コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

ロメ港を視察する(1)

2008-12-23 | Weblog
トーゴ政府のバワラ開発相は、この間まで国連官僚をしていた。ジュネーブで国連人権高等弁務官事務所、次いでニューヨークの国連本部で政務局・平和維持活動局で勤務している。ニヤシンベ大統領に引き抜かれて、若くしてトーゴ政府の閣僚になった彼は、意気軒昂にトーゴの開発絵図を語る。まだ40歳、閣僚というより、青年実業家といった風体である。

バワラ開発相は、トーゴの未来と可能性を、物流を軸として描く。まず、トーゴには首都にロメ港がある。この港は、西アフリカ唯一の深い港で、つまり超大型貨物船が横付けできる。だからロメ港は、ここで世界各地からのコンテナを積替えて、西アフリカの他の港、ラゴス港(ナイジェリア)、コトヌ港(ベナン)、アクラ港(ガーナ)、アビジャン港(コートジボワール)などに仕向ける、ハブとしての港になるはずだ。

次に、幹線道路の整備である。東のラゴスからロメを通って西はアビジャンに至る、大西洋岸を貫く幹線道路を、隣接国と共同で整備する。さらに、トーゴは南北に細長い国であり、その南北を貫く一本の道路がある。これを整備してブルキナファソ、ニジェールといった内陸国への輸送路を整備する。これで、ロメ港で荷揚げした貨物を、トラックにより各地に輸送する態勢を確立する。そうすれば、ロメは商業の中心地としての地歩を築くことができる。

なるほど、ロメ港が扇の要であるということは、良く分かった。それではその港を見に行きたい。バワラ開発相に頼んで、早速視察をした。ロメの市街から東の地区に、荷揚げされた自動車やコンテナなどがぎっしり並べられた、広大な貨物ヤードが広がる。大型トラックがひしめきあっている中を、港の事務所本部に到着。アデニョン所長が出迎えてくれる。

事務所で挨拶、さっそく説明を受ける。六角形の会議室に通され、広報ビデオでロメ港の事業内容が紹介される。港はドイツの経済協力により建設され、1968年に開港した。現在、年間約1100隻の貨物船が接岸、貨物取扱量は昨年(2007年)で620万トン、今年は既に700万トンを越えている。近年、コンテナ取扱量が高まっている。一昨年に100トンの懸架能力のある大型クレーン2基を導入。その結果、2007年は年間24万個、280万トンのコンテナを取り扱った。

ロメ港は、内陸国への陸揚げ貨物輸送の経由地となっている。その第一は、ブルキナファソで、経由貨物の37%、61万トンを占める(2007年)。これに、ニジェール、マリが続く。トーゴは、これら内陸諸国との間で、「海への連帯(Solidarité sur la Mer)」と名付けられた地域協力の枠組みに合意している。この枠組みに従い、内陸国むけのトラックは、越境手続や関税手続を全て港で済ませ、一団の車列に仕立てられて、それぞれの国に向かう。トーゴ政府の先導つきの車列で移動すれば、途中でいちいち検問を受けることなく、迅速に輸送できる。道路をふさいで不法に通行料を徴収する輩も防げるわけだ。車列は、毎週4回定期に送り出され、その便を待つ間のトラック運転手の便宜のため、港内には宿泊・食事の施設も設けられている。

こうした説明は、綺麗に印刷されたパンフレットに記載されている。こういうパンフレットが出てくるかどうかで、政府機関であれ企業であれ、事業や業務への信頼度が測れる。単に印刷が綺麗であるかどうかだけではない。必要な項目が、数字や資料をもとに記載されているかどうかを見る。見ると、内容をグラフで図解しながら、筋道を立てて説明が書かれている。データは全て昨年(2007年)のものであるから、このパンフレットは毎年改訂して刷り直していることが分かる。英語と仏語と両方の文章が載っている。途上国のものと思えない、充実したパンフレットだ。

さて、アデニョン所長から、机上の説明はそのくらいにして、早速現場の視察にお連れしましょう、と促された。私は港に出た。

(続く)

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