかでこれらの棟方志功の書やふすま絵を見ることが、果たして正しい鑑賞方法なのか? 別に、ダメだとは言わないし、もとの京都の家にあったままなら自分だって見ることができないわけだが、それにしても、本来の鑑賞のありかたとは微妙に異なっているのは、確かなようだ。

 よく
「アートのある暮らしはすてきです」
などと言う人がいる。
 大筋では賛成だけど、たとえば、自分の家が、これらの棟方志功の書や絵に満ちていたらどうだろう。
 とても安らげないのではあるまいか。
 大胆な筆遣いも一因であるが、それ以上に、非常に高額であるからだ。
 彼のふすまがある部屋には、子どもや猫は一歩たりとも立ち入らせることができないであろう。もしふすまがすこしでも破れたりしたら、何十万円、何百万円という損失である。
 大金持ちだけが
「ありゃあ、ちょっと傷ついちゃったよ、ははは」
などと笑っていられるのである。筆者のような人間には絶対にムリだ。

 自宅に高額なアートがあると、むしろ、暮らしはすてきにならないのではないか。


 最後に、複雑な気分になったことを書く。

 「追開心経頌」などを見ていると、他の客とぶつかりそうになるのだ。

 書や日本画の展覧会では右から左へと鑑賞していくのが常識である。
 いまはインターネットなど、横書きの文章が多くなっているが、そもそも日本語の文章は右から左に描いていくものだからだ。絵巻物なども右から左という順になっている。
 まして棟方志功の作は、お経が絵といっしょに刻まれていたりするから、左から順に見ていくということはありえない。
 頼むから、お経を左から読まないでもらいたいと思う。


 いろいろ書いたけれど、総じて言えば、おもしろい展覧会だった。  
 意外と板画もあるし、油彩も3点あるのは珍しい。


2012年3月3日(土)〜25日(日)午前10時〜午後8時(入場〜午後7時半)、期間中無休
プラニスホール(札幌市中央区北5西2 札幌エスタ11階)
http://www.jr-tower.com

※エスタ(旧そごう)のエレベーターは常に混雑しているので、始発である地下から上っていくのがベストです
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

■Art Wave H² What art we doing? (2012年2月29日〜3月6日、北見)

2012年03月06日 01時25分05秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
 案内状によって「Art Wave H² 」とか「A.W.H²」とか、表記が異なる不思議なグループ展。「 H²」は「Hの2乗」という表記なのだが、これはひょっとすると機種依存文字で、場合によってはちゃんと出ないんじゃないかと不安である。
 下にリンクを貼っておいたが、昨年の11月にもグループ展を開いたばかり。ただ、メンバーは多少入れ替わっている。

 どういう集まりなのかを取材してくるのを忘れたが、オホーツク地方の現代美術を引っ張るベテランの林弘堯さんの名前があるので、おそらく林さんの指導する教室展だと思うのだが、それにしては、これくらい統一性のない(コレはほめ言葉です)展覧会もめずらしいだろう。
 ふつうの写実的な油絵もあれば、抽象画もあり、マーブリングの小品をずらりとならべた人もあれば、天井からインスタレーションをつるしている人もいる。

 石黒紫水さんの「Flower 〜命燃ユル〜」が気になった。
 主にモノクロ写真を素材としたコラージュだが、マネキン、工場地帯、風景などを組み合わせ、それに、カラーで撮った、花が燃える写真などを交えて、巧みに心象風景を構成している。

 林弘堯さんは
「One please on the earth」
という題だったが、これは
「One place on the earth」
の誤記ではないのだろうか。
 床にビニールを敷き、青い絵具を散らした。床に空があってもいいじゃないかという、逆転の発想。
 
 
2012年2月29日(水)〜3月6日(火)9:30〜5:00(最終日〜2:00)
NHKぎゃらりー(北見市北斗町2 NHK北見放送局内)

AWH2+8 What are we doing? (2011年11月)
道展 オホーツクの作家展 (2011年1月)=林弘堯さんの作品写真あり



・JR北見駅から直進、約1.2キロ、徒歩16分
・大通、北見駅から北海道北見バス「緑ケ丘団地線」で「NHK」降車すぐ。「高栄団地線」「若葉線」で「北斗高校」降車、約320メートル、徒歩4分
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

謙彰 「To Be」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年01月22日 22時29分12秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
(承前)

Kensyo "To Be"

 謙彰さんは1976年生まれ。札幌在住。 

 山田良さんの白い金属線にいざなわれるようにして、廃墟ホテルの跡を上っていくと、そこに謙彰(kensyo)さんの作品が3点置かれている。



 以前も書いたが、謙彰さんの作品は、ヌード写真が題材になっているが、いわゆるヌード写真の範疇に収められるものとはいささか異なるのではないかと思われる。

 そして、今回の設置場所は、謙彰さんの作品になぜか合っているように感じられる。



 作家本人が図録から2005年より前の個展などを経歴から外しているので、筆者も下のリンク先には入れなかったのだが、それ以前のSOSO CAFEなどでの個展では作家は、どこかSFめいたテキストとセットでの発表が多かった。
 近未来的な世界観は、今回の会場にぴったりなのだ。



http://kensyo-web.net/

夕張清水沢アートプロジェクト(2011年)

さっぽろフォトステージPart2 (2009年)
さっぽろフォトステージPart1 (2009年)
kensyo個展“To Be” (2009年)

500m美術館(2008年11月)
さっぽろフォトステージ(2008年11月)

FIX MIX MAX!アワード入賞作品展(2007年。Kensyoさん入賞)

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

吉田茂「洗濯物−いのちの連鎖」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年01月18日 23時44分29秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前)

 Shigeru Yoshida “Laundry−Chain of Life”
(図録の英語題はスペルミスと思われるので、修正しました)

 吉田茂さんは1943年生まれ、札幌在住。

 吉田さんは円山でギャラリーを経営するかたわら、作家としても活動している。
 個展は少ないが、北海道立体表現展など大型グループ展には数多く出品している。団体公募展には所属していない。

 この10年ほどの間、筆者が見てきた吉田さんのインスタレーションは
「時間による変容」
をテーマにしてきたと思う(あくまで筆者の考え)。
 支持体に粘土を塗布する。それは、時間の経過とともにひび割れていく。
 その変化、それ自体が、吉田さんの作品の肝だったと思っている。

 今回、図録に掲載されている写真からだけでは、吊るしてあるビニールのようなものと、地面に置いた布状のものとの関連性がわからない。
 もともとは一体で、それを剥がしたものなのかもしれない。


□STV興発の関連ページ http://www.stvkohatu.co.jp/entransart/exhibition/2011/095yosidasigeru/095yoshidasigeru.html 

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

田村陽子「海を見ながら」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年01月17日 22時57分38秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前)

Yoko Tamura “While Looking at the Sea”

 田村陽子さんは1949年生まれ、札幌在住。

 テキスタイル作家であるが、現代美術の領域で活躍している。

 近年、北広島市の企画展「はこ展」や、JRタワーのARTBOX、ギャラリー門馬での個展などで発表した作品は、いろいろな人の足で、わらぞうりを編むというプロジェクト。
 片足のわらぞうりと名前が並ぶだけのインスタレーションなのに、さまざまな大きさの足は、見る人の想像を促す。すでに、この世にない人の足で型を取ったものもあった。

 今回は、きわめてシンプルで、さわやかな作品だと思った。

 素材として
「麻糸、錦糸、金糸、染料他」
が挙げられているが、ご覧のとおり、会場に元からあった2本の木のあいだにはり渡したハンモックである。

 ハンモックに寝そべると、そこから石狩湾が望まれる、という作品なのだ。

 海に近い、というロケーションの利を、存分に生かしている。

 本郷新も、この地にアトリエを建てた理由として、海が見えるということがあったに違いない。

 ハルカヤマ藝術要塞の会場の近くに、オーンズというゲレンデがあり、もう少しいくと、札幌冬季オリンピックの会場となった手稲山のスキー場がある。
 わたしたちは特別なことだと思っていないのだが、じつは、滑りながら海が見えるスキー場というのは、世界的にもそれほどたくさんあるわけではないらしい。

 筆者はごろ寝はしなかったが、時間に余裕があったら、そういうぜいたくなひとときを過ごしたかったと思う。



関連する記事
はこ展(2009年)
下沢トシヤ・田村陽子二人展(2006年)
田村さんの06年の個展「50名の記憶する足形」
第31回北海道抽象派作家協会展
北海道立体表現展(03年)
02年の田村さんの個展


コメント (0) |  トラックバック (0) | 

楢原武正「大地ノ開墾 2011−9」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年01月16日 23時46分39秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前)

Takemasa Narahara “LAND/CULTIVATION 2011-9”

 楢原武正さんは1942年生まれ、札幌在住。

 巨大なインスタレーションで見る人を圧倒してきた楢原さんも2012年で70歳。
 しかし、エネルギーはまだまだ健在のようである。

 ここに持ち込まれている部材は、おそらく、ギャラリー大通美術館(札幌)の毎年1月の個展などで用いてきたものと同じであろう。
 黒く塗ったブリキ板、おびただしい本数のさびた釘を打ち付けた木片、ぐるぐる巻きにされた針金…。
 楢原さんが、日記をつづるように日々こつこつと続けてきた単純な営為の集積が、かたちになって出現している。




 楢原さんのインスタレーションはこの20年余り、つねに「大地開墾」という題がつけられている。
 もともと十勝の開拓農家であったと聞いたことがある。その意味では、いかにも北海道らしい、北海道の歴史を踏まえた作品であるということができる。
 近年は、自然や環境の保護が叫ばれるようになり、開拓とか開墾、開発といった語の持つ輝きは薄れつつある。
 しかし、それでもなお、人は原生林や原野では生きていけず、それらを切り開いた農地の恵みによって命をつないでいくことのできる存在なのである。

 いったん切り開かれながらふたたび森林にかえろうとしていた今回の会場にあって、楢原さんの作品は、決して自然の前に屈することのない人間の姿をあらわしているものといえるのかもしれない。



□(参考)プロフィル

関連する記事
楢原武正展(2010年)

楢原武正展 大地/開墾(2009年)

第27回存在派展(2007年)
第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII(07年。画像なし)
楢原武正展 大地/開墾(07年、画像なし)

第26回存在派展
北の彫刻展2006(画像なし)
楢原武正展(06年)
■第25回存在派展

楢原武正展 大地/開墾(04年、画像なし)

■第23回存在派展(画像なし)
北海道立体表現展'03(画像なし)
祭りFEST展パート2(03年、画像なし)
楢原武正展 大地ノ開墾「墨」による(03年)

■第22回存在派展(画像なし)
“The Reassurance Found in Everyday Life”/「安堵感」(02年、画像なし)

楢原武正展 大地開墾2001−2(画像なし)

(この項続く) 
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

柿崎熙「胚胎する森」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年01月08日 22時38分19秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前

 Hiroshi Kakizaki “Pregnant Forest”

 柿崎煕さんは石狩市在住。

 これまで主に発表してきた作品は「林縁から」という白く着彩した立体のシリーズ。

 一般的な木彫とは異なり、複数の作品をインスタレーションにして構成する。台座はない。
 フォルムは、植物の種子などを思わせる有機的なもの。

 バードウオッチングが趣味という柿崎さんが、周辺の防風林などを歩いて着想を得たフォルムを生かしていた。
 それは、都市の中心でもなく、北海道らしい大自然でもない、都市と自然のエッジとでもいうべき場所から発信された作品だといえるものだった。

 今回は、それとは異質の作品。

 森の中にすっかりとけこんでいるような感じがする。

 カプセルを半分に切断したような形は、これまでの柿崎さんの作品にはあまり見られなかったものだと思う。

 
「札幌作家グループ展」阿部典英+柿崎熙+下沢敏也 帯広コンテンポラリーアート 真正閣の100日(2011年)

※以下画像なし
SCAN DO SCAN(2007年)
■北海道立体表現展’06
第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII(07年)
北海道立体表現展’06
水脈の肖像2002

(この項続く) 
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

田中裕子「ヤドリギ」 ハルカヤマ藝術要塞

2012年01月02日 22時38分41秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前)

 Yuko Tanaka "mistletoe"

 田中裕子さんの「ヤドリギ」は、ワイヤとつるによる造形を、高い木の枝の間に設置したもの。
 題のとおりの作品である。

 図録を見ると、中にLED電球が仕込まれていて、夜になると光るらしい。
 ただ、この「ハルカヤマ藝術要塞」って、夜もやってたっけ?

 なお、図録には略歴が載っており、ギャラリーたぴおでのグループ展「CROSSROAD」や、モエレ沼公園での「MO'ELEMENT」、ハンブルクでのグループ展などに出品した由だが、筆者には全く未知の出品者である。


コメント (0) |  トラックバック (0) | 

菅原尚俊「拝啓 アトム様 ここは安全ですか。」 ハルカヤマ芸術要塞

2011年12月30日 20時36分45秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
承前

 Naotoshi Sugawara “Dear ATOM! Is it safety here?”

 菅原さんは1964年生まれ、札幌在住。

 花崗 か こう岩で抽象彫刻を作り続けている。
 道展会員で、北海道立体表現展にも何度も出品している。
 偉そうな口ぶりになってすみませんが、菅原さんの石彫は、どっしりと安定しているなあと思う。
 



 今回は、大小の石がにょきにょきと土の中から生えてきている感じがして、どちらかというとユーモラスな印象を受ける。

 しかし、題名は、2011年の東京電力福島第一原発事故を反映している。

 そして、この題名は、原発事故による放射性物質漏れにおびえた多くの人々にとって、共通の思いだったのではないか。
 福島県はもちろん、関東や東北、北海道も含めて。

 放射性物質は、目に見えない。
 人体に及ぼす影響の度合いも、はっきりとは分かっていないことが多い。

 果たして、ここ(=北海道)は、安全なのか。
 安全だったとして、そのことを喜ぶだけでいいのか。
 



 花粉や雨といった、本来自然の恵みであるものが、いつもと見た目は区別はつかないのに、いざ放射性物質を含むと、わたしたちには脅威になってしまうという逆説。

 「自然ととけあうように、共存している」状態は、通例なら好ましいことなのに、ひょっとしたらそうではなくなってしまうという現実。

 題名ひとつで、いろいろなことを考えてしまうのであった。


北海道立体表現展’06
北の彫刻展 2002 (以上画像なし)

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

上ノ大作「ムノウノ人」 ハルカヤマ藝術要塞

2011年12月28日 23時54分38秒 | 展覧会の紹介−複数ジャンル
(承前)

Daisaku Ueno “Munou No Hito”

 上ノ大作さんは1970年生まれ、北広島市在住で、薪窯も同市内にある。

 野趣にあふれるというか、土の持つ味を存分にたたえた器で注目されている。
 器だけを見ると、一見投げやりな感じもするが、この荒々しさが、案外花とは合うのかもしれない…などと思わせる陶芸家である。

 今回は、素材のところに
「陶(野焼き)、森」
とある。



 届いたばかりの図録を見ると、どうやら現地で焼いたようだ。

 大胆なことをするなあと思ったが、よく考えてみれば、陶の素材は土である。
 土の中に土が埋もれていること自体は、なんらおかしなことではないともいえる。

 つまり、ふだんは生活の中にあって見えにくくなっている「陶はもともと土」ということを、あらためて認識させてくれる作品だといえるのかもしれない。

 あたりには陶片が散らばっている。
 土から陶が生まれ出るその時間が、ここに集積されているようでもあった。

 それにしても、ふしぎな題だ。
 つげ義春のマンガに「無能の人」というのがあった。関係があるのかどうか、分からないが。


□northstyleの関連ページ http://www.northstyle.jp/features/detail.asp?id=86

あな展(2010年)
花のある暮らし 身近な自然と暮らし(2009年)
新茶を愉しむ 旅する茶器(2009年)
第8回生まれ出ずる土塊展(2008年、画像なし)
第1回「凍土会陶芸展」 (2008年、画像なし)
上ノ大作作品展−陶ト木ト紙ト−(2007年、画像なし)

コメント (0) |  トラックバック (0) |