(2019年11月24日 東京新聞)
東武東上線大山駅(板橋区)付近の一・六キロ区間の高架化計画案が、都の都市計画審議会(都計審)で可決された。高架化とともに、連動して区の駅前整備も動き出すが、「生活環境が破壊される。住民の声を無視している」などと反対の声が出ている
「都や区などは住民の疑問に答えず、意見も取り入れない。住民は追い出され、町は壊されてしまう」。「大山の暮らしとにぎわいを守る会」の鈴木三郎代表(86)は、そう訴える。
区は、高架化に伴い、タクシーやバスが乗り入れる駅前広場を整備する方針だ。鈴木さんはこの地域で生まれ、現在は駅近くで暮らす。鈴木さん宅など計約六十軒が立ち退きを迫られることになる。
十年ほど前、鈴木さんが自宅を建てた当時、駅前広場の整備は計画されておらず、具体的に知らされたのは昨年二月、都や区が地元への説明会で、高架化案などを示してからだ。
東上線の踏切撤去を、地元が望んでいたことが背景にある。大山駅につながるハッピーロード大山商店街や町会などは二〇一五年、東上線の地下化検討を求める要望書を都に提出した。一方で、「高架化、地下化にかかわらず、立体交差の早期実現を」という要望も地元ではあり、都は工費や工期の面などから高架化を採用した。
区は昨年十二月、駅前広場と高架に伴う整備計画案への意見を募ったが、寄せられた約千六百件のほとんどは反対だった。今年九月に開かれた区の都計審では審議を延期する動議も出たが、一票差で否決し、この計画案を可決した。
◆道路整備事業は難航
大山駅周辺では、高架化や駅前広場のほかにも、大規模な整備計画がある。半世紀以上前の一九四六(昭和二十一)年に都市計画決定された都市計画道路「補助第26号線(補26号)」だ。長年、放置されてきたが、防災性向上のためなどとして、国は二〇一五年に事業認可した。
補26号予定地は、ハッピーロード大山商店街の約百七十メートル区間と重なる。立ち退きによって、商店街が分断されることになり、「にぎわいが消失する」などと地元の反対は根強い。都は二〇年度の完成を目指すが、予定地の約二割しか取得できておらず、完成はずれ込む可能性が高い。
補26号の整備計画と一体化した民間による再開発計画もある。補26号とハッピーロード大山商店街が交差する周辺でのビル四棟の建設計画と、川越街道沿いに「活気を生み出す拠点」の整備計画の二つ。
ハッピーロード大山商店街振興組合元理事長の大野厚さん(78)は「高架も補26号も住民抜きで進んでいる。高架化決定で補26号の事業が進むと、町はにぎわいもコミュニティーも失われる。広く区民に説明し、時間をかけて議論すべきだ」と話している。