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■竹本英樹写真展「銀遊詩人」 (4月18日まで)

2007年04月17日 00時09分37秒 | 展覧会の紹介-写真
 札幌の若手で現在、もっとも精力的に発表をこなすとともに、個性的な写真を撮るひとり、竹本さんが、満を持して富士フォトサロンに登場です。

 まるで記憶のひとこまのようなピンボケの不思議な映像は、いまはビデオに押されて見ることの少なくなった8ミリフィルムのコマを、専用の(じつは16ミリフィルム用)装置で撮っています。周囲の黒い部分や四角形は、フィルムの端やパーフォレーションが写っているのです。

 会場の入り口側の壁に、サービス判よりやや大きい約160枚がびっしりととめられ、つぎの壁から、パネルに張られた作品およそ40枚が並びます。
 冒頭の画像の左端に見えるのは、昨年秋に閉園した小樽の遊園地にあった小さな観覧車。
「一組だけ乗っているときを選ぼうと思い、平日の昼間に行ったんです」

 なんだか、ものすごくなつかしい光景です。

 夕日や朝日の風景が多いので、やや感傷となつかしさを感じましたが、竹本さん的には、今回の写真展のココロは
「ビートニク」
だそうです。
 それも、ギンズバーグじゃなくて、ケルアックの「路上(On The Road)」とか、ウィリアム・クラインとか。
 なるほど。オン・ザ・ロード、ね。
 もっとも、筆者がオン・ザ・ロード、と聞いて思い出すのは、ヴィム・ヴェンダースだったりするけどさ。



 道路のオービスやNシステム。
 北大構内。サクシュコトニ川やポプラ並木。
 モエレ沼のガラスのピラミッド。
 紀伊國屋ギャラリーから見下ろした街路。
 夕方の高速道。

 残像のように、切り取られた、一瞬。

 おもしろいのは、その多くに、人影がフレームインしていること。
 それが、感傷的な風景写真と、竹本さんの写真を分かつ違いだと思うのです。

          

 「もともと、粒子感のある写真が好きで、わかりやすいとこで言うと、森山大道とか。それとはべつに、8ミリもまわしてたんです。で、或る日、8ミリを撮れるアタッチメントっていうのを入手して撮ってみたら『これこれ、これだよ』って感じで。もっとも、はっきりとは写らないから、一般にはあまり売れなかったみたいですけど」
 さがしていた光、というか、映像に出合えた! という思いだったんでしょうね。

          

 やけに青っぽい作品は、8ミリのタングステンフィルムを屋外で使ったもの。
 ほかにも、わざとふたを開けて感光させたものもあります。
「フィルターはぜんぜん使っていません。35ミリのフィルムは、ベルビアとかじゃなくて、ふつうのを使っています」
と竹本さん。

 デジタルや、最近のテクノロジーでは得ることのできない、フィルム独特の感触。
 竹本さんがそれをとても大事にしていることが、ひしひしとつたわってくる写真展でした。

          

4月13日(金)-18日(水)10:00-18:30
富士フォトサロン(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A)

□ブログ「dearFILMS」

http://www.dearfilms.com/


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